転生聖女は休まらない 〜スローライフがしたいのに弟2人が自重しない件〜

花月風流

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第15話 昨日と明日の間

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第15話 昨日と明日の間

 地面に整列して座らされている『鷹の目』の傭兵達。
 たった1人に素手で制圧されてしまった彼等は反抗する気力を無くしているのが見て取れた。
 そして彼等が来た理由を大人しく話してくれる。

「ふむふむ。なるほどね? つまり君達は隣国に依頼されて国境を越えて来たと」

「はい」

「目的は小競り合いを起こして騎士団や軍がどの辺で出てくるかの線引きを確認する……更に速さや規模を見極めるためと」

「はい」

「ついでに略奪を行なって治安を悪化させたり民に不安の種を蒔ければ尚良しと」

「はい」

「なるほどね……迷惑極まりないねぇ」

 エーゲルさんは苦笑している。

「本当ですね……」

 我が家は街から遠いし、周りに民家も無くて孤立しているし、確かに狙われる要素はあったのかも知れない。

「なあニュクス、こんな感じで十分じゃ無い?」
「いや、足りない。もっと深く、魂さえ浮上出来ないほど深く……」

 弟達は穴を掘っている。
 傭兵団の墓穴にするのだと言い張っていた。
 ただの脅しだと思うけど、やり方が怖い。

「話によれば前回も散々な目に遭ったんでしょ? よく2回も来ようと思ったね」

「……内容の割に金の良い仕事だったんだ。傭兵なんてのは戦争でも無けりゃ大きく稼げやしないしな。受けてから後悔したよ……あいつら国境を閉鎖しやがった。仕事を果たせずに帰れば口封じされてお終いだろうよ……」

「それは……なんとも……」

 自業自得だけど、可哀想でもある。
 お金の為に馬鹿な依頼を引き受けたのは悪いと思う。
 でも、反省しても思い直しても戻る道が無いのは酷い話だ。

「反省、してるんですよね?」

 私の問いに傭兵団の団長が頷く。

「ああ。本当に馬鹿だったと思うよ……」

 俯いて涙を流す団員もいる。

「エーゲルさん、この人達の罪を許してあげられませんか?」

 (また余計な事を言っちゃってる……)

 自分で自分に呆れてしまう。
 それでも仕方が無いのだ。

「ほう?」

 私の言葉に騎士は面白い物を見るような顔をする。
 ……腹は立ったし、馬鹿な事をする人達だとは思う。それは間違い無いけど……
 
「エーゲルさんのお陰で私達も怪我をせずに済みました。後悔という罰を背負い反省で償おうとする彼等にはその機会が与えられるべきだと思うのです」

「……まるで聖女様のような事を言われるお嬢さんだね」

 (あ……しまった)

 私は左手の甲を隠す。エーゲルさんは良い人なのだと思うけど、出来れば家族以外には知られたく無い。

「とはいえ、私達が見逃してあげても国に帰れないのでは野盗になるか野垂れ死ぬかしか残されていないのだが……」

 目を閉じて考えるエーゲルさんが楽しそうに見えるのは何故だろう?

「……仕方ないですね」

 ニュクスが穴から出てきて溜息を吐いた。

「僕から提案があります」

「ふむ?」

「ここは王国が直接治める土地であり、土地の開墾は自由ですよね?」

「確かにそうだね。間に貴族は居ないから使う土地に応じた税さえ納めれば何の問題も無いよ」

「では、農地を拡張して彼等を雇用します。彼等は傭兵ですからいざとなれば有事の際に国境の防衛にも使える。王国にとっても悪い話では無いでしょう」

「見張りだって言って時々遊びに来たら、兄ちゃんも姉ちゃんのご飯食べれて良いんじゃないの?」

 プロイも笑顔で会話に混ざって来る。

「あ~、それは魅力的な話だなぁ!」

 エーゲルさんも笑顔で応じる。

 (……まあ、ひと月に一度とかならご飯を作るくらい良いけど?)

「まあ、流石に私が勝手に決めると問題があるからね……陛下に相談して返事をする事になるけど良いかな?」

「はい、よろしくお願いします」

 私が言うと傭兵団が慌てて頭を下げる。
 頷いた騎士は私に歩み寄り、耳元に囁く。

『私の魔法とお嬢さんの手については、お互い内緒という事で』

 (うわ……見られてた……)

 微笑んだ騎士はまた明日来ると言い残して帰って行った。

 私は残された傭兵団と弟達、大穴を見てこっそり溜息を吐く。

 (平穏……遠ざかってる気がするなぁ)

「あー、取り敢えず悩むのは後回し! ニュクス、プロイ、ちゃんと穴は埋め直してね。傭兵の皆さんは野菜を採りにいくから手伝って下さい」

 明日後悔するかは判らないけど、今日を頑張らないと幸せにはなれない。
 積み重ねる努力と悪足掻きで未来が決まると思うから。
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