ポンコツ公爵令嬢は変人たちから愛されている

大鳳葵生

文字の大きさ
60 / 102
第3章 ポンコツしかできないこと

16話 外交都市ルバスラーク奪還作戦

しおりを挟む
 グレイ様の生誕祭まで後124日となった朝。王都に向けて手紙を出し、更にその馬が帰ってきても良い頃でしょうか。
  
 はたしてオルガお義姉様は来てくださるのでしょうか? いえ、必ず来ますよね。なんならぶっ叩かれる自信もありますわ。
  
「僕のルクレシア!!」

 けたたましい声。小鳥のさえずりにしてはやかましすぎますわ。
  
「けたたましいですわお義姉様」

 そこにいたのは手紙で来てくださいと頼んだオルガお義姉様でした。いくらなんでも早すぎませんか?

「あー、いたいたそこにいたんだね。叩くからおしりこっちに向けて」

「え? 嫌ですよ?」

「脱がして直接叩かれたいみたいだね。みんなの前が良いかな?」

「えと……? 素直に叩かれても良いのですが、その私のお部屋で二人きりでお願いできますでしょうか?」

「うんうん。やっぱり僕の義妹いもうとは可愛いなぁ」

 ある意味強敵ねオルガお義姉様。ですが、今回の作戦はどうしてもオルガお義姉様にも手伝ってもらいたいのですわ。
  
「私からの手紙読まれましたよね?」

「うん、わかってる。君に似たこの容姿を有効活用できるね。でもそれよりもお義姉ちゃんを置いていった理由《わけ》を教えて欲しいな」

 理由ですか? いえ、それは一刻も早く出発をしようと思ったからとかそういうの通じる人じゃありませんよね。
  
「正直、お義姉様にお話したら、無理やりでも監禁されると思っていましたわ」

「正解」

「えぇ……では、何故今回協力してくださるのでしょうか?」

 私がそう問いかけますと、お義姉様は少々だんまりになってしまいましたわ。
  
「今回、すぐに戦争を終わらせようと思ったのは僕も一緒さ。だから君の手伝いをしようと思う。君が戦場をナダル領から変えたいというのであれば、それは構わない。その後はどうするんだい?」

「デークルーガ帝国に乗り込みますわ。直接ユリエ様にあって説得します。或いは彼女のユリエ教を叩き潰しますわ」

「……今回は命の危険はない相手だ。存分にやりたまえ。ただし、お義姉ちゃんは絶対に手伝うからね。あとデークルーガ帝国に乗り込んだあとの予定が一切決まってなさそうだけど……まあ、いいか」

「では皆を集めましょう。作戦会議です」

 作戦はこうです。私、オルガお義姉様、それから後ろ姿だけを見せることになるのが女装したヨハンネスとエレナ。
  
 この4人でルクレシア・ボレアリス・ベッケンシュタインを名乗ります。
  
 第七騎士団がルバスラークで交戦している最中に私を名乗る者が各々戦力分散してルバスラークからデークルーガ兵を分散していきます。
  
 勿論、各自にはそれぞれ護衛を用意しますわ。
  
 私の所には、マルッティが護衛につきます。第一騎士団副団長の実力を見せて頂きましょう。
  
 オルガお義姉様の所には、メルヒオール様ですね。メルヒオール様は役職持ちの騎士様ではございませんが、オルガお義姉様自身も戦えるので大丈夫でしょう。
  
 ヨハンネスの所には、ジェスカを配置。ここは喧嘩しなければ良いのですが。実力的には問題なしよね?
  
 エレナの所には、マリアとエミリアさん。女性チームですか。少々羨ましいですね。戦力がマリアだけなのが少々不安ですが、エミリアさんが上手くアシストしてくれると信じましょう。
  
 四手に分かれた私達で、上手く兵力を分散している間に、第七騎士団にはルバスラークを取り戻して貰い、あわよくば最前線を国境まで引き下げて貰いますわ。
  
「チーム分けに不満があっても聞きませんからね。さてと、ではそろそろ向かいましょう……その前に皆にこれを使っていただきたいのですが」

 私が合図をすると、エレナが4枚の布を取り出しましたわ。そこにはベッケンシュタイン家の紋章が描かれています。
  
「お義姉様がナダル領に向かってきている間にルイーセ様に用意して頂きましたわ。これで敵兵が遠目で見てもベッケンシュタイン家に関係していることがわかりますわ」

「あからさますぎるぞ。罠っぽくねえか? 引っかかるんだろうな?」

「そうね。わかるわジェスカ。でもね、可能性があるなら調べるべきだと思いません? 少人数であろうと、兵力を削れることができれば成功なのよ。まさかデークルーガ兵も4か所別々の場所で同時にベッケンシュタイン家の紋章を掲げた馬車が現れるとは思いませんでしょう」

 ですので必ず食いつきますわ。せめて後ろ姿だけあるいは私そっくりのお義姉様の姿さえ見せればなおさらです。
  
 私本人の姿を現すとしたら一番戦力を削ぎたいポイントですね。
  
  主戦場が良いかしら? そうね、そうしましょう。そういえば第七騎士団の他にも騎士団が前線に来ているのよね。どちらだったかしら?
  
「では皆さま! 作戦が完了次第こちらに戻ってくること! ルイーセ様は申し訳ありませんが引き続きこちらに残ってくださいますでしょうか?」

「そうですよね。ついてくるとは言いましたが、足手まといになりたい訳ではございません。必ず帰ってきてください」

「その約束って何回すればいいのかしら? でもそうね。私は必ず帰ってきて欲しい女よね」

 さてと、まずはルバスラーク奪還作戦開始よ!
  
「さあ行きますわよ!」

「畏まりました」「了解です」「わかったわい」「了解しましたわ」「あいよ!」「仰せのままに」「お義姉ちゃん頑張っちゃうぞ!」「はぁはぁご命令。お姉様からのご命令」

「では私はこちらで皆様のことをお待ちしておりますね」

 みんなの了解の返事……了解の返事? とルイーセ様のお言葉を聞き各自用意して頂いた馬車に乗り込みましたわ。
  
「よろしく頼みますねマルッティ」

 私の護衛はマルッティのみ。従って御者はナダル家の使用人をお借りしました。マルッティが交戦している間に逃げる必要があるかもしれませんものね。

「ああ、構わんが嬢ちゃんのとこが一番護衛を多くするべきではなかったのか?

「あーそれね。平気よ最終兵器もあるから」

「最終兵器?」

「内緒よ」

「まあ嬢ちゃんが平気っつうならそれで構わんのだがなぁ」

 不思議そうにしているマルッティ。それもそうでしょうね。本当は最終兵器など御座いませんもの。
  
 これはあくまでマルッティが私を気に掛ける必要がなく戦えるための言葉なのですからただのハッタリですね。
  
「まあいいわ。儂の仕事は変わらんからな」

「その意気ですわ」

 会話が普通すぎますわ。もしかして私が置いてきた日常ってここにあったりしますの?
  
 って違う違う! 今は日常を取り戻すための戦いをしている最中なのよ! 普通の会話が成立しすぎまして一瞬ここが日常とか思ってしまうところでしたわ。
  
「嬢ちゃんそろそろじゃないか?」

「ええ、そうね」

 段々聞こえてくる男たちの掛け声に、私は馬車の窓から顔を出しましたわ。
  
 ルバスラーク中央門。現状デークルーガ兵の最大拠点はここで間違いないそうです。
  
「アルデマグラ公国の騎士団の方々に見つからない様に目立つ位置に移動しましょう」

「あいよ。使用人殿あちらの丘の上まで気付かれない様に移動してくれんか」

 マルッティが御者さんに指示をした場所は確かに見晴らしも良くなおかつ敵兵が追いかけるには少々時間がかかりそうな場所でしたわ。
  
 馬車で逃げるんですもの。騎兵に追いつかれる想定でいないといけませんよね。
  
 そして敵兵をある程度まで引き付けたらマルッティに撃退して貰いましょう。もし無理でも私の中だけでは次の手段がありますしね。
  
「行くわよマルッティ作戦開始おどりましょう
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

処理中です...