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第一章 第四部 シャンタリオへの帰還
12 訪問と再会
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一行を乗せた馬車はシャンタル宮の「客殿」の前に停まると中の人を降ろし、馬車の待機場所へと移動していった。
「そちらの方はお歩きになれるのでしょうか?」
迎えに出た侍女の一人が包帯だらけの男を見て、心配そうにそう声をかけた。
衣装の色は淡い黄色、年の頃はまだ10代半ばのようで、トーヤがいた当時にはまだ宮にいなかったであろうと思われた。
「ええ、大丈夫です。俺が肩を貸しますから。ゆっくりとお願いします」
「分かりました」
アランがトーヤに肩を貸す。
若い侍女に案内され、前からアロ、ディレン、その後ろに侍女に手を引かれた奥様、最後にアランに助けられたトーヤの順に続く。
案内されたのは客殿の一室であった。
この建物の4階の一番豪華な客室が、トーヤが嵐の後で目を覚ました部屋、シャンタル交代の時に王一家が滞在していた部屋である。その下の3階が王の側室たちがその時にいた部屋、その下の2階の少し離れた場所に「次代様」の父親が滞在していた部屋もある。
今回は1階、シャンタルの託宣をいただこうと謁見を求める者たちで、王族や貴族、名のある人以外の者が滞在する待合室のような部屋の一室へ通された。謁見以外にも、宮に何かの用で来た者もここで待つことになる。
「しばらくお待ちください」
侍女が丁寧に頭を下げた。宮の上の者や位が上の者へは、片膝をついて深く礼をする。一般の者へは立ったままの礼であった。
部屋には十数人はゆっくりと座れるぐらいにソファと椅子が置かれている。奥様は一番良いソファに案内されて座り、隣に並んで侍女が座る。次にその隣のソファにアロとディレンが座り、次のソファ、入り口から一番近いソファに「少しでも動く距離が少ないように」と、ケガ人、の振りをしたトーヤと、肩を貸すアランが座った。
しばらく待つとさっきの侍女が戻ってきて、
「ご案内いたします」
そう言ってまた頭を下げた。
一行は淡い黄色の衣装の少女の後に続く。どこへ連れて行かれるのかは分からない。階段は上がらずにまっすぐに長い廊下を進む。
(この最上階は広間、その先に大きな渡り廊下があったな)
確か2階は渡り廊下ではなく、衛士たちの控室が並んだ普通の廊下だったはずだ。
トーヤは記憶をたどる。その廊下の先、渡り廊下の端には下働きの者たちが使う階段がある。あの日、交代の日、そこの階段を使って部屋の行き来をした、自分が過ごしていた部屋まで。
薄い黄色の侍女はその階段も通り過ぎ、「前の宮」と思われる建物へと進んでいった。 この先の上の階、2階にはトーヤとダルの部屋がある。いや、あった。今はどうなっているか分からない。
トーヤはなんとなく八年前に戻ったような気がしていた。あの頃、自由にこの宮を動き回っていた頃に、ふっと戻ったような気が。
今回は上の階には上がらず、そのままずっと1階の部屋が続く廊下を進み、そのうちの一室へ通された。
「ここでしばらくお待ちください」
また侍女が頭を下げて部屋から下る。
今度の部屋はさっきの待合室よりは狭く、半分ぐらいの人数が座れるぐらいにソファが2つと、椅子が4脚置いてあった。
ソファには奥様と侍女、そして今度はケガ人と肩を貸すようにアランが座り、アロとディレンは扉近くの方にある椅子に座った。
そのままさらにしばらく待つ。
しばらく待つと、扉が叩かれ誰かが入ってきた。
(キリエさん……)
入ってきたのは侍女頭のキリエであった。そばにおそらく見たことがない、だが二十歳は過ぎているだろう侍女を連れている。衣装の色は薄い赤に近い色である。
一行の横を通り過ぎ、扉から遠い方の椅子がある方へと移動する。
急いでアロが、そしてディレンが立ち上がって頭を下げる。侍女が2人を見て急いで立ち上がるが、奥様はそのまま、座ったまま高齢の女性を迎えた。それから茶色い髪の若い男が、包帯で巻かれた男に座っているように手で制し、自分だけが立ち上がった。
「お座りなさい」
鋼の侍女頭は、当時と変わらぬ体温を感じさせぬ声で、だが確かにケガ人と遠い国から来た貴婦人を気遣いながらそう言った。
(分かりにくい人だからなあ)
それでも、もうその言葉にも態度にも慣れてしまったトーヤにはそれが分かった。
少し年をとったのは仕方がないが、当時と変わらぬ姿勢のよさにうれしくなる。
(少しやせたのか? でも特に病気とかには見えねえよな?)
「シャンタル宮侍女頭のキリエです。おおよその話は聞いております」
トーヤがそんなことを考えていると、キリエが話を始めた。
「それで、当宮に保護を申し出ておられるとのことですが、そのあたりの事情をもう一度ご説明ください」
問われて誰が話をするか、とアロがディレンと奥様御一行を見る。
「あ、では俺が」
アランが軽く手を上げて言う。
「えと、どのぐらい話をしてくれてます?」
アランがアロに尋ねると、
「奥様がどのような事情でこちらに来られたかと、リュセルスで賊に押し入られて護衛の方が小さからぬケガをしたこと、そのために護衛が困難になったこと、などです」
そう答えた。
「そちらの方はお歩きになれるのでしょうか?」
迎えに出た侍女の一人が包帯だらけの男を見て、心配そうにそう声をかけた。
衣装の色は淡い黄色、年の頃はまだ10代半ばのようで、トーヤがいた当時にはまだ宮にいなかったであろうと思われた。
「ええ、大丈夫です。俺が肩を貸しますから。ゆっくりとお願いします」
「分かりました」
アランがトーヤに肩を貸す。
若い侍女に案内され、前からアロ、ディレン、その後ろに侍女に手を引かれた奥様、最後にアランに助けられたトーヤの順に続く。
案内されたのは客殿の一室であった。
この建物の4階の一番豪華な客室が、トーヤが嵐の後で目を覚ました部屋、シャンタル交代の時に王一家が滞在していた部屋である。その下の3階が王の側室たちがその時にいた部屋、その下の2階の少し離れた場所に「次代様」の父親が滞在していた部屋もある。
今回は1階、シャンタルの託宣をいただこうと謁見を求める者たちで、王族や貴族、名のある人以外の者が滞在する待合室のような部屋の一室へ通された。謁見以外にも、宮に何かの用で来た者もここで待つことになる。
「しばらくお待ちください」
侍女が丁寧に頭を下げた。宮の上の者や位が上の者へは、片膝をついて深く礼をする。一般の者へは立ったままの礼であった。
部屋には十数人はゆっくりと座れるぐらいにソファと椅子が置かれている。奥様は一番良いソファに案内されて座り、隣に並んで侍女が座る。次にその隣のソファにアロとディレンが座り、次のソファ、入り口から一番近いソファに「少しでも動く距離が少ないように」と、ケガ人、の振りをしたトーヤと、肩を貸すアランが座った。
しばらく待つとさっきの侍女が戻ってきて、
「ご案内いたします」
そう言ってまた頭を下げた。
一行は淡い黄色の衣装の少女の後に続く。どこへ連れて行かれるのかは分からない。階段は上がらずにまっすぐに長い廊下を進む。
(この最上階は広間、その先に大きな渡り廊下があったな)
確か2階は渡り廊下ではなく、衛士たちの控室が並んだ普通の廊下だったはずだ。
トーヤは記憶をたどる。その廊下の先、渡り廊下の端には下働きの者たちが使う階段がある。あの日、交代の日、そこの階段を使って部屋の行き来をした、自分が過ごしていた部屋まで。
薄い黄色の侍女はその階段も通り過ぎ、「前の宮」と思われる建物へと進んでいった。 この先の上の階、2階にはトーヤとダルの部屋がある。いや、あった。今はどうなっているか分からない。
トーヤはなんとなく八年前に戻ったような気がしていた。あの頃、自由にこの宮を動き回っていた頃に、ふっと戻ったような気が。
今回は上の階には上がらず、そのままずっと1階の部屋が続く廊下を進み、そのうちの一室へ通された。
「ここでしばらくお待ちください」
また侍女が頭を下げて部屋から下る。
今度の部屋はさっきの待合室よりは狭く、半分ぐらいの人数が座れるぐらいにソファが2つと、椅子が4脚置いてあった。
ソファには奥様と侍女、そして今度はケガ人と肩を貸すようにアランが座り、アロとディレンは扉近くの方にある椅子に座った。
そのままさらにしばらく待つ。
しばらく待つと、扉が叩かれ誰かが入ってきた。
(キリエさん……)
入ってきたのは侍女頭のキリエであった。そばにおそらく見たことがない、だが二十歳は過ぎているだろう侍女を連れている。衣装の色は薄い赤に近い色である。
一行の横を通り過ぎ、扉から遠い方の椅子がある方へと移動する。
急いでアロが、そしてディレンが立ち上がって頭を下げる。侍女が2人を見て急いで立ち上がるが、奥様はそのまま、座ったまま高齢の女性を迎えた。それから茶色い髪の若い男が、包帯で巻かれた男に座っているように手で制し、自分だけが立ち上がった。
「お座りなさい」
鋼の侍女頭は、当時と変わらぬ体温を感じさせぬ声で、だが確かにケガ人と遠い国から来た貴婦人を気遣いながらそう言った。
(分かりにくい人だからなあ)
それでも、もうその言葉にも態度にも慣れてしまったトーヤにはそれが分かった。
少し年をとったのは仕方がないが、当時と変わらぬ姿勢のよさにうれしくなる。
(少しやせたのか? でも特に病気とかには見えねえよな?)
「シャンタル宮侍女頭のキリエです。おおよその話は聞いております」
トーヤがそんなことを考えていると、キリエが話を始めた。
「それで、当宮に保護を申し出ておられるとのことですが、そのあたりの事情をもう一度ご説明ください」
問われて誰が話をするか、とアロがディレンと奥様御一行を見る。
「あ、では俺が」
アランが軽く手を上げて言う。
「えと、どのぐらい話をしてくれてます?」
アランがアロに尋ねると、
「奥様がどのような事情でこちらに来られたかと、リュセルスで賊に押し入られて護衛の方が小さからぬケガをしたこと、そのために護衛が困難になったこと、などです」
そう答えた。
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