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第3章 ポンコツしかできないこと
16話 外交都市ルバスラーク奪還作戦
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グレイ様の生誕祭まで後124日となった朝。王都に向けて手紙を出し、更にその馬が帰ってきても良い頃でしょうか。
はたしてオルガお義姉様は来てくださるのでしょうか? いえ、必ず来ますよね。なんならぶっ叩かれる自信もありますわ。
「僕のルクレシア!!」
けたたましい声。小鳥のさえずりにしてはやかましすぎますわ。
「けたたましいですわお義姉様」
そこにいたのは手紙で来てくださいと頼んだオルガお義姉様でした。いくらなんでも早すぎませんか?
「あー、いたいたそこにいたんだね。叩くからおしりこっちに向けて」
「え? 嫌ですよ?」
「脱がして直接叩かれたいみたいだね。みんなの前が良いかな?」
「えと……? 素直に叩かれても良いのですが、その私のお部屋で二人きりでお願いできますでしょうか?」
「うんうん。やっぱり僕の義妹は可愛いなぁ」
ある意味強敵ねオルガお義姉様。ですが、今回の作戦はどうしてもオルガお義姉様にも手伝ってもらいたいのですわ。
「私からの手紙読まれましたよね?」
「うん、わかってる。君に似たこの容姿を有効活用できるね。でもそれよりもお義姉ちゃんを置いていった理由《わけ》を教えて欲しいな」
理由ですか? いえ、それは一刻も早く出発をしようと思ったからとかそういうの通じる人じゃありませんよね。
「正直、お義姉様にお話したら、無理やりでも監禁されると思っていましたわ」
「正解」
「えぇ……では、何故今回協力してくださるのでしょうか?」
私がそう問いかけますと、お義姉様は少々だんまりになってしまいましたわ。
「今回、すぐに戦争を終わらせようと思ったのは僕も一緒さ。だから君の手伝いをしようと思う。君が戦場をナダル領から変えたいというのであれば、それは構わない。その後はどうするんだい?」
「デークルーガ帝国に乗り込みますわ。直接ユリエ様にあって説得します。或いは彼女のユリエ教を叩き潰しますわ」
「……今回は命の危険はない相手だ。存分にやりたまえ。ただし、お義姉ちゃんは絶対に手伝うからね。あとデークルーガ帝国に乗り込んだあとの予定が一切決まってなさそうだけど……まあ、いいか」
「では皆を集めましょう。作戦会議です」
作戦はこうです。私、オルガお義姉様、それから後ろ姿だけを見せることになるのが女装したヨハンネスとエレナ。
この4人でルクレシア・ボレアリス・ベッケンシュタインを名乗ります。
第七騎士団がルバスラークで交戦している最中に私を名乗る者が各々戦力分散してルバスラークからデークルーガ兵を分散していきます。
勿論、各自にはそれぞれ護衛を用意しますわ。
私の所には、マルッティが護衛につきます。第一騎士団副団長の実力を見せて頂きましょう。
オルガお義姉様の所には、メルヒオール様ですね。メルヒオール様は役職持ちの騎士様ではございませんが、オルガお義姉様自身も戦えるので大丈夫でしょう。
ヨハンネスの所には、ジェスカを配置。ここは喧嘩しなければ良いのですが。実力的には問題なしよね?
エレナの所には、マリアとエミリアさん。女性チームですか。少々羨ましいですね。戦力がマリアだけなのが少々不安ですが、エミリアさんが上手くアシストしてくれると信じましょう。
四手に分かれた私達で、上手く兵力を分散している間に、第七騎士団にはルバスラークを取り戻して貰い、あわよくば最前線を国境まで引き下げて貰いますわ。
「チーム分けに不満があっても聞きませんからね。さてと、ではそろそろ向かいましょう……その前に皆にこれを使っていただきたいのですが」
私が合図をすると、エレナが4枚の布を取り出しましたわ。そこにはベッケンシュタイン家の紋章が描かれています。
「お義姉様がナダル領に向かってきている間にルイーセ様に用意して頂きましたわ。これで敵兵が遠目で見てもベッケンシュタイン家に関係していることがわかりますわ」
「あからさますぎるぞ。罠っぽくねえか? 引っかかるんだろうな?」
「そうね。わかるわジェスカ。でもね、可能性があるなら調べるべきだと思いません? 少人数であろうと、兵力を削れることができれば成功なのよ。まさかデークルーガ兵も4か所別々の場所で同時にベッケンシュタイン家の紋章を掲げた馬車が現れるとは思いませんでしょう」
ですので必ず食いつきますわ。せめて後ろ姿だけあるいは私そっくりのお義姉様の姿さえ見せればなおさらです。
私本人の姿を現すとしたら一番戦力を削ぎたいポイントですね。
主戦場が良いかしら? そうね、そうしましょう。そういえば第七騎士団の他にも騎士団が前線に来ているのよね。どちらだったかしら?
「では皆さま! 作戦が完了次第こちらに戻ってくること! ルイーセ様は申し訳ありませんが引き続きこちらに残ってくださいますでしょうか?」
「そうですよね。ついてくるとは言いましたが、足手まといになりたい訳ではございません。必ず帰ってきてください」
「その約束って何回すればいいのかしら? でもそうね。私は必ず帰ってきて欲しい女よね」
さてと、まずはルバスラーク奪還作戦開始よ!
「さあ行きますわよ!」
「畏まりました」「了解です」「わかったわい」「了解しましたわ」「あいよ!」「仰せのままに」「お義姉ちゃん頑張っちゃうぞ!」「はぁはぁご命令。お姉様からのご命令」
「では私はこちらで皆様のことをお待ちしておりますね」
みんなの了解の返事……了解の返事? とルイーセ様のお言葉を聞き各自用意して頂いた馬車に乗り込みましたわ。
「よろしく頼みますねマルッティ」
私の護衛はマルッティのみ。従って御者はナダル家の使用人をお借りしました。マルッティが交戦している間に逃げる必要があるかもしれませんものね。
「ああ、構わんが嬢ちゃんのとこが一番護衛を多くするべきではなかったのか?
「あーそれね。平気よ最終兵器もあるから」
「最終兵器?」
「内緒よ」
「まあ嬢ちゃんが平気っつうならそれで構わんのだがなぁ」
不思議そうにしているマルッティ。それもそうでしょうね。本当は最終兵器など御座いませんもの。
これはあくまでマルッティが私を気に掛ける必要がなく戦えるための言葉なのですからただのハッタリですね。
「まあいいわ。儂の仕事は変わらんからな」
「その意気ですわ」
会話が普通すぎますわ。もしかして私が置いてきた日常ってここにあったりしますの?
って違う違う! 今は日常を取り戻すための戦いをしている最中なのよ! 普通の会話が成立しすぎまして一瞬ここが日常とか思ってしまうところでしたわ。
「嬢ちゃんそろそろじゃないか?」
「ええ、そうね」
段々聞こえてくる男たちの掛け声に、私は馬車の窓から顔を出しましたわ。
ルバスラーク中央門。現状デークルーガ兵の最大拠点はここで間違いないそうです。
「アルデマグラ公国の騎士団の方々に見つからない様に目立つ位置に移動しましょう」
「あいよ。使用人殿あちらの丘の上まで気付かれない様に移動してくれんか」
マルッティが御者さんに指示をした場所は確かに見晴らしも良くなおかつ敵兵が追いかけるには少々時間がかかりそうな場所でしたわ。
馬車で逃げるんですもの。騎兵に追いつかれる想定でいないといけませんよね。
そして敵兵をある程度まで引き付けたらマルッティに撃退して貰いましょう。もし無理でも私の中だけでは次の手段がありますしね。
「行くわよマルッティ作戦開始」
はたしてオルガお義姉様は来てくださるのでしょうか? いえ、必ず来ますよね。なんならぶっ叩かれる自信もありますわ。
「僕のルクレシア!!」
けたたましい声。小鳥のさえずりにしてはやかましすぎますわ。
「けたたましいですわお義姉様」
そこにいたのは手紙で来てくださいと頼んだオルガお義姉様でした。いくらなんでも早すぎませんか?
「あー、いたいたそこにいたんだね。叩くからおしりこっちに向けて」
「え? 嫌ですよ?」
「脱がして直接叩かれたいみたいだね。みんなの前が良いかな?」
「えと……? 素直に叩かれても良いのですが、その私のお部屋で二人きりでお願いできますでしょうか?」
「うんうん。やっぱり僕の義妹は可愛いなぁ」
ある意味強敵ねオルガお義姉様。ですが、今回の作戦はどうしてもオルガお義姉様にも手伝ってもらいたいのですわ。
「私からの手紙読まれましたよね?」
「うん、わかってる。君に似たこの容姿を有効活用できるね。でもそれよりもお義姉ちゃんを置いていった理由《わけ》を教えて欲しいな」
理由ですか? いえ、それは一刻も早く出発をしようと思ったからとかそういうの通じる人じゃありませんよね。
「正直、お義姉様にお話したら、無理やりでも監禁されると思っていましたわ」
「正解」
「えぇ……では、何故今回協力してくださるのでしょうか?」
私がそう問いかけますと、お義姉様は少々だんまりになってしまいましたわ。
「今回、すぐに戦争を終わらせようと思ったのは僕も一緒さ。だから君の手伝いをしようと思う。君が戦場をナダル領から変えたいというのであれば、それは構わない。その後はどうするんだい?」
「デークルーガ帝国に乗り込みますわ。直接ユリエ様にあって説得します。或いは彼女のユリエ教を叩き潰しますわ」
「……今回は命の危険はない相手だ。存分にやりたまえ。ただし、お義姉ちゃんは絶対に手伝うからね。あとデークルーガ帝国に乗り込んだあとの予定が一切決まってなさそうだけど……まあ、いいか」
「では皆を集めましょう。作戦会議です」
作戦はこうです。私、オルガお義姉様、それから後ろ姿だけを見せることになるのが女装したヨハンネスとエレナ。
この4人でルクレシア・ボレアリス・ベッケンシュタインを名乗ります。
第七騎士団がルバスラークで交戦している最中に私を名乗る者が各々戦力分散してルバスラークからデークルーガ兵を分散していきます。
勿論、各自にはそれぞれ護衛を用意しますわ。
私の所には、マルッティが護衛につきます。第一騎士団副団長の実力を見せて頂きましょう。
オルガお義姉様の所には、メルヒオール様ですね。メルヒオール様は役職持ちの騎士様ではございませんが、オルガお義姉様自身も戦えるので大丈夫でしょう。
ヨハンネスの所には、ジェスカを配置。ここは喧嘩しなければ良いのですが。実力的には問題なしよね?
エレナの所には、マリアとエミリアさん。女性チームですか。少々羨ましいですね。戦力がマリアだけなのが少々不安ですが、エミリアさんが上手くアシストしてくれると信じましょう。
四手に分かれた私達で、上手く兵力を分散している間に、第七騎士団にはルバスラークを取り戻して貰い、あわよくば最前線を国境まで引き下げて貰いますわ。
「チーム分けに不満があっても聞きませんからね。さてと、ではそろそろ向かいましょう……その前に皆にこれを使っていただきたいのですが」
私が合図をすると、エレナが4枚の布を取り出しましたわ。そこにはベッケンシュタイン家の紋章が描かれています。
「お義姉様がナダル領に向かってきている間にルイーセ様に用意して頂きましたわ。これで敵兵が遠目で見てもベッケンシュタイン家に関係していることがわかりますわ」
「あからさますぎるぞ。罠っぽくねえか? 引っかかるんだろうな?」
「そうね。わかるわジェスカ。でもね、可能性があるなら調べるべきだと思いません? 少人数であろうと、兵力を削れることができれば成功なのよ。まさかデークルーガ兵も4か所別々の場所で同時にベッケンシュタイン家の紋章を掲げた馬車が現れるとは思いませんでしょう」
ですので必ず食いつきますわ。せめて後ろ姿だけあるいは私そっくりのお義姉様の姿さえ見せればなおさらです。
私本人の姿を現すとしたら一番戦力を削ぎたいポイントですね。
主戦場が良いかしら? そうね、そうしましょう。そういえば第七騎士団の他にも騎士団が前線に来ているのよね。どちらだったかしら?
「では皆さま! 作戦が完了次第こちらに戻ってくること! ルイーセ様は申し訳ありませんが引き続きこちらに残ってくださいますでしょうか?」
「そうですよね。ついてくるとは言いましたが、足手まといになりたい訳ではございません。必ず帰ってきてください」
「その約束って何回すればいいのかしら? でもそうね。私は必ず帰ってきて欲しい女よね」
さてと、まずはルバスラーク奪還作戦開始よ!
「さあ行きますわよ!」
「畏まりました」「了解です」「わかったわい」「了解しましたわ」「あいよ!」「仰せのままに」「お義姉ちゃん頑張っちゃうぞ!」「はぁはぁご命令。お姉様からのご命令」
「では私はこちらで皆様のことをお待ちしておりますね」
みんなの了解の返事……了解の返事? とルイーセ様のお言葉を聞き各自用意して頂いた馬車に乗り込みましたわ。
「よろしく頼みますねマルッティ」
私の護衛はマルッティのみ。従って御者はナダル家の使用人をお借りしました。マルッティが交戦している間に逃げる必要があるかもしれませんものね。
「ああ、構わんが嬢ちゃんのとこが一番護衛を多くするべきではなかったのか?
「あーそれね。平気よ最終兵器もあるから」
「最終兵器?」
「内緒よ」
「まあ嬢ちゃんが平気っつうならそれで構わんのだがなぁ」
不思議そうにしているマルッティ。それもそうでしょうね。本当は最終兵器など御座いませんもの。
これはあくまでマルッティが私を気に掛ける必要がなく戦えるための言葉なのですからただのハッタリですね。
「まあいいわ。儂の仕事は変わらんからな」
「その意気ですわ」
会話が普通すぎますわ。もしかして私が置いてきた日常ってここにあったりしますの?
って違う違う! 今は日常を取り戻すための戦いをしている最中なのよ! 普通の会話が成立しすぎまして一瞬ここが日常とか思ってしまうところでしたわ。
「嬢ちゃんそろそろじゃないか?」
「ええ、そうね」
段々聞こえてくる男たちの掛け声に、私は馬車の窓から顔を出しましたわ。
ルバスラーク中央門。現状デークルーガ兵の最大拠点はここで間違いないそうです。
「アルデマグラ公国の騎士団の方々に見つからない様に目立つ位置に移動しましょう」
「あいよ。使用人殿あちらの丘の上まで気付かれない様に移動してくれんか」
マルッティが御者さんに指示をした場所は確かに見晴らしも良くなおかつ敵兵が追いかけるには少々時間がかかりそうな場所でしたわ。
馬車で逃げるんですもの。騎兵に追いつかれる想定でいないといけませんよね。
そして敵兵をある程度まで引き付けたらマルッティに撃退して貰いましょう。もし無理でも私の中だけでは次の手段がありますしね。
「行くわよマルッティ作戦開始」
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