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第55話 踏まれ続ける
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「はい、我々は所謂魔族です」
さらりと言ったように見えるけど、ヘルムスの感じている重圧は凄い物だと思う。
デュシス王国の盾とまで呼ばれるエーゲルさん、そのエーゲルさん程では無いかも知れないけど……十分に強い陛下。
聖獣と一緒に居る私も一応は戦力になるかも知れないとして。
プロイとニュクスも呼べばすぐ来れる隣室で休んでいるし、ヘルムスとバイアンにとっては死地になりかね無い状態なわけで……。
「すまんが、もう少しだけ結界を縦に伸ばして貰えんか? 頭が結界に当たって痛いのだ!」
思考に沈みかけていた意識を戻すと、バイアンの首が可哀想な角度になっていた。
ブーちゃんに合図して結界を伸ばして貰う。
助かった、と歯牙を見せて笑うバイアンはあまり重圧など感じて無いかも知れない。
「魔族が人間に擬態して王国に牙を剥いた、という事かな? いや、それにしては」
少し目を細めたエーゲルさんが錆色の髪を掻き上げる。
「ああ、回りくどいな。さらに……ヘルムス君で良いのかな? 君はアイリスさんに協力して混乱を収めるべく動いてくれたと。そして彼女を神のように崇めるわけだ」
「そうそう、そこなんだが。ヘルムスよ、何故あの娘に肩入れするのだ? 我々は聖女様のお味方をするのでは無かったのか? うわ、何をする!」
陛下の疑問に対してバイアンの疑問も続けられる。
レオ陛下には笑顔で頷き、バイアンには唾を吐きかけてからヘルムスが口を開く。
「先ずはバイアンの馬鹿に対しての答えを。貴方が聖女様だと言っている彼女は偽物です。こちらに居られる我が神こそが至高のっ! おんっ……かたっ!」
その場で回ってから膝をついたヘルムスが恍惚の表情で見てくるので目を合わせないようにした。
「おいおいヘルムス、お前こそ馬鹿じゃ無いのか? あっちが本物でこっちが偽物だろう。どう見たってこんな小さな娘っ子が……」
陛下が半笑いで頷くのでバイアンに左手の甲を向ける。
「んん? なんだ? 拳で語るのか……って、せせせ聖女様の印!?」
流れるように膝をついたバイアンが額を地につける。
そして立ち上がったヘルムスがその後頭部を踏む。
「申し訳ございませんでしたぁ! あ、痛い」
彼の叫びが響いた後に聴こえた溜息は誰のものだったのか。私のかも知れない。
「そして次に王のお言葉についてですが」
バイアンの頭を踏んだままヘルムスが言う。
「私達が本来お仕えするべきは魔王様でありました。そうですね、少なくとも200年前迄は」
語るヘルムスと踏まれたバイアン以外は頷く。
それが魔族というもので、だからこそ人間と魔族は相容れないのだ。
私の知る200年前の記憶でも、人と魔族はお互いの存亡をかけた戦いを幾度と無く繰り返していた。
「しかし、今は違います。我ら魔族の使命は新たに生まれるであろう聖女様を待ち続け、自らの代でお会いする事が叶ったのならば……」
いつもの気持ち悪い……じゃなく、蕩然とした視線とは違い、とても温かい物が宿った瞳で私を見る。
「聖女様をお守りし、その意思に従うこと。それが我々の使命であり、喜びです」
「ゔむ。ぞのどおりだ!」
今や顔全体で地面と接しているバイアンも同意する。
「どうして……」
思わず言葉に出てしまった私の顔を見て、ヘルムスが微笑む。
「聖女様が私達を許して下さった。聖女様が我々を解放して下さった。だからです」
私にも、恐らくエーゲルさんや陛下にも理解出来無い話だと思う。
だって聖女は……いや、私は魔王を……?
微かに痛む胸は、私の知らない私からの訴えだったのかも知れない。
さらりと言ったように見えるけど、ヘルムスの感じている重圧は凄い物だと思う。
デュシス王国の盾とまで呼ばれるエーゲルさん、そのエーゲルさん程では無いかも知れないけど……十分に強い陛下。
聖獣と一緒に居る私も一応は戦力になるかも知れないとして。
プロイとニュクスも呼べばすぐ来れる隣室で休んでいるし、ヘルムスとバイアンにとっては死地になりかね無い状態なわけで……。
「すまんが、もう少しだけ結界を縦に伸ばして貰えんか? 頭が結界に当たって痛いのだ!」
思考に沈みかけていた意識を戻すと、バイアンの首が可哀想な角度になっていた。
ブーちゃんに合図して結界を伸ばして貰う。
助かった、と歯牙を見せて笑うバイアンはあまり重圧など感じて無いかも知れない。
「魔族が人間に擬態して王国に牙を剥いた、という事かな? いや、それにしては」
少し目を細めたエーゲルさんが錆色の髪を掻き上げる。
「ああ、回りくどいな。さらに……ヘルムス君で良いのかな? 君はアイリスさんに協力して混乱を収めるべく動いてくれたと。そして彼女を神のように崇めるわけだ」
「そうそう、そこなんだが。ヘルムスよ、何故あの娘に肩入れするのだ? 我々は聖女様のお味方をするのでは無かったのか? うわ、何をする!」
陛下の疑問に対してバイアンの疑問も続けられる。
レオ陛下には笑顔で頷き、バイアンには唾を吐きかけてからヘルムスが口を開く。
「先ずはバイアンの馬鹿に対しての答えを。貴方が聖女様だと言っている彼女は偽物です。こちらに居られる我が神こそが至高のっ! おんっ……かたっ!」
その場で回ってから膝をついたヘルムスが恍惚の表情で見てくるので目を合わせないようにした。
「おいおいヘルムス、お前こそ馬鹿じゃ無いのか? あっちが本物でこっちが偽物だろう。どう見たってこんな小さな娘っ子が……」
陛下が半笑いで頷くのでバイアンに左手の甲を向ける。
「んん? なんだ? 拳で語るのか……って、せせせ聖女様の印!?」
流れるように膝をついたバイアンが額を地につける。
そして立ち上がったヘルムスがその後頭部を踏む。
「申し訳ございませんでしたぁ! あ、痛い」
彼の叫びが響いた後に聴こえた溜息は誰のものだったのか。私のかも知れない。
「そして次に王のお言葉についてですが」
バイアンの頭を踏んだままヘルムスが言う。
「私達が本来お仕えするべきは魔王様でありました。そうですね、少なくとも200年前迄は」
語るヘルムスと踏まれたバイアン以外は頷く。
それが魔族というもので、だからこそ人間と魔族は相容れないのだ。
私の知る200年前の記憶でも、人と魔族はお互いの存亡をかけた戦いを幾度と無く繰り返していた。
「しかし、今は違います。我ら魔族の使命は新たに生まれるであろう聖女様を待ち続け、自らの代でお会いする事が叶ったのならば……」
いつもの気持ち悪い……じゃなく、蕩然とした視線とは違い、とても温かい物が宿った瞳で私を見る。
「聖女様をお守りし、その意思に従うこと。それが我々の使命であり、喜びです」
「ゔむ。ぞのどおりだ!」
今や顔全体で地面と接しているバイアンも同意する。
「どうして……」
思わず言葉に出てしまった私の顔を見て、ヘルムスが微笑む。
「聖女様が私達を許して下さった。聖女様が我々を解放して下さった。だからです」
私にも、恐らくエーゲルさんや陛下にも理解出来無い話だと思う。
だって聖女は……いや、私は魔王を……?
微かに痛む胸は、私の知らない私からの訴えだったのかも知れない。
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