転校初日

はちみつ電車

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嫌われ者

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ちょっと教室の場所を覚えているか不安だったが、無事に教室に戻れた。

そりゃそうだ。

僕と運命の人の、初めての会話がこの後あるはずなんだから。

だから、運命なんだ。

教室に入ると、なんともう、彼女がいた!!

運命は、僕の予想の上を行く。

ただ、彼女以外に4人の女子生徒もいた。

なんでいるんだ。

僕と彼女の初めての会話を邪魔するつもりか。

「……なんでいるんだ」

怒りの余り、声になった。

僕と、彼女が初めて2人きりになるはずだったのに……!

「なんでって……こいつが、嫌われ者だからだよ!」

4人のどうでもいい女子生徒の1人が言った。

こいつ? どいつ?

よく見ると、発言したどうでもいい女子生徒が手に持っているのは、理科3年の表紙の本だ。

もう片方の手には、油性ペンを持っている。

そして、彼女は、その本に手を伸ばしている。

彼女の本なのか?!

自分でも信じられないくらい、俊敏な動きだった。

彼女の本は、彼女の手にあるべきだ。

彼女の本を取り返した拍子に、どうでもいい女子生徒の1人の頭をスポーンとはたく形になってしまった。

「痛った!」

「これは彼女の本なんだろ! 彼女が持っているべき物だ!」

彼女の伸ばしていた手がちょうどあったので、そのまま渡した形になった。

「なんなんだよ! なんでお前教室にいるんだよ!」

本を奪っていた女子生徒とはまた違う女子生徒が、問いかけてくる。

何を言ってるんだ!

僕は転校初日だ!

「理科室がどこか知らないからだ! 次が理科なのはそこの時間割表でわかっても、場所までわかるわけないだろう!」

「ああ……」

「じゃあ、一緒に行こ」

意外にも親切に、女子生徒たちは僕を理科室まで連れて行ってくれた。

途中、「もうすぐチャイム鳴っちゃうよ!」と急かしてくれたおかげで、授業開始に間に合った。

彼女も間に合うだろうか?

場所はわかってるはずだから、教科書が戻れば来るはずだが……

彼女が理科室に入ったのと同時に、チャイムが鳴った。

鳴り終わって10秒くらいしてから、先生が来た。

ああ、良かった。

授業開始時にいないと、内申が下がるかもしれない。

高校受験が控えているのだ。

内申をおろそかにはできないだろう。

ただ……彼女と会話、できなかったな……。

ん? そう言えば、こいつが嫌われ者だから、と言っていたが。

こいつとは、あの彼女のことだったんだろうか?

いや、そんなわけない。

彼女が嫌われ者だなんて、あるはずないだろう。
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