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第一章 離島生活
6話 ワイルドな聖女候補生、ステファニア・デ・コストナー
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昼食を終えた私達は、特にすることもなく、辺りを散歩する者、本を読む者、数人で集まり、故郷の話をする者などがいました。
私は興味本位でとある人の後をピコピコついて行くと、彼女はあからさまな尾行をしてくる私の方に視線を向けて声をかけてきました。
燃えるように赤いロングストレートの髪が揺れ、こちらに振り返ります。桃色の可愛らしい色の瞳とは対照的な鋭い目つき。
ステフお姉ちゃんの視線が、私をしっかりとロックオンしました。
「どうしたクリスチナ。遊んで欲しいのか?」
「えへへ、よろしくお願いしまぁす」
「そこはもっとこう…………いや、お前に普通を求めるのは違うな」
完全にペットを構うように私に声をかけたステフお姉ちゃんでしたが、私が嬉しそうに乗ってきて苦笑しています。
ぎゅうと抱き着くと、暑苦しいと引きはがされてしまいましたが、ステフお姉ちゃんもお暇でしたのでしょう。私がぴったりついてくることに何も言いませんでした。
「クリスチナ…………お前って花は好きか?」
「お花ですか? ステフお姉ちゃんほどではありませんが大好きですよ!」
「そうか! そうか! クリスチナは花が大好きか!」
ステフお姉ちゃんはあからさまに表情が明るくなります。あと、私は一言も大好きとは言っていませんが、どうやらそのように通じたようです。
その場合、ステフお姉ちゃんは大好き以上ということでしょうか。まあ、そんなとこにしておきましょう。
ステフお姉ちゃんの揺れる髪とスカートを眺めながら彼女の後ろをついて歩きますと、教会の裏にまだ何も植えれらていない花壇がありました。
「園芸の経験はあるか?」
「未経験ですけど、まあ大丈夫です。私って天才なんですよ!」
「へぇ。汚れるとか言って嫌がらないか心配したよ」
「修道服が紺色なのは汚れが目立ちにくいからですよ。汚れを嫌って素手を通す服ではないのです」
「お! 良い度胸じゃねぇか! シスターからは許可をもらっているから早速作業しようぜ!」
よく見れば近くには既に花の苗が置かれています。赤いハイビスカスの苗です。
「なんだかわかるか?」
「えー? まだ花も咲いてないじゃないですか。葉っぱの形だけじゃわかりませんよ」
ステフお姉ちゃんが私に苗を見せつけて、質問してきます。私はそれが何かわからないと答えると、ステフお姉ちゃんは「咲いたらわかるぜ。私もまだ色はわからないけどな」と笑いかけてきます。
「楽しみにしとけよ」と笑う彼女の表情に、私は笑顔で「はい!」と答えました。
二人で苗を丁寧に植え始めます。手や顔はいつの間にか土で汚れてしまいましたが、全く気にしません。
土のついた修道服は目立ちはしませんでしたが、最後によく払ってから教会に戻りました。
「お前って農家だったりするのか? それとも花屋とか?」
「え? 何でですか?」
「いや、汚れるってのに、土を触る仕草に抵抗がなくてな。最初の言葉はハッタリか何かかと思ったけど、本当に気にしていないんだなって」
「そう言うことでしたか…………違いますよ。農家でも花屋でもないです…………土をいじって花壇を触ったのは今日が初めてです」
「ふーん、そうか」
ステフお姉ちゃんはそれ以上追及してくることはしませんでした。何かを察したのか、特に興味がなかったのか。
私には彼女の考えまで読むことができませんので、そのどちらかはわかりませんでした。
夕食の鐘の音を聞き、私達は並んで食堂に向かいます。食堂の席は基本自由。あとから来た人が座りやすいように奥から座るように指示されます。
教会裏の花壇から食堂まではそう遠くありませんので、私達はそれなりに奥の席に座ります。
食事は聖女候補生とシスター、護衛の騎士と神父でそれぞれ別々で行いますが、特に理由はないそうです。
理由がないのでしたら、ヴィンセント様とご一緒したいところでした。
それでも他の聖女候補生やシスターと肩を並べて食事をするヴィンセント様を見なくて済むと考えれば、まあ妥協点ですね。
夕食はトランショワール寸前と思えるほどカチカチのパンと、それを浸して柔らかくする用のトマトとお豆のスープ。
それからメインディッシュと思われる皿の上に置かれたのは海カメレオンの肉の塊です。切り身になっていて一見するだけでは魚類のように見えなくもありません。
「どっちだと思う?」
ステフお姉ちゃんがメインディッシュの皿を眺めながら私に質問をします。この場合の質問はおそらく、これは魚かトカゲかという質問でしょう。
「そうですね…………? トカゲ?」
「そうだ。こいつはおそらくこの島の近辺に生息する海カメレオンだな」
「うみかめれおん」
私にはこれが美味しいという事実だけは理解しているのですが、やはり初めて口に運ぶには勇気が必要でした。
全員で食前の祈りをしてからいざ実食。私はナイフを海カメレオンのお肉に刺してそれを口に運ぼうとしましたが、しばらくしないうちに一度グラスに手を伸ばしシードルを流し込みます。
もう一度ナイフを握ってお肉に刺し、また手を離してパンをスープに浸して一口かじります。
このパンは固すぎますので、手でちぎることはできませんでした。
ステフお姉ちゃんが海カメレオンの肉を指でつまんで口に運びました。
「ギトつきませんか?」
「すぐに洗うなり、拭うなりするから平気だ」
そう言ってテーブルクロスの端で指先を拭います。いえ、ナイフで刺して口に運べば…………レンジャーって食事でナイフを使わないのでしょうか。
他の聖女候補生を見れば、食事の左方は千差万別。そこには明らかに育ちが出ていました。誰がどんな育ちをしてきたか、手に取るようにわかります。
ヴィーちゃんやモニカお姉ちゃんにフランさんは綺麗な食事をしています。ナイフを上手に使い、極力手を汚さない。
手の動きも最低限で食べかすやスープが跳ねてテーブルを汚すことが想像ができない食べ方です。
それと対照的なのはステフお姉ちゃんとサーシャさん。ステフお姉ちゃんはまるで久しぶりの食事かのように手を動かしてナイフを使わずに食事をします。
サーシャさんはナイフで刺して一口で肉を口に運びます。大口を開ける豪快な食事の仕方ですが、テーブルが汚れている印象はありません。
私は双方の中間くらいの綺麗な食事を心がけている庶民という印象を持たれる食事の仕方をしていました。
私は意を決して海カメレオンのお肉を切り分け、口に運びます。繊維は歯で簡単に断つことができ、とても柔らかく、脂身もくどくなくて口の中でとろけてしまいました。
「え? え?」
「旨かっただろ? この辺の海では湧くように生息しているから今後も食事に出てくると思うぜ」
私は初めて食べた海カメレオンのお肉をじっくり味わいながら食事をしました。
私は興味本位でとある人の後をピコピコついて行くと、彼女はあからさまな尾行をしてくる私の方に視線を向けて声をかけてきました。
燃えるように赤いロングストレートの髪が揺れ、こちらに振り返ります。桃色の可愛らしい色の瞳とは対照的な鋭い目つき。
ステフお姉ちゃんの視線が、私をしっかりとロックオンしました。
「どうしたクリスチナ。遊んで欲しいのか?」
「えへへ、よろしくお願いしまぁす」
「そこはもっとこう…………いや、お前に普通を求めるのは違うな」
完全にペットを構うように私に声をかけたステフお姉ちゃんでしたが、私が嬉しそうに乗ってきて苦笑しています。
ぎゅうと抱き着くと、暑苦しいと引きはがされてしまいましたが、ステフお姉ちゃんもお暇でしたのでしょう。私がぴったりついてくることに何も言いませんでした。
「クリスチナ…………お前って花は好きか?」
「お花ですか? ステフお姉ちゃんほどではありませんが大好きですよ!」
「そうか! そうか! クリスチナは花が大好きか!」
ステフお姉ちゃんはあからさまに表情が明るくなります。あと、私は一言も大好きとは言っていませんが、どうやらそのように通じたようです。
その場合、ステフお姉ちゃんは大好き以上ということでしょうか。まあ、そんなとこにしておきましょう。
ステフお姉ちゃんの揺れる髪とスカートを眺めながら彼女の後ろをついて歩きますと、教会の裏にまだ何も植えれらていない花壇がありました。
「園芸の経験はあるか?」
「未経験ですけど、まあ大丈夫です。私って天才なんですよ!」
「へぇ。汚れるとか言って嫌がらないか心配したよ」
「修道服が紺色なのは汚れが目立ちにくいからですよ。汚れを嫌って素手を通す服ではないのです」
「お! 良い度胸じゃねぇか! シスターからは許可をもらっているから早速作業しようぜ!」
よく見れば近くには既に花の苗が置かれています。赤いハイビスカスの苗です。
「なんだかわかるか?」
「えー? まだ花も咲いてないじゃないですか。葉っぱの形だけじゃわかりませんよ」
ステフお姉ちゃんが私に苗を見せつけて、質問してきます。私はそれが何かわからないと答えると、ステフお姉ちゃんは「咲いたらわかるぜ。私もまだ色はわからないけどな」と笑いかけてきます。
「楽しみにしとけよ」と笑う彼女の表情に、私は笑顔で「はい!」と答えました。
二人で苗を丁寧に植え始めます。手や顔はいつの間にか土で汚れてしまいましたが、全く気にしません。
土のついた修道服は目立ちはしませんでしたが、最後によく払ってから教会に戻りました。
「お前って農家だったりするのか? それとも花屋とか?」
「え? 何でですか?」
「いや、汚れるってのに、土を触る仕草に抵抗がなくてな。最初の言葉はハッタリか何かかと思ったけど、本当に気にしていないんだなって」
「そう言うことでしたか…………違いますよ。農家でも花屋でもないです…………土をいじって花壇を触ったのは今日が初めてです」
「ふーん、そうか」
ステフお姉ちゃんはそれ以上追及してくることはしませんでした。何かを察したのか、特に興味がなかったのか。
私には彼女の考えまで読むことができませんので、そのどちらかはわかりませんでした。
夕食の鐘の音を聞き、私達は並んで食堂に向かいます。食堂の席は基本自由。あとから来た人が座りやすいように奥から座るように指示されます。
教会裏の花壇から食堂まではそう遠くありませんので、私達はそれなりに奥の席に座ります。
食事は聖女候補生とシスター、護衛の騎士と神父でそれぞれ別々で行いますが、特に理由はないそうです。
理由がないのでしたら、ヴィンセント様とご一緒したいところでした。
それでも他の聖女候補生やシスターと肩を並べて食事をするヴィンセント様を見なくて済むと考えれば、まあ妥協点ですね。
夕食はトランショワール寸前と思えるほどカチカチのパンと、それを浸して柔らかくする用のトマトとお豆のスープ。
それからメインディッシュと思われる皿の上に置かれたのは海カメレオンの肉の塊です。切り身になっていて一見するだけでは魚類のように見えなくもありません。
「どっちだと思う?」
ステフお姉ちゃんがメインディッシュの皿を眺めながら私に質問をします。この場合の質問はおそらく、これは魚かトカゲかという質問でしょう。
「そうですね…………? トカゲ?」
「そうだ。こいつはおそらくこの島の近辺に生息する海カメレオンだな」
「うみかめれおん」
私にはこれが美味しいという事実だけは理解しているのですが、やはり初めて口に運ぶには勇気が必要でした。
全員で食前の祈りをしてからいざ実食。私はナイフを海カメレオンのお肉に刺してそれを口に運ぼうとしましたが、しばらくしないうちに一度グラスに手を伸ばしシードルを流し込みます。
もう一度ナイフを握ってお肉に刺し、また手を離してパンをスープに浸して一口かじります。
このパンは固すぎますので、手でちぎることはできませんでした。
ステフお姉ちゃんが海カメレオンの肉を指でつまんで口に運びました。
「ギトつきませんか?」
「すぐに洗うなり、拭うなりするから平気だ」
そう言ってテーブルクロスの端で指先を拭います。いえ、ナイフで刺して口に運べば…………レンジャーって食事でナイフを使わないのでしょうか。
他の聖女候補生を見れば、食事の左方は千差万別。そこには明らかに育ちが出ていました。誰がどんな育ちをしてきたか、手に取るようにわかります。
ヴィーちゃんやモニカお姉ちゃんにフランさんは綺麗な食事をしています。ナイフを上手に使い、極力手を汚さない。
手の動きも最低限で食べかすやスープが跳ねてテーブルを汚すことが想像ができない食べ方です。
それと対照的なのはステフお姉ちゃんとサーシャさん。ステフお姉ちゃんはまるで久しぶりの食事かのように手を動かしてナイフを使わずに食事をします。
サーシャさんはナイフで刺して一口で肉を口に運びます。大口を開ける豪快な食事の仕方ですが、テーブルが汚れている印象はありません。
私は双方の中間くらいの綺麗な食事を心がけている庶民という印象を持たれる食事の仕方をしていました。
私は意を決して海カメレオンのお肉を切り分け、口に運びます。繊維は歯で簡単に断つことができ、とても柔らかく、脂身もくどくなくて口の中でとろけてしまいました。
「え? え?」
「旨かっただろ? この辺の海では湧くように生息しているから今後も食事に出てくると思うぜ」
私は初めて食べた海カメレオンのお肉をじっくり味わいながら食事をしました。
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