捨てられた中ボス令嬢だけど、私が死んだら大陸が滅ぶらしいです。

雨野

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序章

初めてのお買い物

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 わあ…!
 町に入り少し歩くと…沢山の人が行き交っている。
 道の両側にお店があり、美味しそうな匂いが漂ってくるわ。

'おお~すごい!まさに中世の街並みって感じ!'

「?お店は食べ物や装飾品ばかりね。調味料はどこかしら…お店って建物じゃないのね」

'正確には露天商だな。向こうは居住区かな?多分布団とかは、違うとこ行かないと無いよ'

「マリンは分かるの?すごいわ、私なんて町に降りたの初めて!」

'いや、私も初めてみたいなもんだよ。それより…独り言に見えるから、声量落としなー'


 あ。
 どうりで…ヒソヒソと遠巻きにされてると思った…


'どこかに商業地区があると思う。そこに行く前に…財布だけ買っとこう'

「はーい、わかったわ」(小声)

 こほん。では…
 大通りを散策しながら、商業地区とやら目指します。


 わいわい がやがや

 すごい…賑やかって、こういう事なのね。
 老若男女、笑顔の人が多いわ。
 思ったより他人が怖いという事もない。やっぱ私って図太いのかも?


 お財布…あった。
 カバンなんかを売ってるお店ね、どれにしよう…

「おう坊主、何が欲しいんだい?」

「!!えと…」

 商品を眺めていたらおじさんに話し掛けられ、咄嗟に言葉が出ない…!
 あわわ…!見かねたのかマリンが声を出す。

'セレスト、わたしの後に続いて。
「財布を探してるんだけど、おすすめある?」'

「さ…財布を探してるんだけど、おすすめある?」

「財布ね。一番安いのがこいつで、銅貨8枚だ」

 やっす!!と口を突いて出そうになり、必死に飲み込む。
 おじさんが手に持つのは、シンプルな白いお財布。うーん…

「そっちの…刺繍が入ってるのはいくら?」

「お、見る目あるねえ!こいつはお高めで、銀貨2枚するぜ。買うかい?」

「どうしよっかな…」

 マリン、どう思う?という意味を込めて呟いた。

'いいと思うよ!お金は足りてるし、気に入った物を買いな!
 わたしのお金はセレストのお金なんだから、ね?'

「…じゃあこれで」

「まいどありー!」


 超笑顔のおじさんに見送られ、露天を後にする。
 早速お財布にお金を入れて…ふふ。

「ありがとう…マリン。いつも助けられてばかりでごめんね」

'気にしないで。というか、子供がそんな事言わないの!
 わたしだって…貴女しか話し相手がいないしね。Win-Winの関係ってやつさ!'

 うぃんうぃん?彼女はたまに、意味不明な単語を使うわ。




 あっちこっち歩き、行き止まりになり。
 路地裏に入りそうになり、マリンが止めてくれた。

'だめだめ、賑わってても路地はだめ。
 ぶっちゃけ貴女なら強盗だろうと返り討ちだけど、目立ちたくないでしょ?'

「まあ…ね」


 私はまだ子供だ。魔法はそれなりに使えるけど…弱い子供。
 マリンという保護者がいても、他人に彼女は見えない。

 誰か心より信頼できる大人に出会うか、自分が強い大人になるまで。
 魔法は隠して…ひっそり生きようと決めたの。子供じゃ世間に舐められて搾取されて終わりだもの。

 その後で大成して伯爵家を見返しても、遅くはない。というか…


 今私は森で、充実した毎日を送っている。
 だから…復讐する理由って無いのよね。
 お母様だって死因は病気で、伯爵は医者の手配をしていた。放っておかれたから亡くなった訳じゃない、誰も悪くないの。

 まあ10歳の娘を捨てたのは、世間的にも非難される事だけど。
 本当、私じゃなかったら死んでたわよ。


 …そういえば。あの時熊を…砂に変えた魔法。なんだったのかしら…?
 マリンは教えてくれなかった。彼女は親切な一方で、どこか一線を引かれてると感じる時もある。



'おっと、それっぽい通りに出たね。まず布団を買いに行く?'

「あ…そうね、ふかふかのやつ!」

 考え事をしていたら、いつの間にか目的地に来てしまった。
 よーし、今は切り替えよ!



 お店の看板を頼りに、寝具の店を発見。こほん…


 カランカラン…


「いらっしゃいませ…あら?ぼうや、お店間違えてない?」

 わ、女性店員さんに話し掛けられた。でも…さっきよりは落ち着いて対応できそう。

「間違えてないよ。布団を一式買いに来たんだ」

「お金はありますか?」

 む、疑われてる。

'大丈夫、堂々として。服はいい物だから、多分冷やかしの坊ちゃんくらいに思われてるんだよ。金貨を…3枚チラッと見せてみ?'

 そっか、ありがとう!

「これくらいで足りる?まだあるけど」

「まあ…これは失礼致しました。ごゆっくりお選びください」

'おっし!これで客に認定されたね、じゃあ選ぼう'


 よかったぁ~…!実は心臓バクバクだったの、切り抜けたあ…
 改めて店内を見渡す。ふむ…どれがいいかな。

'分からなかったら、それこそ一式買おう。敷布団、掛け布団、毛布、枕、シーツ類'

 そうね、では。
 店員さんを呼び、要望を伝える。


「それでしたら、こちらがよろしいかと…
 全部で金貨2枚と銀貨50枚になります」

 いい物が買えて、ホクホクでお会計。だが!!

「その…お持ち帰りですか?屋敷にお届けしますか?」

「あ」

 忘れてた…!すぐボックスに仕舞うつもりで、どうしよう…!!
 答えられずにいると、店員さんも首を傾げる。マリン助けて…!

'セレスト、続けて。「持ち帰りたいから…'

「も、持ち帰りたいから、馬車を呼んでくる。でも町は不慣れで…貸し馬車屋、どこか知らない?」

 たどたどしく伝えると、親切に貸し馬車屋への道のりを教えてくれた。


「はぁ~…!ありがとうマリン!」

'どういたしまして。まあ賭けだったんだけどね…。このくらいの時代背景なら、貸し馬車があると思ったんだ。そんな声も聞こえたし'

 マリンは行き交う人々の会話から、この町の情報を得ていたらしい。ただ観光していた私とはえらい違いだわ…

 運搬用馬車を借りて御者を雇い。
 布団を回収、次は香辛料のお店!


'塩、胡椒、砂糖…わ、コンソメまである!
 ここって中世ヨーロッパってイメージだったけど…やっぱ別なんだなあ。
 でもなんでケチャップやマヨネーズはあるのに、味噌や醤油はないのかな?'

 マリンの呟きがうるさいけど、お店を歩いて回る。
 棚に沢山の瓶があり、どれにしようか迷っちゃう。

 私は料理なんて全然だから、ここもマリンの助言通りにお買い物。
 ガチャガチャと、瓶が入った袋を持って店を出る。


 それ以外に念願のまな板や、細かな生活用品を買う。小さいテーブルも欲しいな。
 動物を狩るのは抵抗があった為、最近お肉を食べていない。

「いっぱい買って腐らないかな。干し肉の方が…」

'平気だよ、ボックスの中身は時間が経過しないから'

 すごい…もう私、怖いものなしだわ。


 その後屋台で買い食い、アイス美味しい~。

「ふう…買い物はこのくらいかな」

「お坊っちゃん、すごい荷物ですねえ。お屋敷はどこですか?」

「まず町の外に出てくれ」

「え?はい…では出発します!」

 そんな驚かれても、私は森に住んでるもの。
 …これからも住み続けるなら。町に家を買っておくのもいいかしら…?

'……いや、いつどうなるか分からないし、ボックスに入らない物は買わない方がいい'

 ?マリンがそう言うなら、やめよっと。

'セレスト…いくらなんでもわたしを信用し過ぎじゃない?'

 そうかしら。確かにあなたに依存してるかも。でもね。


「私、あなたにだったら騙されてもいいわ」

'……バカだね、貴女は'

 バカで結構。
 そんなやり取りをしていたら、町の外まで出ていた。
 よし…周囲に人影なし。荷物を全部仕舞って、ホウキを出して。

「(あれ、急に軽く…?)」

「ここまででいいよ」

「へっ!?」

 声を掛ければ、ゆっくりと馬車が止まる。
 御者はこっちに振り向くと目を丸くした。

「大荷物は…?」

「『書き換えるリライト』」

「………ご利用ありがとうございました。今後ともご贔屓に…」


 魔法を使うと…御者の瞳は虚になった。
 お金を払い、彼はフラフラと帰って行く…これで大丈夫?


'平気さ。今のは記憶のすり替え魔法。彼はセレストを「屋敷まで送り届けて仕事完了した」と認識している。
 まあ貸し馬車屋に戻る頃には、セレストの事も忘れてるはず'

「魔法怖い…」

'いや、精神操作系は何度も使われると耐性ができるんだ'

 へえ…また知識が増えてしまったわ。



 ホウキに跨り空を飛び、家まで帰ってきた。

「ただいま」

 ふう…何から始めようかしら。
 でももう外は薄暗い。ご飯を食べて水浴びして、寝てしまおうかしら。

'そうしよっか。さあ、暖かい布団が待ってるよ!'

「おー!!」

 まずはすのこを置いて、その上にお布団!
 用事を全て終わらせ、寝支度をして…お布団にダーイブ!!


「……はわあぁ~…!久しぶりの、お布団…!」

 ベッド?脇にテーブルを置き、おしゃれなランプで洞窟を照らす。
 不思議ね、殺風景な洞窟なのに。伯爵家の自室より…ずっとずっと落ち着く…


「おやすみ…マリン…」

'おやすみ。…良い夢を'


 久しぶりに他人と会話した疲れもあってか、私はすぐに眠ってしまった。
 明日は…何をして、過ごそうかな………










「……………あ、あー。うん、問題ない。
 ふう…ようやく身体の主導権を握れた。全くこの子は…わたしを警戒しないから、こうなるんだ。
 ……本当に、おバカな子…」

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