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第二章 第四部 おかえり、ただいま
14 最強の手足
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「いや、本当に大変だったんだよ。トーヤがいてくれたらなあ、って何回思ったことか。特に隊長なんて俺の柄じゃないし」
「いや、俺がいてもやっぱりおまえに隊長になってもらったと思う」
「なんでだよー」
「俺は手足で動く方が向いてる。おまえが頭で俺を動かしてくれたら、その方がうまくいくと思うからな」
「そんなことないって。俺、どうやって動こうって、ずっとトーヤがいたらこうしたかなあ、って考えながらやってたんだよ。それってトーヤのやり方見てたからできたことで、そうじゃなかったら困ってたって」
「あ、俺もそれ分かります」
アランが言う。
「俺もそうやってトーヤだったらどうするかな、って考えながら動くこと結構あるんで」
「だろ? 分かってくれるだろ?」
ダルは本当にうれしそうにそう言ってアランに笑いかける。
「ええ、ほんとに。見て習ってるから動けるってこと多い」
「そうそう、そうなんだよ!」
ダルがうんうんと大きく頷く。
「でもさ、たまに『え、こんなことまでやっちゃう?』ってのがあってさ、それはさすがに真似できなかったな」
「あーそれも分かります」
アランがそう言い、ダルと一緒に笑う。
「なんだよおまえら、それ、ほめてんのかくさしてんのか」
「あー両方かな?」
ダルのその言葉にまたアランが笑い、トーヤも笑う。
なんだろうな、まるで昔から一緒にいたみたいだ。アランは不思議な気持ちになっていた。
「それで『月虹隊』は今はまあ、一応リュセルスの街ではみんなに知られてさ、今は落ち着いてお勤めできるようになってる。人数も30人以上いるし」
「すげえなあ、それの隊長か」
アランがひゅーっと口笛を吹く。
「なんでかな、最初の一人ってのでこんなことになっちゃったよ。トーヤの手伝いしようと思ってマユリアにお願いしただけなのになあ」
ダルが肩をすくめる。
「そんで、アミちゃんとはうまいこといって、もう子どももいるんだろ?」
「あ、ああ、なんとかな」
そう言って赤い顔をした。
「結局、シャンタルの喪明けまでって一年待ったけど、そらもうその間母ちゃんたちが大変でさあ」
「おふくろさんらしい」
トーヤがそう言って笑う。
「でもそのおかげで結構賑やかにやれたよ。宮からミーヤやリル、それにキリエ様も来てくれたんだぜ」
「え、キリエさんが?」
「そうなんだよ、びっくりした」
「へえ、そりゃまあ、思わんことだな」
「だろ? マユリアの名代だってことだった」
「なるほど」
「みんな、トーヤが来られないこと残念がってたよ。けどなあ、俺も待てなかったからなあ」
「そりゃおまえ、長いことずっと待ってた上にさらに一年だもんなあ、待てるはずねえよ」
「そう言ってくれりゃちょっと申し訳無さが薄まるな」
ダルがそう言って頭をかく。
「けどな、そういう話聞いてると、どこでどう宮が変わったかさっぱり分かんねえ。なあ、いつ頃からだ?」
「う、うん……」
ダルがふうっとため息をついてから話を続ける。
「本当に一気に変わってきたのは三年ぐらい前なんだけど、五年ぐらい前からあれっ? って思うことが増えてったように思うな」
「五年前か」
「うん。けどさ、最初は本当にちょっとのことだったんだよ。まあ、そんなこともあるかなってぐらいのこと。それが三年前にトーヤは知ってるかどうか分かんねえけどさ、『取次役』ってのができて、それから一気に変わった気がする」
「半分の葉か……」
「え?」
「あ、いや、なんでもないです」
アランが思わずぼそっと言ったことをダルが聞き留める。
少しずつ少しずつ変わっていき、ある時いきなり全部が変わる。
そんな話を少し前にしたばかりだ。
「その『取次役』、セルマってやつだっけか? そいつのこと、知ってたら教えてほしいんだが」
「セルマ様か。まあ、真面目な人だよ、真面目過ぎるっていうか」
ダルは少し曇った表情でそう言う。
「宮はこうでなくてはならない、みたいな感じの人だよ。キリエ様とはまた違うお硬い感じだ」
「キリエさんは頑固だが柔軟性もある、そんで基本は人を大事にしてるからな」
「うん、そのへんなんだよなあ」
ダルがゆっくりと頷く。
「なんというか、規則があって人があるってのがセルマ様かなあ。キリエ様はがっちがちの岩みたいに見えて、実は本当にみんなを大事にしてる。一番大事にしてないのは自分のこと、みたいな方だから」
「ああ、そこらへんがあの人の困ったとこでもあるけどな」
ダルの言葉にトーヤは苦笑する。
「うん、知れば知るほどそのへんのこと分かってくるんだが、外から見たら単なる独裁者的に見る人もいるからね」
「分からんでもない。そのへんも困ったとこだ」
「だよな」
ダルも苦笑する。
「あんな優しい人はいねえよ」
トーヤが思い出すようにしてポツリと言う。
「けど、その優しさをぶっちぎって平気で自分の心の血を流せるような人だ」
「うん」
「そこが怖い。あの人は敵に回したくねえな」
「うん」
「こうする! と決めたらそれこそなんでもする、頭が命じるままにな。あの人は最強の手足だ。そのへんはルギも似たようなもんだが、比較にはならん。ルギはなんだかんだいって結構甘い」
トーヤが半分面白がるようにそう言った。
「いや、俺がいてもやっぱりおまえに隊長になってもらったと思う」
「なんでだよー」
「俺は手足で動く方が向いてる。おまえが頭で俺を動かしてくれたら、その方がうまくいくと思うからな」
「そんなことないって。俺、どうやって動こうって、ずっとトーヤがいたらこうしたかなあ、って考えながらやってたんだよ。それってトーヤのやり方見てたからできたことで、そうじゃなかったら困ってたって」
「あ、俺もそれ分かります」
アランが言う。
「俺もそうやってトーヤだったらどうするかな、って考えながら動くこと結構あるんで」
「だろ? 分かってくれるだろ?」
ダルは本当にうれしそうにそう言ってアランに笑いかける。
「ええ、ほんとに。見て習ってるから動けるってこと多い」
「そうそう、そうなんだよ!」
ダルがうんうんと大きく頷く。
「でもさ、たまに『え、こんなことまでやっちゃう?』ってのがあってさ、それはさすがに真似できなかったな」
「あーそれも分かります」
アランがそう言い、ダルと一緒に笑う。
「なんだよおまえら、それ、ほめてんのかくさしてんのか」
「あー両方かな?」
ダルのその言葉にまたアランが笑い、トーヤも笑う。
なんだろうな、まるで昔から一緒にいたみたいだ。アランは不思議な気持ちになっていた。
「それで『月虹隊』は今はまあ、一応リュセルスの街ではみんなに知られてさ、今は落ち着いてお勤めできるようになってる。人数も30人以上いるし」
「すげえなあ、それの隊長か」
アランがひゅーっと口笛を吹く。
「なんでかな、最初の一人ってのでこんなことになっちゃったよ。トーヤの手伝いしようと思ってマユリアにお願いしただけなのになあ」
ダルが肩をすくめる。
「そんで、アミちゃんとはうまいこといって、もう子どももいるんだろ?」
「あ、ああ、なんとかな」
そう言って赤い顔をした。
「結局、シャンタルの喪明けまでって一年待ったけど、そらもうその間母ちゃんたちが大変でさあ」
「おふくろさんらしい」
トーヤがそう言って笑う。
「でもそのおかげで結構賑やかにやれたよ。宮からミーヤやリル、それにキリエ様も来てくれたんだぜ」
「え、キリエさんが?」
「そうなんだよ、びっくりした」
「へえ、そりゃまあ、思わんことだな」
「だろ? マユリアの名代だってことだった」
「なるほど」
「みんな、トーヤが来られないこと残念がってたよ。けどなあ、俺も待てなかったからなあ」
「そりゃおまえ、長いことずっと待ってた上にさらに一年だもんなあ、待てるはずねえよ」
「そう言ってくれりゃちょっと申し訳無さが薄まるな」
ダルがそう言って頭をかく。
「けどな、そういう話聞いてると、どこでどう宮が変わったかさっぱり分かんねえ。なあ、いつ頃からだ?」
「う、うん……」
ダルがふうっとため息をついてから話を続ける。
「本当に一気に変わってきたのは三年ぐらい前なんだけど、五年ぐらい前からあれっ? って思うことが増えてったように思うな」
「五年前か」
「うん。けどさ、最初は本当にちょっとのことだったんだよ。まあ、そんなこともあるかなってぐらいのこと。それが三年前にトーヤは知ってるかどうか分かんねえけどさ、『取次役』ってのができて、それから一気に変わった気がする」
「半分の葉か……」
「え?」
「あ、いや、なんでもないです」
アランが思わずぼそっと言ったことをダルが聞き留める。
少しずつ少しずつ変わっていき、ある時いきなり全部が変わる。
そんな話を少し前にしたばかりだ。
「その『取次役』、セルマってやつだっけか? そいつのこと、知ってたら教えてほしいんだが」
「セルマ様か。まあ、真面目な人だよ、真面目過ぎるっていうか」
ダルは少し曇った表情でそう言う。
「宮はこうでなくてはならない、みたいな感じの人だよ。キリエ様とはまた違うお硬い感じだ」
「キリエさんは頑固だが柔軟性もある、そんで基本は人を大事にしてるからな」
「うん、そのへんなんだよなあ」
ダルがゆっくりと頷く。
「なんというか、規則があって人があるってのがセルマ様かなあ。キリエ様はがっちがちの岩みたいに見えて、実は本当にみんなを大事にしてる。一番大事にしてないのは自分のこと、みたいな方だから」
「ああ、そこらへんがあの人の困ったとこでもあるけどな」
ダルの言葉にトーヤは苦笑する。
「うん、知れば知るほどそのへんのこと分かってくるんだが、外から見たら単なる独裁者的に見る人もいるからね」
「分からんでもない。そのへんも困ったとこだ」
「だよな」
ダルも苦笑する。
「あんな優しい人はいねえよ」
トーヤが思い出すようにしてポツリと言う。
「けど、その優しさをぶっちぎって平気で自分の心の血を流せるような人だ」
「うん」
「そこが怖い。あの人は敵に回したくねえな」
「うん」
「こうする! と決めたらそれこそなんでもする、頭が命じるままにな。あの人は最強の手足だ。そのへんはルギも似たようなもんだが、比較にはならん。ルギはなんだかんだいって結構甘い」
トーヤが半分面白がるようにそう言った。
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