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渡
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やはり、僕の読み通り、理科室では出席が取られた。
まず呼ばれたのは、伊藤。
やはり、彼女か?!
「はい」
男子生徒だった。
チャイムが鳴る前に理科室に来れて良かった。
彼が探しに来てくれても、無駄な時間を取らせるだけになるところだった。
彼女でなければ、意味がない。
ところで、僕は愛堂だが、名簿が間に合っていないようだ。
そんなことはいい。
僕は今、教室と同じく真ん中ら辺の席に座っている。
彼女も教室と同じく、最後列の端っこに座っているのだ。
朝、ザワつく中で彼女の声を聞いたが、「はい」の2文字で彼女の声が聞き分けられる自信はない。
たとえ運命の人相手でも、人間には可能不可能があるのだ。
だから、僕は今、1人1人の返事が左後ろから聞こえて来るか、彼女か否か、判別することに全神経を集中している。
担任の先生は、僕が転校してきたことでクラスの人数がちょうど30人になった、と職員室から教室への移動中に言っていた。
つまり、僕を除けば29人の名前が呼ばれる。
1時間目も2時間目も、教室の机は全て埋まっていたのだから。
もう28人の名前が呼ばれたが、彼女は返事をしていないはず。
次だ!
彼女の名前が呼ばれる!
なんてことだ。
「はい」だけでは彼女かわからないかと思っていたのに、やはり運命は僕の予想を超えてくる。
「はい」よりも前に、彼女だとわかるなんて。
「渡」
「はい」
左後ろから、女子の声がした!
彼女だ! 彼女の名前は、渡だ!
「愛堂」
「はい!!」
「うおっ。声でかいな、転校生」
あはははは、と笑いが湧く。
生徒たちが、笑顔で僕を見ている。
感動だ。
これまで、こんなにも明るい笑顔に囲まれた経験なんてない。
「よし、全員いるな。今日は、先週言ってたように実験です。手順をもう1回確認していきます」
授業が始まった。
みんな前を向く。
だが、さっきの感動がまだ僕には残っている。
彼女のおかげだ。
彼女が渡なおかげだ。
僕は本来、大きな声で返事をするようなキャラではないのに、彼女が渡だから、直後に愛堂と呼ばれたから、思わず、大きな声が出た。
なんてことだ。
やはり、完全に運命だ!!
まず呼ばれたのは、伊藤。
やはり、彼女か?!
「はい」
男子生徒だった。
チャイムが鳴る前に理科室に来れて良かった。
彼が探しに来てくれても、無駄な時間を取らせるだけになるところだった。
彼女でなければ、意味がない。
ところで、僕は愛堂だが、名簿が間に合っていないようだ。
そんなことはいい。
僕は今、教室と同じく真ん中ら辺の席に座っている。
彼女も教室と同じく、最後列の端っこに座っているのだ。
朝、ザワつく中で彼女の声を聞いたが、「はい」の2文字で彼女の声が聞き分けられる自信はない。
たとえ運命の人相手でも、人間には可能不可能があるのだ。
だから、僕は今、1人1人の返事が左後ろから聞こえて来るか、彼女か否か、判別することに全神経を集中している。
担任の先生は、僕が転校してきたことでクラスの人数がちょうど30人になった、と職員室から教室への移動中に言っていた。
つまり、僕を除けば29人の名前が呼ばれる。
1時間目も2時間目も、教室の机は全て埋まっていたのだから。
もう28人の名前が呼ばれたが、彼女は返事をしていないはず。
次だ!
彼女の名前が呼ばれる!
なんてことだ。
「はい」だけでは彼女かわからないかと思っていたのに、やはり運命は僕の予想を超えてくる。
「はい」よりも前に、彼女だとわかるなんて。
「渡」
「はい」
左後ろから、女子の声がした!
彼女だ! 彼女の名前は、渡だ!
「愛堂」
「はい!!」
「うおっ。声でかいな、転校生」
あはははは、と笑いが湧く。
生徒たちが、笑顔で僕を見ている。
感動だ。
これまで、こんなにも明るい笑顔に囲まれた経験なんてない。
「よし、全員いるな。今日は、先週言ってたように実験です。手順をもう1回確認していきます」
授業が始まった。
みんな前を向く。
だが、さっきの感動がまだ僕には残っている。
彼女のおかげだ。
彼女が渡なおかげだ。
僕は本来、大きな声で返事をするようなキャラではないのに、彼女が渡だから、直後に愛堂と呼ばれたから、思わず、大きな声が出た。
なんてことだ。
やはり、完全に運命だ!!
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