46 / 164
幼少期
46
しおりを挟むアシュレイとも仲直り出来たところで、今後の作戦会議だ!あ。ちなみにいつも秘密の話をする時は必ず遮音をしているよ。アイニー様陣営が聞いてる可能性もあるのでな。
私はまず、お茶会であった出来事を2人に話した。
「ふうん…じゃあ私は、ミーナさんと仲良くした方がいいかしら?」
「うう~ん…いえ、無理にとは言いません。お嬢様が本当に仲良くしたいと思ってくれたら、でいいです」
「確かに…その娘を溺愛してるっつー伯爵が、オレらがミーナ様を利用してるとか思われたら面倒くさそうだな」
そゆこと。ただシャリオン伯爵家に関しては、返事が来るまでなんとも言えん。なので保留。他にも色々あるしね。
「じゃ、次。お嬢様に招待状がまだ結構あって…今度はどこに参加しましょう?
そろそろ、本格的に行動してもいいと思うんですよね」
「行動って?」
ふふふ、当然。お嬢様の評判を上げる事!ついでにアイニー様が聖女とか言われてんのも腹立つから、徐々に失墜させてやろう。もう勝手に始まってるけど。
だから今度は、規模の大きい所に参加したいな。うーん、うーん…
3人で、招待状に目を通す。小規模っぽいのばかりだなあ…公爵家とかで主催してくれればなあ。
「お。これどうだ?トゥリン侯爵家のお茶会」
ふむふむ。トゥリン侯爵家って、王都に近かったよな。距離はちとあるが…いいかもしれん。
─アシュリィ。扉の外に気配あり。いつものだ─
ん?早速アイニー様か。…!にやり。
「2人共、今から遮音を解く。で、扉の外にアイニー様一派がいるから、一芝居よろしく!私に合わせて!
アイニー様もトゥリン家のお茶会に参加させるよ!」
「「え」」
へい、かーいじょ!!
それでは、と。
「お嬢様ー。こちらのトゥリン侯爵家のお茶会、参加してみません?」
「そうね…いいのではないかしら?」
「ではお返事しておきますね。ああ、でも今度はどんなドレスにしましょう?正直ネタ切れですー」
「そうねー。アシュリィに任せきりだものねー」
「(2人共すげえ棒読み…)」
あんたも参加せい!!と小声で言いながら小突く。
「うーん…オレの意見としては………」
「…意見は?」
「…すまん、管轄外だ…」
ちくしょう!!アイニー様が参加したくなるような餌は…ハッ!
「トゥリン侯爵家といえば、王都に近いですよねえ。公爵家や殿下方もいらっしゃるかもしれませんねー」
「!そうですね、第2王子殿下にはお嬢様がいらっしゃいますけど、王太子殿下と第3王子殿下はフリーですよねー」
「そうねえ。殿下にお会い出来るかもしれないし、気合入れていきましょー!」
「「「おー」」」
─去って行ったぞ─
っしゃい!!多分OK!アイニー様の事だから、懲りずに殿下方にアタックするチャンスを狙ってんだろ!彼らは来ないと思うけど。
話も纏まった所で、今日はもう夕飯だ。
あれ以降薬とかが盛られてる事は無いが、必ず私が毒味してる。うん、異常ナシ。
そういえば明日は殿下が来る予定だったな。準備万端でお出迎えしなきゃ!そんな話もしつつ、終了する。
そんで寝る時間だが…アシュレイに言わなきゃいけん事がある。
「な、なんだ?」
私が神妙な顔をするもんだから、慄いてるわ。まあ、私も絶叫しましたから…。という訳で、彼に地下室での出来事を全て話した。そりゃもう、細部まできっちりと。
すると、青い顔でマジ…?とか言ってきた。マジです。
そんで解散し、寝るかーとなった時。
「いいいい一緒に寝てやってもいいぞ?」
と、枕を持ったアシュレイが部屋に入ってきた。ほらあ、そうなるでしょ!?とは言わずに、一緒に布団に入る。いやー、落ち着くわー。
寝る前にアシュレイが教えてくれたが、今日ジュリアさんが来たんだけど私がいないからってまたどっかに行ったらしい。
そのうち来るねえ~と言っていたらしいが…自由な人だな!!
翌日。朝食も終わり今日の予定の確認。
お嬢様の部屋で、お茶を飲みながらするのがいつものスタイル。
お茶を4つ淹れ終え配り、席に座り私から切り出す。
「で、今日は殿下が正午に見える予定です。あのお茶会以来、お会いしてませんもんねえ。遠いのにはるばる来てくださるとはね」
「うんうん、遠いよね。だからリリーナラリスが王宮に来てくれてもいいんだよ?
前回はアシュリィの精霊で来たそうじゃないか。僕も乗せて欲しいな」
「それもいいかなあ。お嬢様、どうでしょう?」
「そうね。ご招待頂けたら、行きましょうか」
「ついでに今日、殿下にトゥリン家のお茶会一緒に行きませんかーって聞いてみたらどうです?」
「え、お茶会?いいよ、参加しても。君達が一緒なら面白そうだしね」
「ほら、殿下もこう仰ってますよおじょ…」
…今、アシュレイの提案に答えたのは…
「「「ぎゃあああああっっっ!!!?」」」
「うーん、いい反応してくれるね。」
またもいきなりの殿下!?なんでこの人しれっと現れんの!
というより、約束は正午でしょうが!まだ9時過ぎですけど!?優雅にお茶飲んでんじゃねー!!自然に淹れちゃってたじゃん!!
「あ、あの殿下?お時間にはまだ早いのですが」
「うん」
だからうん。じゃねー!!3人揃ってがっくりと項垂れてしまった。
今日はヒマだったから、馬を飛ばして来たらしい。ちゃんと付き人兼護衛もいるよ、とのことで扉の方に目を向けると、若い騎士の方がいた。
そして苦笑しながら会釈してきた。私達も返すが、ありゃあ「止めたんですけどね」と言いたげな顔だな。
恐らく彼は、ヒュー様だろう。ヒュー・アレンシア様。アルバート殿下に唯一心からお仕えする忠臣で、ゲームでも最期まで彼と共にいた人物だ…
てかラッシュ?なんで部屋に入れちゃってんの?
─む?アルバートはリリーナラリスの番なのだろう?ならば良いのではないか。
それに悪意などは一切感じなかったのでな。少々其方らを驚かそうとはしていたが、可愛いものよ─
……まあいっか!!私は考える事を放棄した。
殿下がいるんだから私達は席を立つ。すると殿下は不満そうな顔をした。
「つまんない。なんで立つの」
「分かっておいででしょうが…殿下のような高貴な方と、ボク達使用人が同席する事は許されません。
お嬢様とは習慣になってしまっていますが」
そうそう。…あのう、何故泣きそうなお顔をしていらっしゃる!?
「だって…何処でも誰も僕とお茶を飲んでくれない…」
私達は同時に着席した。新記録が出たんじゃないかってくらいの早業だったね!着席速度日本一選手権があったら優勝を狙えるだろう。
ただし!公式の場では無理ですからね!!?そう言うと、殿下は顔をパアアア…と輝かせた。…くそう、負けた。ついつい言う事を聞いてしまう。
「折角ですし、そちらの騎士様もどうぞお座りください。席ならございますよ?」
ヒュー様も道連れにしたろうと思い、声をかける。まあでも真面目な彼の事だから…
「お気遣いありがとう。でも私は…」
断るよね。だが逃さん!どうせ殿下と2人きりだったら座ってんでしょーが、ほら座れえい!!
私のしつこいお誘いについに折れ、ヒュー様も腰を下ろす。2人掛けのソファーに殿下とお嬢様、1人掛けのソファーにヒュー様。私とアシュレイはスツールだ。そこで改めて自己紹介タイム。
「お招きありがとう。
アミエル侯爵令嬢におかれましては、ご機嫌麗しく。私はヒュー・アレンシアと申します。アルバート殿下にお仕えしておりますので、どうぞヒューとお呼びください。
もちろん君達も、気軽に呼んでくれると嬉しいな」
「わかりましたわ。ではヒュー様と呼ばせていただきます。私の事も、どうぞリリーナラリスとお呼びくださいませ」
「ヒュー様、ありがとうございます。ボクはアシュレイと申します、よろしくお願い致します」
「私はアシュリィと申します。今後ともよろしくお願いします、ヒュー様」
そんなやりとりをしていたら…また殿下がむくれとる。どないせーっちゅーねん。
「まあまあ、せっかくいらしてくださったのですから、どうぞ交流なさってください。ね、お嬢様」
「そうね。殿下、本日はどうなさいますか?」
そう言うと殿下は考え込む。…婚約者(候補)との交流って、実際何すんだろ。お茶飲みながらアハハウフフしか想像できん。
殿下は何か思いついたのか、がばっと顔を上げた。
「さっきも言ったけど。アシュリィの精霊に乗って散歩したいな。
王宮魔法師達は、危ないからと言って乗せてくれない。…ジェイドだって乗せてあげてるのに…」
「今すぐ行きましょうか!ねえアシュリィ!?」
「お任せください!構いませんね、ヒュー様!?」
「…うん、お願いしようかな」
ぐうう!!殿下の同情心を煽る作戦には完敗だよ!!しかも狙ってやってんじゃないのがタチ悪い!聞いてあげたくなっちゃうじゃん!?
勢いよく立ち上がる私とお嬢様。そしてヒュー様も同意してくれた。どことなく嬉しそうなので、きっと彼もなんとかしたいと思ってたんだろうな…
あとお嬢様。あんま殿下を甘やかしちゃいかんよ?
お嬢様は動きやすい格好に着替える必要があるので、アシュレイに2人を庭に案内してもらった。
お嬢様も、上空デートが楽しみっぽいな!2人きりには出来ないのが残念だけど。
そして私達も遅れて庭に向かっている途中…アイニー様の邪魔が入った。
取り巻きのようにメイドを引き連れ、待ち構えていたんだろうね。おヒマなこって。
「ご機嫌よう、アシュリィ。今アルバート殿下がいらっしゃっているそうね」
「ご機嫌よう、アイニー様。はい、現在お庭にいらっしゃるはずです」
「そう、この後何をするのかしら」
「殿下が私の精霊に興味があるご様子ですので、これよりお披露目の予定でございます」
「そう…じゃあね」
「はい」
去り際にお嬢様を睨みつけていた。やんのか、おん?こっちは殺気飛ばしたろか?だが今はおやめなさい、とお嬢様に引っ張られる。つまり、いつかはいいって事ですね!
そんな事よりも、庭についたらトロくんもいた。どうやら殿下に捕まったようだ。
「君は庭師なのか。かなり鍛えているように見えるが…剣術とかはやってるのか?」
「いいえ、全然ですね。そもそも僕は闘うのは苦手なので…簡単な護身術くらいしか使えませんね」
どうやら話は弾んでるようですね。そこに合流し、早速リュウオウを呼び出す。殿下は大はしゃぎだ。
そして並び順をどうするかになった。全員乗らなくてもよくね?と思ったが…。まず私、殿下は確定。ヒュー様も護衛として同行が必要だ。そしてお嬢様も殿下と一緒に飛びたいだろう。アシュレイは遠慮しようとしたが、逃さん。トロくんは逃げた。
ただまあ逃げる際に、私達に「よかったね」と言って行った。ふふ、仲直りの事だろうね。
最終的に私、お嬢様、殿下、アシュレイ、ヒュー様の順で落ち着いた。
それでは皆様、テイク・オフ!!
6
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる