勇者の子孫だがもうツラい。最強の血飛沫魔法と共に不マジメンに生きてやる。

満部凸張(まんぶ凸ぱ)(谷瓜丸

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魔王

あなたにとって芸術とは? 決着・魔王城

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 「グアッ!?」

ブラストンが崩れるように血を吐き出して床に倒れる。

「フハハハハ、貴様ごときがワシの『粘土魔法』に敵うわけがないのじゃ!!
身の程を知るがいい。雑魚が!!」

「くそッ、私は諦めないぞ。お前に負けるわけにはいかないんだよ」

傷だらけになっているブラストンは歯をくいしばって立ち上がろうとしている。
彼女の闘志はまだ消えてはいない。
ブラストンは再び剣を握りしめて、魔王に向かって突進する。
夢にまで見た魔王と戦士の闘い。激しく熱い激戦。
エメラルも本当はこの闘いが見たかったのだが……。

「あれ?  展示勝負は???」(エメラル)

急に世界観が変わりすぎて困惑していた。
先程まで博物館展示物型擬人化美少女による展示勝負を見せられていたはずである。
彼はその中間スコア発表まで見ていたはずだった。
しかし、一度まばたきした瞬間に闘いがハードになっているのだ。

「「なんだ?  どうした?」」

エメラルの発言で闘いは一時中断。
魔王とブラストンが不思議そうにエメラルを見てくる。

「いや、展示勝負……博物館展示物型擬人化美少女……」

「はぁ?  何言ってるのさ。最初からこんなガチ勝負だったでしょ?」(ブラストン)

「すまんな若造。ちょっとジェネレーションギャップなんじゃが」

2人の反応から見ても、まるで展示勝負が元々なかったかのようだ。
エメラルはその2人の様子を再び疑問に思う。
先程までノリノリに展示勝負を行っていた彼女たちとは思えない。
そういえば……と思い周囲を見渡してみても、博物館展示物型擬人化美少女が1人もいない。
蜃気楼の中の幻のように展示勝負の痕跡がかき消されている。
エメラルはこれには納得がいかなかったが、ガチ勝負を止めてしまったことに代わりはない。
なので、エメラルは渋々謝罪を行った。

「えっと、勘違いです。すみません」(エメラル)

「おいおい、ガチ勝負シリアス展開ぶち壊して……すみません?
私はあなたをそんな子に育てた覚えはありませんわ!!
ほら、もっと謝って。魔王君に謝って!!」(ブラストン)

「ええ…………」(エメラル)

ブラストンにダメ出しをくらったエメラルは再び魔王の顔を見る。
涙目で今にも泣きそうになっている魔王。
エメラルは再びため息をつくと魔王に向かって謝罪を行った。

「魔王さん。すみませんでした」

「いや……ワシは別にそこまで怒っているわけでは」

魔王は別に怒ってなどいなかったのである。
こうして、魔王とエメラルの和解が成立しようとしていた。その時だった。

「この意地っ張りめーー!!」(ブラストン)

「グアァ!?」(魔王)

ブラストンの振り下ろした剣が魔王の体を切り裂いたのだ。

「エメラルが謝ってるんだから許してやれよ。許してやってくれよ……許して~やれーー」(ブラストン)

そして、さらにブラストンの拳が魔王に炸裂する。
そこから行われるのは謝罪の嵐ではなく。ブラストンによる暴力の嵐であった。

「『許してパーンチ』!!」

「グアッ!!」(魔王)

「『ごめんねラリアット』!!」

「グヌゥ!?」(魔王)

「いくよみんな!!
『さぁーせんブレーンバスター』!!」

「なんでぇ……」(魔王)

試合終了。勝者はブラストン。初代勝者に輝いたのは新人ブラストン!!
その試合に観客席は大いに賑わう。

「いつの間に観客が!?」(エメラル)

エメラルの驚きもかき消すほどの歓声。観客席のみんながブラストンの勝利を祝っている。
これにて、魔王との闘いは終結したのであった。



 ……というわけにはいかない。
なんと、戦闘不能になったはずの魔王が立ち上がったのである。

「……ワシを侮るなよ。ワシには骨がない。ワシは全身粘土。粘土魔法の使い手である『ネンド魔王』じゃ。身体的痛みなど感じない!!」

魔王……いや、ネンド魔王はまだ敗けを認めるつもりはないようだ。
ブラストンは彼の熱意に敬意を払い、剣を再び鞘から抜こうとしている。

「イカみたいじゃないか。いいじゃないか。とっておきを見せてやろうじゃないか!!」(ブラストン)

ブラストンの目も本気だ。ネンド魔王の目も本気だ。
強者である両者の熱意は本物だった。
ならば、その闘いの行く末を見届けなければならない。
エメラルはその闘いの行く末を最後まで見届けるつもりのようだ。
それがこの場にいる自分の役目だということを彼は信じているのである。




 最初に仕掛けたのはブラストンであった。
ブラストンは空になった鞘を地面に落とす。
そして、彼女は剣を持ち構えをとるはずなのだが……。
そこで取り出してきた物。それはこの戦いにとって重要な物であるとはブラストン以外の誰もが予想していなかっただろう。

「貴様、なんだそれは!!」(ネンド)

彼女が持っていた物……それは。

「家庭用ゲーム機・コンセント付き」(ブラストン)

「はあああああ?」(エメラル)

ブラストンが手に持っている物は武器でもアイテムでもない。古い年代くらいの家庭用ゲーム機である。
そして、ブラストンはそれをネンド魔王に差し出す。

「ほら、やれよ(イケボ)」

「貴様、おちょくっているのか?
ワシへの冒涜か?」(ネンド)

ネンド魔王は顔もあげずに怒っている。それはそうだ。
魔王としては戦う気満々の展開だった。ブラストンもそれに答えてくれると思っていた。
だが、この仕打ちがこれだ。このおふざけである。

「そうだよ。言ってやれネンド魔王!!」(エメラル)

もちろん、エメラルにとっても我慢の限界だった。ブラストンのおふざけに怒りが爆発していた。だから、エメラルは今は魔王側に着こうと考えている。

───しかし!!

「貴様……貴様ッ!!
コンセントどこに差すつもりなんじゃ!!!!」(ネンド)

「この裏切り者がぁぁーー!!」(エメラル)

結局、真面目な展開は訪れることなく。このままこの雰囲気で話は進んでいくことになったようである。
なので、エメラルは考えるのをやめた……。



 ブラストンから家庭用ゲーム機を受け取ったネンド魔王。

「ん?
ああああ!?」(魔王)

テレビもないコンセントの差し込み口もない。魔王城でゲーム機を使うことはできないと考えていた。
だが、なんとコンセントの差し込み口とテレビがブラストンの背中に装着されていたのである。

「やったわ。これでゲームができるじゃないの!!」(魔王)

「坊や坊や。このゲーム機には隠しコマンドがあるのじゃよ」(ブラストン)

「ほんとぉ?」

「→B↓ABBB→ABAK←」

「わかったよ。それが隠しコードなんだね!!」

ブラストンに教えられた通り、ネンド魔王は電源を入れてから隠しコードを入力し始める。

「(何があるのかな~。星5装備とか?
いや、無限石ガチャとか?
いやいや、チート機能かも。ウフフフ~)」

隠しコードを入力した後に起こる現象に期待を募らせながらネンド魔王は入力し終わる。
すると、『本当に実行しますか?』という画面に変わる。

「これを押せば良いの?」

「ああそうだよ。それを押すとね……」

ポチッ。

「……自爆機能が作動するんだよ。V」(ブラストン)

「「えっ!?」」

ブラストンの体が発光し始める。
まばゆい白い光に包まれていくネンド魔王とエメラル。
そして、鼓膜が破れるほどの大きな爆発音が鳴り響く。
まさにそれは爆発オチであった。
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