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第二章 第三部 水際
11 本気と嘘
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「あの、ベル?」
いきなり黙り込んだベルにアーダが心配そうに声をかける。
「あ、すみません」
ベルがハッとして顔を上げる。
「あの、どうかなさいましたか?」
「いえ、あの……」
必死で頭を回して言い訳を考えた。
「少し、うれしくて……」
少し俯き、顔を伏せて見せる。
「あの、ベル?」
アーダがまた心配そうにする。
「あの国を出てきて今まで、心安らぐことがありませんでした……」
ベルがさらに俯く。
「特に、この街に落ち着き、やっと人心地ついた、後は旦那様を待つばかりと思ったばかりの時にあのようなことがあり、この先はどうなるのかと不安で不安で心潰れる思いでした……」
「ベル……」
「それが、こうしてアーダとまるでお友達のように話せて、なんでしょう、気が抜けてしまったようで……」
「ベル……」
アーダが感激したように胸の前で両手を組む。
(うう、ごめんよごめんよ、でもおれだって必死なんだよ)
「アーダ、私もこの宮のことをもっと色々教えてくださいね。いつまでいられるか分かりませんが、できるだけのことをお返しできたら、そして覚えておけたらと思っています」
「ええ、ベル、私でできることでした」
そうして、ベルはアーダと親しく話をして色々な情報を入手し、そのおかげで少しは宮の侍女たちが今どんな感じかを知ることができた。
「ってことは、なんとなく取次役側と侍女頭側に分かれてるってことか」
「そうらしい」
特に仲が悪いとかではないらしいが、命令系統が2つに分かれてしまったような形なので、どうしてもうっすらと溝のようなものがあるらしい。
「で、アーダってのはキリエさん側なんだな」
「みたいだな」
言ってベルがはあっとため息をつく。
「なんか、気の毒だよな」
「ん?」
「いや、そんなしんどいとこにいるのに、おれみたいのにまた利用されてさ……」
ベルがしょんぼりとそう言う。
「おまえ、アーダを利用してんのか?」
「え?」
ベルがトーヤの言葉に顔を上げて目を丸くする。
「いや、だって、トーヤが情報引き出せって」
「そうは言ったが利用しろとは言ってねえぞ?」
「ずるい……」
「なんでだ?」
「だって、嘘ついてんだぞ? おれ、エリス様の侍女って嘘ついてんのに」
「そこが嘘だったら他の部分も全部嘘か?」
「それは……」
ベルが言葉をなくす。
「おまえ、アーダが嫌いなのか」
「そんなことねえよ! 好きだよ! いい子だと思ってるよ!」
「だったら本気で仲良くすりゃいいじゃねえか」
「え、だって……」
「だってなんだ?」
「だって、嘘ついてんのに」
「仲良くしたいと思ってんだろ?」
「それは、そう思ってるよ」
「じゃあ、ここにいるだけでも仲良くすりゃいい」
あっさりと言う。
「トーヤも……」
「ん?」
「そういう感じでダルに近づいたのかよ……」
トーヤが言葉を止めてベルを見る。
「俺の場合ははっきりと利用しようと思って近づいた」
きっぱりと言う。
「心が痛まなかったのかよ!」
「痛んださ。けどな、そうしなきゃならねえ状況だったんだよ、説明しただろ?」
確かに聞いた。
たった一人、この国に流れ着き、何がどうなってるのかさっぱり分からない状況。
そこから抜け出そうとトーヤは必死で色々なことをやったのだ。
その一つがダルだった。
ダルを利用しようとして、結局は本当に親友と呼べる結果を迎えたのだ。
「だからな、おまえもアーダをいい子だと思うなら、嘘は嘘として置いといて、本気で仲良くすりゃいい」
「そんなこと……」
「おまえな」
トーヤがもう一度ベルの目をしっかりと見る。
「俺に、何一つ嘘ついてねえか? アランにも、シャンタルにも。誰にも嘘ついたり隠したりしてることねえか?」
「え」
ベルの心臓がドキリと動く。
ある。
兄は知っているが、自分はうっすらと、それも家族の情愛とほとんど一緒のものではあったが、トーヤに恋心を抱いていた。
それはトーヤに一生言うつもりはない。というか、兄のアランにだって言うつもりはなかったのだ。
「ある……」
正直に言う。
「だろ? そんで、それがあるからって俺とこうして話してること、全部嘘か?」
「いや」
「だろ? そんでいいんだよ」
トーヤが続ける。
「人間なんてな、みんな表の顔だけでできてるもんじゃねえんだよ。おまえは侍女のベルとしてアーダと仲良くすりゃいい。そんで、その先に、もしもだぞ? 本当のこと言えて、それでも仲良くなれるとすりゃ、それはそれでいいんだよ」
「そうなのかなあ……」
なんとなく言いくるめられている気がしないでもないが、と思いながらベルがそう言う。
「アーダだってな、もしかするとキリエさんに俺らのこと毎日報告させられてるかも知れねえぞ、あの頃のミーヤとフェイみたいにな」
「え、でも侍女頭のおばはんはおれらのことかばってくれてるじゃん、そんなことするかな」
「それはそれ、これはこれ」
トーヤがきっぱりと言う。
「誰にだってな、立場ってもんがあるんだ。だから、俺はアーダが俺らのこと、例えばキリエさんじゃなくその取次役ってのに報告させられてたとしても、そのことでアーダをああだこうだ思ったりしねえぞ。おまえはどうだ?」
「それは……」
ベルは少し考え込んでしまった。
いきなり黙り込んだベルにアーダが心配そうに声をかける。
「あ、すみません」
ベルがハッとして顔を上げる。
「あの、どうかなさいましたか?」
「いえ、あの……」
必死で頭を回して言い訳を考えた。
「少し、うれしくて……」
少し俯き、顔を伏せて見せる。
「あの、ベル?」
アーダがまた心配そうにする。
「あの国を出てきて今まで、心安らぐことがありませんでした……」
ベルがさらに俯く。
「特に、この街に落ち着き、やっと人心地ついた、後は旦那様を待つばかりと思ったばかりの時にあのようなことがあり、この先はどうなるのかと不安で不安で心潰れる思いでした……」
「ベル……」
「それが、こうしてアーダとまるでお友達のように話せて、なんでしょう、気が抜けてしまったようで……」
「ベル……」
アーダが感激したように胸の前で両手を組む。
(うう、ごめんよごめんよ、でもおれだって必死なんだよ)
「アーダ、私もこの宮のことをもっと色々教えてくださいね。いつまでいられるか分かりませんが、できるだけのことをお返しできたら、そして覚えておけたらと思っています」
「ええ、ベル、私でできることでした」
そうして、ベルはアーダと親しく話をして色々な情報を入手し、そのおかげで少しは宮の侍女たちが今どんな感じかを知ることができた。
「ってことは、なんとなく取次役側と侍女頭側に分かれてるってことか」
「そうらしい」
特に仲が悪いとかではないらしいが、命令系統が2つに分かれてしまったような形なので、どうしてもうっすらと溝のようなものがあるらしい。
「で、アーダってのはキリエさん側なんだな」
「みたいだな」
言ってベルがはあっとため息をつく。
「なんか、気の毒だよな」
「ん?」
「いや、そんなしんどいとこにいるのに、おれみたいのにまた利用されてさ……」
ベルがしょんぼりとそう言う。
「おまえ、アーダを利用してんのか?」
「え?」
ベルがトーヤの言葉に顔を上げて目を丸くする。
「いや、だって、トーヤが情報引き出せって」
「そうは言ったが利用しろとは言ってねえぞ?」
「ずるい……」
「なんでだ?」
「だって、嘘ついてんだぞ? おれ、エリス様の侍女って嘘ついてんのに」
「そこが嘘だったら他の部分も全部嘘か?」
「それは……」
ベルが言葉をなくす。
「おまえ、アーダが嫌いなのか」
「そんなことねえよ! 好きだよ! いい子だと思ってるよ!」
「だったら本気で仲良くすりゃいいじゃねえか」
「え、だって……」
「だってなんだ?」
「だって、嘘ついてんのに」
「仲良くしたいと思ってんだろ?」
「それは、そう思ってるよ」
「じゃあ、ここにいるだけでも仲良くすりゃいい」
あっさりと言う。
「トーヤも……」
「ん?」
「そういう感じでダルに近づいたのかよ……」
トーヤが言葉を止めてベルを見る。
「俺の場合ははっきりと利用しようと思って近づいた」
きっぱりと言う。
「心が痛まなかったのかよ!」
「痛んださ。けどな、そうしなきゃならねえ状況だったんだよ、説明しただろ?」
確かに聞いた。
たった一人、この国に流れ着き、何がどうなってるのかさっぱり分からない状況。
そこから抜け出そうとトーヤは必死で色々なことをやったのだ。
その一つがダルだった。
ダルを利用しようとして、結局は本当に親友と呼べる結果を迎えたのだ。
「だからな、おまえもアーダをいい子だと思うなら、嘘は嘘として置いといて、本気で仲良くすりゃいい」
「そんなこと……」
「おまえな」
トーヤがもう一度ベルの目をしっかりと見る。
「俺に、何一つ嘘ついてねえか? アランにも、シャンタルにも。誰にも嘘ついたり隠したりしてることねえか?」
「え」
ベルの心臓がドキリと動く。
ある。
兄は知っているが、自分はうっすらと、それも家族の情愛とほとんど一緒のものではあったが、トーヤに恋心を抱いていた。
それはトーヤに一生言うつもりはない。というか、兄のアランにだって言うつもりはなかったのだ。
「ある……」
正直に言う。
「だろ? そんで、それがあるからって俺とこうして話してること、全部嘘か?」
「いや」
「だろ? そんでいいんだよ」
トーヤが続ける。
「人間なんてな、みんな表の顔だけでできてるもんじゃねえんだよ。おまえは侍女のベルとしてアーダと仲良くすりゃいい。そんで、その先に、もしもだぞ? 本当のこと言えて、それでも仲良くなれるとすりゃ、それはそれでいいんだよ」
「そうなのかなあ……」
なんとなく言いくるめられている気がしないでもないが、と思いながらベルがそう言う。
「アーダだってな、もしかするとキリエさんに俺らのこと毎日報告させられてるかも知れねえぞ、あの頃のミーヤとフェイみたいにな」
「え、でも侍女頭のおばはんはおれらのことかばってくれてるじゃん、そんなことするかな」
「それはそれ、これはこれ」
トーヤがきっぱりと言う。
「誰にだってな、立場ってもんがあるんだ。だから、俺はアーダが俺らのこと、例えばキリエさんじゃなくその取次役ってのに報告させられてたとしても、そのことでアーダをああだこうだ思ったりしねえぞ。おまえはどうだ?」
「それは……」
ベルは少し考え込んでしまった。
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