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第二章 第二部 宮と神殿
8 招待状
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「え、俺たちに会いたいっておっしゃってるんですか?」
アラン、いや、「アラヌス」が困惑した顔で聞き返す。
「ええ、そうおっしゃっています」
鋼鉄の侍女頭、キリエが答える。
昨日の午後、「奥宮」では静かな嵐が吹き荒れていた。
その夜、かなり遅くにマユリアからキリエに言伝があり、それを受けて今朝早くにキリエが「中の国」一行の部屋へと足を向けたのだ。
キリエが「アラヌス」に一通の封筒を差し出した。
上等の紙に金色で装飾がある。
そこに濃い紫の封蝋で封をしてあった。
マユリアからの親書だ。
「アラヌス」はこの部屋の主である「エリス様」、その侍女の「アナベル」、それから同僚の「ルーク」に向けて顔を振ると、一つ頷いた。
腰から短刀を引き抜くと、それを使って封を切る。
中から薄いレースのような紙に添えられた、封筒と同じ金色の装飾のあるカードが出てきた。
『一度お国のお話などを伺いたく思います。ぜひともお茶会へおいでください。』
最後にきれいな筆跡で「マユリア」と署名がある。
正式な招待状だ。
一同は顔を見合わせて困惑した。
「いかがなさいます?」
「いや、いかがなさいますって言われても……」
「アラヌス」が困った顔でキリエを見る。
相変わらずの圧に、そっちはそっちで見るのに困る。
「正式な招待状です」
感情なく、淡々とそう言う。
「いや、あの、そうなんですが……」
「いかがなさいます?」
明らかに「出席しろ」と言ってるじゃねえかよ、とアランは心の中で舌打ちする。
「分かりました、お受けいたします。ありがとうございますとお伝え下さい、とのことです」
「アナベル」が困りきっている「アラヌス」の後ろからそう言う。
「アラヌス」が驚いてそっちを振り向いた。
「分かりました、ではそのようにお伝えいたします。詳しい時間や場所などはまたお伝えしに参ります」
キリエはそう言うとするりと立ち上がり、会釈を一つしてあっという間に部屋から出ていってしまった。
「お、おい、いいのかよ」
アランが包帯男に振り返ってそう聞く。
「うーん、まあ、俺は行くわけにはいかねえが、おまえらは行ってくりゃいいんじゃねえの?マユリアが出してくれる菓子はうまいぞ~」
トーヤがさらりとそう言う。
「え、そんなうまいの?」
ストールを被った侍女の中からゴクリと息を飲む音がする。
「うまいな、『奥宮』で出る菓子はそりゃもううまい。ついでにお茶もうまい」
「おいおいおいおい~」
ベルがたまらずストールを巻き上げると、
「ここに来てから毎日毎日、すんごいうまいもんばっかり食ってんのに、その上まだこれよりうまいってのか?おい~あたっ!」
満面の笑みを浮かべながら全身身悶えして喜ぶベルと、最後のはそれを後ろから兄に張り倒されたためだ。
「そんなこと言ってる場合じゃねえだろうがよ」
「え~だってよ、兄貴」
「だってじゃねえ」
妹をキッと睨みつけ、
「なあトーヤ、大丈夫なのか?」
真面目な顔でそう聞く。
「大丈夫かどうかでいうとそこは分からんが、何にしてもお断りってのはできねえだろ?」
「そりゃまあそうなんだが」
「けどまあ、俺は行くわけにはいかんな。うまい菓子は惜しいが」
「なんでだ?」
ベルが聞く。
「そりゃおまえ、謁見の間ぐらい遠くならいいが、お茶会しようってぐらい近い場所で会ったら、もしかしたらバレるかも知れねえだろうが。実際、キリエさんには気づかれたしな」
「そうか……」
キリエは一度トーヤと会って話はしているが、それでも、もう知っていると分かっていても、あくまで「エリス様」とその一行としての態度を崩さない。
「すごいよな、あの人、そのへんが」
「ああ、全くだ」
ベルの言葉にアランも同意する。
「まあとにかく、だ」
トーヤが続ける。
「俺は、そうだな、体調崩したかなんとか言って、おまえらと後、ディレンの4人で行ってこい。そんで様子見てこい。場所は多分、俺らがお茶会してたマユリアの客室じゃねえかな」
「シャンタルとお茶会やってたか?」
「そうだ」
「なあ、シャンタルはその部屋覚えてる?」
ベルが奥様を振り返って聞くと、
「う~ん、覚えてないなあ」
「やっぱりか」
お茶会で必死にシャンタルの心を開かせようとしていたが、とうとう最後まで無理だった。覚えていなくても不思議じゃない。
「そんじゃ余計いいじゃねえか。『エリス様』も初めてのお部屋だ、珍しそうにしてこい」
「そうなのかもなあ」
不安そうにだが、ベルもそう言う。
その日の午後、またキリエが部屋にやってきて、お茶会は明日の午後ということになった。
「ディレン殿にもお越しくださいとのことですので、連絡をよろしくお願いいたします」
「分かりました」
アランがそう言って頭を下げ、そのまま一度リュセルスへ出て連絡に行くことになった。
「なんだって?そりゃまあ、またどえらいことになってるじゃねえかよ」
「すごいですね船長!」
ちょうどディレンはアルロス号へ来ていたので、一緒に話を聞いたハリオが大興奮して大騒ぎとなり、他の船員たちにも、そしてまたその先から街の者にまで話が伝わる。
「奥様御一行がマユリアとお茶会をなさるそうだ。アルロス号船長も一緒だそうだ」
その日の夜にはその話題でもちきりとなった。
アラン、いや、「アラヌス」が困惑した顔で聞き返す。
「ええ、そうおっしゃっています」
鋼鉄の侍女頭、キリエが答える。
昨日の午後、「奥宮」では静かな嵐が吹き荒れていた。
その夜、かなり遅くにマユリアからキリエに言伝があり、それを受けて今朝早くにキリエが「中の国」一行の部屋へと足を向けたのだ。
キリエが「アラヌス」に一通の封筒を差し出した。
上等の紙に金色で装飾がある。
そこに濃い紫の封蝋で封をしてあった。
マユリアからの親書だ。
「アラヌス」はこの部屋の主である「エリス様」、その侍女の「アナベル」、それから同僚の「ルーク」に向けて顔を振ると、一つ頷いた。
腰から短刀を引き抜くと、それを使って封を切る。
中から薄いレースのような紙に添えられた、封筒と同じ金色の装飾のあるカードが出てきた。
『一度お国のお話などを伺いたく思います。ぜひともお茶会へおいでください。』
最後にきれいな筆跡で「マユリア」と署名がある。
正式な招待状だ。
一同は顔を見合わせて困惑した。
「いかがなさいます?」
「いや、いかがなさいますって言われても……」
「アラヌス」が困った顔でキリエを見る。
相変わらずの圧に、そっちはそっちで見るのに困る。
「正式な招待状です」
感情なく、淡々とそう言う。
「いや、あの、そうなんですが……」
「いかがなさいます?」
明らかに「出席しろ」と言ってるじゃねえかよ、とアランは心の中で舌打ちする。
「分かりました、お受けいたします。ありがとうございますとお伝え下さい、とのことです」
「アナベル」が困りきっている「アラヌス」の後ろからそう言う。
「アラヌス」が驚いてそっちを振り向いた。
「分かりました、ではそのようにお伝えいたします。詳しい時間や場所などはまたお伝えしに参ります」
キリエはそう言うとするりと立ち上がり、会釈を一つしてあっという間に部屋から出ていってしまった。
「お、おい、いいのかよ」
アランが包帯男に振り返ってそう聞く。
「うーん、まあ、俺は行くわけにはいかねえが、おまえらは行ってくりゃいいんじゃねえの?マユリアが出してくれる菓子はうまいぞ~」
トーヤがさらりとそう言う。
「え、そんなうまいの?」
ストールを被った侍女の中からゴクリと息を飲む音がする。
「うまいな、『奥宮』で出る菓子はそりゃもううまい。ついでにお茶もうまい」
「おいおいおいおい~」
ベルがたまらずストールを巻き上げると、
「ここに来てから毎日毎日、すんごいうまいもんばっかり食ってんのに、その上まだこれよりうまいってのか?おい~あたっ!」
満面の笑みを浮かべながら全身身悶えして喜ぶベルと、最後のはそれを後ろから兄に張り倒されたためだ。
「そんなこと言ってる場合じゃねえだろうがよ」
「え~だってよ、兄貴」
「だってじゃねえ」
妹をキッと睨みつけ、
「なあトーヤ、大丈夫なのか?」
真面目な顔でそう聞く。
「大丈夫かどうかでいうとそこは分からんが、何にしてもお断りってのはできねえだろ?」
「そりゃまあそうなんだが」
「けどまあ、俺は行くわけにはいかんな。うまい菓子は惜しいが」
「なんでだ?」
ベルが聞く。
「そりゃおまえ、謁見の間ぐらい遠くならいいが、お茶会しようってぐらい近い場所で会ったら、もしかしたらバレるかも知れねえだろうが。実際、キリエさんには気づかれたしな」
「そうか……」
キリエは一度トーヤと会って話はしているが、それでも、もう知っていると分かっていても、あくまで「エリス様」とその一行としての態度を崩さない。
「すごいよな、あの人、そのへんが」
「ああ、全くだ」
ベルの言葉にアランも同意する。
「まあとにかく、だ」
トーヤが続ける。
「俺は、そうだな、体調崩したかなんとか言って、おまえらと後、ディレンの4人で行ってこい。そんで様子見てこい。場所は多分、俺らがお茶会してたマユリアの客室じゃねえかな」
「シャンタルとお茶会やってたか?」
「そうだ」
「なあ、シャンタルはその部屋覚えてる?」
ベルが奥様を振り返って聞くと、
「う~ん、覚えてないなあ」
「やっぱりか」
お茶会で必死にシャンタルの心を開かせようとしていたが、とうとう最後まで無理だった。覚えていなくても不思議じゃない。
「そんじゃ余計いいじゃねえか。『エリス様』も初めてのお部屋だ、珍しそうにしてこい」
「そうなのかもなあ」
不安そうにだが、ベルもそう言う。
その日の午後、またキリエが部屋にやってきて、お茶会は明日の午後ということになった。
「ディレン殿にもお越しくださいとのことですので、連絡をよろしくお願いいたします」
「分かりました」
アランがそう言って頭を下げ、そのまま一度リュセルスへ出て連絡に行くことになった。
「なんだって?そりゃまあ、またどえらいことになってるじゃねえかよ」
「すごいですね船長!」
ちょうどディレンはアルロス号へ来ていたので、一緒に話を聞いたハリオが大興奮して大騒ぎとなり、他の船員たちにも、そしてまたその先から街の者にまで話が伝わる。
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