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第三章 第二部 侍女たちの行方
9 宮と神殿
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「さすがアラン」
トーヤが満足そうに笑う。
「って、もしかして、それも俺にそう言わせるため、じゃねえだろうな!」
と、アランがしまった、という顔になる。
「いや、それはねえ」
「本当か?」
「本当だって」
「どうかなあ……」
胡散臭そうな表情は、やはり兄妹だけあってベルと似ている。
「そうだよなあ、そう思うよなあ。なんせトーヤは詐欺の才能もあるからなあ」
ダルがそう言って、アランに頷く。
「ちょ、ダルまで人聞き悪いこと言うなよな」
「だってなあ、俺にだって、元々は人が良さそうで騙しやすそうに見えた、とかで利用してやろうと思って近づいてきたわけだしなあ」
「聞いた聞いた、ひでえよなあ!」
ダルの言葉にアランが乗っかる。
「いや、あれはだな、その、悪かったよ……」
素直にトーヤがそう言ってしょぼくれたのを見て、ダルとアランが吹き出した。
「それでも結局、騙し続けられなくてさ、なんだかんだ言って本当に友達になっちまったし」
「俺だって、助けてもらってなんだかんだ言って、結局ここまで着いてきちまったし」
「しゃあねえよな、それがトーヤだし」
「だよな」
どうやら二人でトーヤをからかったらしい。
「おまえらなあ……」
そう言いながら、トーヤはなんだか胸が熱くなった。
「ってことでな、本当にあの金、必要なら使っちまっていいから、とっとと神官長ってのにつなぎとってもらおうぜ」
「だよな」
「分かった」
そうしてアーダに話を持っていくことにした。
「神殿にお参りですか?」
ベルにどうすればいいか聞かれてアーダが驚いた顔になる。
「ええ、実は」
ベルがアーダに語ったのは、エリス様が少し不安定になっているという内容であった。
「お世話になっているキリエ様が体調を崩され、そしてまだ公式に発表をされていないといえ、もうすぐシャンタルの交代があり、その後で侍女頭の交代もあるとお聞きしました。そうなったらご自分の身はどうなるのだろうと思い悩まれているらしくて」
「そんな……」
「次の侍女頭の方が引き続き置いてくださるとおっしゃるかどうかも分かりません。そして旦那さまからの便りはまだありません。そうなられても当然のようにも思えます」
アーダは話を聞いて気の毒に思ったが、シャンタルの交代、そしてそれに伴い侍女頭の交代があった後のことは想像もできない。
「次の侍女頭はセルマ様とおっしゃる方になるのでしょうか?」
「いえ、それは分かりません、私にはなんとも申し上げられません」
「そうですか」
ベルががっくりと首を落として黙り込む。
「それで、神殿にお参りというのは」
「ええ、それなのです」
ベルが神妙な顔で言う。
「お国では、何かあると神殿にお参りをなさっていたのです。それで、どこかにお参りに行きたい、そうおっしゃいました。」
「そうでしたか」
「はい、それで、そのような場所がないかと伺ったら、こちらにも神殿があるとお聞きしたもので」
「私はこの国のことしか存じませんが、こちらでも確かに神殿にお参りはいたします」
「そうですか。ただ、宮と神殿は一体どう違うのでしょうか? それがよく分からなくて」
「はい、宮はシャンタルがいらっしゃる場所、神殿はシャンタル神に祈りを捧げ、その御意志に従って色々な祭事を執り行う場です」
「祭事を?」
「はい。次にある祭事となると、次代様がご誕生になられましたら、生誕の儀を執り行います。色々な捧げものを神殿にお供えし、新たなシャンタルのご誕生のお礼を申し上げます」
「あの、それはこちらの、宮のシャンタルはなさらないのですか?」
「はい、シャンタルはシャンタル女神を宿される聖なる存在ではありますが、神の声を民に伝える、託宣をなさるのがお役目でございます」
ベルは少し混乱していた。
(前もってシャンタルとミーヤさんにちょっと聞いてたけど、やっぱわけわかんねえ……)
心の中で口癖をつぶやく。
「では、何か神様にお祈りしたい時は神殿に行かれて、シャンタルの声を直接聞くわけではない、と」
「その通りです」
「民がシャンタルに何か伺いたい時にはどうするのですか? 先日、エリス様が謁見をされた時、他にもいらっしゃっていましたが、あの方たちはどうやって謁見を?」
「シャンタルに直接お会いできるというのは、やはりそれなりにお力のある方、身分のある方、それから何かお声がかかった方、などになります」
「お声が?」
「はい」
アーダが少し考える。
「たとえば、どこかにお困りの方がいらっしゃったとしても、普通の人間がシャンタルにお会いになることはなかなか叶いません。お顔を拝見しようと思うなら、お出ましの日に来られてお庭からバルコニーにいらっしゃるのを拝見するということになります」
「お出ましの日?」
トーヤとシャンタルから聞いてはいるが、初めて聞いた顔をする。
「あ、そういえば、エリス様たちがいらっしゃってからはまだございませんでしたね」
「ええ」
「大体、月に一度ぐらいになりますが、神殿が吉日を選んでシャンタルが民の前にお姿を現される日がごじます、それがお出ましの日です」
トーヤが初めてシャンタルの姿を見た「お出ましの日」、その日にちを決めるのも神殿の役割らしい。
トーヤが満足そうに笑う。
「って、もしかして、それも俺にそう言わせるため、じゃねえだろうな!」
と、アランがしまった、という顔になる。
「いや、それはねえ」
「本当か?」
「本当だって」
「どうかなあ……」
胡散臭そうな表情は、やはり兄妹だけあってベルと似ている。
「そうだよなあ、そう思うよなあ。なんせトーヤは詐欺の才能もあるからなあ」
ダルがそう言って、アランに頷く。
「ちょ、ダルまで人聞き悪いこと言うなよな」
「だってなあ、俺にだって、元々は人が良さそうで騙しやすそうに見えた、とかで利用してやろうと思って近づいてきたわけだしなあ」
「聞いた聞いた、ひでえよなあ!」
ダルの言葉にアランが乗っかる。
「いや、あれはだな、その、悪かったよ……」
素直にトーヤがそう言ってしょぼくれたのを見て、ダルとアランが吹き出した。
「それでも結局、騙し続けられなくてさ、なんだかんだ言って本当に友達になっちまったし」
「俺だって、助けてもらってなんだかんだ言って、結局ここまで着いてきちまったし」
「しゃあねえよな、それがトーヤだし」
「だよな」
どうやら二人でトーヤをからかったらしい。
「おまえらなあ……」
そう言いながら、トーヤはなんだか胸が熱くなった。
「ってことでな、本当にあの金、必要なら使っちまっていいから、とっとと神官長ってのにつなぎとってもらおうぜ」
「だよな」
「分かった」
そうしてアーダに話を持っていくことにした。
「神殿にお参りですか?」
ベルにどうすればいいか聞かれてアーダが驚いた顔になる。
「ええ、実は」
ベルがアーダに語ったのは、エリス様が少し不安定になっているという内容であった。
「お世話になっているキリエ様が体調を崩され、そしてまだ公式に発表をされていないといえ、もうすぐシャンタルの交代があり、その後で侍女頭の交代もあるとお聞きしました。そうなったらご自分の身はどうなるのだろうと思い悩まれているらしくて」
「そんな……」
「次の侍女頭の方が引き続き置いてくださるとおっしゃるかどうかも分かりません。そして旦那さまからの便りはまだありません。そうなられても当然のようにも思えます」
アーダは話を聞いて気の毒に思ったが、シャンタルの交代、そしてそれに伴い侍女頭の交代があった後のことは想像もできない。
「次の侍女頭はセルマ様とおっしゃる方になるのでしょうか?」
「いえ、それは分かりません、私にはなんとも申し上げられません」
「そうですか」
ベルががっくりと首を落として黙り込む。
「それで、神殿にお参りというのは」
「ええ、それなのです」
ベルが神妙な顔で言う。
「お国では、何かあると神殿にお参りをなさっていたのです。それで、どこかにお参りに行きたい、そうおっしゃいました。」
「そうでしたか」
「はい、それで、そのような場所がないかと伺ったら、こちらにも神殿があるとお聞きしたもので」
「私はこの国のことしか存じませんが、こちらでも確かに神殿にお参りはいたします」
「そうですか。ただ、宮と神殿は一体どう違うのでしょうか? それがよく分からなくて」
「はい、宮はシャンタルがいらっしゃる場所、神殿はシャンタル神に祈りを捧げ、その御意志に従って色々な祭事を執り行う場です」
「祭事を?」
「はい。次にある祭事となると、次代様がご誕生になられましたら、生誕の儀を執り行います。色々な捧げものを神殿にお供えし、新たなシャンタルのご誕生のお礼を申し上げます」
「あの、それはこちらの、宮のシャンタルはなさらないのですか?」
「はい、シャンタルはシャンタル女神を宿される聖なる存在ではありますが、神の声を民に伝える、託宣をなさるのがお役目でございます」
ベルは少し混乱していた。
(前もってシャンタルとミーヤさんにちょっと聞いてたけど、やっぱわけわかんねえ……)
心の中で口癖をつぶやく。
「では、何か神様にお祈りしたい時は神殿に行かれて、シャンタルの声を直接聞くわけではない、と」
「その通りです」
「民がシャンタルに何か伺いたい時にはどうするのですか? 先日、エリス様が謁見をされた時、他にもいらっしゃっていましたが、あの方たちはどうやって謁見を?」
「シャンタルに直接お会いできるというのは、やはりそれなりにお力のある方、身分のある方、それから何かお声がかかった方、などになります」
「お声が?」
「はい」
アーダが少し考える。
「たとえば、どこかにお困りの方がいらっしゃったとしても、普通の人間がシャンタルにお会いになることはなかなか叶いません。お顔を拝見しようと思うなら、お出ましの日に来られてお庭からバルコニーにいらっしゃるのを拝見するということになります」
「お出ましの日?」
トーヤとシャンタルから聞いてはいるが、初めて聞いた顔をする。
「あ、そういえば、エリス様たちがいらっしゃってからはまだございませんでしたね」
「ええ」
「大体、月に一度ぐらいになりますが、神殿が吉日を選んでシャンタルが民の前にお姿を現される日がごじます、それがお出ましの日です」
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