捨てられた中ボス令嬢だけど、私が死んだら大陸が滅ぶらしいです。

雨野

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第1章

傭兵 シオウ・ファルマー

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 それから数日。今日のお昼はコンソメスープ~♪
 たっぷり野菜にベーコンに~♫最後はふんわり溶き卵~♪
 とコトコト煮込んでいたら。


「……っ!?なんだ、誰か来た?」


 誰か…結界に触れている!
 実は私の結界には、認識阻害の魔法が二重に掛かっている。
 結界の存在に気付かず、ぶち当たったら無意識に迂回する物だ。

 それが効いてないのは…可能性は2つ。
 私より上位の魔法使い。それか…


「単に非常に勘の鋭い…動物以上に野生的な人間!」

 食べ頃のコンソメスープをお皿に盛って、大事に保護しながら反応がする方へ走る!
 だってこれ以上は卵が固くなりすぎちゃう!

 更にボックスから隠密ローブを取り出し羽織る。これで気配や音なんかを消してくれるのさ!



「……んだコリャ。見えねえ壁がある」


 あー美味しい。私料理の才能あるかも。

 木の上でスープを飲みながら、お客さんを観察する。
 背中には剣、革製の防具。傭兵…か?結界をノックの要領で叩いている。


「…ん?すんげーいい匂い…」

 何!?まさかこのローブ…匂いは消せないっ!?なんだよう、星3アイテムのくせに!

 傭兵さんはくんくんと鼻を動かし…こちらを真っ直ぐに見据える。
 私はその間もスプーンを止めない。10メートルくらい距離はあるし。


「なー、誰かいんのか?」

 ん~…どうしよう。
 傭兵さんはシャルル卿と同じくらい…10代後半?金の短髪で、いい体格をしている。


 ………ん?




『よう、お客さん。あんた、俺みてえなロクデナシとツルんでちゃあ、親父さんが泣くぜ?
 ……そうかい。趣味悪いねえ』




 あ!!!お金大好きな傭兵、シオウ・ファルマー!!また攻略対象者かよ!!

 ちなみに彼の攻略には非常にお金が掛かる。
 彼に依頼を何度もして…ようやく友人以上になれる。

 最終的には大好きなお金よりも、ルージュが大事になる…ありがちよね。



 さて…じゃあ帰るか!


「あれ、匂い遠ざかった!?ちょちょい!!」


 ……んもー。
 仕方ない、追い返すか。
 ローブを脱ぎ、姿は見せないが話し掛ける。


「なんか用?」

「おっ。いやさ、よかったら飯分けて?俺朝からなんも食ってなくてー」

「……目的は?」

「えー、それ聞いちゃう?そうだなー、腹いっぱいになったら口も軽くなるかもな」

 ぬぬ…だがこれは私のスープだ!
 新しいの持って来るから待ってろ!と言い残して一旦戻る。


 帰っててくれればいいなーと無駄な希望を抱きつつ、新しくスープをよそって持って行く。


 木の陰からそっと覗くと…うん、いる。
 岩の上に腰掛け、小鳥にちょっかい出してる。
 ……個人的に、動物に好かれる人は悪い人じゃないと思っています。


「ちょっと、そのまま動かないで」

「お?はいよー」

 ローブをもう1度被り、結界ギリギリまでそっと近付き…
 地面に小さい台と、スープとスプーンを外に置いて離れる。

「むっちゃ丁寧な!?わりーな、いただきまーす」

 む…警戒せずに食べ始めた。
 まあこっちも毒入ってないよーという意味で銀のスプーンにしたけど。

 彼はガツガツと食べ、ごっそさん!と笑顔で言ってくれた。
 食器の回収は後、姿は見せずに対話を試みる。


「で?なんの目的でこの森に?」

「(まだ幼い女の子の声…まさか?)いやあ、おにーさん傭兵さんでさ。ここにゃどこぞの伯爵様の依頼でね」


 伯爵…?この、森に…?
 どう考えてもあのクソ親父だろう。今更なんの用で…!!
 私の生活を脅かすのであれば、容赦はしない。
 シオウにはどうしても吐いてもらうぞ…!!

「(!?やば、怒らせた…?すげえ殺気…これ下手すりゃ死ぬわ俺)
 あ、あー!胸糞悪い話なんだが…伯爵が娘をここに捨てたってな。
 そんで死体を確認してきて欲しいって…」

「……ふーーーん…。傭兵さんが、ペラペラ依頼内容話していいの?」

「えー、この国に伯爵って50家くらいあるし?いーんじゃね?」


 ……ふん。
 彼がゲームと同じ性格なら、初期段階では長い物には巻かれとくタイプだ。
 なら…こっちが伯爵以上の金を出し、更に私に逆らうのは危険だと思わせればいい。

「…そういやさ、これは独り言なんだけど。伯爵からの依頼料って金貨30枚なんだよな~」

「………………」

 なんだ、話が早いな。傭兵さんは臨機応変さが重要かもね。


「あなた、名前は?」

「俺?シオウ・ファルマー、18歳!」

「……そう」

 偽名は使わない…傭兵としては信用してよさそう。
 私はボックスからとある物を出し、巾着袋に入れてブンッ!と投げた。

 それはシオウさんの顔面に飛んで行き、「おっと!」と言いながらも余裕でキャッチした。


「じゃ、もうここには来ないでね」

「あ…行っちまった…どれどれ。
 へえ、金貨50枚…いやマジかよ。半分冗談だったのに…
 それとなんだこの布?」

 その布とは。私が…この森に捨てられたあの日。着ていたドレスの破片だ、サービスで血痕も付けといた。
 賢そうな彼なら分かるだろう、私の意図が。


「……オッケー。じゃあねお嬢ちゃん、スープ美味かったぜ~」


 彼が遠ざかる姿を、木の上から見送った。
 完全にいなくなったところで…台を回収する。

 ……ん?銀のスプーンが無い!
 あんの野郎ぉ~…!




 …しかし。娘の死体の確認…か。
 胸が少し痛むのは…僅かでも父親を想う気持ちが、残ってたって事なのかな。

 今頃人を寄越すって事は、世間で『セレスト・ティアニー失踪事件』のほとぼりが冷めたからか。
 なんだか寂しい…眞凛に会いたい。



「…………ぅ…」


 あ、泣きそう。どうしよう…父親がクズなんて、知ってた事じゃん!
 堪えろ私…!ここで泣いたら…親の愛を渇望して、捨てられた…哀れな令嬢になり下がるだけだ!


 たたたた…


 え?足音が近付いて…っ!?


「……んー。俺ってばロクデナシの傭兵さんだけど。女の子の涙は見たくないのよね」

 持っていた台が地面に落ち、お皿が割れる音が周囲に響く。
 なんで…逃げたんじゃないの?
 私はシオウさんに正面から抱き締められている。

 抵抗する気が起きないのは…寂しさが勝ってしまったからかな…


「うう…ゔゔぅ~~~…!」

「よーしよし。いい子だな~」

 彼はゴツゴツした手で私の髪を撫でて。
 背中をポンポンと優しく叩く…
 私にこんな事をしてくれたのは、お母様だけだった。

 悔しいけれど涙は止まらず。結局…落ち着くまでずっと側にいてくれた…





 それからシオウさんは、何度か森を訪ねてきた。
 いつからか、結界を叩くのが自然と合図になっていた。
 私も顔を隠すのはやめて会いに行く。

「ねーねー、この結界通してよ」

「やだ」

「けち」

 傭兵の彼は…私より金払いがよくて強い人がいたら、そっちの味方になるでしょう。
 シオウさんを嫌っている訳ではないけど、洞窟暮らしが脅かされるのはごめんだ。


「そういやさ、伯爵すっかりセレストちゃんが死んだって思い込んでるわ」

「ふうん」

 もう胸は痛まなかった。私の人生に…ティアニーは要らない。


「セレストちゃん冬越せるの?」

「去年も森で越したよ。でも今は町に家を買ってあるから、そこで過ごすつもり」

「まじ!?じゃあ泊めてよ~。宿代も馬鹿にならんのよ」
彼は両手を口の前で合わせて「おねが~い♡」と首を傾げる。
 可愛くないぞ…と呆れつつ。家なら入れてもいいかな、とも思う。


「いいよ」

「そっか~残念……はい?」

 シオウさんは目をまん丸にした。
 なんか…エルム様達も同じ顔した事あったな。

「…ふはっ!自分で言い出したくせに、何固まってるの」

「いや…そうなんだけど。もちっと警戒した方がよくない…?」

「してるよ。私の方が強いから、襲われても余裕で反撃できるってだけ」

 よいせ、と腰掛けていた岩から立ち上がる。
 彼が屋敷を管理してくれたら、それはそれで助かるし。



 運命乙女のシオウというキャラ。
 他の「可愛いルージュたん泣かせるセレストまじぶっ殺!」なメンズと違い、唯一最後までセレスト殺害に難色を示していた。
 なんとか争わないよう…対話を試みて。
 最期もせめて苦しまないように、と一撃で葬った。

 もしかしたらゲームでも幼少期、こうやって出会っていたのかもしれない…


 しかしあのゲーム。ストーリーはキャラ毎にかなりのボリュームで、胸キュン甘酸っぱい青春ファンタジーなのに。
 中ボスとラスボスは共通なんだよね。まるでセレストの運命は変わらないと告げているようで、不快ではある。


 …今のうちにルージュを始末してしまえば、セレストが死ぬ可能性は限りなく0になる。
 しないけど。他に回避する方法があるのに、自分から外道に堕ちる気はない。



 さ、行動はスピーディーに。
 戸惑うシオウさんをホウキに乗せて、町へ向かった。



 これからは屋敷にも調味料とか必要か。調理器具は揃ってるし。
 お肉や卵の生ものは毎日買うのが普通だ。それ以外は常備しておこう。


 ただ。飛んでる間ずっと後ろから…
「後で家賃払えとか言わない?」「俺あんまお金ないんだけど」「食材とか消耗品とか、どんだけ使っていいの?」「光熱費は…」と、うるさい!!!

 あるもん好きなだけ使え!!!とブチ切れたら、「言質取ったからね?」と念を押された…



「ここが私の家だよ」

「わー立派。マジでいいの…?」

「うん。ちょっと待って…」

 シオウさんが結界を通れるように…よしオッケー。
 しかし早速客間が役に立つね!


「この部屋使って。私以外いないから、好きにしていいよ」

「ひえー…マジで金持ちなのね」

 彼はまだ半信半疑なのか、寛ごうとしない。
 まあいいけど…宿にある荷物、取りに行けば?

「……後で追い出さない?」

「しないよ。そんなに性格悪くないつもりだけど?」


 全く…失礼しちゃう。
 何度も確認して、振り返りながら彼は宿に向かった。
 さて、戻って来る前に。一応あの人に連絡しておかなきゃ。


【…セレスト?】

 はい、エルム様です。彼はあの後も数回うちに来ている。
 もう友達と言っても過言ではあるまい。だから将来殺さないでね。

「お久しぶりです。今日は報告があって…今大丈夫ですか?」

【ああ】

「実はお屋敷に、同居人が増えまして」

【………は?使用人を雇ったのか?】

 同居人だってば。経緯を説明すると…


【はあっ!?じゃあお前、傭兵の男と、2人暮らし…!?】

 いや驚きすぎでは?
 通信機の向こう側で、勢いよく立ち上がる姿が目に浮かぶわ。

「私はいつも通り基本は森ですから。彼には宿として提供する代わりに、管理を任せようかと…」

【な、は……!待ってろっ!!】


 え。通信切れてる。
 …心配性だな~…お茶の準備しとこう。


 十数分後。扉をドンドン叩く音が…鍵開いてますよー。

「はあ、はあ…!傭兵はどこだ!!!」

「荷物取りに行ってます」

 シャルル卿と共に走って来たのか、エルム様は大量の汗をかいて肩で息をしている。
 それと同時に…カバンを1つ持ったシオウさんが、反対側の道から歩いて来た。


「ありゃ…こちらは?」

「ああ、ブロウラ…」

「お前か!!なんの目的でセレストに近付いたっ!!?」

 どあっ!!エルム様は私を引き寄せ、後ろから強く抱き締めた。
 でも…私の方が背が高いから、ちょっと体勢キツいんだけど。
 シャルル卿も困り顔で、一応こっち側に立つ。

「(貴族の坊っちゃん…ブロウラン公子か…)俺はシオウ・ファルマーと申します。
 今回はセレストお嬢さんのご厚意に甘え、屋敷に居候させていただく事になりました」

 シオウさんはにこやかに挨拶をした。
 エルム様は一瞬怯んだが、ふん!と鼻を鳴らす。

「弁えてはいるようだな。だが少女1人の家に転がり込むなど、非常識だと思わんのか!!!」

「少女が1人暮らししている時点で、普通ではないかと…」


 …………。


 沈黙が落ちた。まあ…みんなそう思うよね。
 とにかく!エルム様の拘束から抜け出し、手をパンパン叩いて落ち着かせる。

「はいはい、シオウさんは荷物を置いてきてください。
 お2人はひとまず談話室へどうぞ」


 エルム様も大人しく従ってくれて安心。
 談話室に全員集合、お茶を淹れて私も座った。


「それでエルム様、何か心配事が?私の実力は、あなたが誰よりもご存知のはず」

「……家族でもない男と、一緒に暮らすなんて…」

「下宿みたいなものですよ。
 シオウさんも仕事があるし、常に家にいる訳じゃありません」

 何より…この家の主人は私で、エルム様はお友達。
 それこそ家族や恋人でもないのに、口出しする権利は無いでしょう。


「……心配、なんだ…。この男も微量ではあるが魔力持ちだし…
 何か、あってからでは遅いんだ…」

「………ふぇ?」


 エルム様は…目に涙を溜めて俯いてしまった。
 か…可愛い…!!年下なのもあって、母性本能が撃ち抜かれた気分…!


「……心配はとても嬉しいです。
 ですがこの家には貴重品もありませんし。危害を加えられそうになっても、余裕で返り討ちにできます」

 シオウさんは私の言葉に深く深~く頷いた。ちょっとイラッとするな…
 結局シャルル卿と一緒に説得し、何かあったらすぐ連絡する…という事で落ち着いた。


「さて。ちょっと早いけど、私は夕飯の準備に入ります」

「え?まだ昼の3時だが」

「今日はたっぷり煮込んだビーフシチューにしようと思いまして!」

 食材はちゃんと揃っている。同居人が増えるお祝いだ!


「マジ?うわ楽しみ!セレストちゃん、コンソメスープもめっちゃ美味かったし。
 将来いい嫁さんになりそうだな」

「そんなに褒めてもシチューしか出ないよ」

 でも純粋に嬉しいので、どんどん褒めてくれていいですよ。
 ソファーから立ち上がると…視線を感じる?


「「……………」」


 エルム様とシャルル卿が、目を輝かせて私を見ている。
 これは…


「……召し上がっていかれますか?」

「「喜んで」」


 …4人分か。お代わりとか計算して…多めに作っとこう。




 厨房に立ち、髪を縛ってエプロンを着ける。
 シオウさんも手伝うと言ってくれたので、じゃがいもの皮を剥いてもらって…と。

 エルム様も間に入ってきたが、包丁で指切ってた…

「あーあー。『治癒ヒール』」

 彼の指に触れて、治癒魔法を掛ける。
 この『治癒ヒール』はポーションと同じような役割を果たす。
 上位互換は『再生リボーン』、これは失った手足まで再生できるもの。まあ、ポーションとエリクサーの間くらいと思えばいい。


「すまない…やっぱり大人しく待ってる…」

 エルム様はがっくりと肩を落として包丁を置いた。何がしたかったんだ…
 最後にシオウさんをひと睨みして出て行ったぞ。

「(セレストちゃん好かれてる~)にしても元お嬢様が、随分と手際いいね?」

 そりゃまあ、貴族は厨房なんか入りもしないしね。
 彼の疑問はもっともだ。

「魔法の師匠…お姉ちゃんが教えてくれたんだ」

 正確には、眞凛の記憶を頼りにしているだけ。
 それでもシオウさんはそれ以上何も言わず、じゃがいもを茹でていた。




「ふう…じゃがいもはまた、最後に入れるとして。
 これから120分煮込むので、シオウさんも離れていいよ」

「そう?じゃあなんかする事ある?」

「ん~…お風呂掃除をお願いしていい?」

「ほいきた」


 彼は意外にも料理の手際がよかった。ちょっと雑だけど、助かったわ。
 煮込んでいる間にサラダを作り…足りないな。
 成人男性2人に食べ盛り男子が1人いるし、グラタンも作ろう。


 掃除を終えたシオウさんが再び手伝ってくれて、今日のご飯は完成だ!



「「おおぉ~!」」

 素人の料理だけど、エルム様達は感心したように声を上げた。
 ダイニングチェア、4つ買っといてよかった。
 私とエルム様、シャルル卿とシオウさんが並んで座る。お口に合えばいいのですが。

「!美味い!セレスト、うちの料理人より美味いぞ!」

「ありがとうございます。料理人さんにそれ、言わないでくださいね…」

 実際プロには負けるので。
 だけど、みんな美味しい!って言ってくれると…意思に反して眉が下がる。

 眞凛には…そう言ってくれる人がいなかったから。


「……ふふ。お代わりもありま」

「お代わり!」

「早い!!」

 エルム様、構ってちゃんで食いしん坊か!
 なんか弟ができた気分…お肉たっぷりよそってあげよう。

 シオウさんもシャルル卿も競うように食べてくれて。
 次は何を作ろうかな?と思ってしまう。

 …おや?シオウさん…銀のスプーン使っとる。パクられたやつ!
 私の視線に気付いたのか、彼はニヤ~…とスプーンを齧った。…全く。


 夕飯終了…30センチの寸胴鍋いっぱいに作ったのに、シチュー無くなっちゃった。
 私は1皿しか食べてないけど。楽しかったしお腹いっぱいなので大満足。
 3人からは食べ過ぎてごめんなさい!と謝罪されてしまった。
 全く気にしていない、むしろ嬉しかった。そう素直に言えば、また食べに来たいと言ってくれた。

「…はい。では私が家にいる時で予定が合えば、またご馳走させていただきます」

「絶対だぞ」

 シャルル卿が食費を払おうとしたので、それは断固拒否した。
 これは…通信機のお礼も兼ねているのでね。
 多分エルム様はお金や品物じゃ、受け取ってくれないからさ。そこまでは言わないけど。



 ブロウランの2人は帰り、私達は後片付け。
 お風呂に入り…寝支度をする。


「じゃーセレストちゃん、おやすみ!」

「…おやすみ、シオウさん」



─おやすみマリン。明日も新しい魔法を教えてね!─

─はいはい。寝る子は育つ、とっとと目を閉じなさい─



「……?どしたん」

「いや…また明日ね」

 部屋に入り、真っ直ぐにベッドに向かう。


「寝る子は育つ…だよね。おやすみ、眞凛…」


 少しだけ目頭が熱くなりながら、私は眠りについた。

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