BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

文字の大きさ
67 / 228

66話 ろくに質問も答えてはくれない

しおりを挟む
 私に近づいてくる大司教ミカエル。彼は普段と違い穏やかな雰囲気ではない。

「クリスティーン姫。君はいつから自分の周りにその靄があったと思う?」

 いつから? そんなもの生まれつきとかでしょうか。だって少なくとも五歳のころには憑いていたのでしょう。

 てゆうか、この話し方ですと、彼は元から見えていた上で、何も違和感を感じさせずに私に接してきていたと言うことで間違いなさそうですね。

 ジョアサンもミカエルの喋り方でそれを察した様子。

「わからないわ。少なくとも五歳のころにはあったはずですが、生まれつきかもとも思っています」

「君にその靄が見えるようになったのは、正しく五歳の時からさ。それまでは遠目で何度か見てきた君に、そんな禍々しい”モノ”はついていなかったよ」

 そんな禍々しい”物”ね。

「父上。ではなぜ王に進言しなかったのですか?」

 ミカエルの隣にいたジョアサンが、ミカエルの方に顔を向け声を上げます。

「いやぁ。禍々しくても害はない。そう判断しただけさ。むしろ下手なことをすれば機嫌を悪くさせてしまう。だからもう帰りなさいクリスティーン姫」

 機嫌を悪くさせるってまるで生物のように言うのね。それに今日はあくまでミカエルから見て黒い靄が見えるのか見えないのかを聞くだけでしたし、それが分かっただけでも良しとしましょう。

「わかりました。それではまた。失礼します」

 私が頭を下げて教会から出ていき、馬車で待機していたスザンヌが私に気付き、御者を起こします。

「お待たせ」

「いえ、姫様に待たされるのも仕事ですので。存分に申し訳なく思ってください」

「無感情になったわ。行きましょう」

 馬車が教会から離れていく。教会の方を見ると、ジョアサンがこちらをじーっと見ていた。いつの間に出てきていたのかしら。

 もうじき夕暮れ。魔法学園の授業は三時ごろに終わる為、ちょうど一時間と言ったところかしら。私とスザンヌの顔はオレンジ色に染まります。

「スザンヌ、ちょっと聞きたいのだけど」

「何でしょうか?」

「もし私に悪魔が憑いていたら、貴女はどうする?」

「この機会にたくさん殴ります」

「…………その時はお願い」

 私が彼女の顔を見ないで窓の外を眺めながらそういうと、私の肩に何かが乗りました。

「……容赦しません」

「そうして頂戴」

 私は無礼にも主人の肩に頭を乗せるメイドを抱き寄せ、手が少し震える。この揺れは馬車の揺れのせいね。だから、私はちっとも怖いだなんて思っていない。

 それにミカエルは害はないって言っていましたし、現に九年間何も起きなかった。ですが、これから何も起きないだなんて保証はない。まだ駄目。私はまだ生きる。生きていたい。生きなきゃいけない。この国を護る為には不安要素は撤廃しましょう。

 その日の夜。夕食も終わり、スザンヌも自室に下がった頃。私は自室のベランダから王都を眺めていました。しばらくしない内に後ろから人の気配を感じます。

 いいえ、人の気配だったらどれほど良かったのでしょうね。

「こんばんは」

「随分あっさり受け入れているな」

 後ろから聞こえる男の声。本来、夜な夜なひとりぼっちだった部屋から、異性の声が聞こえれば、こんなにすんなり受け入れるような挨拶はしないでしょう。ですが、彼はどうせそこにいるものだと思って、私は声をかけました。

「ブランク、貴方は何者なのかしら?」

「魔術師だ。それ以上でもそれ以下でもない」

 それ以上だから質問しているのよ。でもいいわ。本題はこちら。

「貴方って消えていても、聖職者には見えているのかしら?」

 私の質問に対して、ブランクは何も答えない。何故? それは聞かれたら困ることだというのでしょうか。

「見えるのは聖職者だけとは限らないけど、少なくとも昼間の親子には見えていたんだろうね」

 その言葉で確信した。確信せざるを得なかった。

「どうして私に付きまとうの?」

 私に憑いて回っていた黒い靄の正体。それはこいつ自身だ。たまに私から離れることもあるからこそ、見えない時もある。こないだ教会に行く時だってわざといなくなったんだ。そして今日もミカエルが機嫌が悪くなるとも言いました。

「どうして教会が嫌いなの?」

「…………今は関係ないだろ? それよりワンダーオーブを手に入れるんじゃなかったのか?」

「それには他人の協力が必要なのよ。今のターゲットはそうねジョアサン。さっきの男の子よ。だから貴方が正体を明かさないなら今はそれでいいわ。でもしばらく私に付きまとわないで」

「……わかった」

 そう言った彼は、いつも通り黒い靄となり、その場から一瞬で消え去ってしまいました。そういえば消える瞬間の黒い靄は私にも見えるのね。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが

水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。 王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。 数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。 記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。 リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが…… ◆表紙はGirly Drop様からお借りしました ◇小説家になろうにも掲載しています

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

処理中です...