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181話 鋭いのか鈍いのか
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ブラン王国から狼車で数日。私とスザンヌそれからセシルを乗せた馬車に乗る護衛騎士は、帝国の騎士でした。
馬車は違いますが、オリバーも一緒に帝国に向かっています。ローワンは忙しい身ですので、王国で用事を済ませたらとっとと他の場所に向かってしまいました。
国境の関所を超えたのは何日前だったかしら。私はもうラヌダ帝国のとある大きな都市で一泊する準備をしていました。
まあ、準備をするのはスザンヌや帝国の方々なんですけどね。
私が帝国に向かっていることを知っている人間は王家の人間だけ。学園には半年間の休校とだけ通知されているみたいです。
スザンヌとセシルを連れていけたことだけでもよしとしましょう。
本来、セシルはお母様のメイドですが、今回はお母様の命令で私についてくることになりました。正直、ほとんどが知らない人ばかりですので、嬉しい提案でした。
「クリスティーン様。オリバー様がお呼びです」
宿泊先のお屋敷でくつろいでいた時、護衛の騎士が扉越しに声をかけてきます。私は返事をしてすぐに向かうことにしました。
オリバーの部屋は私のすぐ隣。私は彼の部屋に向かい、セシルとスザンヌは部屋に待機することになりました。
オリバーの部屋に入ると、にこりと笑うオリバーとそのすぐそばに立っていた老紳士。オリバーが学園で連れていたことの多い付き人の男性です。
私が入ると同時に老紳士は退室してしまいました。
「追い出す必要はなかったのでは?」
「勝手に出ていっただけですよ」
「そう」
沈黙。呼び出したのであれば、用件くらい自分から言って欲しいものです。
しかし、オリバーは私に座るように促すだけで、何かを語ろうとはしない。居心地の悪くなった私は、自分から口を開きました。
「用件は?」
「色々なことがありすぎて、君は俺に確かめたいことを忘れているのではないかと思いましてね」
「…………?」
「本当に忘れていましたか」
そう言ったオリバーは、服の中から緑色の宝珠を取り出します。私はそれに気付き目を見開きました。
「ワンダーオーブ!」
「これ…………大事なものですよね?」
「返してくれるの?」
「それはできません。これには力がある。今はまだ俺が持っておきましょう」
「どうして?」
「確か以前。馬上槍大会の時に君に戦って欲しくない人間が徒党を組みましたよね。俺はあそこに参加しなかった。なぜだと思いますか?」
「私なんてどうでもよかったのでしょう?」
「違いますよ。あそこに集まった人間では、アリゼ・ド・アナンには勝てない。あれは正真正銘の化け物です。子供たちでは勝算がないのに、自分たちでなんとかしようとする。できると思っている。実に痛々しい!」
「!?」
「それは君もだクリスティーン」
「急に馴れ馴れしい呼び方をするのね」
「いずれ妻になるのですから。愛称の方が良かったですか? クリス」
「やめて!」
私がつい叫んでしまうと、オリバーはフっと笑う。余裕そうな雰囲気がむかつきますが、実際彼は余裕なのでしょう。
それよりも、彼は現在のアリゼを知っているかのように喋りました。アリゼが王国を攻める前だったら、今の私でも勝てるかもしれない。
――子供たちでは勝算がないのに、自分たちでなんとかしようとする。できると思っている。実に痛々しい!
オリバーのつい先ほどの言葉。確かにそうだったのかもしれない。私は私なら何とかできると思っていた。
思い込んでいたのかもしれない。だって私はまるで漫画やアニメ、小説の主人公のような気でいたから。
異世界転生して。
王家に産まれて。
恵まれた容姿を受け継いで。
七種の魔法を使いこなせて。
優秀な仲間に囲まれて。
ついには目標であったワンダーオーブもあと一個まで集めることができた。
いつの間にか、なんでもできる主人公だと、自己暗示をしていたのかもしれない。
私は勇猛果敢ではない。ただの無鉄砲だ。
オリバーは帝国から精鋭部隊を集め、ワンダーオーブも上手に采配するつもりなのでしょう。
私はどうだ。全部自分で抱えて、一対一で戦おうとしていた。素直に馬鹿だ。現実が見れていない。
仲間たちだってそう。私の友人は優秀なことは間違いありませんが、それは同年代でのお話。大人たちには劣っています。
自分だけで……子供たちだけで……仲間だけで……それができるのはいつも紙面の世界や、画面の向こうのお話だったというのに、私はいつの間にか自分がそちら側の住人だと、誤認していたのだ。
オリバーはけして私たちを見下しているわけではありません。純粋に実力を測った結果を口に出していて、その上で私達が戦うべきではないと言っているのです。
「貴方がそこまでして王国を護りたい理由は何?」
「帝国の同盟国ですから。お情けみたいなものです。」
「そんな強がりいいわ! アリゼによって王国が滅びたら、そのまま土地を根こそぎ奪えばいいじゃない! それをしないってことはね、貴方もあの地を護りたいと言っている証拠よ!」
同盟国として交友関係になるよりも、領土にしてしまった方が帝国としても都合がいいはず。
「……貴女は愚かだが、鋭い。いや、ここで理由がわからないのは鈍いというべきか。貴女が妃になったその時、答えを教えましょう」
その後も二人で話し合いましたが、特に進展はなく、夕食の時間に入りました。
夕食は屋敷の主などもご一緒だったため、ブラン王国の恥さらしにならないように気を付けながら食事や会話を楽しみました。
堅苦しい会話は、あまり楽しめませんでしたけどね。
馬車は違いますが、オリバーも一緒に帝国に向かっています。ローワンは忙しい身ですので、王国で用事を済ませたらとっとと他の場所に向かってしまいました。
国境の関所を超えたのは何日前だったかしら。私はもうラヌダ帝国のとある大きな都市で一泊する準備をしていました。
まあ、準備をするのはスザンヌや帝国の方々なんですけどね。
私が帝国に向かっていることを知っている人間は王家の人間だけ。学園には半年間の休校とだけ通知されているみたいです。
スザンヌとセシルを連れていけたことだけでもよしとしましょう。
本来、セシルはお母様のメイドですが、今回はお母様の命令で私についてくることになりました。正直、ほとんどが知らない人ばかりですので、嬉しい提案でした。
「クリスティーン様。オリバー様がお呼びです」
宿泊先のお屋敷でくつろいでいた時、護衛の騎士が扉越しに声をかけてきます。私は返事をしてすぐに向かうことにしました。
オリバーの部屋は私のすぐ隣。私は彼の部屋に向かい、セシルとスザンヌは部屋に待機することになりました。
オリバーの部屋に入ると、にこりと笑うオリバーとそのすぐそばに立っていた老紳士。オリバーが学園で連れていたことの多い付き人の男性です。
私が入ると同時に老紳士は退室してしまいました。
「追い出す必要はなかったのでは?」
「勝手に出ていっただけですよ」
「そう」
沈黙。呼び出したのであれば、用件くらい自分から言って欲しいものです。
しかし、オリバーは私に座るように促すだけで、何かを語ろうとはしない。居心地の悪くなった私は、自分から口を開きました。
「用件は?」
「色々なことがありすぎて、君は俺に確かめたいことを忘れているのではないかと思いましてね」
「…………?」
「本当に忘れていましたか」
そう言ったオリバーは、服の中から緑色の宝珠を取り出します。私はそれに気付き目を見開きました。
「ワンダーオーブ!」
「これ…………大事なものですよね?」
「返してくれるの?」
「それはできません。これには力がある。今はまだ俺が持っておきましょう」
「どうして?」
「確か以前。馬上槍大会の時に君に戦って欲しくない人間が徒党を組みましたよね。俺はあそこに参加しなかった。なぜだと思いますか?」
「私なんてどうでもよかったのでしょう?」
「違いますよ。あそこに集まった人間では、アリゼ・ド・アナンには勝てない。あれは正真正銘の化け物です。子供たちでは勝算がないのに、自分たちでなんとかしようとする。できると思っている。実に痛々しい!」
「!?」
「それは君もだクリスティーン」
「急に馴れ馴れしい呼び方をするのね」
「いずれ妻になるのですから。愛称の方が良かったですか? クリス」
「やめて!」
私がつい叫んでしまうと、オリバーはフっと笑う。余裕そうな雰囲気がむかつきますが、実際彼は余裕なのでしょう。
それよりも、彼は現在のアリゼを知っているかのように喋りました。アリゼが王国を攻める前だったら、今の私でも勝てるかもしれない。
――子供たちでは勝算がないのに、自分たちでなんとかしようとする。できると思っている。実に痛々しい!
オリバーのつい先ほどの言葉。確かにそうだったのかもしれない。私は私なら何とかできると思っていた。
思い込んでいたのかもしれない。だって私はまるで漫画やアニメ、小説の主人公のような気でいたから。
異世界転生して。
王家に産まれて。
恵まれた容姿を受け継いで。
七種の魔法を使いこなせて。
優秀な仲間に囲まれて。
ついには目標であったワンダーオーブもあと一個まで集めることができた。
いつの間にか、なんでもできる主人公だと、自己暗示をしていたのかもしれない。
私は勇猛果敢ではない。ただの無鉄砲だ。
オリバーは帝国から精鋭部隊を集め、ワンダーオーブも上手に采配するつもりなのでしょう。
私はどうだ。全部自分で抱えて、一対一で戦おうとしていた。素直に馬鹿だ。現実が見れていない。
仲間たちだってそう。私の友人は優秀なことは間違いありませんが、それは同年代でのお話。大人たちには劣っています。
自分だけで……子供たちだけで……仲間だけで……それができるのはいつも紙面の世界や、画面の向こうのお話だったというのに、私はいつの間にか自分がそちら側の住人だと、誤認していたのだ。
オリバーはけして私たちを見下しているわけではありません。純粋に実力を測った結果を口に出していて、その上で私達が戦うべきではないと言っているのです。
「貴方がそこまでして王国を護りたい理由は何?」
「帝国の同盟国ですから。お情けみたいなものです。」
「そんな強がりいいわ! アリゼによって王国が滅びたら、そのまま土地を根こそぎ奪えばいいじゃない! それをしないってことはね、貴方もあの地を護りたいと言っている証拠よ!」
同盟国として交友関係になるよりも、領土にしてしまった方が帝国としても都合がいいはず。
「……貴女は愚かだが、鋭い。いや、ここで理由がわからないのは鈍いというべきか。貴女が妃になったその時、答えを教えましょう」
その後も二人で話し合いましたが、特に進展はなく、夕食の時間に入りました。
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堅苦しい会話は、あまり楽しめませんでしたけどね。
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