親友彼氏―親友と付き合う俺らの話。

はちみつ電車

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佐藤颯太とブラックコーヒー

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颯太は某コーヒーショップのブラックコーヒーが好きである。

追加情報、颯太は5人兄弟の末っ子として常に兄や姉に構われる幼少期を過ごし、幼稚園からはこの俺がまとわりついていた結果、ひとりが苦手で寂しん坊な漢に仕上がった。

よって、コーヒーを飲みたいけどひとりでお店に入れな~いな颯太に付き合ってコーヒーショップへやって来た。

「ブラックと……これ。期間限定のやつ」
「パンプキンモカマキアートですね」

10月といえばハロウィンなのだろうが、無理矢理感半端ない。
でも、頼んで良かった。限定カップはハロウィン柄でかわいい。

奥のカウンター席へと歩いて行くと、並んだ細い背中にどうも見覚えがある気がする。
ラフな白いパーカーと、濃いグレーのチェックが大人びたジャケット。

「あ! 深月! 颯太!」

やっぱりか。
すっかり仲良しになったもんだな、明翔と一条のいとこ同士も。

「呂久村も期間限定につられて来たのか。意外とミーハーなんだな」
「俺らもCM見て飲んでみたくなって来たんだー」

自然、俺が明翔の隣に、颯太は一条の隣に腰を下ろす。

「あれ? ショタはパンプキンじゃないんだ」
「あ!」

おおっと、どうする颯太。
恐らく内心、しまった! かわいい弟キャラはブラックコーヒーなんて飲まない! と焦っていることだろう。

「明翔、見て。このドラキュラ超本格的」
「すげえよな。歯のここさ、どす黒くなった血が付いてんの。リアルー」
「コーヒー飲む気は失せるけどなー」

あはははは、と明翔と談笑して颯太の無言の圧力から逃れる。
自力でこのピンチを脱して見せてくれ! 颯太!

「ショタ、これ何?」
「え、えーと、これはぁ……」
「あ、名前長くて忘れちゃったんだろ? ひと口ちょうだい。ボク全部味と名前覚えてるから」
「えっ?」

間接チュウにつられたのか止めないが、そのまま一条に飲まれたら一発でブラックだってバレるぞ、颯太。

「え、ブラック? ショタがブラック飲むとは思わなかった」
「お、俺、甘いケーキがないとブラック飲めないんだった!」

颯太が金の昇り龍がきらめくスカジャンの背中で二人を驚かせつつ、テテッと駆けていく。

「颯太、ブラックなの? 大人ー。俺、甘いのしか飲めないわー」
「ああ見えて結構好みは渋いんだ。カッコいいよね」

一条が笑顔でレジに並ぶ颯太を見ている。
おや? 意外と好感触だぞ、颯太。

そうか、ギャップだ。
学校ではかわいいショタ全開なだけに、ここは大人の魅力を見せるんだ、颯太!

颯太が丸くてクリームたっぷりのかわいらしいパンプキンモンブランを手にテテッと戻ってくる。

違ぇんだって、颯太。
攻める方向が真逆なんだって!

教えてやりたいが、手段がない。
せっかくつかんだ一条の好感度を自力で爆上げするんだ、颯太!

「あまーい。おいしい~」

大きな口を開けて無邪気にケーキを頬張る颯太の額を細かい汗が埋めていく。

颯太は甘いものが得意ではない。颯太の主食とも言える大きなメロンパンは皮がパリパリタイプで好きなのだが、それ意外の甘味を好んで食べているのを俺は見たことがない。

無理はするな、颯太。顔色が悪くなってきている。

「ショタ、ほっぺにクリームついてるよ」
「やっちゃったあ。てへっ」

狙いすぎ狙いすぎ。
ブラックコーヒーで消えた「かわいい」を取り戻すのに必死だが、取り戻さなくていいのに。

なんとかケーキを口に押し込み、ブラックコーヒーで押し流す。
間に明翔と一条を挟んでいるのに、俺には颯太が「うっぷ」と何かを必死に飲み下している音が聞こえた気がする。

颯太に肩を貸しながらコーヒーショップを出た。

「せっかく会ったんだし、このまま遊びに行かねえ?」
「悪い、明翔。ちょっとコーヒーが甘すぎて、俺胃もたれしちゃって遊べそうにない」
「大丈夫? 家まで送ろうか?」
「大丈夫大丈夫! 家が近い颯太に送ってもらうから」
「颯太、グッタリしてるけど」

あーあ。
明翔と遊びたかったなあ……。

「……悪ぃな、深月……」
「しゃべるな、颯太。送ってやるから、家までは吐くな」

かわいいショタが好きな一条の前でかわいくありたい気持ちは分かるが、よくここまで無理したもんだよ。

やっぱ、颯太にできないことなんかない。颯太は勝ち続ける漢だ。颯太ならきっと、一条のために水なしで砂糖1キロ飲めると思う。

「颯太、かっけえよ」
「……うっぷ……」

俺は、颯太の家へと足を速めた。


昼休み、いつものように屋上に上がった颯太が俺へと手を出す。

「深月、メロンパン買ってあるか」
「はい。あと牛乳。金は寄越せよ」
「あい」
「あいあい。毎度あり」

紙パックの200ミリリットルのなんの変哲もない牛乳なのだが、カイルがチューッと吸う颯太をジーッと見ている。

「ギュウニュウ?」
「牛の乳だよ。カイルの国には牛乳ないの?」
「ない。メランコジカの乳みたいなものかな」
「何それ、鹿?」
「カイルの国って独特な文化っぽいよ。話聞いてたら飽きねえの」

そう言うタカトゥーはオシャレサンドイッチを手にしている。うち詰襟学ランなのにエンジのジャケットを羽織っていて、アメリカンスクールのスチューデントな感じで絵になる。

「一条と柳は?」
「なんか先生に呼ばれてた」
「成績上位の者だけ呼ばれることもあるんだな」

漢検の申し込みが少ないから受けてくれとでも頼まれてんのかな。

「優ちゃん、工藤にいやらしいことされてなきゃいいけど」
「ぶっ。ごほっ。がはっ」
「おい! 大丈夫か、颯太! タカトゥー、変な冗談言うなよ!」
「牛乳は? 飲み切っちゃってる!」
「ごめんごめん。俺のカフェオレ飲む?」

自販機のカフェオレ甘ったるいけどないよりマシか。
タカトゥーが颯太の口にストローを入れる。

のを邪魔するように缶コーヒーが現れた。

「ショタはブラックなんだよ」

一条が差し出したブラックコーヒーを颯太が勢い良く飲んだ。

「あー……ありがとう、一条……」
「どういたしまして」

かわい子ぶる余裕のない颯太にニッコリ笑った一条がやけに女っぽく見える気がする。気のせいかな。

良かったな、颯太。

「かわいい」ために苦手な牛乳を好きなメロンパンと一緒にがんばって飲んでたけど、これで学校でもコーヒーが飲めるな。
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