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幼少期
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しおりを挟む「時にアシュリィ。其方から微かに神力を感じるが…『天空の箱庭』に行ったことがあるのか?」
「…?いや。どこそこ、天国?」
世間話のようにグレフィールが聞いてきた。神力…神の力?いつ私は神になったんだ?
「正確には残滓だ。『天空の箱庭』とは、神々がおわす場所。生者が足を踏み入れることは叶わず。のはずだが…ふむ」
ふむ。じゃないわ。説明しーや。と、言いたいとこだがもう屋敷が見えてきた。
…屋敷に近付くにつれて、濃い魔力を感じる。良かった、お嬢様を置いておかないで…。魔力の低い人間には影響は無いが、高い魔力を持つ者は別。あの距離ですら意識が飛んだんだ、この屋敷にいたら…死んでいただろうね。この街にはそれほど高魔力を持つ者はいないはず。…私は平気だよ、人間じゃないし。
「ふうむ、禁術か。…誰かおるな。」
彼女の言う通り、屋敷の上空に人影がいくつか。あれは…!!
「なあ、陛下は何処だ?さっきまでここにいたじゃねえか」
「この周囲に結界を張っているわよ。人間に被害を出したくないのでしょう」
「私に命じて下さればよいのに…!」
「陛下の攻撃に耐えられる程の結界を張れまい。お戻りになったら屋敷ごと破壊しよう」
……!!私は、彼らを知っている。あれは、(自称)魔王の側近!ルーデン、ドロシー、アンリエッタ、ガイラード!!
「待たんかーーーい!!!!」
今にも屋敷をぶっ壊しそうな4人に、遠くから待ったをかける。いや屋敷を破壊すんのはいいけど、中にいるモノは駄目だと私の記憶が叫んでいる!
「何者だ!!」
彼らは戦闘態勢に入った。そりゃそーだ、彼らにとっちゃ私は初対面だし。…説明するのも面倒だ!
「私が何者か、などどうでも良いわ!!今破壊されては困る、聞かぬなら力尽くで止めるのみ!」
私の言葉に、4人が一斉に飛びかかる。大人気無いぞ!!そっちがその気なら、こっちだって本気で行ったるぞ!!!
「グレフィール、止まって!!」
彼らの戦法はよく知っている。ゲーム風に表現するならルーデンがタンク、ドロシーは暗殺者、アンリエッタは戦士、ガイラードは格闘家。要するに…遠距離担当と回復担当がいないんだわ!!
だったら当然、こっちは遠距離攻撃じゃい!!
…この4人は、私の仲間だ。お母さんと…※※※まで亡くした私を必死になって励まそうとしてくれた。元気出して、みんな付いているからと。私は、それに応えられなかったけど…
ごめんね。でも…それとこれとは別!手加減なぞしようもんならやられるのはこっちだ!!どうやらこの周囲に結界が張られ始めてるから、遠慮なくぶっ放す。
魔力刃を使ってもいいけど…あれは消費が激しい。グレフィールの召喚にも魔力7000くらい持っていかれたし、この後を考えて節約したい。
…今から繰り出すのは中級魔法だが、魔力を多く込めて数を増やせば上級をも上回る破壊力をもつ。
上空に浮かぶのは無数の氷の礫。それを彼らに…全方位からガトリングガンのように発射する!!
『降り注げ、氷雨!!』
ガガガガガガガガガガガガ!!!と周囲に轟音が響き渡る。完全なる近所迷惑、ごめんなさいね!
連射、連射、連射!!!どんどん発射、いけいけ礫!!これが人間相手だったら肉片になりかねないが、彼らは頑丈だから大丈夫!!!むしろ結構防御されてる。そーれ、追加追加!
「ぐう…!」
よっしゃ、効いてきた!このまま…この、まま……
轟音が、止む。急に静かになったもんだから、なんだか耳が痛い。彼らは急に攻撃が止んだことで、困惑しているようだ。
「……?何故止めた。続けていれば我々を倒せたろうに」
「私はね…あなた達を傷付けたい訳じゃないんだよ、ガイラード…」
「…何故私の名前を知っている」
知ってるよ、4人共。特にあなたはね。ああ、思い出してきた。
そうだ、本来の私は…8歳の時父親が迎えに来てくれた。正確には、父の使いだが。それがガイラード。そのまま私は魔国に渡り、父をはじめ魔族のみんなと仲良くなれた。でも…
「!待って、あの子の、いやあの方の目…」
「は…赤目…!?…もしや、貴方はウラオノスの名を持つ方でしょうか」
「…ええ、そうだよ。その名を賜った」
私がそう言うと、全員その場に跪いた。まあここ上空だけど。魔族にゃ飛行魔法なんて朝飯前ですから。
「ご無礼を、お許しください。罰は如何様にも受けましょう」
「必要無いよ」
私はグレフィールから降り、彼らに近付く。記憶が戻ってきたことにより、知識も増えてきた。人間には最上級魔法に分類される飛行の魔法も、魔族には標準装備だったりする。
はあ…記憶が無くなっていたことにも気付かなかったとは。あとちょっと、最後のピース。それがあれば、完全に思い出せる。私が何者で、何故未来を知っているのか。
間近で私の顔を見た4人は、驚きに目を見開く。どうやら言葉を無くしているようだ。そんな空気の中、緊張感の無い声が響く。
「おーい、張り終わったよ。というよりお前ら、さっき暴れてたでしょ。…ん?」
そう言って近づいて来る彼は、魔王リャクル。彼は普段穏やかでのんびり屋で寛容で、だけど典型的な…怒らせたら恐い人。
「君、は…」
そして、そして私の…
「…お父様」
だ。4人は目だけでなく顎が外れそうな程に口を開いている。ええそうでしょうよ、我ながらそっくりな父娘ですよ!!
傾国の美女である(アシュリィ談)お母さんの要素皆無だよ、髪の色以外完璧にお父様のクローンだよ私!!女の子は父親に似るって言うけど、似過ぎて怖いわ!まあそれが父娘の証明になってるけどさあ…
というかお父様、いつまでフリーズしてんのさ。
「き、み、の…お母さんの、名前は…?」
「……シルビア」
そう答えた瞬間、私はお父様の腕の中にいた。
ああ…最後のピースが、揃った。
そうだ、私は…私が15歳になると、お父様が死んだ。殺された。私はそれを受け入れられなくて、長い時間をかけて時間遡行魔法を編み出した。
でも…何度繰り返しても運命は変わらなくて。どうしても、諦められなくて…!
…まるで、走馬灯のように蘇る。私の、最初の記憶。あれは、そう──…
※次回から過去編です。現在それどころじゃないけど過去ったら過去編です。あるいは真相編とも言う※
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