私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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幕間

魔国での日々 秋

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 季節は秋。
 秋といえば芸術の秋、スポーツの秋、食欲、読書、行楽などなど…秋ってついていればなんでもいいんじゃないかとすら思える。

 私は現在13歳、アル達は今頃寄宿学校で何してんのかなー…
 この城に来て早数年、私も大分馴染んできたと思う。ただ婚約の話とかされるのは面倒くさい、お父様が全部潰してるけど。
 城で働くみんなとも仲良くなれたし…恒例の、なんかしたい。




 秋か…よし、勝手にハロウィンしよう!日本のハロウィンって最早コスプレ大会だよね。でも大好きです!有朱はマ◯オ、愛斗がル◯ージ、凛々がピーチ◯のコスプ…仮装をしたこともあるんだぜ…!
 まあここはきちんとしてみようか。確かハロウィンの起源はケルトのサウィン祭、だっけ。

 一般的なハロウィンは大晦日に先祖の霊が戻ってくる時に悪霊も一緒に来ちゃって悪さをする。そんだから驚かせて追い払う…ざっくり説明するとこんなんだっけ。
 でも私的には、どっちかっていうと悪霊じゃない方がビビって逃げない?と思ってしまう。恐ろしい怪物に仮装して悪霊を怖がらせるって…怖がんのかなあ?まあ仮装して悪霊と同化して、災を遠ざけるって意味もあるらしいし…面白ければなんでもいいや。

 という訳でお父様に直談判!!明日1日、この城はハロウィン会場とする!!たのもー!!





「んーと、つまり…子供達が仮装して、大人にお菓子をねだるの?」
「ざっくり言うと。お菓子をくれないと悪戯します」
「はは、それは怖いね。じゃあ、沢山用意しないとね」
「よろしく!参加する子供は私、アイル、ララ、パリス、ディーデリックで。飛び込み参加も大歓迎!その場合は何か仮装するように!」


 お父様にお城のみんなに伝えるよう頼んで、私は仮装の準備だ!何着よっかなー、ここはやはり魔女かな?いや、魔女は可愛らしいララがいいかな…。パリスは仮装必要無さそうだけど…ここは別の仮装をしてもらおうっと。
 ふふふふふ…お菓子を沢山狩ってやる!






 そして次の日。私は悪魔の仮装である!!可愛らしい黒のドレスにマント、武器にフォーク?を持っている。
 悩んだ結果パリスはゾンビ。なんか本人がノリノリになっちゃて…夜中に遭遇したらダッシュで逃げるレベルの出来である。少なくとも私は逃げる。
 ララは魔女っ子!怖さより可愛らしさを追求した。
 アイルは吸血鬼。元々彼は知的な腹黒っぽい顔をしているので超似合う。本人は腹黒さとは真逆の超真面目で純粋な少年だが。
 ディーデリックは狼男…にしようと思ってやめた。シーツを被せて幽霊にしといた。

「私だけ適当ではないか?」

 気のせいだ。ちゃんと顔のとこはくり抜いてメイクしてあるでしょうが。
 さーて…行くぞみんな!!!城中からおやつを奪いまくり、今夜はレッツ・パーリィー!!!

「「「「イエッサー!!!」」」」

 大分ディーデリックもノリが良くなってきた!まずは下から、門番さんに急襲じゃーい!



「トリックオアトリート!!」
「お、来ましたね!どうぞ!」

「トリックオアトリイート!」
「はーい!みんな可愛いですね~!!」

「トリックーオアートリーイトー!!」
「悪戯してくださーい!」

 そう言う相手にも備え、パイ投げ用のパイも準備しておいた!5人で一斉にパイを投げつけ、兵士の1人を床に沈める。どんどん行くぞ!!!
 私達はノンストップで城中を駆け回った。途中飛び入り参加の先々代魔王陛下の孫他数人乱入し…いざ!菓子をよこせええええ!!


「トリックオアトーン!!」
「トリッコーン!!」
「トックリオントリート!!」
「リンスインシャンプー!!」
「コーンオアトースト!!」
「トオー!!」
「スーパーアスリート!!」
「トリックオアトリート!!」
「トントンスケート!!」
「テヤアー!!」
「ジュゲムジュゲム!!」
「スケルトントットー!!」
「トルテケーキスマッシュ!!」


 段々とセリフすらも適当になってきて、皆それっぽく叫んでいるだけになってきた。はい、ちょくちょくふざけているのは私です。短く叫んでいるのは5歳の女の子である。たまにパイを投げつつも、どんどんお菓子を収穫して行く!



 この日城で勤務していた者は可愛らしい子供達の姿にほっこりし、非番だった者達は後日血涙を流していたことを私達は知らない。そして要望もあり10年に1度開催することが決定したのだが…それはまた別のお話。




 そしてあらかた終わった私達は…いよいよ行くぞ、四天王!!



「トリッ」
「どうぞ!!」
「アンリエッタ早い!!」

 でも美味しそうなお菓子ありがとう!流石、見た目も華やかなお菓子をくれた!


「トリックオアトリート!!」
「待ってましたぜ、へい!」
「ありがとう、ルーデン!」

 おおお…可愛くラッピングされてるう!彼は大きい体に似合わず器用で繊細なのである。


「トリックオアトリートー!!」
「…悪戯で!」
「かかれえーーー!!!」
「「「「おりゃー!!!」」」」

 ドロシーに8人ほどでパイを投げつける。きゃーきゃー言いながら逃げ回るので、追っかけ回す!



「トリックオアトリート!!!」
「どうぞお受け取りください。」

 わーい!ガイラードは大きいケーキをくれた!みんなで分けよーっと。

「あ、あのガイラードさん!わたしの衣装どうですか!?」
「ああ、よく似合っている。とても可愛いらしいよ」
「かわっ…!?」

 あらやだララってば、お顔真っ赤ですわ。
 ご覧の通り、ララはガイラードに絶賛片思い中である。ガイラード本人も幼い少女の恋心に気付いており、一過性のものであればよし、本気だったら本気で考えるつもりらしい。
 

 ちなみに以前妻であった私だが、正直彼のことはなんとも思っていない。格好いいし頼りになるお兄さんだとは思ってるけど…それ以上は、なあ。
 そもそも結婚したのだって愛し合っての結果じゃないし。壊れかけていた私を支えるため、という理由が大きかったように思う。互いに親愛以上の感情は無かったなあ。
 なのでララに関しても私は全力で応援する所存でございます。
 にしても…ガイラードがいよいよロリコンに見えてきた…。違う、違うぞアシュリィ!!魔族にとっちゃ300歳差くらい珍しくないんだってば!!相手が人間なら尚更!!


 ただ…人間相手なら私達魔族はほぼ相手を送ることになる。…辛い、なあ。お父様もそれを覚悟してお母さんと結婚したはず。まあお母さんが暴走して離れたけど…。お母さんの気持ちも分かるんだよなあ。
 自分だけ年老いて死んで行くのに…相手は若々しく美しいまま。もしかしたら自分の死後…新しい相手と愛を育む可能性だってある。悲しみに暮れるよりも、そうして欲しいとは思うだろうけど。
 だったら…せめて自分も、美しいままで彼の記憶に残りたい。そう考えても…不思議じゃないさ。
 私がお腹の中にいたのは誤算だったんだろうなー。ハーフなんてあり得ないってのが常識なんだから。でも…そのおかげで私はリリー達と出会えた。

 もしもの話なんてしてしまったらキリは無いけれど。リリー達と仲良くなれない未来なんて考えたくもない。それが何かの犠牲の上に成り立つものだとしても…




「…アシュリィ、どうした?最後の部屋が残っているだろう」

 考え込んでいた私は、ディーデリックがすぐそばにいたことに気付かなかった。いつの間に…

 …今は考えても仕方ないか。そもそも私は、結婚するかも怪しいしな!!なんせお父様に勝てる相手じゃないといけないんだから!!
 パリス達も急に静かになった私を心配してくれたらしい。ごめんね、行こうか!ラスボス!!





 そして私達がやって来たのはお父様の私室!!仕事はどうした、おん?…まあいい。ここまで来たらやることはひとつ!!!



 コンコンコン
「どうぞー!!」


 バターン!!!
「「「「トリック・オア・トリート!!!」」」」

 
 と勢いよく乗り込んだ私達の目に映ったものは…


「いらっしゃい!準備は出来てるよ」
「「「「おおおーーー!!」」」」


 な、な、なんと!!完璧なパーティーの準備がされているではないか!!
 豪華なものでは無いけれど飾り付けがされており、用意されたテーブルの上にはジュースとお菓子!!ここに今まで集めたお菓子も加えて…レッツ・パーリィー!!


「「「かんぱーい!!!」」」


 そして私達は楽しんだ。使用人のみんなも混じり、美味しいお菓子にジュース。女性達は太っちゃーう!とか言いながらバクバク食べるし、男性陣は飲み比べを始めている。…ハロウィンってこんなだっけ?まあいっか!
 ララもガイラードに猛アタックしてるし。気付かれていないと思っているのは本人だけで、城中のみんなが彼女の想いを知っているのだ。だから、微笑ましく見守られている。
 うーん、やっぱこういうイベントっていいよね。後片付けとか大変だからしょっ中はやりたくないけど!でもドロシーはいつまでパイまみれのままなんだろう…?



 少し夜風に当たりたくてテラスに出る。…わあ、綺麗な月だなあ…。お月見なんかもいいなあ。


「楽しんでる?アシュリィ」
「お父様!」

 そう言いながら私に上着を掛けてくれた。そういえば、少し肌寒い。…普段の超過保護を除けばいいお父さんなんだよなあ…。でも、今日はありがとう。すっごく楽しかった!

「うん、僕もだよ。今度は…アシュレイ達も招待しようね」
「…うん!!」



 そして私は…気になっていたことを聞いてみた。


「ねえお父様…再婚は、考えてないの…?」

 もちろんお母さんのことを忘れて欲しくない。でも…お父様だってまだ若い。魔族の平均寿命はなんと1000を超えるので…まだ300そこらのお父様にはいくらでもチャンスはある。若くて格好良くて魔王だから、女性人気も高いし。


 お父様は私の質問に気を悪くするでもなく、苦笑しながら答えてくれた。

「うーん…今のところは考えてないね。シルビアさんのことを忘れられないってのもあるけど…ねえ。あと500年くらいしたら、分からないかな」

 なんじゃそら。でも…気が向いたらでいいか。今度はお父様が私に質問してきた。


「それよりアシュリィは…どう、思ってる?結婚について…」
「私の?うーん…ピンと来ないなあ。そういう相手もいないし」
「そう…。ディーデリックを始めとして、婚約の話は沢山あるんだよ。もちろん…相手が人間でも構わないし」
「あれ、お父様より強い男性じゃなきゃ駄目なんじゃなかった?」

 にししと笑いながら言った。お父様も、少しは子離れする気になったってことかな?

「それはもちろん!でも…腕っ節だけが強さじゃないよ」


 …珍しくまともなことを言っている。でも、そうだよね。


 アルとリリーのような関係を羨ましく思うこともあるし…そうだね。いつか私にも…そんな相手が出来るといいなあ。



 そうしてこの日宴会は明け方まで続き、みんな仕事を午後から始めるのであった。



 たまーには、そんな日があってもいいよね!!
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