ポンコツ公爵令嬢は変人たちから愛されている

大鳳葵生

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第後章 公爵令嬢をやめること

後日譚1話 告白の日の夜

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 グレイ様に好きと伝えた私は、嬉しくて嬉しくて嬉しくて……グレイ様に飛びついてしまいました。

「おっとっと」

 グレイ様は私の行動に驚きつつも、ちゃんと受け止めてくださりました。

 お互いが目をあわせますと、私を強く抱きしめてくださりました。

「あっあの? ふふ、表情が見えないと思いますが大丈夫ですか?」

「君の真っ赤な顔を見つめたら、僕も釣られそうになったから……今だけはかっこつけたいんだ。それとも僕の顔をもっと見ていたかったかい?」

「そうですね。そうかもしれませんが、生涯隣りにある御尊顔ですので。グレイ様のしたいようにしてください」

 私がそう答えますと、グレイ様の抱きしめる力がより一層強まりました。

 今ここに私達がいるのは、十六年前からの人々の善意と悪意が折り重なって素敵なことと、あってはならないことがあったからこそ、今に繋がっている。

「グレイ様、ここまでくることに色々なことがありましたね」

「そうだね。でも君は気にしなくていいんだよ?」

「いえ、気にします。公妃になるのですから。私みたいな人生を歩む人間がもう現れない様にすべきです」

「……何もしなくても現れなさそうな気がするけど、そうだね」

 グレイ様のお言葉でくすっと笑いそうになってしまいました。確かにここまで悲惨な女。誰かが入念に仕込まないと出来上がりませんね。

「ふふ。でもダメ。前例わたしがいるから現れないとは言わせません」

「はいはい」

 夕日が沈み切ってしまいますと、完全に明かりを失ってしまいます。ですのでその前に屋敷に戻ることにしました。

 屋敷までの道のり、危なそうなところもすべてグレイ様が手を引いてくださり、無事一回だけ転び屋敷に帰ることができました。

「結局転んじゃったね」

「あれはグレイ様がわざと揺らして!」

「可愛くて」

「それ! それ言ったら許されると思っていませんか?」

「いいよ許されなくて」

「そうですか。……じゃあ許しませんのでサロンまで運んでください」

 私が両手を広げ待ち構えますと、グレイ様は私のことを少しだけ見つめてにこりと笑いました。

「そうだね……待ち構えている君も可愛いけど、さっきみたいに君の方から来て欲しいな」

「……今度はじっくり真っ赤な御尊顔を拝見致しますわよ?」

「いいよ。君といるといずれ見せることになるんだ」

 そういわれ、私はグレイ様に飛びつきますと、グレイ様はさっと私の体を支え、横抱きに抱えてくださりました。

 グレイ様のお顔は、耳まで真っ赤になり、私もそれにつられ、笑みをこぼしました。

「幸せです」

「顔を見ればわかるよ」

「でも声に出したい」

「ルー、可愛すぎ」

「なっ……と、当然です!」

 抱き着く手が離れることはなく、サロンまでたどり着いてしまいましたのに、椅子に腰をおろすグレイ様とグレイ様に抱き着いたままの私。

「エレナ君あたりがそろそろ夕食の時間だと伝えに来るんじゃないかな?」

「やだ。こんな姿見せられません」

「じゃあ離れちゃうのかい?」

「……いじわる」

 そしてサロンの隅でエレナが私達をにこにことした表情で見ていました。

「エレナ!?」

「いえ、お構いなく……おめでとうございますお嬢様」

「……ありがとうございます」

 エレナは夕食のお時間ですとだけ言いサロンから退室しました。私はグレイ様の上から降り、二人で食堂まで歩きました。

 夕食がお祝い用の豪華な食事でしたは、グレイ様がいらっしゃるからでしょう。

 食事を終え、一休みする前にグレイ様にお声がけしました。

「グレイ様、私の湯浴みが終わりましたら、私の部屋まで来てくださりますか? お時間は使用人の方が呼びに行きますので」

「いいよ。わざわざ呼び出すなんて楽しみだな」

 そういわれ一度私達は別行動をとることになりました。早速エレナや屋敷中からメイドを呼び私の湯浴みが始まりましたわ。

「お嬢様、まさかですが」

「そのまさかよ」

「畏まりました」

 エレナが集まったメイド達に指示を出し、メイド達は次々に私の体を綺麗にするために準備を始めました。

 いつも丁寧な彼女たちが、いつも以上に真剣に働いてくださっています。

 すべての準備が整い、部屋を見渡します。日中の間に頼んで置いたことが無駄にならなくて済みました。

 部屋の扉がノックされてあの人の声が耳に届きます。

「ルー、いいかな?」

「どうぞ、お待ちしておりました」

 部屋に入ったグレイ様は私のすぐそばまで真っすぐ歩み寄ってきます。

「随分模様替えしたね……」

「ええ、お昼の間にお願いしておいたの。これからは実家に帰る際、あまりにも女の子らしい部屋だと落ち着かない人がいるかもしれませんから」

 そう、この部屋は元々以上に広かった上に、部屋は女の子の部屋。ピンクや白。フリルに人形。花柄のものもありましたが、デザインを一新し、清楚な雰囲気に模様替えして頂きました。

「ベッドの大きさ。少し大きくなったね」

「そんな場所注目しないでください!」

「これはそういう意味じゃなかったのかな?」

「口に出して言わないでください! そういう意味ですけど!」

 また顔中が朱くなることがわかります。

 本当にこの人は卑怯な男です。

「でもこの部屋の立地は問題ないのかい? いずれエリオットの息子や娘も好条件の部屋に住み始めるだろう?」

「ああ、それがですね。お義姉様。つまり現ベッケンシュタイン公爵夫人がルクレシアは僕の妹なんだからいい部屋を残すべきだと仰ってくださり、部屋は三番目にいい部屋であるこの部屋を残して頂きました」

 ちなみに二番目にいい部屋は、いずれ産まれてくるであろうベッケンシュタイン家の世継ぎになる人にお譲りするそうです。

 部屋の話はひとまず置いておきましょう。どうでもいいことです。

「この部屋はつまり君と……僕の部屋って認識でいいのかな?」

 グレイ様の質問に対し、すぐに笑顔で返事するものでした。が、顔は真っ赤になり、口は固まり。首は固定されてしまうくらい緊張してしまい、グレイ様に目を合わせられない状態となってしまいました。

 私の返事がないことを、グレイ様は肯定ととらえ部屋中を歩き回る。

「あまり使いたくないな。だって君が実家に帰るって表現がちょっとね。ま旅行の際に宿泊先が決まっているのはいいことなのかな?」

「だからここは私とあなたの部屋です」

「あ、口に出しちゃったね。そうだね毎回二人で訪れようね」

 そう言ったグレイ様は私を抱締め頭をずっと撫でてきました。卑怯者です。こうされると、照れ隠しすることもできません。

 精一杯の照れ隠しとして赤くなった顔を隠すためにグレイ様の胸に顔をうずめますと、グレイ様に抱きかかえられ、ベッドに連れていかれてしまいました。

「あの……」

「大丈夫、今日は抱きしめることとこれだけしかしないよ」

 そういわれて額や頬ではなく、唇と唇がしばらくふれあいました。

「……おやすみ」

「ええ、おやすみなさい」

 正直、今日は幸せすぎてこれ以上何かされていたらおかしくなっていたでしょう。助かったのやら残念なのか。でも、この暖かさは私だけのものです。
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