ポンコツ公爵令嬢は変人たちから愛されている

大鳳葵生

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第3章 ポンコツしかできないこと

11話 公爵令嬢は第一目標に到着致しました

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 クーパの村を出発した私たちは、その日も一日中馬車を走らせましたわ。メルヒオール様も加わり、旅に参加しているメンバーが増えたわね。

 本当に追っていらした怪盗のことは宜しいのでしょうか? いえ、問題ないですわよね。直感ですが、嘘をつかれていたような気がしましたの。

 旅の役割は至ってシンプル。当然私ことルクレシア・ボレアリス・ベッケンシュタインがリーダー。
  
 エレナは私とルイーセ様のお世話と炊飯。ヨハンネスは護衛隊長兼御者交代要員。マルッティは御者兼護衛。マリアは護衛兼炊飯。ジェスカは護衛兼野営時の見張り。メルヒオール様は護衛のみですわね。

 ルイーセ様は……ルイーセ様は、何をされていますのでしょうか? いえ、炊飯のお手伝いとか私の話し相手とか色々頑張ってくださっていますわ。
  
 幸い、どこぞのベッケンシュタイン公爵令嬢と違いまして、炊飯のお手伝いで邪魔になる様子もありませんし、誰よその公爵令嬢。

 私たちはほぼ護衛で固められた陣営ですが、護衛対象は私とエレナとルイーセ様の三人。

 あら? いつのまにやら、護衛対象増えていませんか? あれ? 私の護衛…………私を最優先してくださいますよね?

「もう少し護衛がいたほうが…………いえ、それは多すぎ?」

 あまり人数が多すぎますと、それはそれで困りますのよね。全体の把握が難しくなりますし、移動もスムーズに行えなくなってしまいますわ。
  
 何より、裏切り者が出てくる可能性も大きくなりますので、メンバー選びから始める必要がありますわ。そのような手間暇をかけている余裕今は……

 億劫ですわ。いいわ。メルヒオール様みたいに道すがら信頼できる方を拾い……それはまず無理ですわね。
  
 ……とにかく早急にナダル領に到着し、そこにいる騎士団と一緒にいれば大丈夫でしょう。
  
 王国の兵でしたら……突然私の敵になるなんてことありませんよね? ね?

 ナダル領に存在する騎士団の駐屯所を目指し馬車を走らせますと、どうやら目前にある緑色のテントがそのようですわ。

「私が行きましょう」

「エレナ? ええ、お願い」

 エレナ自ら行くとは珍しいですわね。まあ、一応領主の娘ですものね。
  
 それに今見える駐屯所に掲げられている旗には紫色のシンボルに馬の横顔のマーク。第七騎士団の紋章ですわ。
  
 つまり、エレナのお兄様が騎士団長を務めている駐屯所ですわ。

 しばらくしてエレナともう一人の騎士様がこちらにいらっしゃいましたわ。馬に跨ったままですが。

「君自ら馳せ参じるとはな。俺はペッテル・ナダル。第七騎士団団長だ。公爵令嬢である君が、何故このような危険地帯に? 尤も、俺がいれば安全であることに変わりないが」

 なんだかお顔は拝見したことがありますが、この方がエレナのお兄様ですのね。控えめに言って良い顔ですわね。

「いえいえ、第七騎士団長様がいなくてもお嬢様の護衛は十二分で御座います」

「ユーハン・フランスワか。ずいぶんとまあ、公爵令嬢に入れ込んでいるじゃないか」

「ええ、彼女は王命より大事です。何か?」

「……そうか。ルクレシア様、あなた様が何をしようと構いませんが、第七騎士団の邪魔…………いえ、任務の妨げになるようなことはくれぐれもお控えください」

「ありがとうございます。ペッテル様」

 と、言われてしまいましたが、おそらく邪魔になるのですよね。いっそ作戦に巻き込んでしまおうかしら。

 まあ、作戦など一切考えていないのですけどね。とにかく今は戦場の把握が先決です。公国軍と帝国軍の数と優劣の状態。
  
 それから戦場になっている場所ですわね。

 前線さえわかりましたら、後は私が現れる場所と、敵軍を誘導する場所も決めないとですしね。
  
 私たちが考えなくてはならないことばかりですわね。

 エレナに一度お屋敷まで案内して頂き、本日の所はそちらにお邪魔させて頂きことになりましたわ。

「ナダル領って本当に馬ばかりなのね」

 屋敷のテラスから見える広い大草原には、野生の馬が伸び伸びと生息されていましたわ。

 窓の外を眺めていますと、ルイーセ様もその様子を眺め始めましたわ。

「ルイーセ様はこの光景も絵にしたいのかしら?」

「はい! もっとたくさん色んな場所を見て知らない世界を描くのです」

 はい可愛い。ではなくて、ルイーセ様のそういうところは素敵だと思いますわ。彼女は私にとって数少ない常識人ですもの。
  
 常識人ですもの!!!!

 風が心地よいですわ。綺麗な緑色の草原はまるで水平線を見ているような気がします。この景色を決して戦場になどさせませんわ。

「来てよかったですわ」

 もし私が逃げてしまえば。ここもきっと戦場になっていましたのでしょう。イサアークの時に何もすることができませんでした。

 ルーツィアの時に取り返しのつかないところで止めることができませんでした。

 今回も取り返しのつかないところまで発展はしてしまいました。
  
 ですからユリエ様、多くの命を犠牲にするような真似は許しません。必ずあなたも止めさせて頂きますわ。

 護衛達は自らの獲物を手入れしていらっしゃいます。いつなんどきそれが必要になってもよいように。

 エレナも皆さまにお食事を用意するようにとお屋敷の方々にお声がけしていますわ。ここではあなたもお嬢様でしたね。
  
 いえ、我が家で働いていたとしても高貴な血はであることは変わりませんが。

 エレナ、ルーツィアの時は一緒に来てくださってありがとうございます。
  
 あなたは決して戦える方ではありませんでしたのに、極力私から離れない様にしてくださりましたよね。
  
 今度は私の番だと思います。

=== エリオット (ルクレシア兄)side ===

 王の間に通された俺たち第一騎士団は、白い髪を後ろにまとめた女性が王座に座っていることを確認した。
  
 青い三白眼の瞳がぎょろりと動き、こちらを捉える。
  
 この国の女王だ。王座のすぐ横には女王の身長以上にある大剣が立てかけられていた。

「おめぇらがアルデマグラから来た猿どもでごぜぇますか?」

 彼女こそ、ジバジデオ王国の女王。アンジェリカ・アウグスタ・ジバジデオ。
  
 御年69歳。ジバジデオ王国では、常に最強の王族が王位を継ぐことになっている。

 つまり、現王族で彼女より強い者はいないということだ。

「エリオット・ハウクル・ベッケンシュタイン。……第一騎士団団長」

「ベッケンシュタインでごぜぇますか? ああ、偉い方の猿でごぜぇますね」

 女王は俺たちを興味なさそうに眺めると、大剣の柄を握る。

「何の用かだけは聞いてやるでごぜぇますよ? 首が飛びたいものから鳴き声をあげるでごぜぇます」

 ジバジデオ王国は武力の国。間違いなく目の前にいる老婆の女王は俺たちより強いだろう。
  
 全員がかりで行けば行けるか? いや、今はジバジデオ王国との関係を悪化させる訳にはいかない。

「……今……起きていること……知っているか?」

「? おい、マーク知っているでごぜぇますか?」

 女王のすぐ隣に立っていた老紳士は、女王に耳打ちをする。すると女王の顔は満面の笑みになり、口角は吊り上がった。
  
 何を考えているんだ女王。

「アルデマグラ猿とデークルーガ猿が縄張り争いでごぜぇますか」

 縄張り争い……かなり意味合いが違う。これは妹をかけた戦争。
  
 かなりばかばかしいことだが、デークルーガ帝国が今、ユリエによって支配されてしまったからこそ起きた特殊な戦争だ。

「……違う。……が、戦争は確か……ジバジデオ王国……どうか静観を」

 仕方ない。とにかくこちらの要求を伝えてしまおう。

「それじゃあつまらないでごぜぇます! ですが、私も鬼や悪魔ではねぇでごぜぇますよ? 私に斬らせるでごぜぇますよ! ヨハン・フランスワの子孫!」
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