私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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幼少期

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 屋敷に帰って来たはいいが、もう夜中だ。真正面から入るのは無理か…しょうがない、侵入しよう。
 どこがいいかな、どこにするかな、開いてないかな~♪
 よし、お嬢様の部屋から侵入しよう!早速警備の目をかい潜り、部屋の窓に到着!
 …あっさり着いちゃったじゃん!!警備ガバガバすぎない?敵ながら不安になってくるよ!?



「…ラッシュ~…開けてー。あーけーてぇー…」

 
 小さな声で呼びかけると、ドアの前にいたラッシュがのそのそと歩いてくる。こらアシュレイ、カーテン閉めろや!

─其方は何をしているのだ…─
「いやあ、面目ない。ちょっと仕事が長引いちゃってー。さあ、鍵開けて!」
─全く…─

 そうしてパンダの手で器用に鍵を開けてくれた。ラッシュに話を聞くと、お嬢様はつい30分くらい前まで起きていたそうだ。カーテンも自分で開けたらしい。私が心配で眠れなかったとか…もー、お嬢様健気可愛い!!
 はい、ごめんなさい…。今度からは連絡いれますから…

─(遅くならないという選択肢は無いのだな…)─



 そのお嬢様はすやすやと眠っている。その寝顔が可愛らしくて、髪を撫でる。本当は髪の毛短くなったのショックだったろうに、お茶会では気丈に振る舞って…
 これからは絶対に傷つけさせないよ。心も体も。

 


 ゆっくりとドアを閉め、お嬢様の部屋を後にする。…お腹すいたなー。昼から何も食べてないもんなあ。…という訳で厨房に寄って行く事にしました!




 なんか残ってるかな、最悪ちょっと作るか…ん?
 前方から誰かが近づいて来る?こんな夜中に、怪しいな…(ブーメラン)。逃げ……いや!気になる。

『周囲に溶け込め』

 小声で詠唱し魔法を発動させる。そして廊下の端に寄り、息を殺す。通りがかるのを待っていたら、現れたのは侯爵…?

 そのまま私の前を通過し、何処かに行くようだ。…うずうず。
 ちょっとつけてみよう、弱点とか見つかるかも?足音に注意して…抜き足差し足忍び足…と。



 侯爵は壁の前で止まった。そうして周囲を警戒するようにキョロキョロと見渡す。目の前に私いるけどね~!あっかんべーっだ。
 誰もいない事を確認した侯爵は、飾ってある絵画に触れた。その奥、なんと…壁に小さな鍵穴がある?
 侯爵が鍵を差しひねると…隠し扉!?すっごい、カラクリ屋敷っぽい!!そして中に入っていった。するとまた壁に戻ったので、向こうからも開けられるのかな。…うずうず。



 覗きは犯罪、覗きは犯罪…



 バレなきゃ合法!!(※ダメです)



 という訳で廊下の隅っこに体育座りをし、分身を飛ばす。そして私は学習する女!!自分の周りに遮音の魔法もかける!!ふははは、これで大声出そうがバレん!!

 そして分身は侯爵の後を追う。ふふふ、鬼が出るか蛇が出るか!

 
 しばらく階段を降りて…一枚の扉の前で止まった。ほほう、ここが目的地ですか。なんだなんだ夜中に、エロ本保管室か?
 ドアを開けると、狭いけれど可愛い家具が並ぶ部屋だった。ドールハウス…って感じか?
 そして侯爵はソファーに座る。そこには…




 そこ、には。



「さあレイチェル、少し早いが誕生日プレゼントだ。受け取ってくれるかい?…ああ、ありがとう。やはり君には赤が似合う」



 ………。




「それとほら、君の好きなマドレーヌを持ってきたよ。ん?そんな恥ずかしがらないで、私は君がお菓子を美味しそうに食べている姿が好きなんだ」




 ……………。





「最近仕事が忙しくてね、あまり来れなくてごめんよ。代わりに今日は、ずうっと一緒にいるからね…?」






 …………………。







「ぎ…ぎゃああああああっっっ!!!??」


 ななな、なんじゃありゃあああ!!?私は速攻で魔法を全て解き、一目散で逃げ出した!



「…?上で物音がするね。はは、誰かつまみ食いでもしようとしてルイスに叱られたかな」








 自分の部屋に入り、鍵を閉める。そのまま情けなくもへたり込んでしまった。そして遮音する。
 


 さっきの、ソファーに座ってたアレ…アレは…!


「レイチェル様の、死体…!
 まままままさか侯爵はネクロフィリア……!?ぎゃあああああああ!!!!」



 ひいいいいいっっ!!確かになんか弱味握ったろうとか考えたが、ここまでの秘密を知りたくなかったっ!!!
 いやまて、落ち着こうアシュリィ。きっとアレは、レイチェル様の等身大フィギュアだ。



「……それも嫌だああああ!!いやドールマニアは良いんだけど、亡くなった奥さんそっくりの人形作らせるとか怖いいいいい!!
 しかもマドレーヌ食わそうとしてたし!!」

 あまりの衝撃映像に、受け止めきれずのたうちまわる。
 大体、し、死体だとして!!どうやって保存してんの!?見た感じレイチェル様は亡くなった当時のままっぽい。保存の魔法もあるにはあるが、かけている間魔力は減り続ける。
 私だったら魔力が尽きるより回復する方が早いから、半永久的にかけられるかも。だが侯爵にそれほどの魔力があるとは思えん。
 あとは…薬?…怖い!!!

 ここはファンタジィ~な世界であって、決してサイコでホラーな世界では無いハズなんだ!!バグ?バグなの!?



「おおおお落ち着こう、落ち着こう…はい深呼吸。すー、はー、ふーぅ」


 …さて、シャワー浴びて。歯あ磨いて。布団に潜る!みんなおやすみっ!!



「…眠れるかっ!!!」

 こうなったら…!






 次の日。




「…ん、もう朝か…

 ………!?」


 布団の違和感に気付き飛び起きるアシュレイ。布団を勢いよく捲るとそこには…


「…すー…」
「なななななあんでここで寝てんだアシュリィイイーーー!!!?」


 穏やかに眠るアシュリィがいるのでした。



 ただ私はこの時、あの地下室に…更に奥に続く扉があった事に気付けなかった。

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