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64話 悪魔祓い
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セシルと二人で馬車に乗り込む。なんだか久しぶりに感じますね。セシルもニコニコしながら私を見つめています。そんなに嬉しいのでしょうか。まあ、確かに私も赤ちゃんの頃から面倒を見ていた弟と一緒におでかけだなんて言われたら嬉しくてあんな感じになりそうですけど。
大聖堂までは王宮から馬車で数十分ほど。あっという間に目的地にたどり着き、私達は早速大聖堂の中に向かっていきます。
教会の入り口まで行くと、大司教ミカエルとその息子であり、私を呼びつけたジョアサンがそこに待っていました。
「おやおや姫様お待ちしていたよ。お昼は何が食べたいかな? 僕が作っておこう。何、君のリクエストにこたえるつもりは微塵もないから、あらゆる珍味を申し付けると良い」
ミカエル。攻略キャラ時代以上にぶん殴りたくなる冗談ね。そんなミカエルも慣れたジョアサンは無表情のまま私を見つめます。しかし、それはいつもの警戒した表情などでなく、もっとこう、意外そうと言いますか、どちらかと言えば奇妙なものを見ている。そういう印象でした。
「何かしら?」
「い、いえ? …………なんでも」
歯切れが悪いわね。ミカエルはすぐにエプロンをつけてどこかに行ってしまいました。司祭服のままエプロンつけるのね。
「セシルは待機していて頂戴。私とジョアサン。二人で話がしたいの」
「畏まりました。でしたら私は教会内で待機しておりますので、御用が終わり次第お声がけください」
ニコニコ顔のセシルが一瞬ですんとした表情になり、業務的に喋り始めます。ごめんなさいね。姫である私に悪魔が憑いているだなんて、冗談だったとしても、見当違いだったとしてもどちらにしても不敬。つまり、人に聞かせるつもりはない。
私とジョアサンは個室に移動し、向かい合う様に椅子に座る。
「それでどうやって悪魔祓いをするっていうのかしら?」
「そのことなんだけど…………君は憑き物を自由に他所に追いやれるのか?」
「は?」
彼が何を言っているか、私には見当もつきません。憑き物を自由に追い出せるわけないでしょう? そんなことができましたら、貴方ともっと早く仲良くなれているじゃない。
個室で数秒間見つめ合う私達。ジョアサンも何がなんだかわからないという様子。それは私のセリフです。九年間ずっと人に黒い靄のようなものがついていると指摘しておきながら、いざ払って貰いに来てみれば、自由に追い出せますか? ふざけるんじゃないわよ!!
「ちょっと待って? 今はどう見えて普段はどう見えているか絵に描いて見せてくれる?」
「絵に描けばいいのか?」
そう言ったジョアサンは白い紙にさらさらっと人型っぽものを書き始めます。なんかクッキーで人作るみたいなデザインね。これが私か。…………痩せよう。
「まずこれが今の姫様」
「……柔らかそうね」
「……え!? あ、いや…………そりゅあ、姫様は柔らかいと思いますよ」
クリスティーンは決意した。絶対に痩せよう!
そしてジョアサンはもう一つ、またまた丸いシルエットの人型を書き始めます。その周囲に黒い何かが漂う様に書き記し始めました。何よこれ。確かに黒い何かが漂っているみたい。それが気体のように見えたから靄と表現したのね。
「それで今日は見えないのね」
「心当たりはないのかい?」
「ある訳ないでしょ?」
でももう見えないってことは、今後は安心して仲良くできるって事なのかしら。それならそれで好都合な気もしますし、ポジティブに捉えましょうか。
その日は、ミカエル大司教が作ったお昼ご飯を頂いてから王宮に戻りました。
しかし、週明けの登校日。ジョアサンに挨拶をしたところ、彼はやっぱり私を避けてどこかに行ってしまいました。あれ?
大聖堂までは王宮から馬車で数十分ほど。あっという間に目的地にたどり着き、私達は早速大聖堂の中に向かっていきます。
教会の入り口まで行くと、大司教ミカエルとその息子であり、私を呼びつけたジョアサンがそこに待っていました。
「おやおや姫様お待ちしていたよ。お昼は何が食べたいかな? 僕が作っておこう。何、君のリクエストにこたえるつもりは微塵もないから、あらゆる珍味を申し付けると良い」
ミカエル。攻略キャラ時代以上にぶん殴りたくなる冗談ね。そんなミカエルも慣れたジョアサンは無表情のまま私を見つめます。しかし、それはいつもの警戒した表情などでなく、もっとこう、意外そうと言いますか、どちらかと言えば奇妙なものを見ている。そういう印象でした。
「何かしら?」
「い、いえ? …………なんでも」
歯切れが悪いわね。ミカエルはすぐにエプロンをつけてどこかに行ってしまいました。司祭服のままエプロンつけるのね。
「セシルは待機していて頂戴。私とジョアサン。二人で話がしたいの」
「畏まりました。でしたら私は教会内で待機しておりますので、御用が終わり次第お声がけください」
ニコニコ顔のセシルが一瞬ですんとした表情になり、業務的に喋り始めます。ごめんなさいね。姫である私に悪魔が憑いているだなんて、冗談だったとしても、見当違いだったとしてもどちらにしても不敬。つまり、人に聞かせるつもりはない。
私とジョアサンは個室に移動し、向かい合う様に椅子に座る。
「それでどうやって悪魔祓いをするっていうのかしら?」
「そのことなんだけど…………君は憑き物を自由に他所に追いやれるのか?」
「は?」
彼が何を言っているか、私には見当もつきません。憑き物を自由に追い出せるわけないでしょう? そんなことができましたら、貴方ともっと早く仲良くなれているじゃない。
個室で数秒間見つめ合う私達。ジョアサンも何がなんだかわからないという様子。それは私のセリフです。九年間ずっと人に黒い靄のようなものがついていると指摘しておきながら、いざ払って貰いに来てみれば、自由に追い出せますか? ふざけるんじゃないわよ!!
「ちょっと待って? 今はどう見えて普段はどう見えているか絵に描いて見せてくれる?」
「絵に描けばいいのか?」
そう言ったジョアサンは白い紙にさらさらっと人型っぽものを書き始めます。なんかクッキーで人作るみたいなデザインね。これが私か。…………痩せよう。
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「……柔らかそうね」
「……え!? あ、いや…………そりゅあ、姫様は柔らかいと思いますよ」
クリスティーンは決意した。絶対に痩せよう!
そしてジョアサンはもう一つ、またまた丸いシルエットの人型を書き始めます。その周囲に黒い何かが漂う様に書き記し始めました。何よこれ。確かに黒い何かが漂っているみたい。それが気体のように見えたから靄と表現したのね。
「それで今日は見えないのね」
「心当たりはないのかい?」
「ある訳ないでしょ?」
でももう見えないってことは、今後は安心して仲良くできるって事なのかしら。それならそれで好都合な気もしますし、ポジティブに捉えましょうか。
その日は、ミカエル大司教が作ったお昼ご飯を頂いてから王宮に戻りました。
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