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第2章 公爵令嬢でもできること
10話 ルクレシアは今日だけはそれで良いと思いました
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この格好で問題ないかしら? 私は自信が身にまとっているドレスを何度も確認し、大丈夫? 大丈夫? そう思いながらグレイ様の待つサロンの扉を開きましたわ。
おかしなところはないか何度も確かめたのです。きっと可愛いと言ってもらえる。
「遅かったね。そんなに可愛いって言ってもらいたかった?」
「ふふふ、当然ですわ! 貴方に着替えを手伝ってもらうなど、一生の不覚ですわ」
「んー? 発言に可愛げがないからだーめ。失格だね」
「はい?」
グレイ様にそう言われた瞬間でした。突然、足が持ち上げられたように感じ、体は横向きになりました。ですが、地に足はついていません。背中と足がグレイ様の手で支えられています。顔のすぐ横にあるグレイ様の胸部。どうやら私は抱えられているようですわ。
「ちょっと!? 待ってください! どちらに!? どちらに向かわれているのです?」
「どこって? 君を着替えさせるのだから、君の部屋に決まっているじゃないか」
「お待ちください! え? 本当に! 嫌です! 嫌! 嫌! 嫌と言っています!」
「聞こえている、聞こえている。本当にルーのそういう顔は可愛いよね」
そういわれた途端、ゆっくりと足の方からおろしてもらい、私は床にしっかりと立たせて
貰いました。
どうやら可愛いと評価して頂くことができたようですが、何か違いませんか? 服装の可愛さを要求されていましたような……まさかこの変態……。
「初めからこれがやりたかったのですね」
「ふふ、僕のことよくわかっているんだね。嬉しいよルー」
嬉しいよ。ではありませんわ!! しかし、まあいいでしょう。着替えさせる気は元より御座いませんでしたようですし。もし、本当に可愛くないと思ったとしても、そのようなことをするようであれば、しばらくはその件を理由に顔もあわせてあげないつもりでしたが、可愛いと言われることは嫌ではございません。
可愛いのは、焦った顔限定ではありませんよね?
「ああ、そうそう服装も可愛いよ? ん? なんだいその心でも読みましたかって顔。違う違う。ルーは全部顔に出ているからわかるんだよ」
この顔に今まで自信を持っていましたが、この変態の前だけは仮面をつけてもいいかもしれませんわね。表情で心の中までばれるなんて、末恐ろしいですわ。
「出かけようかルー。今日は、僕の姫になってくれるかい?」
「今日だけ……でしたら喜んで」
「ふふ、今のところはそれでいいよ。どうせ半年後は僕のお嫁さんだ」
「それは私が半年間婚約者を作れないという挑戦状で間違いありませんね」
「怒った君も可愛いよ」
やはり挑戦状のようです。仕方ありませんね。その喧嘩買わせて頂きます。
「いいですわ!! では私に婚約者を作ることができましたら、グレイ様には私が選んだ方を妻にして頂きます!」
「じゃあ、君に婚約者が見つけられずに僕と結婚したら、君は僕に何をしてくれるんだい?」
「……? そうですわね……いえ違います! 結婚して差し上げるのですよ! 何さり気無く私の敗北条件に結婚するに加えて更に何かをしてもらおうとしてるのですか!!」
「いや、結婚するのは元々の契約だからね。君が何か条件を加えるなら僕も何か加えるべきだ」
「そういうことですか」
では、何にしましょうか。あまり面倒でない適当なことにしましょう。私が何をしてあげることにしようかとわざわざ思案してあげているところ、突然グレイ様がしゃべりましたわ。
「いや違うか。君は僕の婚約者を君が選ぶって勝手に決めたから僕も勝手に決めていいんだよね?」
「すみませんでした。婚約者が見つからなかったときは、素直に結婚させて頂きます。余計な条件を付けようなどと、公爵令嬢如きが調子に乗ってしまい、猛省しております。何卒この哀れな公爵令嬢にご慈悲を」
「あの傲慢なルーが……そこまで鬼畜な印象でもあるのかい? ちょっと傷つくなぁ」
そこまでって、おそらくグレイ様が思っている以上に、私の中のグレイ様は鬼畜ですよ。
外道が裸足で逃げ出します。勿論、ここ最近何度も助けて頂いたことは忘れもしませんが、あれは自分のおもちゃが取られるのが困るからに違いありません。私はグレイ様のお気に入りのおもちゃなのですからね。
「では、改めて。行きましょうか姫」
「……急に丁寧にしないでください。ええ、行きましょうか。グレイ様」
グレイ様が右手を差し出し、私はその手に自らの手を重ね、エスコートをお受けしましたわ。さすが王子ですわね。こういうしっかりとした姿は、本当に素敵な方ですわ。そして姫呼びは照れてしまいます。
できればお止めに……いえ、今日だけ甘んじてお受けしましょう。本当に……今日だけですよ?
私の馬車に乗る時も、グレイ様は私を抱えてくださり、いつも同じ馬車に乗る時は、必ずお隣りの席に座って、密着してくるのですが、今日は対面に座り、いつもしないような世間話と、私の一挙一動をお褒めくださります。
そこまで姫扱いしなくてもよろしいのですが、調子が狂って仕方ありませんわ。
「姫呼びはお嫌でしたか?」
「いつも通りルーで構いませんわ。貴方だけが呼ぶ愛称なのですから」
「そうでしたね。僕だけの特別な呼び名なのですから今日もそちらで呼ばせて頂きます。ルー」
そうしてください。ですが、特別な呼び名って思いますと、姫より恥ずかしく感じますわね。
これ姫のままでも……いえ、やめましょう。姫は公衆の面前で耐えられません。そもそも二人きりのうちからその外面で喋られるのは本当にダメですわね。
そのまま二人で出かけた先は、王都一のレストランなどではなく、王都内にある有名な公園でした。
「こちらで昼食を?」
「お気に召しませんでしたか? ルーでしたら高級レストランは行き飽きていることを考慮して、今日は王宮のシェフをこちらに呼び、公園で食事にしようと思いましたが」
「あ……いえ、えっとですね。気に入らなかった訳ではないのです。グレイ様とこのような場所にお出かけになるのは久方ぶりでしたので懐かしく思えたのです。幼い頃は様々なところに連れて行ってくれましたよね」
思い返せば例の湖や山に綺麗な川、綺麗な花畑もありました。自然の多い場所によく二人……いえ、護衛もいましたが二人は二人ですよね。ええ、二人で出かけましたわよね。
今日も当然、馬車こそ同席していませんが、ヨハンネスが馬でついてきていますし、今も少し離れて待機しています。
とにかく幼い頃は自然豊かな場所に出かけていました。いつしか年を重ね、二人ででかけることも減りました。せいぜい夜会で会うのが関の山。たまにプライベートでお茶もしますが、その程度です。
こちらの公園は、王族貴族とその従者しか立ち入れない空間でして、花々や草木が美しく手入れされています。芝生の上ですらそのまま座れそうな綺麗さではありますが、さすがに淑女がドレスで座る訳には行きません。
噴水手前にあるベンチにハンカチを敷いてくださり、私はそこに腰をおろしましたわ。後ろからグレイ様の使用人の方でしょうか。そちらの方が声をかけ、私たちの目の前にちょうど良い高さのテーブルが運ばれてきましたわ。ほんとうにこちらで食事にされるのですね。
「そういえば、園内には私たち以外誰もいませんのね」
「今日は僕らしか入れないようにしてもらいました。君は素敵すぎるから、なるべく多くの人に見せたくないのですよ」
本当にそれだけでしょうか。当然、私が素敵すぎるのも独占したいのもわかりますが、本当は人を避け、なるべく不審者が近づけない様にしてくださっているのですよね。
デートと言っておきながら、人の集まる場所を避け、なるべく襲われたばかりの私に気分転換を促してくださっていますのね。その気遣いを毎日して頂けるのでしたら喜んで嫁ぐのですが。……いえ、嫁ぎませんよ?
「頂きましょう。貴方の為に用意して頂いた食事です」
「ありがとうございます」
目の前には、私の好きな食べ物が並べられています。昨日のうちにエレナにでも聞いたのかしら? ですが、ここまで尽くされるのでしたら、今日はグレイ様を王子様としてお相手致しましょう。今日だけです。本当に……今日だけですからね。
おかしなところはないか何度も確かめたのです。きっと可愛いと言ってもらえる。
「遅かったね。そんなに可愛いって言ってもらいたかった?」
「ふふふ、当然ですわ! 貴方に着替えを手伝ってもらうなど、一生の不覚ですわ」
「んー? 発言に可愛げがないからだーめ。失格だね」
「はい?」
グレイ様にそう言われた瞬間でした。突然、足が持ち上げられたように感じ、体は横向きになりました。ですが、地に足はついていません。背中と足がグレイ様の手で支えられています。顔のすぐ横にあるグレイ様の胸部。どうやら私は抱えられているようですわ。
「ちょっと!? 待ってください! どちらに!? どちらに向かわれているのです?」
「どこって? 君を着替えさせるのだから、君の部屋に決まっているじゃないか」
「お待ちください! え? 本当に! 嫌です! 嫌! 嫌! 嫌と言っています!」
「聞こえている、聞こえている。本当にルーのそういう顔は可愛いよね」
そういわれた途端、ゆっくりと足の方からおろしてもらい、私は床にしっかりと立たせて
貰いました。
どうやら可愛いと評価して頂くことができたようですが、何か違いませんか? 服装の可愛さを要求されていましたような……まさかこの変態……。
「初めからこれがやりたかったのですね」
「ふふ、僕のことよくわかっているんだね。嬉しいよルー」
嬉しいよ。ではありませんわ!! しかし、まあいいでしょう。着替えさせる気は元より御座いませんでしたようですし。もし、本当に可愛くないと思ったとしても、そのようなことをするようであれば、しばらくはその件を理由に顔もあわせてあげないつもりでしたが、可愛いと言われることは嫌ではございません。
可愛いのは、焦った顔限定ではありませんよね?
「ああ、そうそう服装も可愛いよ? ん? なんだいその心でも読みましたかって顔。違う違う。ルーは全部顔に出ているからわかるんだよ」
この顔に今まで自信を持っていましたが、この変態の前だけは仮面をつけてもいいかもしれませんわね。表情で心の中までばれるなんて、末恐ろしいですわ。
「出かけようかルー。今日は、僕の姫になってくれるかい?」
「今日だけ……でしたら喜んで」
「ふふ、今のところはそれでいいよ。どうせ半年後は僕のお嫁さんだ」
「それは私が半年間婚約者を作れないという挑戦状で間違いありませんね」
「怒った君も可愛いよ」
やはり挑戦状のようです。仕方ありませんね。その喧嘩買わせて頂きます。
「いいですわ!! では私に婚約者を作ることができましたら、グレイ様には私が選んだ方を妻にして頂きます!」
「じゃあ、君に婚約者が見つけられずに僕と結婚したら、君は僕に何をしてくれるんだい?」
「……? そうですわね……いえ違います! 結婚して差し上げるのですよ! 何さり気無く私の敗北条件に結婚するに加えて更に何かをしてもらおうとしてるのですか!!」
「いや、結婚するのは元々の契約だからね。君が何か条件を加えるなら僕も何か加えるべきだ」
「そういうことですか」
では、何にしましょうか。あまり面倒でない適当なことにしましょう。私が何をしてあげることにしようかとわざわざ思案してあげているところ、突然グレイ様がしゃべりましたわ。
「いや違うか。君は僕の婚約者を君が選ぶって勝手に決めたから僕も勝手に決めていいんだよね?」
「すみませんでした。婚約者が見つからなかったときは、素直に結婚させて頂きます。余計な条件を付けようなどと、公爵令嬢如きが調子に乗ってしまい、猛省しております。何卒この哀れな公爵令嬢にご慈悲を」
「あの傲慢なルーが……そこまで鬼畜な印象でもあるのかい? ちょっと傷つくなぁ」
そこまでって、おそらくグレイ様が思っている以上に、私の中のグレイ様は鬼畜ですよ。
外道が裸足で逃げ出します。勿論、ここ最近何度も助けて頂いたことは忘れもしませんが、あれは自分のおもちゃが取られるのが困るからに違いありません。私はグレイ様のお気に入りのおもちゃなのですからね。
「では、改めて。行きましょうか姫」
「……急に丁寧にしないでください。ええ、行きましょうか。グレイ様」
グレイ様が右手を差し出し、私はその手に自らの手を重ね、エスコートをお受けしましたわ。さすが王子ですわね。こういうしっかりとした姿は、本当に素敵な方ですわ。そして姫呼びは照れてしまいます。
できればお止めに……いえ、今日だけ甘んじてお受けしましょう。本当に……今日だけですよ?
私の馬車に乗る時も、グレイ様は私を抱えてくださり、いつも同じ馬車に乗る時は、必ずお隣りの席に座って、密着してくるのですが、今日は対面に座り、いつもしないような世間話と、私の一挙一動をお褒めくださります。
そこまで姫扱いしなくてもよろしいのですが、調子が狂って仕方ありませんわ。
「姫呼びはお嫌でしたか?」
「いつも通りルーで構いませんわ。貴方だけが呼ぶ愛称なのですから」
「そうでしたね。僕だけの特別な呼び名なのですから今日もそちらで呼ばせて頂きます。ルー」
そうしてください。ですが、特別な呼び名って思いますと、姫より恥ずかしく感じますわね。
これ姫のままでも……いえ、やめましょう。姫は公衆の面前で耐えられません。そもそも二人きりのうちからその外面で喋られるのは本当にダメですわね。
そのまま二人で出かけた先は、王都一のレストランなどではなく、王都内にある有名な公園でした。
「こちらで昼食を?」
「お気に召しませんでしたか? ルーでしたら高級レストランは行き飽きていることを考慮して、今日は王宮のシェフをこちらに呼び、公園で食事にしようと思いましたが」
「あ……いえ、えっとですね。気に入らなかった訳ではないのです。グレイ様とこのような場所にお出かけになるのは久方ぶりでしたので懐かしく思えたのです。幼い頃は様々なところに連れて行ってくれましたよね」
思い返せば例の湖や山に綺麗な川、綺麗な花畑もありました。自然の多い場所によく二人……いえ、護衛もいましたが二人は二人ですよね。ええ、二人で出かけましたわよね。
今日も当然、馬車こそ同席していませんが、ヨハンネスが馬でついてきていますし、今も少し離れて待機しています。
とにかく幼い頃は自然豊かな場所に出かけていました。いつしか年を重ね、二人ででかけることも減りました。せいぜい夜会で会うのが関の山。たまにプライベートでお茶もしますが、その程度です。
こちらの公園は、王族貴族とその従者しか立ち入れない空間でして、花々や草木が美しく手入れされています。芝生の上ですらそのまま座れそうな綺麗さではありますが、さすがに淑女がドレスで座る訳には行きません。
噴水手前にあるベンチにハンカチを敷いてくださり、私はそこに腰をおろしましたわ。後ろからグレイ様の使用人の方でしょうか。そちらの方が声をかけ、私たちの目の前にちょうど良い高さのテーブルが運ばれてきましたわ。ほんとうにこちらで食事にされるのですね。
「そういえば、園内には私たち以外誰もいませんのね」
「今日は僕らしか入れないようにしてもらいました。君は素敵すぎるから、なるべく多くの人に見せたくないのですよ」
本当にそれだけでしょうか。当然、私が素敵すぎるのも独占したいのもわかりますが、本当は人を避け、なるべく不審者が近づけない様にしてくださっているのですよね。
デートと言っておきながら、人の集まる場所を避け、なるべく襲われたばかりの私に気分転換を促してくださっていますのね。その気遣いを毎日して頂けるのでしたら喜んで嫁ぐのですが。……いえ、嫁ぎませんよ?
「頂きましょう。貴方の為に用意して頂いた食事です」
「ありがとうございます」
目の前には、私の好きな食べ物が並べられています。昨日のうちにエレナにでも聞いたのかしら? ですが、ここまで尽くされるのでしたら、今日はグレイ様を王子様としてお相手致しましょう。今日だけです。本当に……今日だけですからね。
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