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学園
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しおりを挟む「きゃあっ!しかもイケメンじゃん!」
なんだ、この喧しい小娘は?ただでさえ姫君と碌に会話が出来ず、イライラしているというのに。だが…
「わ~!やっぱ獣憑きいいな~!私も欲しいのに、パパが買ってくれないんだもん!あ、ねえあなた!あなたが彼らの主人なんですかあ?」
……へえ。こちらに駆け寄ってくる小娘は、お世辞にも美しいとは言い難い。姫君やその友人、従者のような美貌は無いが…愛嬌があるというのだろうか。磨けば光る原石とも言える。
何より…私の趣味を理解しているようだ。彼女となら…分かり合えるかもしれない。
「……ご令嬢。お名前を伺っても?」
「はい!私はナイトリー男爵家の娘、アンナと申します~」
「私はグラウムより参りました。タンブル侯爵家の──…」
「……どう?」
「なんか…盛り上がってるわね…」
マジか。どんな超反応起こすか楽しみゲフンゲフン、心配していたというのに。遠目で観察するけど…2人は談笑している。たまにナイトリーがセルジュさんの尻尾を触って…わあ、こっそり顰めっ面してらあ。お願い我慢して…!
「ちょっと挑発が弱かったかな。本当はデムと、もっとイチャついてみせたかったんだけど…」
アナタの入る隙はごぜーませんの、指咥えて見とけやぷっぷー…的な。でもね。
「………………」
そうすると、この男…ずっと私を後ろから抱き締めているアシュレイが拗ねる。ま、まあ、私も?あんまりデムとの関係が噂になって。いざアシュレイとの結婚発表になって…2股してたのかー!って後ろ指を指されるのヤだし?
「…こほんっ。情報班!!」パッチィン!
「「はいっ!!」」ざんっ!
「だから何従えてんだってお前は…」
実は私も不思議に思ってるとこさ。さて、トゥリン兄妹にお願いがある!!
「ヨハネスは2人の会話を盗み聞き。気になる話題が出たら報告よろしく!
そんでマルガレーテも同様に接近して。さり気なく周囲の令嬢達にデムの名前を出して、2人に意識させて!」
「「ラジャー!」」
ぐっ!と互いに親指を立てて、2人は走り去る。健闘を祈る!
「あの、よろしいですか?」
ん?私達に声を掛ける令嬢2人組…学園の生徒だ、寮とかですれ違った事あるわ。親にくっ付いてきたのかな?
「はい、なんでしょうか?」
「その…お2人は、お付き合いされているのですかっ!?」
「「えっ」」
きゃあっ、聞いちゃった~!と盛り上がってらっしゃる。私とアシュレイは…えっと…
「こほん。つ…付き合っては、いません」
「「そうなんですか!?」」
そうなんです。
「「(今もまるで恋人のように、抱擁されているのに…?)」」
…その目やめて…。距離感バグってる自覚はあるから…
「そうだ、正式な告白はまだしていない」
「「(まだって言っちゃってるじゃん…)」」
…こほん。おほほほほ、お祖父様直伝、笑って誤魔化す!!!
「面白そうな話をしているではないか」
「「へ」」
どこからか…低くて重量感のある声が降ってきた。そろ~…と後ろを振り返ると、レイヴァン様!?
アシュレイが慌てて私から離れ、隣に立った。ただし手は繋いでいる。レイヴァン様はその姿に、ほお?と口角を上げた。ちなみに令嬢達は彼の迫力に逃げた。
そうだ…これはチャンス!いずれアレンシア家には、お父様と一緒にご挨拶に行く予定だった。ここで先制ジャブ!
「レイヴァン様!」
「ふむ?」
「今すぐではありませんが…アシュレイは私と共に魔国へ参ります!」
「…ふむ?」
「いずれ父と正式にご挨拶へ伺わせていただきますが、その前に!アシュレイをここまで育ててくださったお2人に、許可をいただきたく!」
「ア…アシュリィ…っ!」
アシュレイが握った両の拳を、顎の辺りに当てた乙女のポーズでキューンとしてる!…あれ、なんか立場違くない?まあいいわ!
キリッ!とレイヴァン様及び夫人を見上げる私。キュンキュンしているアシュレイ。公爵夫妻は顔を見合わせている。
「…えーと、アシュレイ。いずれ結婚して…魔国に行くのよね?」
「はい、母上」
「…つまり婚約している…と?」
「まだです」
「「なんで?」」
なんでとな?つまり今の私達は…
告白してなけりゃ、付き合ってもいない。ましてや婚約もしていないが…結婚はする!という事です。
「……(最近の若者は分からん…)そうか。で、ではいずれ、魔王陛下とお目通りが叶う日を楽しみにしておるぞ」
は~い。沢山お土産持って行きますね!お2人はそそくさと、いなくなっちゃった。
さて…義両親への挨拶は完璧!向こうはどうなったかな…
「アシュリィ様!タンブル令息とナイトリー嬢に進展がありました!」
「「!」」
ヨハネスが伝令のように走ってきた。…よし!
「アル。ベルディ殿下とジェイド、3公爵を集めて。言い逃れ出来ない状況を作る!」
「オッケー」
そして私達もすぐに移動!決定的瞬間を逃しちゃいけない。
…正直言って、ここまでする必要はあるのか…ずっと考えてた。けどもう、駄目。リアちゃん達の涙を見た時に、腹は決まった。
…やるなら、徹底的に…!!
デムとアシュレイを連れて、ターゲット目指して足を動かす。上手いこと失言させて、そこから揚げ足取りまくってやる…!
と、意気込んでいたんだけど。
ざわざわ ひそひそ どよどよ
「えーっ!?うっそー!デメトリアス殿下が偽物って、どうゆう事ですか!?」大声
「アンナ嬢!!しーっ!!!」小声
「やだ私、騙されてた!?やだあ!」超大声
ズザザザザァッ!!!
まさかの展開に…3人揃ってスライディングしてしまった。
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