1 / 228
1話 悪役令嬢の娘に転生しました
しおりを挟む
ある日、目が覚めたら、知らない天井。知らない部屋。知らないメイド服を着た中年女性たち。何もかもが初めてみる空間で、私は目が覚めた。
もしかして異世界転生?
私は異世界転生なのではと真っ先に疑った。私はいわゆるそういった知識に偏った人間である。
異世界転生とは、自分が生きていた世界とは別の世界、別の人間に生まれ変わること。
若年層向けのフィクションでよく見られる今まで住んでいた世界に、なんらかの理由で前世の記憶を持ち続けたまま他の異世界で別の人として生を受けることである。
私の前世での名前は中垣深雪《なかがきみゆき》。もう少しでアラサーに突入する社会人だったはずだ。
死んだ記憶もないけど、現実としか思えないこの感覚。やはり異世界転生だと思っておこう。てゆうか、思いたい。アラサーな上に年齢イコール彼氏なしの人生がリセットされたのだから。
だが、今私についている両腕はまぎれもなく子供。いや、これは赤子?
私はとある疑問を感じ叫びだしそうになった。
「ああああああああああああああ!?」
声が出ない。いや、出てはいる。出したい音が出せないのである。てゆうか、歯がない。
うわこれ。赤ちゃんから転生させられているよ。それにしても異世界転生かぁ。やったことある乙女ゲーとか、漫画や小説の中だったりするのかな?
フィクションの異世界転生では、ありえないことにゲームの世界に飛ばされるなどがあり、私もそれを少しばかり期待している。
私が大声を出したせいで、中年女性のメイド達が大慌てであやし始める。ごめんね。
「先ほどの叫び声は何かしら?」
「申し訳御座いません。ご息女様が突然泣き出してしまいまして」
あー、違う違う。泣いてないんだよ。声を出したかったんだよほんとごめんね。喋っている言語は日本語じゃないけど通じるな。おなかの中で覚えたのだろうか。転生特典とか貰えたのなら、説明くらい欲しいものだわ。
私がいた部屋に一人の女性が乱入する。金色の長い綺麗な髪に深紅の瞳。吊り上がった目も見覚えがある。乙女ゲーム『魔法学園ワンダーオーブ』に登場する悪役令嬢、エリザベート・ジョルジュ・クレメンティエフにそっくりだ。
でもこの人は推定年齢二十歳前半。エリザベートは作中では十四から十六歳のはず。そうか、私はよくある異世界転生をしてよくある悪役令嬢になったんだ!
今目の前にいる悪役令嬢エリザベートそっくりな女性もきっとエリザベートのお母様。つまり私がエリザベートな訳だ!!
よぉし、バッドエンドを回避して幸せになってやろうじゃない!
悪役令嬢とはいえ、公爵令嬢。しかも悪名広まる前の赤子からスタートなんてラッキーじゃない! バッドエンド回避どころからハッピーエンドも狙えるわ。
「エリザベート!」
部屋には更に男の人が入ってきました。男も容姿端麗でエリザベートのお母さんよりも少し薄い色の金髪をした美男子と言える。青い瞳は深い海の色をしていた。
誰でしょうか。私を呼んだと言うことはお父様かな? お若いなぁ。エリザベートの両親は乙女ゲームに登場しないから顔や名前を見たところでわからないしどうでもいいか。お父様だろうし呼ばれたんだから愛想ふりまこうっと!
「あーー!」
「何よ、ジェラール。貴方が娘のところに顔を出すなんて珍しいじゃない」
そっか、お父様はジェラールっていうのか。てゆうか、呼ばれたのは私なのになんでお母様が返事を?
「俺はむしろ君が俺たちの子供の所に来ている方が珍しいと思ったよ。今日は大人しいね。良いことでもあったのかい?」
夫婦仲は険悪ってほどでもないけど、ラブラブって感じでもなさそう。てゆうか、ジェラール? それってメインヒーローと同じ名前なんじゃ…………
私はお父様をじーっと見つめます。その髪の色も瞳の色もまぎれもなくメインヒーローの第一王子ジェラールそっくりでした。
この男がジェラールということは、あの女は悪役令嬢エリザベート・ジョルジュ・クレメンティエフ!?
ジェラールとエリザベートが結婚するバッドエンドは確かにある。
つまり私は、ヒロインが敗北した乙女ゲームの世界で、悪役令嬢の娘として転生したっていうの!?
いや、それはまずい。なぜなら、この乙女ゲームのバッドエンドは、最強の魔法使いであるヒロインが王国に復讐を果たし、自らの命を落とすまでがエピローグなのだから。
十数年後に戻ってくる最強魔法使い相手に王国崩壊エピローグを回避しないと!?
もしかして異世界転生?
私は異世界転生なのではと真っ先に疑った。私はいわゆるそういった知識に偏った人間である。
異世界転生とは、自分が生きていた世界とは別の世界、別の人間に生まれ変わること。
若年層向けのフィクションでよく見られる今まで住んでいた世界に、なんらかの理由で前世の記憶を持ち続けたまま他の異世界で別の人として生を受けることである。
私の前世での名前は中垣深雪《なかがきみゆき》。もう少しでアラサーに突入する社会人だったはずだ。
死んだ記憶もないけど、現実としか思えないこの感覚。やはり異世界転生だと思っておこう。てゆうか、思いたい。アラサーな上に年齢イコール彼氏なしの人生がリセットされたのだから。
だが、今私についている両腕はまぎれもなく子供。いや、これは赤子?
私はとある疑問を感じ叫びだしそうになった。
「ああああああああああああああ!?」
声が出ない。いや、出てはいる。出したい音が出せないのである。てゆうか、歯がない。
うわこれ。赤ちゃんから転生させられているよ。それにしても異世界転生かぁ。やったことある乙女ゲーとか、漫画や小説の中だったりするのかな?
フィクションの異世界転生では、ありえないことにゲームの世界に飛ばされるなどがあり、私もそれを少しばかり期待している。
私が大声を出したせいで、中年女性のメイド達が大慌てであやし始める。ごめんね。
「先ほどの叫び声は何かしら?」
「申し訳御座いません。ご息女様が突然泣き出してしまいまして」
あー、違う違う。泣いてないんだよ。声を出したかったんだよほんとごめんね。喋っている言語は日本語じゃないけど通じるな。おなかの中で覚えたのだろうか。転生特典とか貰えたのなら、説明くらい欲しいものだわ。
私がいた部屋に一人の女性が乱入する。金色の長い綺麗な髪に深紅の瞳。吊り上がった目も見覚えがある。乙女ゲーム『魔法学園ワンダーオーブ』に登場する悪役令嬢、エリザベート・ジョルジュ・クレメンティエフにそっくりだ。
でもこの人は推定年齢二十歳前半。エリザベートは作中では十四から十六歳のはず。そうか、私はよくある異世界転生をしてよくある悪役令嬢になったんだ!
今目の前にいる悪役令嬢エリザベートそっくりな女性もきっとエリザベートのお母様。つまり私がエリザベートな訳だ!!
よぉし、バッドエンドを回避して幸せになってやろうじゃない!
悪役令嬢とはいえ、公爵令嬢。しかも悪名広まる前の赤子からスタートなんてラッキーじゃない! バッドエンド回避どころからハッピーエンドも狙えるわ。
「エリザベート!」
部屋には更に男の人が入ってきました。男も容姿端麗でエリザベートのお母さんよりも少し薄い色の金髪をした美男子と言える。青い瞳は深い海の色をしていた。
誰でしょうか。私を呼んだと言うことはお父様かな? お若いなぁ。エリザベートの両親は乙女ゲームに登場しないから顔や名前を見たところでわからないしどうでもいいか。お父様だろうし呼ばれたんだから愛想ふりまこうっと!
「あーー!」
「何よ、ジェラール。貴方が娘のところに顔を出すなんて珍しいじゃない」
そっか、お父様はジェラールっていうのか。てゆうか、呼ばれたのは私なのになんでお母様が返事を?
「俺はむしろ君が俺たちの子供の所に来ている方が珍しいと思ったよ。今日は大人しいね。良いことでもあったのかい?」
夫婦仲は険悪ってほどでもないけど、ラブラブって感じでもなさそう。てゆうか、ジェラール? それってメインヒーローと同じ名前なんじゃ…………
私はお父様をじーっと見つめます。その髪の色も瞳の色もまぎれもなくメインヒーローの第一王子ジェラールそっくりでした。
この男がジェラールということは、あの女は悪役令嬢エリザベート・ジョルジュ・クレメンティエフ!?
ジェラールとエリザベートが結婚するバッドエンドは確かにある。
つまり私は、ヒロインが敗北した乙女ゲームの世界で、悪役令嬢の娘として転生したっていうの!?
いや、それはまずい。なぜなら、この乙女ゲームのバッドエンドは、最強の魔法使いであるヒロインが王国に復讐を果たし、自らの命を落とすまでがエピローグなのだから。
十数年後に戻ってくる最強魔法使い相手に王国崩壊エピローグを回避しないと!?
0
あなたにおすすめの小説
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる