転生聖女は休まらない 〜スローライフがしたいのに弟2人が自重しない件〜

花月風流

文字の大きさ
45 / 74

第45話 訪問者

しおりを挟む
 騒動の翌日、私達はエンデ代表との面会を済ませて街を散歩していた。
 褒賞を出したいという申し出もあったが、旅費だけ頂いて後はお返しした。
 私の目的はあくまでブーちゃんの救出であって、正直言って議会の件はたまたま……ついでだったのだから。

 何日でも逗留して行って欲しい、とは言われたものの自宅の事も心配なので長居する訳にも行かない。

「お姉様、明日にも帰られるおつもりとは……」

 ローサが寂しそうに横を歩く。

「隣国なんだし、また遊びに来るから、ね?」

「……」

「私も、来る。ローサ、また、会いたい、の」

 肩に乗ったブーちゃんも言うが、やはりローサの表情は沈んだままだった。

 そう、契約を結んだ聖獣であるブーちゃんも私について来る事に決まったのだ。
 この点についてはエンデさんも賛成してくれた。

 今日くらいは、ローサが楽しんでくれるようにしたいな、と思った矢先だった。

「姉さん、よろしいですか」

 ローサに向けていた視線を戻すと、別行動をしていたニュクスが立っていた。
 手にはやたら派手な色の飴を持っている。

「どうしたのニュクス……何か凄いの持ってるね」

 指摘した飴を背に隠して、少し頬を染めたニュクスが他所を向く。

「こ、これの事は良いんです……その、姉さんに面会を希望している人が居まして……」

 ニュクスが耳元で囁いた言葉を聞いた私は溜息を吐く。

「えーと、その人は何処に?」

「あちらの店でプロイが応対しています。……僕は店の前で警戒しますので……」

 私は頷きを返してローサの目線に高さを合わせる。

「ごめんローサ、少し人と会わなきゃいけないみたいで……ニュクスと待ってて貰える?」

「それは良いのですが、お姉様にお客様ですか? この国で……?」

「うん、私も話しておかなきゃいけないと思うから……」

 避けて通るべきじゃ無い。
 そんな相手が向こうからやって来たのだ。

 ニュクスにローサを任せて店に入ると、プロイの明るい金髪が直ぐに見つかった。

「お呼び出しして申し訳ございません。私からお伺いしたかったのですが、弟様がどうしてもお許し下さらないもので……」

 私がプロイの待つ席に向かうと、やたら背の高いやせぎすな男が笑顔を見せてきた。

「そうでしょうね。それで私に何の御用ですか? 聖女信仰の司教さん」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 運ばれて来たお茶を飲もうとすると、横からプロイがカップを掴んでひと口飲んだ。
 そして笑顔でカップを返して来る。

「ほう? それは?」

「毒でも入って無いか確認したんだ。俺、そういうの直ぐ判るから」

 プロイは毒物が通用しない。昔、かなり毒性の強い毒キノコを誤って食べてしまい私達が慌てる中、平然として見せた事もある。

「これはまた……嫌われたものですね」

 嘆きながら肩を竦める彼を信用できる気が全くしない。

「これまでの経緯から信用しろと言うのが無理だとお解りでしょう? それで、私に何の御用ですか?」

 男は一見優雅な仕草で自分のカップを持ち、中身を含んでから語り出す。

「この度は聖女様に大変な失礼をしてしまいまして……我々も己の不徳さに恥じ入るばかりです」

 そう言って、両手を机について頭を下げる。

「……あなた方がされた事は許せるものではありませんが……何か事情がおありなら……」

「姉ちゃん!」

 プロイが席を立ち私を守るように体を入れて来る。
 やせぎすな司教の手が懐からナイフを取り出して……

 ダン!

 机に乗せたままの自らの片手に突き立てた。

「な……何を!」

「愚かな行いをした我々にまでそのようなお気遣いをされる聖女様ぁ! その御心に報いるには我が血を以てお応えするしかぁ!」

「そ、そんな事は望んで無いですから!」

「ダメだ姉ちゃん、やっぱこいつ頭がおかしいって! 取り敢えず逃げ……」

「お待ち下さい! 申し訳ございません。少々取り乱しました。あまりにお優しい聖女様の御心に触れ、昂ってしまいました」

 男はナイフを一息に抜くと、また懐へとしまった。
 プロイの言葉も解る。ちょっと普通とは思えない相手だし、私だって関わりあいたく無い。
 それでも……聞かなきゃいけない事は何一つ聞けていないまま逃げるのは……。

 私は椅子から浮かせた体を戻して、真っ直ぐに男を見る。
 表面上は有効的な笑顔のままだ。

「……聞きたい事があります」

 私の言葉に、彼は満面の笑みで頷く。

「なんなりと。私は貴方の僕(しもべ)でございます」

 彼は恍惚とした表情になりながら両手を広げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

処理中です...