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神様ヘルプ
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明翔を見送りに玄関へ行くと、俺が家を出る時には一度も姿を見たことがない孤高の美猫ツンが引き留めるように体を明翔の足にこすりつける。
「俺も帰りたくないよー。俺もここに住むー」
正直それもいいな、と思う。うち親いないし。
けど今、明翔と一条の間に長年あったわだかまりが溶け合いつつあると思うから、きっとこのままがいいんだろうと自分に言い聞かせる。
最近は仲の良いいとこ同士の二人がまたいがみ合うようになったら矛先がこっちに向く。ごめんこうむる。
考え込んでたら、唇に柔らかい感触がした。
「いっつも深月からだから、今日は俺からしたいと思ってたの。ビックリした?」
「……ビックリした……」
自分からやっといて真っ赤になってる明翔に。
明翔はちゃんと精一杯を俺に伝えてくれてる。
俺も明翔をちゃんと愛したい。
でも……できる気がしない。
風呂から上がってお茶飲んで、キャットタワー下のデスク前にあぐらをかく。ナア、とやってくるデレが足の上に寝そべるから、長い黄色っぽい毛をなでる。
お前も明翔も素直でいいな。甘え上手って才能だと思う。
俺の母親は愛情が重すぎる人だ。
父、中里さんが大好きで、好きすぎて、母方の親戚の葬式で気を使った親戚が中里さんに話しかけただけで相手を罵倒し殴った。
それまでも正月の集まりなんかにはとっくに呼ばれなくなっていたのだが、その一件以来親戚付き合いは途絶えた。
中里さんはそんな激重な愛情を向けられ続け、疲れたんだろう。不倫に走った。
俺はすぐに気付いたけど、外に癒しがないとしんどいよな、と理解できたから母親が不倫に気付かないよう暗躍した。
なのに、不倫相手がわざわざ母宛てに暴露電話をかけてきやがった。
俺の努力も虚しく不倫がバレ、激昂した母親はとっさに離婚を宣言。
だけど、きっと母親は本当に離婚したかったわけじゃなく、引き留められたかっただけなんだ。
離婚届を用意したのは中里さんだった。
母親は素直さが足りない。なのに、愛情だけはとてつもなく大きくてバランスが悪い。
中里さんは母親が暴走しないよう、愛してるよ、となだめすかすように言っていた。
両親のいびつな愛情表現を見て育った俺に、ちゃんと人を愛せる気がしない。
俺の愛もきっと重い。
明翔の全部を知りたくてしょうがないし、俺の知らない男との関係が気になってしょうがない。独占欲と支配欲の塊。
母親みたいに全部ぶつけたら、明翔を疲れさせる。そして、俺から逃げるだろう。中里さんがそうしたように。
中里さんみたいに気持ちのない言葉を吐くのも嫌だ。本当のことだけ言いたい。
だけど、俺の本当は重過ぎる。
うー……どうすれば……
一生懸命、精一杯を伝えてくれる明翔に応えたい。
さじ加減が分かんねえ。明翔の負担になりたくない。
頭の中グルグルしてるうちに、0時を過ぎてしまった。
俺何時間グルグルしてんだ。情けねえ。
しょうがない……ひとりで考えてても埒が明かない。
あのお方に助言を求めよう。
俺はデスクの上のノートパソコンへ手を伸ばした。
俺には神と崇拝する恋愛マスターがいる。
「BLの考察~なぜ私はBLを愛してやまないのか」というブログの管理人「カン・リニン」。
俺のような凡人には理解できない、神のように高い位置から広い視野で人間というものを見ていて、達観した恋愛観の持ち主である。
「重い愛情を軽い言葉で伝えたいです。どうしたらいいですか」
以前、コメントを書いたページに新たなコメントを残す。
さすがに短くまとめすぎたか。万が一「カン・リニン」が身近な人物だったらと思うと詳細は避けたい。
とは言え、これじゃあ、かるーい感じで伝えたいと解釈されてしまうだろうか。俺は、重すぎる愛をそう感じさせずに、でも本気だよってうまいこと伝えたいんだけど。
すげえ! 深夜でもレスポンスの速さが異次元。
この長文を秒で送って来るとかさすがは神!
「重い軽いを決めるのはあなたではなく伝えられた相手がどう受け取るかです。相手ありき。考えるだけ時間の無駄。
あなたは彼が言葉にするから自分も言葉にしなければ、と義務感で思いを伝えようとしている。
そんな言葉が彼の心に響くと思いますか?
言わなければ、ではなく、心のおもむくままに、パッションを乗せるのです。
BLはパッションと欲でできています。考えなくていい。考え込むから重くなる。
パッションこそがあなたの真実。本当を伝えたいならあなたの内から湧き出るパッションをありのまま伝えれば良いのです。」
俺、本当を伝えたいなんて一切書いてないのになんで分かんの?!
すげえ……すげえよ、やっぱあんた神だよ!
考えるだけ時間の無駄、いきなりグッサリ刺さるなあ。俺ちょうど何時間も無駄にしました、神。
パッションと欲だって。
欲。心当たりしかない。
考え込むから重くなる……か。そうかも。
そうだよな、相手ありきなんだ。
俺がいくら頭の中でグルグルしたって、明翔が俺と同じように感じるとは限らない。
その時その時の俺のパッションを伝えて行けば、きっと俺の本当が明翔に伝わるはずだ!
ありがとう! 神!
大感謝です!
「俺も帰りたくないよー。俺もここに住むー」
正直それもいいな、と思う。うち親いないし。
けど今、明翔と一条の間に長年あったわだかまりが溶け合いつつあると思うから、きっとこのままがいいんだろうと自分に言い聞かせる。
最近は仲の良いいとこ同士の二人がまたいがみ合うようになったら矛先がこっちに向く。ごめんこうむる。
考え込んでたら、唇に柔らかい感触がした。
「いっつも深月からだから、今日は俺からしたいと思ってたの。ビックリした?」
「……ビックリした……」
自分からやっといて真っ赤になってる明翔に。
明翔はちゃんと精一杯を俺に伝えてくれてる。
俺も明翔をちゃんと愛したい。
でも……できる気がしない。
風呂から上がってお茶飲んで、キャットタワー下のデスク前にあぐらをかく。ナア、とやってくるデレが足の上に寝そべるから、長い黄色っぽい毛をなでる。
お前も明翔も素直でいいな。甘え上手って才能だと思う。
俺の母親は愛情が重すぎる人だ。
父、中里さんが大好きで、好きすぎて、母方の親戚の葬式で気を使った親戚が中里さんに話しかけただけで相手を罵倒し殴った。
それまでも正月の集まりなんかにはとっくに呼ばれなくなっていたのだが、その一件以来親戚付き合いは途絶えた。
中里さんはそんな激重な愛情を向けられ続け、疲れたんだろう。不倫に走った。
俺はすぐに気付いたけど、外に癒しがないとしんどいよな、と理解できたから母親が不倫に気付かないよう暗躍した。
なのに、不倫相手がわざわざ母宛てに暴露電話をかけてきやがった。
俺の努力も虚しく不倫がバレ、激昂した母親はとっさに離婚を宣言。
だけど、きっと母親は本当に離婚したかったわけじゃなく、引き留められたかっただけなんだ。
離婚届を用意したのは中里さんだった。
母親は素直さが足りない。なのに、愛情だけはとてつもなく大きくてバランスが悪い。
中里さんは母親が暴走しないよう、愛してるよ、となだめすかすように言っていた。
両親のいびつな愛情表現を見て育った俺に、ちゃんと人を愛せる気がしない。
俺の愛もきっと重い。
明翔の全部を知りたくてしょうがないし、俺の知らない男との関係が気になってしょうがない。独占欲と支配欲の塊。
母親みたいに全部ぶつけたら、明翔を疲れさせる。そして、俺から逃げるだろう。中里さんがそうしたように。
中里さんみたいに気持ちのない言葉を吐くのも嫌だ。本当のことだけ言いたい。
だけど、俺の本当は重過ぎる。
うー……どうすれば……
一生懸命、精一杯を伝えてくれる明翔に応えたい。
さじ加減が分かんねえ。明翔の負担になりたくない。
頭の中グルグルしてるうちに、0時を過ぎてしまった。
俺何時間グルグルしてんだ。情けねえ。
しょうがない……ひとりで考えてても埒が明かない。
あのお方に助言を求めよう。
俺はデスクの上のノートパソコンへ手を伸ばした。
俺には神と崇拝する恋愛マスターがいる。
「BLの考察~なぜ私はBLを愛してやまないのか」というブログの管理人「カン・リニン」。
俺のような凡人には理解できない、神のように高い位置から広い視野で人間というものを見ていて、達観した恋愛観の持ち主である。
「重い愛情を軽い言葉で伝えたいです。どうしたらいいですか」
以前、コメントを書いたページに新たなコメントを残す。
さすがに短くまとめすぎたか。万が一「カン・リニン」が身近な人物だったらと思うと詳細は避けたい。
とは言え、これじゃあ、かるーい感じで伝えたいと解釈されてしまうだろうか。俺は、重すぎる愛をそう感じさせずに、でも本気だよってうまいこと伝えたいんだけど。
すげえ! 深夜でもレスポンスの速さが異次元。
この長文を秒で送って来るとかさすがは神!
「重い軽いを決めるのはあなたではなく伝えられた相手がどう受け取るかです。相手ありき。考えるだけ時間の無駄。
あなたは彼が言葉にするから自分も言葉にしなければ、と義務感で思いを伝えようとしている。
そんな言葉が彼の心に響くと思いますか?
言わなければ、ではなく、心のおもむくままに、パッションを乗せるのです。
BLはパッションと欲でできています。考えなくていい。考え込むから重くなる。
パッションこそがあなたの真実。本当を伝えたいならあなたの内から湧き出るパッションをありのまま伝えれば良いのです。」
俺、本当を伝えたいなんて一切書いてないのになんで分かんの?!
すげえ……すげえよ、やっぱあんた神だよ!
考えるだけ時間の無駄、いきなりグッサリ刺さるなあ。俺ちょうど何時間も無駄にしました、神。
パッションと欲だって。
欲。心当たりしかない。
考え込むから重くなる……か。そうかも。
そうだよな、相手ありきなんだ。
俺がいくら頭の中でグルグルしたって、明翔が俺と同じように感じるとは限らない。
その時その時の俺のパッションを伝えて行けば、きっと俺の本当が明翔に伝わるはずだ!
ありがとう! 神!
大感謝です!
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