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第一章 第三部 絶海の孤島
12 話題
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「おまえらあ、何やったんだ、え?」
来るなと言っていたのに、ディレンが奥様の泊まる宿へやってきて、目を丸くしてそう聞く。
「ん、お買い物だよ、なあ?」
「そうそう、楽しかったな」
トーヤがそう言うと侍女が楽しそうに答える。
「にしても、えらく目立つことしたもんだな。あっちでもこっちでも奥様の話題で持ちきりだ」
「ついでに護衛のお兄さんかっこいいわ~ってなべっぴんさんの声もあったんじゃねえの?」
「それは聞かなかったな」
「嘘だろ」
「いや、本当だ」
聞いてトーヤが心底からがっかりした顔になる。
「もっとも船員や店の親父としか話してないけどな」
「なんだよ、それもっと早く言えよな、がっかりしたじゃねえか」
トーヤがチッと舌打ちする。
「それはまあどっちでもいいとしてだな」
「どうでもよくねえ! 俺にとっちゃかわいいお姉ちゃんの評価は食い物と同じぐらい生きるのに必要なもんだ!」
「どっちもでいいとして」
あらためてトーヤの言葉を無視してディレンが続ける。
「一体何が目的だ?」
「目的は目立つことだよ。だから大成功だな」
「なんのためにだ」
「あっちに着いた時、そういう奥様が乗ってるってのがすぐに広まるようにだな」
トーヤが目的を話す。
「あんたが気がついたように、あっちでもシャンタルが生きてるって気がついて碌でもないこと考えるやつがいるかも知れねえ。だから戻ってもこいつの存在は秘密にしないとな。その隠れ蓑に奥様を印象づけておきたかった」
「なるほど」
「船の客が降りてどこ行くか分かんねえけどよ、少なくとも船員はリュセルスの飲み屋とかでそういや、って話題にするだろ? 客も話のネタにする。奥様は旦那様がいらっしゃるまでどこぞにご滞在になる。街に出りゃ『ああ、あの』って遠巻きにされて話題の中心だ」
トーヤが話を続ける。
「目立つやつを隠すには2つ方法がある。あくまでいないように隠してしまうか、もしくは違う形で思いっきり目立たせるかだ。できるだけ街でも噂の奥方様を作っておきたい」
「なるほどな。それは分かった。で、明日着く荷物ってのはなんだ?」
「ああ、そりゃちょっとでかいもん買ったからな、そんだけだ」
「でかいもん?」
「明日になりゃ分かるさ。ところで、出港は明後日でいいのか?」
「あ、ああ」
ディレンは不審そうな顔でトーヤを見ながら、
「とりあえず、明後日の夜がよさそうだという話になった。この島の水先人によると、それより後の数日が一番潮がよかろうってことだ。天気の都合によっては翌朝にするかも知れんが、今のところ明後日の夜出港で変更はないだろう」
「分かった」
トーヤが3人に向き直って言う。
「そんじゃここでゆっくりできるのはあと2日か。明日もまた買い物に行くから、ゆっくり寝とけ。風呂も入っとけ」
「まだ買い物する気かよ~」
奥様との取次に疲れたベルがうへえ、という顔をする。
「この島のもん全部買い占めるぐらいのつもりでいくぜ」
「もういいんじゃねえの?」
「奥様は気まぐれなんだ、明日になりゃ『ああ、あれも買っておけばよかったわ~』ってなことになるもんだ」
「そうなのかよ」
「そんなもんだ」
くるっとディレンを振り返り、
「そうそう、今朝な、荷運びしてる間だったけど、土産置きに一度部屋に入ったんだ。あんたに一応言っとくように言われたから言っとくよ」
「分かった」
「それと、船員たちに酒樽差し入れしたけどよかったよな?」
「ああ、まあ仕事の邪魔にさえならなきゃいいが、それにしても大盤振る舞いだな」
「必要なことだからな」
トーヤが悪魔のような天使のような笑顔を浮かべる。
「残り半月、その間の快適な旅と、あっち着いてからの下準備だ、ここでケチっても得にならん」
「そうか」
「ってことで、明日の夕方までにはでかい荷が着くから、あんたからも船員たちによろしく言っといてくれ」
「分かった」
そう答えて、ディレンは不審そうな顔のままで自分の宿へと戻っていった。
「へへっ、おっさんびっくりするだろうな」
「まあな」
ベルとトーヤがにんまりと共犯者の笑みを浮かべる。
「ほんとにこの2人はこういう部分で気が合うから困ったもんだな」
アランが頭を振り振り言う。
「そうだね、いい相棒だね」
シャンタルもクスクス笑い、
「さあて、じゃあ私はお風呂でも入ってきて寝ようかな」
「早いな!」
「明日のために、だよ」
そう言ってしゃらしゃらと湯殿へと行くのを3人で見送る。
シャンタルがいなくなるとベルが真面目な顔で言った。
「なあトーヤ」
「なんだ?」
「シャンタル、大丈夫なのかな?」
「何がだ」
「何がって、あっち行って、そんでさ、自分は死んでることになっててさ、そんで、宮の人たちと会ったり色々あるんだろ?」
「あるだろうな」
「さすがのシャンタルも色々思うことあるだろ?」
「あるだろうけどな」
トーヤがベルの髪をくしゃっと掴み、
「あいつが自分で立ち向かわなけりゃいけない運命だ。だけどな、こうして俺たちも付いてる。おまえのことも頼りにしてるからな」
真面目な顔でそう言い、
「うん、がんばるよ」
ベルがこくんと頷いた。
来るなと言っていたのに、ディレンが奥様の泊まる宿へやってきて、目を丸くしてそう聞く。
「ん、お買い物だよ、なあ?」
「そうそう、楽しかったな」
トーヤがそう言うと侍女が楽しそうに答える。
「にしても、えらく目立つことしたもんだな。あっちでもこっちでも奥様の話題で持ちきりだ」
「ついでに護衛のお兄さんかっこいいわ~ってなべっぴんさんの声もあったんじゃねえの?」
「それは聞かなかったな」
「嘘だろ」
「いや、本当だ」
聞いてトーヤが心底からがっかりした顔になる。
「もっとも船員や店の親父としか話してないけどな」
「なんだよ、それもっと早く言えよな、がっかりしたじゃねえか」
トーヤがチッと舌打ちする。
「それはまあどっちでもいいとしてだな」
「どうでもよくねえ! 俺にとっちゃかわいいお姉ちゃんの評価は食い物と同じぐらい生きるのに必要なもんだ!」
「どっちもでいいとして」
あらためてトーヤの言葉を無視してディレンが続ける。
「一体何が目的だ?」
「目的は目立つことだよ。だから大成功だな」
「なんのためにだ」
「あっちに着いた時、そういう奥様が乗ってるってのがすぐに広まるようにだな」
トーヤが目的を話す。
「あんたが気がついたように、あっちでもシャンタルが生きてるって気がついて碌でもないこと考えるやつがいるかも知れねえ。だから戻ってもこいつの存在は秘密にしないとな。その隠れ蓑に奥様を印象づけておきたかった」
「なるほど」
「船の客が降りてどこ行くか分かんねえけどよ、少なくとも船員はリュセルスの飲み屋とかでそういや、って話題にするだろ? 客も話のネタにする。奥様は旦那様がいらっしゃるまでどこぞにご滞在になる。街に出りゃ『ああ、あの』って遠巻きにされて話題の中心だ」
トーヤが話を続ける。
「目立つやつを隠すには2つ方法がある。あくまでいないように隠してしまうか、もしくは違う形で思いっきり目立たせるかだ。できるだけ街でも噂の奥方様を作っておきたい」
「なるほどな。それは分かった。で、明日着く荷物ってのはなんだ?」
「ああ、そりゃちょっとでかいもん買ったからな、そんだけだ」
「でかいもん?」
「明日になりゃ分かるさ。ところで、出港は明後日でいいのか?」
「あ、ああ」
ディレンは不審そうな顔でトーヤを見ながら、
「とりあえず、明後日の夜がよさそうだという話になった。この島の水先人によると、それより後の数日が一番潮がよかろうってことだ。天気の都合によっては翌朝にするかも知れんが、今のところ明後日の夜出港で変更はないだろう」
「分かった」
トーヤが3人に向き直って言う。
「そんじゃここでゆっくりできるのはあと2日か。明日もまた買い物に行くから、ゆっくり寝とけ。風呂も入っとけ」
「まだ買い物する気かよ~」
奥様との取次に疲れたベルがうへえ、という顔をする。
「この島のもん全部買い占めるぐらいのつもりでいくぜ」
「もういいんじゃねえの?」
「奥様は気まぐれなんだ、明日になりゃ『ああ、あれも買っておけばよかったわ~』ってなことになるもんだ」
「そうなのかよ」
「そんなもんだ」
くるっとディレンを振り返り、
「そうそう、今朝な、荷運びしてる間だったけど、土産置きに一度部屋に入ったんだ。あんたに一応言っとくように言われたから言っとくよ」
「分かった」
「それと、船員たちに酒樽差し入れしたけどよかったよな?」
「ああ、まあ仕事の邪魔にさえならなきゃいいが、それにしても大盤振る舞いだな」
「必要なことだからな」
トーヤが悪魔のような天使のような笑顔を浮かべる。
「残り半月、その間の快適な旅と、あっち着いてからの下準備だ、ここでケチっても得にならん」
「そうか」
「ってことで、明日の夕方までにはでかい荷が着くから、あんたからも船員たちによろしく言っといてくれ」
「分かった」
そう答えて、ディレンは不審そうな顔のままで自分の宿へと戻っていった。
「へへっ、おっさんびっくりするだろうな」
「まあな」
ベルとトーヤがにんまりと共犯者の笑みを浮かべる。
「ほんとにこの2人はこういう部分で気が合うから困ったもんだな」
アランが頭を振り振り言う。
「そうだね、いい相棒だね」
シャンタルもクスクス笑い、
「さあて、じゃあ私はお風呂でも入ってきて寝ようかな」
「早いな!」
「明日のために、だよ」
そう言ってしゃらしゃらと湯殿へと行くのを3人で見送る。
シャンタルがいなくなるとベルが真面目な顔で言った。
「なあトーヤ」
「なんだ?」
「シャンタル、大丈夫なのかな?」
「何がだ」
「何がって、あっち行って、そんでさ、自分は死んでることになっててさ、そんで、宮の人たちと会ったり色々あるんだろ?」
「あるだろうな」
「さすがのシャンタルも色々思うことあるだろ?」
「あるだろうけどな」
トーヤがベルの髪をくしゃっと掴み、
「あいつが自分で立ち向かわなけりゃいけない運命だ。だけどな、こうして俺たちも付いてる。おまえのことも頼りにしてるからな」
真面目な顔でそう言い、
「うん、がんばるよ」
ベルがこくんと頷いた。
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