転校初日

はちみつ電車

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いじめ

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隣の席の人が、渡さんを責め立てている。

なんで責め立てるんだ。

何を貸したのか、僕は今日が転校初日なのだから知らないが、そんなに強く責め立てて、いじめの加害者となったらどうするんだ。

隣の席の人は、たぶん悪い人ではないのに。

なぜ、渡さんをいじめるんだ。

いじめというものは、明らかになるまではいじめられている者が弱者だが、ひとたびそれが社会的に《いじめ》だと認められた瞬間、いじめていた者は加害者として弱者になり、いじめられていた者は被害者という守られる立場になるのだ。

僕は、そう思っている。

考えていても仕方ない。

考えるだけの僕は、渡さんを音楽の授業を欠席させてしまった。

「何を貸してたの?」

僕は、声を振り絞って尋ねた。

決して大きな声ではないだろう。

だが、この距離で聞こえないこともないであろう。

「え? 何を?」

「……え? なんか貸してたんじゃないの?」

「……貸してないけど」

貸してないのか。

貸してないのに、何を責めているのか?

いや、ここで引いていては、この子を救えない。

なんて言ってたっけ?

そうだ。

貸したじゃない、失くした話をしてたんだ。

「何を失くしたの?」

「……私はなんも、失くしてないけど」

あれ?

失くした話をしてたはずだが。

私はってことは、失くした人はいたのか。

これはもう、たぶん考えるより聞いた方が早い。

「誰が何を失くしたの?」

「……美菜子が、リコーダーを失くしたの」

みなこ?

「みなこって?」

「私」

渡さん?!

そうだ、僕は渡さんを渡さんとしか知らなかった!

渡さんは、渡 美菜子さんってことか!

ん?

失くした人は渡さん。

失くした物は、リコーダー。

つまりは、渡さんが渡さんのリコーダーを失くしたのか!!
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