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第三章 第二部 侍女たちの行方
10 兆し
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「そのような日にちも全部神殿がお決めになるのですか」
「はい、そうです」
「それは、どのようにお決めになるのでしょう?」
「さあ、私はそこまでは……神殿でなさっていることは、こちらではあまり分かることではありませんので」
アーダは聞かれてそう答える。
「神殿と宮をおつなぎする役目の侍女はおりますが、その者たちも神殿の中でのことまでは存じ上げないのではないかと思います」
「そのような役目の方もいらっしゃるのですか」
「はい。ですが、神殿と宮との連絡役のようなものらしいです。聞いたところによるとですが、そうして決めた日にちを宮に伝えたり、宮からの要望を伝えたりして、そのことを記録に残す。そのようなお役目のようです」
「あの、そういえば、アーダは以前はどのようなお役目に?」
ベルがふと思い出して尋ねる。
「私は接客係をいたしておりました」
「接客係?」
「はい。それでそのままエリス様たちの世話係になりました」
「では、宮へ来られたお客様のお世話をなさるのが本来のお役目だったのですね」
「はい。最初は何名かで交代でお世話させていただいていたのですが、様子を見ていてキリエ様から私が専任でやるようにと申し付けられました」
「そうだったのですか」
接客係が来客の世話をするという流れはごく自然なことと思えた。
それでは、やはり衣装係であったミーヤがトーヤの世話係となったのは、やはり異例中の異例なのだろう。
「といっても、私はまだまだ見習いに近い立場です。ですから驚きました、なぜ私にと」
アーダが少し曇った顔をする。
「同じ接客係でも、もっと経験を積まれた方もいらっしゃいます。私は門に来られた来客を面会室にお通しし、必要に応じてご訪問の方にそれをお伝えするのが務めでした。そしてお茶やお菓子を出したり、面会が終わったら門までお送りしたりするお役目です」
どうして自分が選ばれたのだろうと、戸惑ったような表情になる。
もしかしたら、八年前にミーヤも同じ表情をしていたのかも知れない。
「そういえば、エリス様が神殿にお参りをなさりたいというお話でしたよね。すっかり話がそれてしまいました、申し訳ありません」
「いえ、私が色々とお聞きしたからかと」
ベルが急いでそう言って話をもとに戻す。
「それで、お声があった方というのは?」
「それは、地方の神殿などで、何かそのような兆しがあった方が選ばれて、それでこちらまで来られるのです」
「兆し?」
「ええ、何か色々とあるそうです」
アーダは自分が聞いたことを思い出してくれようとしているようだ。
「そうそう、以前伺ったのでは、ある村の方が困りごとがあって神殿にお参りに行かれた時、いきなり空に光るものがあったそうです。それで、それは天からのお声だろうということで、神殿の勧めで宮まで謁見に来られたということでした」
「光ですか?」
「ええ、それはもう、ものすごく眩しい光だったそうです」
それは稲妻とかではないだろうかとベルは思ったが、
「まあ、それはすごいことです、そんなことがあるのですね」
とりあえず話を合わせておくことにした。
「ええ、面会に来られた方をお世話している時に、実際にその方からお話を伺ったのですが、村の神殿でシャンタルの御神体の前に跪き、どうか託宣をいただきたい、そう口にした途端、神殿の外に光るものがあったのだそうです。その眩しさに、村の方が驚いて神殿に集まってこられたとか」
「まあ!」
それほどの光り方であったのかと驚きはするが、ベルにはそれはごく自然現象にしか思えなかった。
だが、それを何かの天意だと信じる者には、そういう風に見えるのであろう。
「それで、その方には託宣があったのですか?」
「いえ、それが……」
ないだろう。当代シャンタルは託宣ができないのだ。
「なかったのですか」
「はい。ですが、お声をいただけなかったということは、その困りごとに対する対処は思っている方法で良いのだろうと思い、話を進めていったら最後には丸く収まったとのことでした」
「まあ、よかったこと!」
ベルが話を合わせてうれしそうに言うのにアーダも、
「はい、そうなのです。それでお礼の手紙が届き、宮の者も皆喜びました」
と、うれしそうに答える。
兆しがあったということで、村の者が金を出し合い、その人を王都まで旅をさせてくれたのだとか。
「聞いた話ですが、もしもそのようなことがあった時にと、その町や村によっては決まってお金を出し合って、それを積み立てているところもあるのだそうです」
「まあ」
聞きながらベルは、それは「たのもし講」というものと一緒だろうと思った。
アルディナでもそのようなことをしている場所はある。その集団で金を積み立て、何かがあった時などに順番その金を受け取れる仕組みだ。
なんにしろ、そのような形ではるばる王都までやってくる者がいる。その王都行きを勧めるのも地方の神殿の役割であるらしい。神殿が「お声があった」「兆しがあった」と言って初めて、推薦状を書いてもらって宮へとやってこられるらしい。
思ったより神殿がやっている仕事は多そうだとベルは思った。
「はい、そうです」
「それは、どのようにお決めになるのでしょう?」
「さあ、私はそこまでは……神殿でなさっていることは、こちらではあまり分かることではありませんので」
アーダは聞かれてそう答える。
「神殿と宮をおつなぎする役目の侍女はおりますが、その者たちも神殿の中でのことまでは存じ上げないのではないかと思います」
「そのような役目の方もいらっしゃるのですか」
「はい。ですが、神殿と宮との連絡役のようなものらしいです。聞いたところによるとですが、そうして決めた日にちを宮に伝えたり、宮からの要望を伝えたりして、そのことを記録に残す。そのようなお役目のようです」
「あの、そういえば、アーダは以前はどのようなお役目に?」
ベルがふと思い出して尋ねる。
「私は接客係をいたしておりました」
「接客係?」
「はい。それでそのままエリス様たちの世話係になりました」
「では、宮へ来られたお客様のお世話をなさるのが本来のお役目だったのですね」
「はい。最初は何名かで交代でお世話させていただいていたのですが、様子を見ていてキリエ様から私が専任でやるようにと申し付けられました」
「そうだったのですか」
接客係が来客の世話をするという流れはごく自然なことと思えた。
それでは、やはり衣装係であったミーヤがトーヤの世話係となったのは、やはり異例中の異例なのだろう。
「といっても、私はまだまだ見習いに近い立場です。ですから驚きました、なぜ私にと」
アーダが少し曇った顔をする。
「同じ接客係でも、もっと経験を積まれた方もいらっしゃいます。私は門に来られた来客を面会室にお通しし、必要に応じてご訪問の方にそれをお伝えするのが務めでした。そしてお茶やお菓子を出したり、面会が終わったら門までお送りしたりするお役目です」
どうして自分が選ばれたのだろうと、戸惑ったような表情になる。
もしかしたら、八年前にミーヤも同じ表情をしていたのかも知れない。
「そういえば、エリス様が神殿にお参りをなさりたいというお話でしたよね。すっかり話がそれてしまいました、申し訳ありません」
「いえ、私が色々とお聞きしたからかと」
ベルが急いでそう言って話をもとに戻す。
「それで、お声があった方というのは?」
「それは、地方の神殿などで、何かそのような兆しがあった方が選ばれて、それでこちらまで来られるのです」
「兆し?」
「ええ、何か色々とあるそうです」
アーダは自分が聞いたことを思い出してくれようとしているようだ。
「そうそう、以前伺ったのでは、ある村の方が困りごとがあって神殿にお参りに行かれた時、いきなり空に光るものがあったそうです。それで、それは天からのお声だろうということで、神殿の勧めで宮まで謁見に来られたということでした」
「光ですか?」
「ええ、それはもう、ものすごく眩しい光だったそうです」
それは稲妻とかではないだろうかとベルは思ったが、
「まあ、それはすごいことです、そんなことがあるのですね」
とりあえず話を合わせておくことにした。
「ええ、面会に来られた方をお世話している時に、実際にその方からお話を伺ったのですが、村の神殿でシャンタルの御神体の前に跪き、どうか託宣をいただきたい、そう口にした途端、神殿の外に光るものがあったのだそうです。その眩しさに、村の方が驚いて神殿に集まってこられたとか」
「まあ!」
それほどの光り方であったのかと驚きはするが、ベルにはそれはごく自然現象にしか思えなかった。
だが、それを何かの天意だと信じる者には、そういう風に見えるのであろう。
「それで、その方には託宣があったのですか?」
「いえ、それが……」
ないだろう。当代シャンタルは託宣ができないのだ。
「なかったのですか」
「はい。ですが、お声をいただけなかったということは、その困りごとに対する対処は思っている方法で良いのだろうと思い、話を進めていったら最後には丸く収まったとのことでした」
「まあ、よかったこと!」
ベルが話を合わせてうれしそうに言うのにアーダも、
「はい、そうなのです。それでお礼の手紙が届き、宮の者も皆喜びました」
と、うれしそうに答える。
兆しがあったということで、村の者が金を出し合い、その人を王都まで旅をさせてくれたのだとか。
「聞いた話ですが、もしもそのようなことがあった時にと、その町や村によっては決まってお金を出し合って、それを積み立てているところもあるのだそうです」
「まあ」
聞きながらベルは、それは「たのもし講」というものと一緒だろうと思った。
アルディナでもそのようなことをしている場所はある。その集団で金を積み立て、何かがあった時などに順番その金を受け取れる仕組みだ。
なんにしろ、そのような形ではるばる王都までやってくる者がいる。その王都行きを勧めるのも地方の神殿の役割であるらしい。神殿が「お声があった」「兆しがあった」と言って初めて、推薦状を書いてもらって宮へとやってこられるらしい。
思ったより神殿がやっている仕事は多そうだとベルは思った。
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