ポンコツ公爵令嬢は変人たちから愛されている

大鳳葵生

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第3章 ポンコツしかできないこと

12話 作戦会議の前に参謀が欲しいのですが

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 エレナのご実家に到着した私たちは、ひとまず長旅の疲れを癒すことに時間を費やしましたわ。
  
 いえ、戦争を止めるためにはまず私たちの活力をですね……はい、本当に疲れていますのでまずは休息をください。

 とにかく! 私とエレナとルイーセ様は、ナダル家の使用人たちに湯浴みとマッサージをしてもらいましたわ。
  
 ヨハンネスやマリアは、騎士らしく得物の手入れをされています。あなたがたは少しは休んでみてはどうでしょうか?
  
 マルッティとジェスカはすぐに部屋に行ってベッドに寝転んでしまいましたわ。素直でよろしいこと。

 あら? メルヒオール様は? 何をされているのか、確認し忘れていましたわ。いえ、特に問題ないのでしょうけど。

 しかし、チームの指揮者である私に何も報告いたしませんとは、これでは先が思いやられますわ。

 ……私、メルヒオール様に対して随分印象が変わりましたよね? 以前は少々盲目的すぎていましたのよね。そこまで焦っていたのでしょうね。

 確かに今、彼から好意を寄せられれば高揚感こそ御座いますが、それはつまり私は彼からしか愛されていないと錯覚していたからでありまして
  
 本当はそんなことなかったと気付いた途端から、これはメルヒオール様に失礼よね。ですが……でも……

「はぁ」

「どうかなさいましたか?」

「お嬢様のことです。どうせメルヒオール様の扱いを以前と改めることに少々ためらいがあるのですよ」

「エレナ……ええ、そうよ。わかったなら相談に乗りなさい」

「私も宜しいでしょうか?」

「勿論ですわ、ルイーセ様。……まずルイーセ様はご事情を正確に把握されていませんよね? まずはそこからだと思いますの」

 私はグレイ様から言い渡された条件をルイーセ様にお話しましたわ。
  
 グレイ様の生誕祭までに婚約者を用意できなければ、私はグレイ様と結婚すること。

 だから以前レティシア様の屋敷で行われたお茶会にて、婚約者を探していることをお伝えしました。

 また、イサアークの件の後に母から伝えられた条件として、ベッケンシュタイン家の課題をこなせない男は認められないという条件まで負荷されましたわ。
  
 この制約のせいで実質グレイ様の生誕祭よりずっと前に婚約者を見つけている必要ができましたのよね。

「あの王子殿下の何がいけなかったのでしょうか?」

「その話ね。そうよね。何がいけなかったのかしら?」

「……え?」

 ルイーセ様の問いに対し、私が今の心境を含めてお答えしますと、ルイーセ様は驚かれていましたわ。
  
 エレナだけは一切驚く様子がございませんが。

 それもそうよね。でもね、仕方なかったのよ。

「私、自分ではわかっていなかったけれど、本当は誰よりも愛されたかったのよ」

「えっと…………王子殿下は最初からルクレシア様のことを愛されていましたよね?」

 ルイーセ様はまるで理解できないという風な表情で私を見ています。しかし、その理解できないで正しいのでしょう。
  
 はたから見ればそこまでわかりやすいことはないと言われているのが良くわかります。

「何年も一緒にいたのに私はグレイ様の好意に気付けなかったし、グレイ様は私に好意を伝えられなかった。だから私は……ヨハンネス、いえユーハン様とメルヒオール様にご迷惑をおかけしましたし、何よりお二方にも誠実な対応をすべきなのです」

 今でも私の気持ちは揺れているのです。自分が誰を愛しているのかをしっかりと判断すべきなのです。

「私って、偏見だと勝手に思い込んでいましたが、偏見以上にわがままなのかもしれません。だって私を身分とか関係なく、内面含めて真剣に愛してくださった方々を選ぶなんてできませんもの。ですが、私の中で一つルールを設けました」

「ルールですか?」

「はい。内緒ですよ?」

 私はエレナとルイーセ様にこっそりと自分で決めたルールをお話しましたわ。
  
 ルイーセ様からは素敵ですと称賛され、エレナからはお嬢様らしいですねと言っていただけましたわ。そうかしら?

 そして二人は口をそろえてこう言いました。

「「やはり次期王妃ですね」」

「なっ!? 何故グレイ様しか条件に当てはまらないとお思いになって!?」

 そんなはずありませんわ! 頑張ればどなたでも……いえ、それは条件としてありえませんね。
  
 しかし、なるべく公平な条件を提示したハズですわ!

 しかしお二方はくすくすと笑うだけ。なんですかもう! くすくすくすくす!
  
 クスクスは我がベッケンシュタイン領の貿易相手の民族料理ですわ! スプーンだけで食事できる画期的な料理よ! ナイフもフォークもいりませんわ! いりませんのよ! 画期的!!

「まあ、お嬢様が結婚できそうで安心しました」

「私もです! おめでとうございます!」

「私は恨めしくなりました」

「あの、流れるように恨まれてるのですが」

 といいますか、武器の手入れを終えたマリアが突然現れたのですが……ええ、一声かけてください。割とデリケートな話題でしたのよ?

 どちらにせよ私の結婚は確定です。婚約者を作ろうが作らなかろうが、その未来は定まっているのです。……いえ、まだ強大な敵がいらっしゃいましたね。ユリエ様。

 私はユリエ様がいらっしゃるはずのデークルーガ帝国の方の窓を見ましたわ。同じ空を見ているのかしら?
  
 でしたら、もしよろしければそれで満足して頂けませんか? ね? 今なら同じ大地も歩いているのですよ? セットも……

「そういえばお嬢様はナダルから戦場を移された後は何をされるのですか?」

「え? ああ、そうね。できれば直接ユリエ様の元に行ければ宜しいのですが何かいい案は……」

 捕まれば戦争も終わる。いえ、それはダメね。解放される気がしません。なるべく、そうなるべく私が自由な身でユリエ様の元に訪れる必要がありますわ。

 それにもし私が捕まった時には、今度はグレイ様が奪還の為に戦うと仰っていましたわ。私の為に争わないで?
  
 いえ、ほんとに国単位で争うのやめて。私がお二人を常識で殴るしか。

 しかしこうなっては仕方ありません。この大地一番の常識人が立ち上がる時ですね。

「行きましょう! デークルーガ帝国! あちらでしたら彼らも易々と戦場にできないはずですわ! そのためにも定期的に私が無事であることをアルデマグラ公国に伝える必要がありますわね」

 私が音信不通になるだけで、今度はデークルーガ帝国が戦場になってしまってはいけませんわ。
  
 そうね、それも考えてから乗り込まないといけませんよね。どなたか参謀になられる方はいらっしゃらないのかしら?

「そうよ、私たちには圧倒的なブレインが足りないのよ! 私立候補していい?」

「お嬢様はダメです」

「ルクレシア様がですか……えっと…………」

「そうですね、婚約者見つけられていませんし」

「それはあなたもでしょ!」

 とにかく作戦を考える参謀が必要よね。ですが心当たりがありませんわ。
  
 大親友のレティシア様は確か才女でありましたが、彼女を戦場に引っ張り出すわけにはいきませんわよね。
  
 それとも、来てくださるのかしら?

 お兄様は? いえ、今はジバジデオ王国に向かっていらっしゃるのでしたよね。
  
 お義姉様は私よりチェスが弱い方ですし、ダメよね。

 どっかにコロッと頭のいい方落ちていませんのでしょうか? 報酬はその…………マリアで! ハッ!? マリアに先を越されるところでした。
  
 勿論、マリアにも幸せになってもらいたいので何かあればすぐにお手伝いするつもりはあるのですが……あら? そういえば先ほどストレートに恨まれましたわね。これは手伝う価値なしね。

「仕方ありません。しばらくエレナにお任せします」

「……私ですか?」

「この辺りの地理に詳しく、私たちの中で一番頭が良さそうだからです」

「それはまた……お嬢様らしい適当さですね」

 適当で結構! とりあえず参謀っていたらかっこいいじゃない!
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