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学園
04
しおりを挟むさて時間は17時、パーティーの時間だ。私は支度を終え、ディードにエスコートされ会場入りした。もちろん、軍服(私はドレス)である。三人衆は従者服を着ると言うので、仕立ての良い執事服を着せた。うーん、私の従者がこんなにも可愛くて格好いい。
会場入りした私達は注目の的である。周りは新入生ばかりなので12歳、小さい子も多いのだが…貴族なだけあって私達に話しかける子はいない。大体遠巻きに見ているだけだ。
「デメトリアス・グラウム殿下の入場です」
その声に扉の方を向くと、従者と共に入ってくる皇子と目が合ってしまった。まあこの会場に王族は他にいないので…自然と彼が近寄ってきた。多分知り合いもいないんだろう。
まあ別に良いけどさ、リリーもいないし。こいつは気に食わないが、リリーを美しいと言ったところだけは評価せざるを得ない。彼もさっきの話を蒸し返すことはせず、なんか普通に世間話が始まった。
「そういえば殿下、そちらの彼を紹介してもらっても?」
そんで気になっていた眼鏡の従者さんのことを教えてもらう。ただ…私が話題を振ると従者さんはビクっとし、皇子も一瞬だが顔を顰めた。?ディードと顔を見合わせる。仲悪いんか?そりゃこの皇子の世話は大変だろうに…
「…俺のことは名前で呼べ。こいつはティモ、俺の従者だ。…こいつは聴唖者だ、受け答えを期待するな」
「分かった、私達のことも名前で呼んでちょうだい。ティモもね。うちの3人と仲良くしてくれると嬉しいな」
聴唖者?…耳は聞こえるけど言葉を発せないのか。ティモは私達にぺこりと頭を下げた。しかも家名を言わないってことは平民?
先天的か後天的か分からないけど…彼らの様子からするとあまり言及しないほうがいっか。
というより、ティモを私達にあまり近付けたくないみたいね。さりげなく自分の背中に隠してる…なんかあるな。後でアルに聞いてみよう。
そのままパーティーは進み、皇子とは別れ私達はお偉いさんや先生方に挨拶に行った。その後は生徒達からの挨拶を受け、少し言葉を交わして次。なんで人途切れないの…魔族と関わり持ちたい家多すぎ…。だから留学は先生以外は知らなかったのに、情報伝わんの速いわ!!
「こんなに沢山の若者がいるのは凄いな」
疲れている私とは逆にディードはテンション高めだ。彼はこの国の貴族制度に慣れていないから、なんも考えずにあちこち声をかけようとして大変だった。
貴族の学校っつーのは社会、社交界の縮図だ。私達が気軽に声をかけたら、その家を庇護するっつってるようなモノ。よーく言って聞かせた。
また目下の者から声をかけるということは、魔族で言うとガイラードがお父様に「おっす陛下、仕事サボんじゃねーぞ!」と言うようなもの。と説明したら有り得てはならないことだと納得していた。
私達赤目の魔族は無条件で他の魔族から一目置かれ敬われる。軽々しく声をかけていいのは身内か同じ赤目だけなのだ。
ちなみにだが直系でも赤目じゃ無い人もいる。例えば私のお祖父様がそうだ、彼は茶色の瞳ですから。じーさんもお父様も赤目だけど…不思議だね~。だからといって立場が変わることは無いけど。
とにかく、私達はこの学校において気軽に用も無く誰かに声をかけちゃいかん。アル達は別、友人ですから!
逆に話しかけられた場合もよろしくない。ま、みんな家で教育を受けている貴族の子弟だからね、アイニーのようなお馬鹿さんはそうそういない…
「あのう、同じ編入生の方ですよね?ご一緒してもいいですか?」
「「…………」」
いた…。なんか私達にふっつーに声をかけてきたのは…誰?
「あ、ごめんなさい、私アンナ・ナイトリーって言います。ナイトリー男爵家の娘です。私も今年から4年生に編入するんですけど、周りは年下の子ばっかりで落ちつかなくて。
なので同じ編入生同士、仲良くしてくれませんか?」
「「…………」」
まじか。なんか、えへへとか言いながらへにゃっと笑ってるけど…まじか。
目の前にいる女子生徒は、顔立ちは特別美人って感じじゃ無いけど…愛嬌があるっていうか、笑顔が可愛いタイプ?ディードが対応に困って私に視線を向けてきた。こういう時は…
「失礼、ナイトリー様。我が主人は尊い身分のお方。御用がありましたら私達にお申し付けくださいませ」
ここでずいっと前に出たのがアイルである。だが彼女は引くことを知らないようだ。
「え、え、なんで?」
「…身分が下の者から上の者に話しかけるのはマナー違反です。用が無ければお引き取りを」
「ええ~?なんでよう!それっておかしくない?私はただお話がしたいだけなのに身分って!従者は引っ込んでで!」
いや…貴女もおもくそ身分で相手見下してんじゃねーか。そのまま彼女は聞いてもいないのに自分のことを語り出した。
アンナ・ナイトリーはナイトリー男爵と貴人でない女性との間に産まれた子供。その為つい最近まで市井で暮らしていたのだが、男爵夫人が事故で他界。男爵が娘と愛人を屋敷に迎え入れたのが半年前。なので今年から編入生として入学…だから何?よくまあ身内の恥を堂々と語れるな…
「だから、私と仲良くして欲しいな~なんて。それよりそのドレス、見たことのない型ですね!どこで買ったのか教えてもらえませんか?」
彼女はくねくねしながらそう言った。アイルがむっちゃ困ってる。私からは彼の背中しか見えないが、物凄く戸惑っているのが分かる!
任せてらんねえ!と言わんばかりに今度はララとパリスが前に出る。アイルはしょぼぼんと下がった。
「この場にいらっしゃる以上、マナーは守るべきであると思われますが。我が主人は魔王陛下のご息女、隣におわすのは次期魔王陛下候補のお方」
「貴女様が気軽にお声をかけていい相手ではございません」
ヒューウ、かっこいーい!!執事服の2人はくっそ可愛いイケメンだ!!あ、アイルも格好よかったぞ、率先して前に出て偉かったぞ!だから拗ねないでー…
「え、魔族なの!?すっごーい、初めて見ました!それよりあなた、獣憑きよね?可愛いー、耳触らせて!」
「お断り致します。ぼくのこの身に触れて良いのは、我が主人と彼女の認めた方のみ」
「なんで!?獣憑きって奴隷なんでしょ!?だったらそんな…」
「そこまでだ」
ちびっとだけピキっとキちゃいました、アシュリィです。私の大切な友人に暴言を吐く者を許すことは出来ません。
彼女達の肩に手を乗せ微笑み、ナイトリーを睨みつける。怯んだようだが私は止まる気は無い。
「この子達は私の大切な従者であり、護衛であり友人である。彼らは私の身を守り、私は彼らの名誉を守る。
1度だけ見逃そう、次は無い。私の友人…彼らを貶めることは私に対する侮辱として受け止める。その覚悟が無いのならば金輪際私達に近付かないように」
ちょびっとはさ、いきなり貴族社会に連れて来られたんだから優しく諭してあげようって気もあったのよ。虚しく霧散したが。
でもここにいる以上、マナーに疎いという言い訳は出来ない。だってこの寄宿学校、強制じゃ無くて通わなくてもいいんだもんよ、特に令嬢は。だから入学したってことは自分か親の意思でいるんだ。ならば責任というものがある。
「むー!私は──…」
「あらあらナイトリー令嬢、あちらでお話しませんこと!?」
「さあさあ!!殿下、御前を失礼致します!おほほほほ!!!」
なおも発言しようとしたナイトリーを…新入生の令嬢2人が有無を言わさず連れ去った。うん、実はさっきから周囲が青ざめた顔で私達のやりとり見てたわ。
暴走する男爵令嬢を止めたいが、魔族の前に出ていいものか…と迷っていたんでしょう。最終的に無理やり連れて行ってくれて助かった…
「ディード…もう帰ろっか…」
「ああ…今のは…」
「忘れていいよ。彼女の為にも、優しくしちゃ駄目だよ。まあ貴方がナイトリーさんに一目惚れしちゃったんなら止めないけど、魔国には連れて来ないでね」
「安心しろ、それは無い」
そりゃ良かった。私達が出口に向かおうとすると、自動的に人の波が割れ道が出来た。私はモーセだった…?というアホなことを考えていたら、皇子の姿が目に入った。
なんか言いたそうな顔してるけど…何?まさか「今の言い方は無いだろう、彼女が可哀想だ!」なーんてこと吐かすつもりじゃあるまいな。今気が立ってるから、今度こそ私が飛び蹴り食らわすぞ。
「……お前はその従者達が大切か?そいつらの為に、自分の立場を賭けるほどに」
…?全く予想外のことを言ってきた。そんなモン、当たり前でしょうが。もしも彼らを悪く言うのなら…貴方相手でも許さないよ。貴方だって自分の従者が大切なんでしょう、だったら私の気持ちも分かるでしょーが。
そう言ったら…目を丸くしていた。その後微笑んで、ティモを連れ会場を出た。デフォルトでドヤ顔かと思ってたけど…意外と表情豊かだな。
はーあ、初日から疲れた…。リリー達と再会出来た喜びを、皇子とナイトリーが全部持って行きやがった。
…………ん?
最近まで市井で暮らしていた男爵令嬢…。私の隣にいるのは次期魔王候補(ディーデリック)。
更にこの学校にはこの国の第2王子殿下(アルバート)、第3王子殿下(ジェイド)。大将軍の息子である公爵令息(アシュレイ)、隣国の第1皇子殿下(デメトリアス)。いずれもタイプは違うが美形であり、ついでにランス様やヨハネス様(トゥリン兄)…更にこのアイルとか入れて…色んな立場のイケメンが勢揃いし。
もっと言えば…元悪役令嬢もいますよね。
…なんか、別のゲームが始まっている気がしないでもないんだが!!!?
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