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第一章 第四部 シャンタリオへの帰還
5 すぐそばに
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シャンタルたち3人がリュセルスの街中で目立つように動いている一方、トーヤは単独で気になることを調べに回っていた。
目の下までストールで巻いて隠している。他にも似たような服装の人間はいるので、特にそれが目立つというものでもないが、それでもやっぱり自分を知る人間には会いたくないと周囲を気にして動く。
(やっぱり一番会いたくねえのはあいつだよなあ。そう簡単にそのへんを歩いてるわけはねえと思うけど)
ルギのことである。
他の人間の目はごまかせても、ルギはちょっと難しいようにも思う
そして今回戻ってみて思ったこと。
(シャンタル宮ってのはこんなに目につくもんなんだな)
港から、街から、どこに行っても頭上にその存在がずっと気にかかるのだ。
リュセルスの人間は、ずっとこんな風にシャンタル宮を気にして生きているのか、それともずっとあるといっそ慣れてしまって気にならないものなのか。どっちだろうと、ふと頭上を見上げてはそう思う。
トーヤが今歩いている道、ここは、以前フェイがいる頃に一緒に歩いた道だ。
そう、そしてその角を曲がれば、あのフェイの「お友達」を買った店だ。
ツン、と胸が詰まる気がした。
こういうのには「期限切れ」というのはないんだろうな。
いつもそう思う。
大事な人、いなくなった人を思う時には。
そして、いなくなってはいない人、まだそこにいる人のことを思う。
すぐそこにいるのに、手が届く場所にいるのに。
いっそ、海を渡って数ヶ月の距離にいる方が身近に感じるのが不思議であった。
「行こうと思えばすぐに行けるって方がなんか面倒だな」
つい、ぽつりと独り言を言う。
そうしておいて、何も見なかったように次の目的地に向かって歩き始めた。
そんな生活を数日続けた頃、宿の客室に仲間4人とディレンの5人で集まり、先の話をすることになった。
まずは、ディレンに頼んでいた4人で暮らす家が見つかったということで、そこへの引っ越しの話から。
「中の掃除は頼んでもうやってもらってある、いつでも引っ越せる状態にはなってるからな」
「ああ、助かった」
「そんじゃ明日にでも引っ越すのか?」
「引っ越すには引っ越すが、多分すぐに出ることになる」
「なんでだよ?」
ベルが目を丸くして言う。
「なんでそんな無駄なことするんだ?引っ越す費用だってかかるだろうし」
「おまえはまた金かよ~」
トーヤが笑いながらベルの頭を運命通りにくしゃっと掴む。
「まあ必要経費だ」
いつものようにあっさりと言うのにベルが不満そうに顔を顰めた。
「そんでな、この先のことだが、こういうことを考えてる」
そう言ってトーヤが説明することを4人が聞き、驚いた。
「ちょ、待て、そんな大胆な」
「できんのかよ、そんなこと」
兄と妹が思いを口にする。
「そんで、シャンタルはそれで大丈夫なのか?」
ベルが心配そうにシャンタルを見るが特に表情に変わることはない。
「大丈夫か大丈夫じゃないかじゃねえ、やるしかねえからな」
「だとしても、そりゃアランが言うように大胆すぎる」
「だからあんたの力も借りねえとやってけねえから、こうして話してるんじゃねえか」
トーヤがディレンに言う。
「俺も顔隠さねえと動けねえし、そんで何が起きるのかってうろうろうろうろしてても埒が明かねえ、だったらこっちから攻撃仕掛ける方がいいだろう」
「にしてもだな」
「まあ、細かいことはまた色々打ち合わせるとしてもだな、まずは引っ越すぞ。よし、明日だ」
「ええっ、そんな早く!」
ベルが目をむいて言う。
「荷物っても大したもんがあるわけじゃねえし、こっちきて必要なもんは買ってあるんだろ?」
「そりゃまあ、色々買ったけどな」
奥様御一行がリュセルスで買っていたもの、それの大部分が家具など生活に必要なものであった。
「宿に預かってもらってるそれを、明日から運んでもらいたいんだが、宿にはどこに行ったか知らせないようにしたい」
「なんでだ?」
「そりゃ宿に迷惑かけねえようにだろ」
「そりゃいいけど、だったら誰が運ぶんだよ?」
「それなんだがな、船のやつ借りられねえか?」
トーヤがディレンに聞く。
「船の、信用できるやつならまあ集められるが」
「それなりの礼はする」
「馬車売った金からか」
ディレンが愉快そうに言う。
「難しいことは言いっこなし。どうせ全部吐き出してもらうんだしよ」
トーヤがニヤッと人の悪い言葉を口にした。
「おい、そんな大金何に使うつもりだ」
「必要なんだよ」
「そりゃまあいいが」
ディレンは最初からあの馬車を売った金に、ちょっとした船を買えるぐらいの額の金に頓着しているわけではない。だが……
「って、その金、元はおれらの金も入ってるんだぞ!」
そうであった。
ディレンに渡した馬車を買った資金はというと、トーヤ自身の金はもちろん、ゆくゆくはどこぞに小さい店でも構えるためにとアランとべルがトーヤに頼んで銀行に預けてあった金であった。
「まあ大丈夫だ、なんとかなる」
「信じられねー!」
ぎやあ!と意味不明な声を共にそう言うベルに、
「まあ、ここまできちまったんだ、一度諦めろ」
冷静なアランがそう言って妹の肩をぽんと叩いた。
目の下までストールで巻いて隠している。他にも似たような服装の人間はいるので、特にそれが目立つというものでもないが、それでもやっぱり自分を知る人間には会いたくないと周囲を気にして動く。
(やっぱり一番会いたくねえのはあいつだよなあ。そう簡単にそのへんを歩いてるわけはねえと思うけど)
ルギのことである。
他の人間の目はごまかせても、ルギはちょっと難しいようにも思う
そして今回戻ってみて思ったこと。
(シャンタル宮ってのはこんなに目につくもんなんだな)
港から、街から、どこに行っても頭上にその存在がずっと気にかかるのだ。
リュセルスの人間は、ずっとこんな風にシャンタル宮を気にして生きているのか、それともずっとあるといっそ慣れてしまって気にならないものなのか。どっちだろうと、ふと頭上を見上げてはそう思う。
トーヤが今歩いている道、ここは、以前フェイがいる頃に一緒に歩いた道だ。
そう、そしてその角を曲がれば、あのフェイの「お友達」を買った店だ。
ツン、と胸が詰まる気がした。
こういうのには「期限切れ」というのはないんだろうな。
いつもそう思う。
大事な人、いなくなった人を思う時には。
そして、いなくなってはいない人、まだそこにいる人のことを思う。
すぐそこにいるのに、手が届く場所にいるのに。
いっそ、海を渡って数ヶ月の距離にいる方が身近に感じるのが不思議であった。
「行こうと思えばすぐに行けるって方がなんか面倒だな」
つい、ぽつりと独り言を言う。
そうしておいて、何も見なかったように次の目的地に向かって歩き始めた。
そんな生活を数日続けた頃、宿の客室に仲間4人とディレンの5人で集まり、先の話をすることになった。
まずは、ディレンに頼んでいた4人で暮らす家が見つかったということで、そこへの引っ越しの話から。
「中の掃除は頼んでもうやってもらってある、いつでも引っ越せる状態にはなってるからな」
「ああ、助かった」
「そんじゃ明日にでも引っ越すのか?」
「引っ越すには引っ越すが、多分すぐに出ることになる」
「なんでだよ?」
ベルが目を丸くして言う。
「なんでそんな無駄なことするんだ?引っ越す費用だってかかるだろうし」
「おまえはまた金かよ~」
トーヤが笑いながらベルの頭を運命通りにくしゃっと掴む。
「まあ必要経費だ」
いつものようにあっさりと言うのにベルが不満そうに顔を顰めた。
「そんでな、この先のことだが、こういうことを考えてる」
そう言ってトーヤが説明することを4人が聞き、驚いた。
「ちょ、待て、そんな大胆な」
「できんのかよ、そんなこと」
兄と妹が思いを口にする。
「そんで、シャンタルはそれで大丈夫なのか?」
ベルが心配そうにシャンタルを見るが特に表情に変わることはない。
「大丈夫か大丈夫じゃないかじゃねえ、やるしかねえからな」
「だとしても、そりゃアランが言うように大胆すぎる」
「だからあんたの力も借りねえとやってけねえから、こうして話してるんじゃねえか」
トーヤがディレンに言う。
「俺も顔隠さねえと動けねえし、そんで何が起きるのかってうろうろうろうろしてても埒が明かねえ、だったらこっちから攻撃仕掛ける方がいいだろう」
「にしてもだな」
「まあ、細かいことはまた色々打ち合わせるとしてもだな、まずは引っ越すぞ。よし、明日だ」
「ええっ、そんな早く!」
ベルが目をむいて言う。
「荷物っても大したもんがあるわけじゃねえし、こっちきて必要なもんは買ってあるんだろ?」
「そりゃまあ、色々買ったけどな」
奥様御一行がリュセルスで買っていたもの、それの大部分が家具など生活に必要なものであった。
「宿に預かってもらってるそれを、明日から運んでもらいたいんだが、宿にはどこに行ったか知らせないようにしたい」
「なんでだ?」
「そりゃ宿に迷惑かけねえようにだろ」
「そりゃいいけど、だったら誰が運ぶんだよ?」
「それなんだがな、船のやつ借りられねえか?」
トーヤがディレンに聞く。
「船の、信用できるやつならまあ集められるが」
「それなりの礼はする」
「馬車売った金からか」
ディレンが愉快そうに言う。
「難しいことは言いっこなし。どうせ全部吐き出してもらうんだしよ」
トーヤがニヤッと人の悪い言葉を口にした。
「おい、そんな大金何に使うつもりだ」
「必要なんだよ」
「そりゃまあいいが」
ディレンは最初からあの馬車を売った金に、ちょっとした船を買えるぐらいの額の金に頓着しているわけではない。だが……
「って、その金、元はおれらの金も入ってるんだぞ!」
そうであった。
ディレンに渡した馬車を買った資金はというと、トーヤ自身の金はもちろん、ゆくゆくはどこぞに小さい店でも構えるためにとアランとべルがトーヤに頼んで銀行に預けてあった金であった。
「まあ大丈夫だ、なんとかなる」
「信じられねー!」
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「まあ、ここまできちまったんだ、一度諦めろ」
冷静なアランがそう言って妹の肩をぽんと叩いた。
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