私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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幼少期

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 いやいやいやいや。まっさかー!きっとお父様のことだね!んもう、お父様ったら。300歳超えてるくせに、娘と同世代の女の子落としちゃうんだから!イケメンパワー凄いね!…お父様と同じ顔の私もイケメンかしら?
 まあとにかく、私も最初の人生でガイラードと年の差婚したし(ガイラードはお父様より50ほど上)、お母さんのことは忘れて欲しくないけど…娘として再婚は賛成だよ!でもアイニーはやめて欲しいかなー!


「ん?呼んだ?お父様のこと呼んだ?」

 ひょこっと廊下の向こうから現れたお父様。…もうちょっと現実逃避していたかったなー!!!
 アイニーはなんかハアハア言いながら顔近づけんのやめて!ああ…ごめんなさい、殿下方。私アイニーに迫られている貴方達を見て楽しんでいました。心の底より反省致しております、だから誰か助けてーーー!!

「ああ…あなたはアシュリィ!そうだったのね、私の運命の相手…!道理で殿方が私に靡かないはずだわ、だって私の王子様は女の子だったんですもの…!!」
「違います違います!!私、えーと…すっ好きな人いますからごめんなさあい!!!」
「ええええっ!!?誰!?誰なのアシュリィ!!お父様より弱い男は認めないよ!!?」

 やっちまった!!いないよそんな人、適当言ったよ!!つかお父様より強いなんて魔族にもそういねえよ!?私お父様が死ぬまで独身かな!?
 落ち着けアシュリィ、ここで最善の選択肢は…!


1.「好きな人なんて、う・そ☆てへ」→「ではやはり私の運命…!」
2.「実は…◯◯っていう人なんだけど…きゃ♡」→「よし殺すね!」


 あかん!!どうすりゃいいの、好きな人死んでることにする!?いや、そんなすぐバレる嘘はよくない!じゃあいっそ簡単に死ななそうなトレイシーを犠牲に…駄目だー!!
 私が両側から引っ張られて遠い目をしていたら、アイニーが急に眠った。あ、アンリエッター!!助かった!

「もう、陛下!今のはどっからどう見てもアシュリィ様の嘘ですよ。この子に迫られて、とっさについただけです。
 そ・れ・に!いつかアシュリィ様に恋人が出来ても、ちゃんと祝福してあげるんですよ!?」

 やっぱり私の頼れるお姉さんだよ!しかしお父様の過保護っつーか…娘溺愛ぶり、久しぶりだけど半端ないな…。なんで昔の私はこれを喜んでいたんだ…?
 お父様はほっと胸を撫で下ろしたが、全く理解しちゃいなかった。

「よかったー、嘘だったのか!もし彼氏が出来たら…僕に勝てたら祝福するとも!」

 呆れる女2人。駄目だコイツ、放っておこう…。私は地下に心当たりがあると告げ、3人で向かう。アイニーも放置出来ないのでお父様が運ぶ。




 地下への通路は開いていた。まあ一々閉めていかんよな。階段を降り進む。

 そしていつかのドアに着く。…あの気持ち悪い記憶が蘇る…私あれ以来マドレーヌ食べれなくなったよ。ドアは開いていたので中に入ると。
 
「…誰もいない。って、あれ扉?うわー、前回気付かなかった…」


 なんと、クローゼットの横に目立たない扉があった。先に進むと…広い空間だ。そこには…

「あ…」

 使用人のみんなと、侯爵の…身体が転がっている…。そして部屋の中央に、石の台がある。その上にある、古い本は…!

「待って。アンリエッタ、この子よろしく」

 アイニーをアンリエッタに渡し、お父様が近付く。そして本を手に取り…

「…うん、禁書だね。……この本は…存在してはいけない。…いいね?」

 お父様の言葉に私達は頷く。お願い、お父様。もう復活の魔法は意味を為さないけど…他にも魅了とか呪いとか危険な魔法が載っている。そんなもの、存在しなくていい…


 そうしてお父様は何事か呟き…本は、お父様の手の中で…砂になって散った。散々苦しめられてきたが…最後はあっけないな…



 …この本のせいで、沢山の人間が不幸になった。魔族だって…。時間を巻き戻しても無かったことになんか、ならない。そういえば日本で読んだ…パラレルワールド?並行世界、無数の可能性…
 もしかしたら私は、その並行世界を渡り歩いていたのかな。…私が遡行した分だけ、世界も存在していたのだろうか。
 …?遡行って言っても精神だけだから、身体はその世界に残されているはずで、あれ、精神は?……もしかして…抜け殻…?………みんな、介護押し付けてすまん。




 …しみじみしてないで、使用人のみんなを救助しなきゃ!でもやっぱり、何人かは亡くなってる…。年老いていたり、持病がある人だ。ルイスさんも、呼吸していない……この人達も、侯爵の被害者なんだよな…リスク様も、キリエ様も。ただしアイニーは除く。だって彼女は魅了に掛かってなかったし。
 さっきも言ったが、魅了の条件は対象に少しでも愛情が無いといけない。ただ「この女性美人だな~」じゃ駄目だ。アイニーはレイチェル様のことを覚えていないどころか、死んでて良かったとすら思っている節がある。それはもちろん、レイチェル様が美人でみんなに愛されていたから。…怖っ。

 とにかく、生存者はまとめてドールハウス風の部屋に、回復は後にしよう。今目を覚まされたら邪魔なので。死者は…あとで必ず弔います。

「よし、と。アンリエッタ、ここお願いしていい?」
「はい!必ずお守りします」

 信頼出来る彼女にこの場を任せ、私達は地上に戻る。
 今、この時間軸は…限りなく最善の道を歩いている、と思う。だからこそ、失敗したらと考えただけで…足が震える。もう時間は戻せないしそのつもりも無い。それが当たり前なんだけどね。
 だから…絶対に、誰も死なせない…!!でも怖いもんは怖いんだよ!!
 そんな風に少し後ろ向きになってしまっていたら…お父様に抱き締められた。

「大丈夫、大丈夫。何を怖れているのか分からないけど…僕が守るからね。お父様に全部任せて」

 …そのお父様が死ぬのが怖いんだよ…。でも、この温もり安心するなあ。アシュレイに抱き締められた時みたいで…

「え、誰それ?」

 …声に出ていたようだ。
 さて、と。最終決戦に向かいますか!!これまでの因縁、ここで断ち切ってくれる!!!とうに震えは止まり、私は上を目指し一歩ずつ階段を踏み締めていくのだ。

「待って待って!誰それ、男だよね!?お父様許しませんよ!」
「……はっここは!?アシュリィ、どこー!?貴女のアイニーはここですわ!あら可愛いお部屋。…まさか私達の愛の巣!?きゃー、いやーん!!…ふにゃ?」
「はーい、もうちょっと眠っててね。アシュリィ様の邪魔しちゃダメよ」
「…ァ…ア、アシュリィですって!?あんたまさか、私のアシュリィに手ェ出そうとしてるんじゃないでしょうね!?」
「嘘お!?この短時間でもう耐性ついちゃったの!?」
「愛の力に不可能はないわ!!」
「じゃあもっと強力なのしときましょう。…ふう、これで一週間は目を覚さないはずだわ」
「ねえアシュレイって誰!?…はっっっ!もしかして、僕の息子!?アシュリィに名前似てるし、シルビアさん双子産んでくれた!?やったー!!」



 
 …後ろがうるさすぎて調子狂う!!!

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