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第58話 近くの幸せ
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「姉ちゃん、姉ちゃん!」
「……姉さん」
私を呼ぶ声に目を開けると、私は寝台に寝かされ両手を弟達が掴んでいた。
身体を起こしてまだボンヤリする頭を振ると、ハクやブーちゃんの姿も目に入った。
「おはよう……変な夢を見てたみたい……私倒れちゃったんだよね? 心配かけてゴメンね」
私の言葉に皆が沈黙して顔を見合わせる。
「倒れたのは間違い無いのであるが」
「夢、は本当、なのね」
ハク達の言葉に胸がひとつ大きく鳴った気がする。あれが夢で無かったのなら……
「姉さんが倒れてこの部屋に運ばれたのですが、直ぐに僕達に老人のような声が聴こえて来て」
「姉ちゃんが危ないから、俺達で助けろって。そしたらいきなり壁に姉ちゃんが映ってビックリしたよ!」
あくまで冷静なニュクスと興奮したプロイ。
ハクと目が合うと微かに目を細めて頭の中に響く声で語り出す。
『昔に何度も会った神の声であったな。アイリスが捕われていると言い、我輩とブーにあの場所との繋げ方を指示して来たのである』
『ん、そう。ハク、斬って、私、止めた、の』
それは私が見た光景と完全に一致していた。
やはり夢では無かったのだ……
「皆、ありがとう。なんだかゴメンね……私も状況が良く解って無くて……」
多分、神に呼び出された。
それは私がよく知っている神じゃ無くて別の存在だった。
そして私を憎んでいた?
マリア……珍しい名前じゃ無いけど、前世で親しくしていた少女を思い出す。いつも皆と離れていて、誰にも見せ無い努力をしていた子だった。
もしかして、あのマリアなのだろうか。そして彼女がマリアンヌに……?
「……さん、姉さん?」
「……あ」
頭の中をぐるぐると回る思考に沈んでいた私をニュクスの声が引き戻した。
「こんな時にお伝えしたくは無いのですが……ヘルムスが過去の聖女について陛下達にお伝えすると。姉さんの意識が戻るのを待って、同席するか確認してから始めたいらしく」
「そう……なんだ……」
「別に姉ちゃんが聞かなきゃいけない事じゃ無いんでしょ?放っておいて寝てれば良いのに。昔の人の事を聞いてもしょうが無いじゃん」
プロイの言葉も、私がアリスの転生した姿だと知らないから当たり前の事かも知れない。
あの胸が締め付けられるような苦しみを思い出すととても気乗りがする事じゃ無かった。
でも、避けて通れ無い事なのも解っていたし……何より私自身も知りたい事が色々あり過ぎる。
私は寝台から足を下ろして、深呼吸してから立ち上がる。
「……行かなきゃ」
扉に向かおうとした私の両手が再び弟達に掴まれる。
「目を離すと心配だからなぁ。今度は俺もついて行くよ! 具合悪くなったらすぐ言ってね」
そう言って明るい太陽のような笑顔を見せる。
「何が出来るとも言いませんが……寄り掛かって頂ければ杖代わり程度の役には立てますので」
控え目な、月光のように優しい声だった。
「我輩も付き合ってやらんでも無いのである」
「ハク、意地、はり? 心配、凄かった、の」
クスクス笑うブーちゃんの言葉でハクが外方を向いた。
「あ~……そうなんだ……」
私は皆を見回し、思わず言葉が漏れる。
そう、最近色々とあり過ぎて一番大切な事を忘れそうになっていた。
私は今、幸せなのだ。
こんなに優しくて可愛い弟達が居て、心で繋がっている聖獣達が居て。
この幸せを与えてくれたアリスに会いに行く、そう思えたなら……
私は扉を開けると、扉を守るように立っていたらしいバイアンが道を空けてくれる。
「……良いのか? 辛いかも知れんぞ」
見下ろしてくる彼の瞳は、種族の差を超えて感じる優しさが伺えた。
私は頷いて一歩踏み出す。
「行きましょう。本当の事を知るために」
こんなに大切な今があるなら、きっとどんな過去も受け止められると信じて。
「……姉さん」
私を呼ぶ声に目を開けると、私は寝台に寝かされ両手を弟達が掴んでいた。
身体を起こしてまだボンヤリする頭を振ると、ハクやブーちゃんの姿も目に入った。
「おはよう……変な夢を見てたみたい……私倒れちゃったんだよね? 心配かけてゴメンね」
私の言葉に皆が沈黙して顔を見合わせる。
「倒れたのは間違い無いのであるが」
「夢、は本当、なのね」
ハク達の言葉に胸がひとつ大きく鳴った気がする。あれが夢で無かったのなら……
「姉さんが倒れてこの部屋に運ばれたのですが、直ぐに僕達に老人のような声が聴こえて来て」
「姉ちゃんが危ないから、俺達で助けろって。そしたらいきなり壁に姉ちゃんが映ってビックリしたよ!」
あくまで冷静なニュクスと興奮したプロイ。
ハクと目が合うと微かに目を細めて頭の中に響く声で語り出す。
『昔に何度も会った神の声であったな。アイリスが捕われていると言い、我輩とブーにあの場所との繋げ方を指示して来たのである』
『ん、そう。ハク、斬って、私、止めた、の』
それは私が見た光景と完全に一致していた。
やはり夢では無かったのだ……
「皆、ありがとう。なんだかゴメンね……私も状況が良く解って無くて……」
多分、神に呼び出された。
それは私がよく知っている神じゃ無くて別の存在だった。
そして私を憎んでいた?
マリア……珍しい名前じゃ無いけど、前世で親しくしていた少女を思い出す。いつも皆と離れていて、誰にも見せ無い努力をしていた子だった。
もしかして、あのマリアなのだろうか。そして彼女がマリアンヌに……?
「……さん、姉さん?」
「……あ」
頭の中をぐるぐると回る思考に沈んでいた私をニュクスの声が引き戻した。
「こんな時にお伝えしたくは無いのですが……ヘルムスが過去の聖女について陛下達にお伝えすると。姉さんの意識が戻るのを待って、同席するか確認してから始めたいらしく」
「そう……なんだ……」
「別に姉ちゃんが聞かなきゃいけない事じゃ無いんでしょ?放っておいて寝てれば良いのに。昔の人の事を聞いてもしょうが無いじゃん」
プロイの言葉も、私がアリスの転生した姿だと知らないから当たり前の事かも知れない。
あの胸が締め付けられるような苦しみを思い出すととても気乗りがする事じゃ無かった。
でも、避けて通れ無い事なのも解っていたし……何より私自身も知りたい事が色々あり過ぎる。
私は寝台から足を下ろして、深呼吸してから立ち上がる。
「……行かなきゃ」
扉に向かおうとした私の両手が再び弟達に掴まれる。
「目を離すと心配だからなぁ。今度は俺もついて行くよ! 具合悪くなったらすぐ言ってね」
そう言って明るい太陽のような笑顔を見せる。
「何が出来るとも言いませんが……寄り掛かって頂ければ杖代わり程度の役には立てますので」
控え目な、月光のように優しい声だった。
「我輩も付き合ってやらんでも無いのである」
「ハク、意地、はり? 心配、凄かった、の」
クスクス笑うブーちゃんの言葉でハクが外方を向いた。
「あ~……そうなんだ……」
私は皆を見回し、思わず言葉が漏れる。
そう、最近色々とあり過ぎて一番大切な事を忘れそうになっていた。
私は今、幸せなのだ。
こんなに優しくて可愛い弟達が居て、心で繋がっている聖獣達が居て。
この幸せを与えてくれたアリスに会いに行く、そう思えたなら……
私は扉を開けると、扉を守るように立っていたらしいバイアンが道を空けてくれる。
「……良いのか? 辛いかも知れんぞ」
見下ろしてくる彼の瞳は、種族の差を超えて感じる優しさが伺えた。
私は頷いて一歩踏み出す。
「行きましょう。本当の事を知るために」
こんなに大切な今があるなら、きっとどんな過去も受け止められると信じて。
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