転生聖女は休まらない 〜スローライフがしたいのに弟2人が自重しない件〜

花月風流

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第46話 誰かの思惑

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「それで、何をお聞きになりたいのですか? なんなりと、ええ、なんなりとお聞き下さい」

 恍惚とした表情のまま私を見る彼に対して、鳥肌が立つのを実感する。
 伸ばすのに苦労しただろう茶色の髪は肩の辺りで切り揃えられ、頬のそばかすの上には狂信を宿した青い瞳が見える。

「では、あなた達の目的……」

「我々の目的は聖女様の偉大さをこの世に生きる全ての生き物に伝える事です! 人、獣、必要であれば神まで! 私に命じて頂ければ今すぐに命を絶ち、神さえ信徒にして参ります!」

「いえ……結構です……」

 言い切る前に答え出し、想像とは違う方向で返された。

「どうして聖獣を隷属させようなんて……」

 今度は先程と違い、腕を組んで悩むような顔をする。

「これは情け無い話なのですが、謀られたのです。あの偽物、偽物、偽物め! 聖女様を騙って我々を騙すとは……」

 興奮した男が何度も拳を机に叩きつけ、その度に傷口から血が流れる。
 流石に……見ていられない。

 私は懐から布を出して、男の手を掴み傷口を抑えるように巻く。

「……っはぁ!? 聖女様に……手当てをされ……なんと慈悲深い……!」

「……見てるこっちまで痛い気がして嫌なだけですから」

 私の巻いた布をうっとりと眺める彼を見て……やめておけば良かったかもと少しばかり後悔する。

「我々は騙されたのです。聖女を名乗る偽物に……。西の聖獣が見つからないから北の聖獣を連れて来いと……ついでに北の街を混乱させればそれを自分と聖女教が収めることで権力も握れて尚良いと……」

 これが事実なら頭が痛くなる話だった。
 こんな馬鹿な事を考えた者と実行した者。
 そして少なくとも、今の話で片方は思い当たる人物が浮かんでしまったのだから。

「もしかして……聖女マリアンヌ?」

 男が目を剥いて前のめりになる。

「いけません、なりません、おやめ下さい! 聖女を騙る不浄のものの名など口にされてはいけません!」

 (あ……やっぱりそうなんだ……)

「なるほど。企んだ人は解りました。それでその……聖女教? というのは……」

「姉ちゃん、話の途中なんだけどさ……」

 プロイが入り口の方を指差す。
 私もそちらを見ると、小さく手を挙げるニュクスの姿があった。

「すみません、少しだけ失礼しますね」

「いえいえ。私の事はお気になさらず。1年でも100年でもお待ち致します」

「そんなには……」

 苦笑をしつつニュクスの方へと向かう。

「どうしたの?」

「すみません姉さん。西から旅人に扮した遣いが来ました。聖女マリアンヌが謀反を起こして戦闘が始まったとの事です」

 軽く目眩を覚えてしまう。
 今まさに辿り着いた相手が自国で謀反を起こしているのだから目眩もする。

「可能であれば姉さんにも国へ戻って欲しいと」

 私が戻った所で……と思う気持ちもあるが、聖女教の事などは伝えなくてはならないし。どの道明日には戻る予定だったのだから……

「解った。ニュクス、申し訳無いんだけど帰り分の食料とか買って来て欲しいの」

 頷くニュクスへある程度纏まったお金を渡して店の中へ戻る。

「どうかなされましたか?」

 司教の男が私の目を見つめて来る。
 事情を説明すると、頷いてから口を開いた。

「では、私も同行させて頂きましょう。あの偽物へ礼もしなくてはなりませんし、騙されたままの同胞もいるやもしれませんので……」

 私は一瞬迷う。この人もこの人で危険が無いとも言い切れない。
 しかし……

「解りました。ただ、おかしな動きをされたらそこでお別れです。それでも良ければ……」

「ありがとうございます。聖女様に従い私の義務を果たすと私の信仰を賭けてお約束致します」

 恭しく礼をする彼の全てを信用は出来ないが、聞いた事には答えてくれるし敵意だけは一切感じない。

「それじゃ、プロイ。帰ろうか……西の国へ」

「おー! 行こう姉ちゃん」

 こうして、私達は西の国へ向かい出発する事になった。
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