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たのしい誕生日
夏の夜
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リビングに入るといい匂い。
魁十はソファで映画を見ている。
「ただいま」
口に大輝くんの唾液でも付いたのか、ベタベタする気がする。
魁十の肩に唇をこすりつける。
「デートから帰っていきなり謎行動すんじゃねーよ」
「暑かったー」
「冷蔵庫に杏仁豆腐あるよ」
「いいねー、プルプル」
「先にメシな」
「うん。お腹すいた」
ニコッと笑って魁十が立ち上がる。
不意打ちの笑顔、無理。かわいすぎ。
魁十がごはん作ってくれるの、久しぶりかも。
チャチャッと料理もできるけど、魁十はやるとなったら出汁から取って丁寧に作るのが好き。
「おいしい!」
「そりゃ良かった。なあ、誕生日はやっぱデート?」
「え? なんで? ショッピング付き合ってくれるんじゃなかったの?」
「いや、俺はいいけど」
「サンダル欲しいなーと思ってて」
「どんな?」
「今年は厚底が流行ってるんだけど、私が厚底履いたら大きすぎるから」
「いいじゃん。厚底履きたいなら履けば」
今流行ってるのって15センチくらいの厚底。
私が履いたら180センチをゆうに超える。普通の女性ではなかなかない大きさになってしまう。
「流行ってるだけで履きたくないなら好きなの選べばいいし」
「じゃあ、試しに履いてみるからカイがアリかナシか判定して」
「サンダルくらい自分で決めろよ」
そんなめんどくさそうに言わなくても……。
「紗夜が好きかどうかで決めていいんだよ。人にどう思われようと気にすんな」
「カイは強いから……ケンカばっかしてた時も、1人で何人もの不良にケンカ売って負けなかったもんね」
「守りに入る気がなかったからな。捨て身の人間は強い」
今の私に特に守らなければならないものもないのに、捨て身にはなれない。
魁十はやっぱり芯が強いんだと思う。
「姉ちゃん、庭で花火する?」
「する!」
庭と言うには恥ずかしいくらいの狭さ。
バケツを置いて、魁十が花火に火を付け途切れないよう次々に花火リレーをして一瞬で消費していくのが家での花火スタイル。
「綺麗~」
「紗夜って感じする。こういう夜は」
「花火が?」
「一見派手で、けど繊細だろ」
最後は線香花火で締める。
夏の夜に生まれた私の名前はママが付けてくれた。
紗には夏の織物という意味があるらしい。
薄くて軽くて繊細な織物。
「来週って、ママ夜勤だっけ」
「休みだと思うけど」
「じゃあ無理だなあ」
「何が」
「大輝くんが家に来たいって言ってたんだけど、ママが休みだったら無理って言ってて」
「家に他人がいるの嫌。絶対家に上げんな」
「私の部屋にずっといるっぽい感じだったから大丈夫だよ」
「それでも嫌」
まあ、私も部屋掃除するのめんどくさいし、言い訳できていいか。
「分かった。カイが嫌なら断る」
「上げるなら自分で部屋掃除しろ」
「カイが嫌がるから断るね」
魁十がジト目で睨みながら濁った水と花火の残骸が入ったバケツを手に持つ。
かわいい……睨んでても何やっててもうちの弟はかわいい。
魁十はソファで映画を見ている。
「ただいま」
口に大輝くんの唾液でも付いたのか、ベタベタする気がする。
魁十の肩に唇をこすりつける。
「デートから帰っていきなり謎行動すんじゃねーよ」
「暑かったー」
「冷蔵庫に杏仁豆腐あるよ」
「いいねー、プルプル」
「先にメシな」
「うん。お腹すいた」
ニコッと笑って魁十が立ち上がる。
不意打ちの笑顔、無理。かわいすぎ。
魁十がごはん作ってくれるの、久しぶりかも。
チャチャッと料理もできるけど、魁十はやるとなったら出汁から取って丁寧に作るのが好き。
「おいしい!」
「そりゃ良かった。なあ、誕生日はやっぱデート?」
「え? なんで? ショッピング付き合ってくれるんじゃなかったの?」
「いや、俺はいいけど」
「サンダル欲しいなーと思ってて」
「どんな?」
「今年は厚底が流行ってるんだけど、私が厚底履いたら大きすぎるから」
「いいじゃん。厚底履きたいなら履けば」
今流行ってるのって15センチくらいの厚底。
私が履いたら180センチをゆうに超える。普通の女性ではなかなかない大きさになってしまう。
「流行ってるだけで履きたくないなら好きなの選べばいいし」
「じゃあ、試しに履いてみるからカイがアリかナシか判定して」
「サンダルくらい自分で決めろよ」
そんなめんどくさそうに言わなくても……。
「紗夜が好きかどうかで決めていいんだよ。人にどう思われようと気にすんな」
「カイは強いから……ケンカばっかしてた時も、1人で何人もの不良にケンカ売って負けなかったもんね」
「守りに入る気がなかったからな。捨て身の人間は強い」
今の私に特に守らなければならないものもないのに、捨て身にはなれない。
魁十はやっぱり芯が強いんだと思う。
「姉ちゃん、庭で花火する?」
「する!」
庭と言うには恥ずかしいくらいの狭さ。
バケツを置いて、魁十が花火に火を付け途切れないよう次々に花火リレーをして一瞬で消費していくのが家での花火スタイル。
「綺麗~」
「紗夜って感じする。こういう夜は」
「花火が?」
「一見派手で、けど繊細だろ」
最後は線香花火で締める。
夏の夜に生まれた私の名前はママが付けてくれた。
紗には夏の織物という意味があるらしい。
薄くて軽くて繊細な織物。
「来週って、ママ夜勤だっけ」
「休みだと思うけど」
「じゃあ無理だなあ」
「何が」
「大輝くんが家に来たいって言ってたんだけど、ママが休みだったら無理って言ってて」
「家に他人がいるの嫌。絶対家に上げんな」
「私の部屋にずっといるっぽい感じだったから大丈夫だよ」
「それでも嫌」
まあ、私も部屋掃除するのめんどくさいし、言い訳できていいか。
「分かった。カイが嫌なら断る」
「上げるなら自分で部屋掃除しろ」
「カイが嫌がるから断るね」
魁十がジト目で睨みながら濁った水と花火の残骸が入ったバケツを手に持つ。
かわいい……睨んでても何やっててもうちの弟はかわいい。
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