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第3章 どうやらこんな日があってもいいようです。
3人で盟友
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「やばいやばいやばいやばいやばい!!!」
平和な町を1人の男が走り抜ける。
その名は白帝 英彦。
彼は汗を垂れ流し、息をきらしながらそれでも走るのを止めなかった。
「やばいやばいやばいバイトに遅れる。完全に遅刻だぁぁぁぁ!!」
どうやら男はバイトに遅れそうになったので走っているようだ。
通行人の間と間を走りながら通りすぎ、まっすぐにまっすぐにバイト先へと向かっている。
そんな彼の事を気にかける通行人はいない。
すれ違い様にチラッと見るだけでそれで終わり。
みんな、自分の事で精一杯なのだ。
「それでさ~。次はどこに行きたい?」
「えっとね~あれ? ねぇ…お兄様今走ってた人って……。」
2人の通行人を除いては…。
その後、
「すみません。遅れてしまいました時間まだ間に合ってますか?」
水曜日、付喪カフェに1人の女性が入ってくる。
妙義は勢いよくドアを開けると、汗を流しながら店内へ入ってきた。
すると、店内には英彦しかいない。
「あっ、シマッタ……。妙義さん。どうしたんですか今日は?」
「今日はバイトの日なので、その……もしかしてみなさん怒ってます?」
英彦の何か不思議な態度を疑問に思う妙義であったが、遂に英彦は口を開いた。
「いえ、みなさんはいません。今日は金曜日でも火曜日でもないです。」
「えっ!? また曜日を間違えた!?
あれ? じゃあなんで火曜日バイトリーダーの英彦もいるんだ?
まさか、お前も…?」
そう妙義が疑問に思った瞬間、英彦の顔色が変わってしまった。
「あー、いや~その……。」
恥ずかしそうな表情を浮かべて、赤面しながら必死に言い訳を考えている様子だ。
「それはね~英彦っちは日にちを間違えて来てしまったのだ。」
「それはね~英彦っちは日にちを間違えちゃったんだよ~。」
そう言って厨房の奥から現れたのは、背が小さい2人の男女。
年は中学生くらいだ。
少年の方は活発系のタイプだろうか。目立つ紫の瞳と白色の髪の毛の少年がパーカーを着こなしながら、ニッコリと笑みを浮かべている。
少女の方は癒し系タイプだろうか。きれいな黒色の髪に緑色の瞳がキラキラと輝いており、彼女もパーカーを着こなしながら、ニッコリと笑みを浮かべていた。
「誰…!?」
だが、妙義は2人の人物を知らない。
もちろん、2人も妙義とは会ったことがない。
なので、2人組の男女は妙義よりも先に自己紹介を始めた。
「我はマオだ。水曜日にバイトに入った新入りさ。」
「妾はヨーマです。お兄様と同じだから省略するね?」
「あっ、兄妹か。う~ん私は火曜日バイトリーダーである妙義だ。よろしく。」
3人は初見の相手に互いにお辞儀を行う。
そして、頭を上げて英彦との馴れ初めを彼らは話し始める。
「我達はね。英彦っちとは昔付喪神に襲われた時に助けてもらってからの仲なんだよ?」
「妾達との仲は1年間だけどね?」
「そうなのか? 英彦?」
「はい、明山さんと会う前に付喪神狩りをしていた頃…。襲われていた2人を助けてから、たまに仲良くしてもらってるんですよ。」
3人の頭の中に浮かぶのは初めて出会った日の事。
「今日は数ヵ月ぶりにこの町に来たら、彼がいたからね~。いろいろと話して、しばらくここでバイトさせて貰える事になったの。」
「そうそう。ヨーマが気づかなかったら、我も気づかずに通りすぎる所だったんだ。偉いなヨーマ。」
マオはそう言うとヨーマの頭を撫で始める。
「そうか、お前達仲がいいんだな。てっきり英彦には明山達以外の友達がいないかと思ってたよ。」
冗談混じりに笑いながら呟く妙義。
「うぅ……妙義さん。流石に僕にだって友達はいますよ。」
ちょっとショックを受けたのだろうか。
英彦は少し頬を膨らませて、妙義を睨み付ける。
「「そう我(妾)達は盟友なんだよ!!!」」
2人にそう言われて慰められる英彦を見ていると、妙義の目にはなんだかあの兄妹が輝かしく見栄始めた。
さて、開店しそうな時間帯となったので、兄妹は店長の手伝いをするために厨房へと戻っていった。
しばしの別れを噛み締めながら、曜日を間違えた2人組は客として椅子に座る。
「いい子だなあの2人組。」
「大人目線ですか?妙義さん。まぁ…僕もそう思いますけど。どうします? 客として席に座っているなら何か注文しなければいけませんが…。」
英彦はメニュー表を取り出しながら、じっくりと頼む料理を考えている。
本当は料理を食べに来たわけではない2人。
だが、妙義はたまには客側としてここに来るのもいいことだろうと思っている。
「じゃあ、前から食べてみたかった『死と生の理想郷パフェ』をいただこうかな。」
「それいいですね。僕もそれにしましょう。てか、なんですかねこの名前…。」
「さぁ? どこかの金曜日担当のバイト娘が考えたって聞くが、まぁ…名前なんてどうでもいいじゃないか。」
変な名前に興味が湧きつつも、英彦は注文をするために店員を呼ぶことにした。
「そうですね。すみません誰か…。」
「ヘイッ!! どうしたの?英彦っち。」
こちらへとやって来たのはマオ。
今回は彼が注文を受けとる係のようだ。
しかし、なんだか江戸っ子風な返事に疑問を感じながらも、英彦は注文を行う。
「死と生の理想郷パフェを2つください。」
「御意。死と生の理想郷パフェだね。」
「「御意??」」
謎の江戸時代風な返事にまた戸惑う妙義と英彦。
その様子を厨房から伺っていたヨーマは慌ててマオに注意を言ってくる。
「お兄様……昨日見てたテレビのSAMURAI(さむらい)将軍九十九道中の影響を受けてるよ~。」
「あっ、我ってばうっかりー。ごめんね死と生の理想郷パフェ2つ~。アハハハ~。」
頭を掻いて恥ずかしそうにしながら、厨房へと戻っていくマオ。
その様子を見ていた2人は、少し苦笑いをしてマオを見送った。
数分後…。
「はーい。お待たせしましたお客様。死と生の理想郷パフェだよ~。」
そう言いながらパフェを運んできたのはヨーマである。
彼女はニコニコしながら2人の元にパフェを運んできているのだが…。
「お待た………ッ!?」
なぜか地面に転がっていたバナナの皮を踏みつけてバランスを崩してしまう。
地面に倒れそうになる身体。
このままでは彼女の身体は床に倒れて、パフェは無駄になってしまう。
いや、それだけではなく彼女が怪我を負ってしまうかもしれないのだ。
英彦は彼女が床に倒れないように、手を伸ばそうとしたその時…。
突然、ヨーマとパフェが宙に浮かびだし、転ぶ前の状態に戻ってしまったのだ。
「ほっ…。」
ヨーマは何事も無かったようにパフェを2人の前に差し出した。
「「…!?」」
「あっ、言ってなかったかな?
私魔法が使えるの。」
驚く英彦と妙義にヨーマは少し照れくさそうに魔法が使えることを自慢する。
「そうか…久々に魔法を見たから驚いちゃったよ。」
「僕も驚きました。まさか、ヨーマさんが魔法を使えるなんて聞いてなかったので…。」
この国では魔法はなかなか使われなくなった過去の物として扱われているのだ。
なかなか、若い者が魔法を使うなんて聞くことがない。
「えへへ~。秘密にしてたんだけどね。
最近はこの国じゃ、魔法は使われないって聞いてたけど本当なんだね。
冒険者連盟も昔より廃れてたし…。」
ヨーマが恥ずかしそうに僕たちに返答していると、厨房からマオがひょっこりと顔を出す。
「おーいヨーマ。店長がお客があまりいないから、来るまで休んでて良いってさ。」
その言葉を聞いた瞬間、ヨーマは目をキラキラとさせる。
「ほんと? じゃあお兄様…妙義ちゃんに妾達の思出話でも聞かせてあげようよ。3人だけの秘密って言うのもかわいそうだよ。」
「そうだね。…というかなんでバナナの皮が落ちてるのさ?」
「さぁ? 気づいたら目の前にあったから転びそうになっちゃったよ。」
「もー、ヨーマは昔から運が悪いなー。」
「「ワハハハハハ!!!」」
いつもの事のように心配はしてないようで、またかと笑い出す兄妹。
運が悪いというレベルではないと思うのだが、いつもの事のように振る舞っている所から、日常茶飯事なのだろう。
だが、妙義と英彦には思う所があるようで、
その幸せそうな2人の兄妹を見て少し悲しそうになりながら、羨ましそうに眺めていた。
平和な町を1人の男が走り抜ける。
その名は白帝 英彦。
彼は汗を垂れ流し、息をきらしながらそれでも走るのを止めなかった。
「やばいやばいやばいバイトに遅れる。完全に遅刻だぁぁぁぁ!!」
どうやら男はバイトに遅れそうになったので走っているようだ。
通行人の間と間を走りながら通りすぎ、まっすぐにまっすぐにバイト先へと向かっている。
そんな彼の事を気にかける通行人はいない。
すれ違い様にチラッと見るだけでそれで終わり。
みんな、自分の事で精一杯なのだ。
「それでさ~。次はどこに行きたい?」
「えっとね~あれ? ねぇ…お兄様今走ってた人って……。」
2人の通行人を除いては…。
その後、
「すみません。遅れてしまいました時間まだ間に合ってますか?」
水曜日、付喪カフェに1人の女性が入ってくる。
妙義は勢いよくドアを開けると、汗を流しながら店内へ入ってきた。
すると、店内には英彦しかいない。
「あっ、シマッタ……。妙義さん。どうしたんですか今日は?」
「今日はバイトの日なので、その……もしかしてみなさん怒ってます?」
英彦の何か不思議な態度を疑問に思う妙義であったが、遂に英彦は口を開いた。
「いえ、みなさんはいません。今日は金曜日でも火曜日でもないです。」
「えっ!? また曜日を間違えた!?
あれ? じゃあなんで火曜日バイトリーダーの英彦もいるんだ?
まさか、お前も…?」
そう妙義が疑問に思った瞬間、英彦の顔色が変わってしまった。
「あー、いや~その……。」
恥ずかしそうな表情を浮かべて、赤面しながら必死に言い訳を考えている様子だ。
「それはね~英彦っちは日にちを間違えて来てしまったのだ。」
「それはね~英彦っちは日にちを間違えちゃったんだよ~。」
そう言って厨房の奥から現れたのは、背が小さい2人の男女。
年は中学生くらいだ。
少年の方は活発系のタイプだろうか。目立つ紫の瞳と白色の髪の毛の少年がパーカーを着こなしながら、ニッコリと笑みを浮かべている。
少女の方は癒し系タイプだろうか。きれいな黒色の髪に緑色の瞳がキラキラと輝いており、彼女もパーカーを着こなしながら、ニッコリと笑みを浮かべていた。
「誰…!?」
だが、妙義は2人の人物を知らない。
もちろん、2人も妙義とは会ったことがない。
なので、2人組の男女は妙義よりも先に自己紹介を始めた。
「我はマオだ。水曜日にバイトに入った新入りさ。」
「妾はヨーマです。お兄様と同じだから省略するね?」
「あっ、兄妹か。う~ん私は火曜日バイトリーダーである妙義だ。よろしく。」
3人は初見の相手に互いにお辞儀を行う。
そして、頭を上げて英彦との馴れ初めを彼らは話し始める。
「我達はね。英彦っちとは昔付喪神に襲われた時に助けてもらってからの仲なんだよ?」
「妾達との仲は1年間だけどね?」
「そうなのか? 英彦?」
「はい、明山さんと会う前に付喪神狩りをしていた頃…。襲われていた2人を助けてから、たまに仲良くしてもらってるんですよ。」
3人の頭の中に浮かぶのは初めて出会った日の事。
「今日は数ヵ月ぶりにこの町に来たら、彼がいたからね~。いろいろと話して、しばらくここでバイトさせて貰える事になったの。」
「そうそう。ヨーマが気づかなかったら、我も気づかずに通りすぎる所だったんだ。偉いなヨーマ。」
マオはそう言うとヨーマの頭を撫で始める。
「そうか、お前達仲がいいんだな。てっきり英彦には明山達以外の友達がいないかと思ってたよ。」
冗談混じりに笑いながら呟く妙義。
「うぅ……妙義さん。流石に僕にだって友達はいますよ。」
ちょっとショックを受けたのだろうか。
英彦は少し頬を膨らませて、妙義を睨み付ける。
「「そう我(妾)達は盟友なんだよ!!!」」
2人にそう言われて慰められる英彦を見ていると、妙義の目にはなんだかあの兄妹が輝かしく見栄始めた。
さて、開店しそうな時間帯となったので、兄妹は店長の手伝いをするために厨房へと戻っていった。
しばしの別れを噛み締めながら、曜日を間違えた2人組は客として椅子に座る。
「いい子だなあの2人組。」
「大人目線ですか?妙義さん。まぁ…僕もそう思いますけど。どうします? 客として席に座っているなら何か注文しなければいけませんが…。」
英彦はメニュー表を取り出しながら、じっくりと頼む料理を考えている。
本当は料理を食べに来たわけではない2人。
だが、妙義はたまには客側としてここに来るのもいいことだろうと思っている。
「じゃあ、前から食べてみたかった『死と生の理想郷パフェ』をいただこうかな。」
「それいいですね。僕もそれにしましょう。てか、なんですかねこの名前…。」
「さぁ? どこかの金曜日担当のバイト娘が考えたって聞くが、まぁ…名前なんてどうでもいいじゃないか。」
変な名前に興味が湧きつつも、英彦は注文をするために店員を呼ぶことにした。
「そうですね。すみません誰か…。」
「ヘイッ!! どうしたの?英彦っち。」
こちらへとやって来たのはマオ。
今回は彼が注文を受けとる係のようだ。
しかし、なんだか江戸っ子風な返事に疑問を感じながらも、英彦は注文を行う。
「死と生の理想郷パフェを2つください。」
「御意。死と生の理想郷パフェだね。」
「「御意??」」
謎の江戸時代風な返事にまた戸惑う妙義と英彦。
その様子を厨房から伺っていたヨーマは慌ててマオに注意を言ってくる。
「お兄様……昨日見てたテレビのSAMURAI(さむらい)将軍九十九道中の影響を受けてるよ~。」
「あっ、我ってばうっかりー。ごめんね死と生の理想郷パフェ2つ~。アハハハ~。」
頭を掻いて恥ずかしそうにしながら、厨房へと戻っていくマオ。
その様子を見ていた2人は、少し苦笑いをしてマオを見送った。
数分後…。
「はーい。お待たせしましたお客様。死と生の理想郷パフェだよ~。」
そう言いながらパフェを運んできたのはヨーマである。
彼女はニコニコしながら2人の元にパフェを運んできているのだが…。
「お待た………ッ!?」
なぜか地面に転がっていたバナナの皮を踏みつけてバランスを崩してしまう。
地面に倒れそうになる身体。
このままでは彼女の身体は床に倒れて、パフェは無駄になってしまう。
いや、それだけではなく彼女が怪我を負ってしまうかもしれないのだ。
英彦は彼女が床に倒れないように、手を伸ばそうとしたその時…。
突然、ヨーマとパフェが宙に浮かびだし、転ぶ前の状態に戻ってしまったのだ。
「ほっ…。」
ヨーマは何事も無かったようにパフェを2人の前に差し出した。
「「…!?」」
「あっ、言ってなかったかな?
私魔法が使えるの。」
驚く英彦と妙義にヨーマは少し照れくさそうに魔法が使えることを自慢する。
「そうか…久々に魔法を見たから驚いちゃったよ。」
「僕も驚きました。まさか、ヨーマさんが魔法を使えるなんて聞いてなかったので…。」
この国では魔法はなかなか使われなくなった過去の物として扱われているのだ。
なかなか、若い者が魔法を使うなんて聞くことがない。
「えへへ~。秘密にしてたんだけどね。
最近はこの国じゃ、魔法は使われないって聞いてたけど本当なんだね。
冒険者連盟も昔より廃れてたし…。」
ヨーマが恥ずかしそうに僕たちに返答していると、厨房からマオがひょっこりと顔を出す。
「おーいヨーマ。店長がお客があまりいないから、来るまで休んでて良いってさ。」
その言葉を聞いた瞬間、ヨーマは目をキラキラとさせる。
「ほんと? じゃあお兄様…妙義ちゃんに妾達の思出話でも聞かせてあげようよ。3人だけの秘密って言うのもかわいそうだよ。」
「そうだね。…というかなんでバナナの皮が落ちてるのさ?」
「さぁ? 気づいたら目の前にあったから転びそうになっちゃったよ。」
「もー、ヨーマは昔から運が悪いなー。」
「「ワハハハハハ!!!」」
いつもの事のように心配はしてないようで、またかと笑い出す兄妹。
運が悪いというレベルではないと思うのだが、いつもの事のように振る舞っている所から、日常茶飯事なのだろう。
だが、妙義と英彦には思う所があるようで、
その幸せそうな2人の兄妹を見て少し悲しそうになりながら、羨ましそうに眺めていた。
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