転校初日

はちみつ電車

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お弁当

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「まずは、たまご焼きからー」

彼女が、僕のお弁当からたまご焼きを連れ去って行く。

ひと口で、パクリと食べた。

ああ、彼女が僕のお弁当のおかずを食べてる……

教室でお弁当を食べたら、クラスメイトの誰かが僕のたまご焼きを食べて甘!とか言うんじゃ、なんて考えてたけど、いつも運命は僕の想像を超えてくる。

僕のたまご焼きを食べるのは、彼女だったんだ!!

もぐもぐしている。

なんてかわいいんだ!

「甘!」

「やっぱり言うの?!」

やはりこの人は僕の運命の人だ。

何度目かの確信を持った。

彼女は、おいしい! おいしい! と、次々僕のお弁当のおかずを食べていく。

なんてかわいいんだ。

かわいい! かわいい!!

「かわいい!!」

「へ?」

思わず、声に出してしまった。

でも、いい!

こんなにかわいいんだ!

かわいいと伝えて、何が悪い?!

「ああ、コロンとしててかわいいよねー。私も好きー」

彼女は、箸に刺さった里芋の煮っころがしを見てそう言い、口に入れた。

「おいしい!」

里芋……里芋じゃあ、ない!

僕にとってかわいいのは、君なんだ!

僕が好きなのも、里芋じゃなく、君なんだ!!

「もう最後だー、ハンバーーーグ!」

僕のお弁当箱には、ごはんしかなくなった。

大きめのハンバーグだが、箸で割ったりせず、僕のお弁当箱から直で口へ運ぶ。

ワイルドだなあ、こんな、カッコイイ一面もあるんだ!

「やだー玉ねぎでかーい。でもおいしー」

やだ?

人のお弁当のおかずを取っておいて、やだ?

「あーもうおなかいっぱい! 返す」

二口ほど食べて、半分くらいの大きさになったハンバーグを、僕のお弁当箱に戻した。

彼女がかじった、ハンバーグ!!!!

彼女がかじったハンバーグが、今、僕のお弁当箱にある!!

こ……これを僕が食べてしまったら……

ドキドキドキドキドキドキドキドキ。

鼓動って、ここまで速くなるものだったのか。
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