190 / 224
学園4年生編
sideパスカル
しおりを挟む庭までグラスを探しに来たら、なんか…剣が地面に刺さってた。メモが貼ってある、『抜け』とな?
それを手に取ると、何処からともなくグラスが現れた?彼はカタナを手に…俺に向かって構える。…そうかい!
俺達は合図も無く、同時に地面を蹴った。剣とカタナが打つかり、火花が散る。
「………!」
「ぐぅ…!」
思わず呻き声を上げてしまう。奴の攻撃は軽いが、スピードは俺より遥かに上だ。なんとか猛攻を凌ぎ、一瞬の隙を突き叩く!!!
「なっ…!」
ガシャン、とカタナが地面に落ちる。俺はグラスの首に剣を突き付け勝利宣言をした。
「俺の勝ちだ。だから……あーーーっ!!?」
に、逃げた!!負けたなら大人しくサインしろやーーー!!
急いで追い掛けるも、また見失った!!なんだあんの野郎ぉ…!
「ん…?」
厨房の前を通り過ぎようとしたら…扉に張り紙があった。『中に入れ』…どう考えても俺に向けたものだろう。
ノックをしてから開けると…コック帽を被りエプロンを着たグラスが、仁王立ちで俺を出迎えた。審査員席と書かれた椅子に、ロイ、ラッセル、ファロ殿が座っている。ま、さ、か…!
「勝負だパスカル。お題はこのさつまいもを使ったスイーツ」
「え。ちょっと待って」
「レシピは好きなもんを見ろ。制限時間は1時間だ!!」
えーーー!!!奴は手早く調理を始めた…やってやるわ!俺も帽子を被りエプロンを装着し、レシピに目を通す。なんで俺だけフリフリエプロンなんだよ!!!
えっと、えと…簡単スイートポテトにしよう。
まず皮を剥く…あれ、本体が小さくなった。
「(なんつーベタな事するんだあの子。面白~)」
ファロ殿の視線が生温い。ちょ、ちょっと剥きすぎたかな?次、輪切り!
「硬いな…ソイヤッッ!!!」
包丁を叩き付けたら、まな板まで切れた。まあいい、芋は切れたんだし。それを繰り返していたら、まな板が小さくなってしまった。
ん?審査員席が…若干後ろに下がっている気がする。
「そして芋を潰す!!ふぐぐぐ…!」
「……(茹でる工程すっ飛ばしてる。生で潰せないだろう…)」
今度はロイが哀れみの視線で鍋を見る。あ…茹でるのか。失敗失敗、よし!寸胴鍋たっぷりにお湯を沸かす!多ければ多いほどいいはずだ。
……中々沸かないな。
「はーい、残り30分でーす」
「え、もう!?」
嘘だろ、この後オーブンで加熱もすんのに!?もう生でいいわ、後で焼くんだから!!
力ずくでクラッシュして、適当に砂糖とか牛乳とかぶち込んで練って、時間が無いので300度に熱したオーブンでさっさと焼く。あちち!
出来上がったものは…
「おかしい…なんでボロボロなんだ?写真と違うぞ…?」
「「「「………………」」」」
俺は本気で疑問なのに、4人は呆れた顔をしている。ちなみにグラスはさつまいものパンケーキ。悔しいが、美味い…。
で、俺のは?なんで審査員は誰も食べようとしない?無理矢理食わすと…全員口を手で押さえた。そんなに美味い?
さて結果は…
『グラス』『グラス』『グラス』
「なんでだよ!!?」
「こっちのセリフだ。なんでコレで勝てると思った…?」
グラスが俺のスイートポテトを食べながら言う。くそ、牛乳が足りなかったか…!?グラスは不味いと言いながらも完食、そのまま逃走。また追いかけっこかい!!!
勉強、ゲーム、変顔等多様な勝負を挑まれ、勝敗に関係なくグラスは逃げる。なんなんだ一体!?
さっきなんて持久力勝負で、30分間走り続けた…げほっ。廊下の真ん中で膝と手を突き休憩。あの男、絶対捕まえる!!
さて…立ち上がろうとしたら
「ぐえっ!?」
「……………」
背中に衝撃が…!思わず床に突っ伏した。なんだ!?と顔を上に向けると…
「グラス!!」
「…………」
奴は俺の背中に横向きに座っていた。俺を一瞥すると、ふんと鼻を鳴らす。
早く降りろ、サイン寄越せ!と言いたいが…そんな雰囲気でもなく。俺らはその体勢のまま、暫く無言でいた。
「…おれはお前が嫌いだ」
疲れからか眠気がやって来た頃、ようやくグラスが口を開く。そうかい。
「俺はお前の事嫌いじゃねえぞ」
「はあっ!?」
なんだその反応は。俺は…
「お前のはっきりと物言う性格も、気高いところも。
…同じ人を好きにならなければ、きっといい友人になれたと思う」
「…なんだそれ。勝者の余裕かよ?お嬢様に選ばれたからって…!」
「違う。
…俺は。お前が羨ましかった」
「あ?」
シャーリィの従者として側にいるお前に嫉妬した。俺のいない間に取られてしまうんじゃないかって、焦った。だって…
「シャーリィも…たまにお前を慈しむように見つめていたから」
「…お嬢様が?」
そうだ。彼女は時折、グラスをそんな目で見ていた。俺には見せてくれた事のない表情で。いや…その時はシャーリィが、別人に見えるんだよな。
多分だけど。彼女も…無意識にグラスに惹かれていたんだと思う。しかも根っこのほう、本能と言うか…
「お前達が並んでいる姿を見る度に。俺は…自分が間違っている気がしてしまうんだ。
本当はシャーリィの隣には、俺じゃなくてグラスがいるべきなんじゃないかって。それが自然なんじゃないかって…」
「…(精霊達も、似たような事を言っていたな…どういう事だ…?)それでも…お嬢様がお前を選んだのは確かだろうが」
「そうだよ。それでも不安は拭えなかった」
だから毎日毎日スキンシップを取り愛を囁き、身体を求めた。そうする事で…安心したかった。
「あー…義兄上、ナハト先生も似たようなモンだな。この人は絶対安全だって思える。
逆にお前には、シャーリィを奪われると怯えてしまう。これも本能か?」
「知るか。おれだって…お前を初めて見た時。おれからお嬢様を奪う敵だと認識した」
「そうか。なあグラス」
「……なんだ」
「お前が俺を殺したい程憎んでいても。俺は…絶対にシャーリィを諦めない。お前だって、理解出来る感情だろう?」
「………………チッ」
仲間だからな。
しかし…やべ、眠い…。緊張して昨日は寝てないし…もう2時間くらい歩いて走って上って下ってを繰り返して、いたから……
「あー、クソッ。理解出来るっつーのが悔しくて仕方ねえ。チクショウ…ん?」
「………ふわあぁ…」
あー…意識が…
「どうせなら…シャーリィの膝枕で眠りたい…いや、彼女を腕枕したい…」
「そこは全面的に同意する。って…本当に寝てやがる…」
薄れゆく意識の中。グラスが俺の懐を漁り…
「ああ、認めてやるよパスカル・マクロン。お前こそ、シャルティエラ様の隣に相応しい男だってな。
でもな…絶っ対祝福はしねえ!結婚式だって出てやらん!」
ああ…それで、いいよ…
でもな。今日の勝負…どれも楽しかったぞ。本当に、そう思う…
そのまま引き摺られる感覚が…その頃には完全に、俺の意識は…ぐぅ…
※※※
「…ん?」
次に目を覚ましたのは、もう暗くなってからだった。月明かりを頼りに時計を見ると…午後10時!?6時間も…って、ここどこだ?
俺の部屋じゃない…というか、温かくていい匂い…。俺の腕の中に、何か……!!?
「シャッ…!」
「…ん~…」
シャーリィがいる…!?しかも彼女は俺の背に手を回して、足を絡めて密着している!ここはシャーリィの部屋か!
服は!?着てる……シャーリィの…ナイトドレス姿…ヤバい。
この状況はまずい。俺は眠る彼女を見つめて…ごくりと喉を鳴らした。すると俺が動いたせいか、彼女もゆっくりと目を開けた。
「…?おお、起きたの~パスカルゥ…」
「ああ…おはよう」
心臓の鼓動が早い。聞かれないよう、離れないと…!だが彼女は微笑み、俺にキスをしてきた……殺す気か?
「えへへ、おめでとうパスカル!」
「ん…?」
彼女はベッドの頭に手を伸ばし、ライトを点けて…紙を見せてくれた。そこには…『グラス・オリエント』のサインが追加されて、全ての枠が埋まっていた。
「グラスが君を、執務室まで引き摺ってきたんだよ。全然起きないから…わたしの部屋に運んだの」
「……それは…つまり。公爵も…認めているという事だな?」
「う…ん…」
俺が上に覆い被さると、シャーリィは顔を赤くして目を逸らした。ん?紙の裏側…何か書かれている。
『もう俺は、お前らの行動に口は出さねえ。ただし結婚するまでは、シャーリィは家の用事を優先してもらうからな!』
これは…義父上の字か?そうか…
「精霊達は?」
「あー…皆、ヨミの部屋だよ」
そうか。
「…………………」
シャーリィは俺を不安そうに見上げる。しかしその視線は熱を帯びていて…俺達は口付けを交わした。深く、何度も。
「…愛してる、シャーリィ」
「………うん…わたし、も…」
そうして俺は、彼女のドレスに指を掛けたのだ。
65
あなたにおすすめの小説
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
【完結】記憶が戻ったら〜孤独な妻は英雄夫の変わらぬ溺愛に溶かされる〜
凛蓮月
恋愛
【完全完結しました。ご愛読頂きありがとうございます!】
公爵令嬢カトリーナ・オールディスは、王太子デーヴィドの婚約者であった。
だが、カトリーナを良く思っていなかったデーヴィドは真実の愛を見つけたと言って婚約破棄した上、カトリーナが最も嫌う醜悪伯爵──ディートリヒ・ランゲの元へ嫁げと命令した。
ディートリヒは『救国の英雄』として知られる王国騎士団副団長。だが、顔には数年前の戦で負った大きな傷があった為社交界では『醜悪伯爵』と侮蔑されていた。
嫌がったカトリーナは逃げる途中階段で足を踏み外し転げ落ちる。
──目覚めたカトリーナは、一切の記憶を失っていた。
王太子命令による望まぬ婚姻ではあったが仲良くするカトリーナとディートリヒ。
カトリーナに想いを寄せていた彼にとってこの婚姻は一生に一度の奇跡だったのだ。
(記憶を取り戻したい)
(どうかこのままで……)
だが、それも長くは続かず──。
【HOTランキング1位頂きました。ありがとうございます!】
※このお話は、以前投稿したものを大幅に加筆修正したものです。
※中編版、短編版はpixivに移動させています。
※小説家になろう、ベリーズカフェでも掲載しています。
※ 魔法等は出てきませんが、作者独自の異世界のお話です。現実世界とは異なります。(異世界語を翻訳しているような感覚です)
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~
浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。
本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。
※2024.8.5 番外編を2話追加しました!
公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています
六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった!
『推しのバッドエンドを阻止したい』
そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。
推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?!
ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱
◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!
皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*)
(外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる