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幼少期
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しおりを挟むですがそこは我らがお嬢様。打ち合わせでばっちり対応を決めておりますとも!!
こういう時は、堂々とするのが正解!!
「やはり可笑しいですわよねえ」
「女性として失格ですもの」
「ふふ、惨めですのね」
とか言う声も聞こえるが、それも笑って流すべし。
「ふふ、そうでございましょう?長い髪は色々とアレンジが出来て良いのですが…短い髪もまた違った魅力があると思いますの」
「そうだな、大変似合っている。しかしきっと長い髪も似合うだろう、伸びたらまた是非見せてほしい。
それに君のドレスは見た事のない色をしているな。僕は美しいと思う。あの姉?妹?とセンスが似なくて良かったな。あれが量産されたらこの国はお終いだろう」
「あ、りがとう、ございます…。アイニーは姉ですわ」
お嬢様は照れていいのか笑っていいのか分からない状態になっている。気持ちはわかります。ちなみに私達は笑いに全振りです。
「あら、貴女は女性が短い髪でも良いと思うのかしら?」
おおっと王妃様参戦!あ、別に馬鹿にされてないよ、ただの確認のようだ。
「ええ、ファッションに果ては無いと思っていますの。…限度はありますけど(※ピンクを思い出している)。
それに皆様ご存知でしょうが…数年前隣国で即位された女帝、キャンシー様。かの方はとても短い御髪をされているそうですの。それに憧れた国民の女性達は、みんな思い思いに短くしているそうですのよ。
…ああ、隣国は、王妃殿下の生国でございましたよね?確か、キャンシー陛下は御姉妹でいらっしゃいますよね」
今度はお嬢様が空気を凍らせた。さっきお嬢様の髪を貶した令嬢達は顔面蒼白である。
王妃様が隣国の生まれである事は、この子供世代はまだ知らない人が多い。私は偶然本で読んだのだが…お嬢様、頑張れ!!
「あら、よく知っていたわね!ふふ、キャンシーは私の姉なの。小さい頃からお転婆で、刺繍よりも剣を好むような人だったわ。
それに髪の毛もねえ、「邪魔よ!」なんて言っていつも短くしていたのよ。まさか貴女のような幼い子が知っていてくれるなんてねえ」
「はい、もちろん直接お会いしたことはございませんが…キャンシー陛下の武勇伝の数々、憧れてしまいますの!」
お嬢様が笑顔で畳み掛ける。ここで王妃様の印象をアップしておくと今後有利になるぞ!!
「それに先程アルバートも言っていたけれど、綺麗なドレスねえ。ね、ちょっと私にも教えてくださらない?」
そう言って少女のように笑う王妃様。とても3人の子持ちには見えません。よしよし、やっぱ私の用意したドレスに間違いは無かったね!さあお嬢様、ここからどう話題を膨らます?
「ありがとうございます。本当は秘密なのですけど…ふふ、王妃様にだけ特別にお教え致しましょう!…アシュリィが」
こっちに投げよった!!!!お嬢様あああーーー!!!?
「アシュリィ?」
「ええ、こちらに控えている私の見習い執事、青い髪がアシュレイ、灰色の髪がアシュリィですの。実はこのドレスも彼女が用意してくれて…私は詳しくないのです」
みんなの視線が私に集まる。お嬢様?やりきったぜ…!みたいな顔やめーや。確かに困ったら私に投げろって言ったけどさあ…!
あーもう!やってやりますよ!!
「恐れながら王妃殿下、私達も発言してもよろしいでしょうか?」
「(え、私達!?オレも!?)」
「ええ、もちろんよ。この素敵なドレス、どこのブランドかしら?」
「実はこちら、まだ販売していないのです。今回お嬢様には、宣伝も兼ねて着ていただきました。
私達が大変お世話になりましたベンガルド伯爵が経営している服飾系社、ベンガルド社にて発売を予定しております。
ですがこちらの染色…実は魔法によるものでございます。ですので、この型のドレスはあっても、この色のドレスは数量限定となるかと思われます」
「まあ、そんな魔法があるの!?どんな魔法師がいらっしゃるのかしら」
「恐れながら…私の魔法でございます。こちらはグラデーションという手法なのですが、今はまだ魔法以外での染色方法はないと存じます」
「まあ、貴女は腕のいい魔法師なのね!恐らく上級魔法でしょう?その歳で使えるなんて…素晴らしいわ。じゃあ、その靴は?」
「お褒めにあずかり恐縮です。そちらもベンガルド社にて発売予定でございます。
そしてここからは私の持論なのですが。この国の女性達はあまり、靴を気にしてらっしゃらないかと見受けられます。
ドレスで隠れてしまうからというのが大きな理由だと思うのですが…お洒落は足下から、と申しまして。見えない所にも気を使うのが、真のファッションなのです!
それに女性が殿方とダンスをし、華麗なターンを決めた際、綺麗な靴が現れたら美しいと思われませんか?」
「な、なるほど。言えてるわ…!」
私の発言に唸る王妃様。他のご令嬢も感心している。
あ、もちろんベンガルド社で発売予定なんて無いよ!!急いで手紙送らなきゃ☆
売れると分かってれば作ってくれるでしょう。もちろん責任とって協力しますともー。
「それにしても、貴女も短い髪の毛をしているのねえ。最初少年かと思ってしまったわ。でもとっても似合ってるわね。
ねえ、男性の意見を聞いてみたいわ。貴方はどう思うかしら?」
「!…そうですね、あくまでもボクの好みですが…活発な印象で良いと思っております。
いえボクよりも、ご令嬢は殿下方のご意見を聞きたいと思うのですが、いかがでしょう?」
あ、逃げた。ふむふむ、アシュレイはボーイッシュな娘が好み…っと。
「私は特に女性の髪型の好みは無いが…その方に似合っていれば良いと思うのだが」
とは王太子の意見。
「僕はやはり長い髪が好き。でも短いのを否定する気は無いよ」
はい、第2王子。
「僕は…短い子がいいと思います…」
第3王子でございます。意見バラバラで面白いね。
その後はそれぞれファッション談義に花を咲かせている。ふう、一仕事終えた。だが第2王子の暴走は止まらない!!
「アシュレイと言ったか。君は活発な女性が好みなのだな」
「!!!そ、はい…そうです…」
「ふむ、僕は恋愛感情というものがよく分からない。詳しく教えてくれ」
ぷぷ、アシュレイ超困ってる。他の殿下方に助けを求めているが…目を逸らされている。巻き込まれたく無いよねえ。
「ぐう…!
ボクは…普段活発で男前で凛々しくて強い女性が…ふとした時に見せる儚さや可愛らしさに弱いと思うのです…」
ギャップ萌えというやつか…!?しかし妙に具体的だな。もしかして、すでに好きな子がいるのか!?えー、誰だろ?聞いたら教えてくれるかな?
「なるほど。つまり君は、そこのアシュリィが好みという訳だな!」
「「ごふっ!」」
ぎゃああああーーーああーーー!!!!?何言っちゃってんのあんたあーーー!!!
「違うのか?僕の第一印象では彼女は、強くて凛々しくて逞しくて、君の言う好みに近いと思うのだが」
「ふぐっ…!し、失礼ですが…少々席を外します…すぐ戻ります、ので…!」
そして限界を迎えたお嬢様が席を立つ。私達もふらふらと後を追うのだ。
私達が席を外した後。
「アミエル様、格好いい…!アシュリィさんとアシュレイくんも素敵…」
頬を赤らめ目を輝かせている、可愛らしい令嬢がおったそうな。
『音よ、遮断せよ』
「…はい、どうぞお嬢様…」
「ふ…ふふ…あはは…あっはははははは!!!もお、あーっははははっ!!!」
お嬢様が狂ったように笑い出した。なんなら転げ回ってしまいそうな勢いだ。
「げほっごほっ、はあ…アシュリィは男の子に間違われるし、まさかアシュレイが女の子ですって!!しかもお姉様のあのドレス!!ぶふっっ…!あっはっっはっははっは!!!」
ついに地面に膝をついて芝を叩き始めたぞ。いくら私が綺麗に出来るからって…はあ、私も笑いたかったのに吹っ飛んだよ…
「お嬢様ー…せめてご令嬢らしくお淑やかに笑ってくださいよ」
「そ、そうね。うふ、うふふふふふふふふふぶふぅ…っ!!」
「やっぱ怖いんでいいです…」
「はあ…それにしても、第2王子は面白いお方ね。ぷっくくく…!」
自分に被害が無いからって…呑気な事を仰る。
アシュレイだって大ダメージだ。公衆の面前で自分の好みを暴露させられたんだから。
しかしそんなに私が好みだって思われて、落ち込まなくても…
「おおお落ち込んでねーし!?びっくりしただけだし!?嫌なんて言ってねーしい!!?」
そ、そうか。勢いにビビるわ。
「ふう、今日のお茶会、面倒だと思ってたけど来て良かったわ!沢山面白いものも見れたしブフォオッ!!!」
また笑い出した…こりゃー暫く止まんないな。
…でも…お嬢様が楽しそうで、本当に良かった。恥をかいた甲斐があるってもんだ。ね、アシュレイ?
「…だな。こういうのも、悪くねー」
「だね。…もう暫くしたら、戻ろっか」
「おう…」
やっぱり王宮なだけあって、とても庭が整備されている。綺麗な花が咲き乱れ、小さな噴水まである。野鳥も囀り、ちょっとしたデートスポットっぽいな。
そんな場所でアシュレイと並んで座る…平和だなあ。…芝の上に大の字で寝転がるお嬢様さえいなければ…
ああ、風が気持ちいいなあ。
「やっぱり2人はラブラブというやつか。ところであれがリリーナラリス嬢の本性か?僕はあちらの方が好感が持てるな」
「いやまだラブラブじゃねーし!…いや、まだっていうのは言葉の綾でだな!?」
「そうそう、あれが本来のお嬢様。笑い上戸でお転婆で、だけどちょっと弱い、可愛い女の子」
「ふむ。是非とも仲良くして欲しいものだ。お淑やかなだけの女性はあまり好かないんでな」
「えー、お嬢様と仲良く?まあお嬢様が良いって言えばいいけど…婚約とかなら話は別!私達が認めなきゃ駄目なんだから!ね、アシュレイ」
「聞けよお前ら!はあ…まあ、オレも誰でも良いとは思わねーよ。お嬢様を大事にして護ってくれるような男じゃねー…と…?」
…ん???
「ふうむ。僕にそれだけの覚悟があるかどうかと言う訳か。正直分からない。それならまずは交流から始めようと思うがどうかな?」
……………。
「「あんぎゃああああーーーっ!!!」」
「なになにっ!?…って、殿下っ!!?まさかっ見ていらしたのですか…!?」
「うん」
固まる私達3人に対し、変わらない第2王子。いつの間に…って魔法かける前から近くにいたな!?
「面白そうだったから付いてきた。アシュリィの魔法は素晴らしいな。完璧な遮音だ。
ところでリリーナラリス嬢。僕の婚約者になる気はないか?」
「えっえっええっ!!?」
顔を真っ赤にするお嬢様。こんな状況じゃなければ微笑ましいと思っただろう。でも殿下、君達はどう思う?とか聞かないでくんない!?
「私達は…お嬢様のお気持ちに従います。殿下がよほど変人でなければ、反対する理由はございません」
「堅いなあ。さっきみたいに話してくれればいいのに。あれは嬉しかったぞ」
「「勘弁してくださいっ!いやもう忘れてください!!」」
「そうか…」
ぐっっっっ…そんなにしょんぼりしても駄目なんだからねっ!?
「で、では…婚約者候補ではいかがでしょう…?」
「じゃあそれで。これからよろしく、リリーナラリス」
「はいぃ…」
そうして殿下は、王妃様に報告に行くと言って去っていった。なんだったんだ…!?
その場に残されたのは、魂の抜けた屍×3。
大分時間をかけて復活し、なんとかお茶会を乗り切り帰路に着くのでした。
数日後、ベンガルド邸にて。
「旦那様…王宮よりお手紙が届いております」
「…なんて?」
「それと、会社の方に令嬢方から問い合わせが殺到しております」
「なんで!?」
「旦那様、失礼致します。アシュリィよりお手紙でございます」
「なにやらかした!!?」
こうしてベンガルド社は、王室御用達の名誉をいただいたのでした。ちゃんちゃん。
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