238 / 354
第三章 第二部 侍女たちの行方
11 神を見る目
しおりを挟む
「そういえば」
ベルが思い出してアーダに尋ねる。
「アーダはどのようにして宮にお勤めに上がるように?」
「私は王都から馬車で3日ほどのところにある町の出身なのですが、両親と共に神殿によくお参りに行っていたのです。そうしたところ侍女の募集があり、条件に合うので行ってみないかと声をかけられました」
「条件?」
「はい。その時は年齢が10歳以下で、上に兄か姉がいる者だったかと」
「その条件も神殿が?」
「確かそうだったと思います」
そういうのは一体どうやって決めるのだろう。多分アーダに聞いてもそこまでは知らないのだろうなとベルは考える。
「ベル?」
「あ、はい?」
考え込むベルにアーダが心配そうに声をかけた。
「ご心配でしょうね、エリス様のこと」
「え? あ、ええ、そうなのです」
もうちょっとで忘れるところであった。
「それでエリス様も神殿にお参りをなさりたいということなのですね」
「ええ、何しろお国ではそのようなことだったもので、お参りでもなさればお気持ちも落ち着くかと」
「お気の毒です。お気持ちお察しします」
アーダが目を閉じて目の前に両手を組み、軽く祈る形になってくれる。
「では神殿の方にお話をしてまいりますね」
「いいのですか?」
「はい、そのようなことも接客係の侍女のお役目ですから」
そう言ってアーダは部屋を辞していった。
ベルはアーダとの話を終えると、トーヤたちに「お声」の話をした。
「そりゃ、あれじゃねえの、稲妻とかじゃ」
「おれもそう思うんだけどな、まあちょうど話をしてる時とかにあったんじゃね?」
「なるほどな、そういうのを天の意思、とかって思うこともあるんだろう」
トーヤもベルと同じく稲妻説を取り、アランがそういうこともあるだろうと納得をする。
「なんにしても、じみ~だから気がつかなかったが、それなりに神殿の影響ってのは大きいんだな」
「みたいだな」
「宮があまりにデカすぎて分からなかったな。単なるおまけぐらいに思ってた」
あまりに正直過ぎるトーヤの感想だが、全員がそう思っていたので否の言葉はない。
「けど、今回聞いたところによると、結構仕事してるみたいだぜ、神殿もさ」
「ふうむ」
トーヤが聞いて腕組みをして考える。
「ってことは、そこからかな」
「何が?」
「いや、神官長が宮で力を持ちたいと思って、そんで子飼いのセルマってのに力を持たせたのが」
「なんで?」
「神殿が宮の下に置かれて、トーヤが言ってたようにおまけ、ぐらいに思われてたのが不満だったってことか?」
ベルの続きにアランが聞く。
「そういうことも考えられる、ってことだけどな」
「ありそうだな」
「そんで先代の死をきっかけに宮に入り込むようになって、どんどん食い込んできたのかもな」
「まあ、聞いてみりゃ神殿の神官ってのも気の毒ではあるな、一生懸命に仕事しても、そうやっておまけみたいに思われるんなら」
トーヤたちシャンタリオの者ではない3人の話を聞き、ミーヤが困ったような顔になる。
「村とかではそんなこともないのですが」
だが、ここリュセルスのシャンタル宮の中に置いては、確かにそのような位置に神殿はある。それはここで暮らすミーヤとて認めないわけにはいかなかった。
「そりゃ、そこにシャンタルがいねえからじゃないのか?」
「かもな」
「ありそうだな」
確かにそうかも知れないとベルとアランも頷く。
もしも、その村々、町々に、その場所だけのシャンタルがいたとしたら、そのシャンタルの方が神殿よりもありがたがられた可能性はある。
だが、女神は王都のシャンタル宮に一人いるだけだ。自然、神につながりのある神殿は大事に思われるようになっていく。
「ってことは、軽く見られてる神殿はここの、本部みたいな神殿だけってことになるな。皮肉なこった」
本来なら神殿の中心として、一番尊ばれなければならないシャンタル宮の神殿だけが、影が薄いということになる。
「シャンタルはさ、神殿のこととかどう思ってんの?」
ベルが一応聞いてみるが、
「うーん、覚えてないからねえ」
思っていたような返事があり、さもありなんと皆が納得する。
「そりゃそうだよなあ、ずっと寝てたようなもんだしな」
「うん、そうなんだよねえ」
「そんじゃさ、神殿がシャンタルのことどう思ってたか、ってのも分かんねえよなあ」
「え?」
ベルの言葉にトーヤが反応した。
「ん、なに?」
「いや、今おまえが言ったそれだよ」
「へ?」
「神殿がシャンタルをどう思ってたかってやつ」
「え? って、そりゃ大事に思ってたんじゃねえの?」
「この国の人間でシャンタルを大事に思わない人なんておりませんよ」
ベルとミーヤが声を合わせたようにそう言う。
「うん、まあ普通ならそうだよな。けどな、ずっと日陰に置かれてる人間ってのはまた違うことがあるしな」
「それにしても、とてもそんなこと考えもできません」
ミーヤが信じられないと首を振りながら強くそう言う。
「じゃあまあ、シャンタルに対してはそうだとする。じゃあ宮には?」
「まさかそんなこと」
「うん、そう思うよな。だがな、そうじゃなかったから、今、こんなことになってんじゃねえのか?」
「そんな……」
ミーヤはどう返事をしていいのか分からなかった。
ベルが思い出してアーダに尋ねる。
「アーダはどのようにして宮にお勤めに上がるように?」
「私は王都から馬車で3日ほどのところにある町の出身なのですが、両親と共に神殿によくお参りに行っていたのです。そうしたところ侍女の募集があり、条件に合うので行ってみないかと声をかけられました」
「条件?」
「はい。その時は年齢が10歳以下で、上に兄か姉がいる者だったかと」
「その条件も神殿が?」
「確かそうだったと思います」
そういうのは一体どうやって決めるのだろう。多分アーダに聞いてもそこまでは知らないのだろうなとベルは考える。
「ベル?」
「あ、はい?」
考え込むベルにアーダが心配そうに声をかけた。
「ご心配でしょうね、エリス様のこと」
「え? あ、ええ、そうなのです」
もうちょっとで忘れるところであった。
「それでエリス様も神殿にお参りをなさりたいということなのですね」
「ええ、何しろお国ではそのようなことだったもので、お参りでもなさればお気持ちも落ち着くかと」
「お気の毒です。お気持ちお察しします」
アーダが目を閉じて目の前に両手を組み、軽く祈る形になってくれる。
「では神殿の方にお話をしてまいりますね」
「いいのですか?」
「はい、そのようなことも接客係の侍女のお役目ですから」
そう言ってアーダは部屋を辞していった。
ベルはアーダとの話を終えると、トーヤたちに「お声」の話をした。
「そりゃ、あれじゃねえの、稲妻とかじゃ」
「おれもそう思うんだけどな、まあちょうど話をしてる時とかにあったんじゃね?」
「なるほどな、そういうのを天の意思、とかって思うこともあるんだろう」
トーヤもベルと同じく稲妻説を取り、アランがそういうこともあるだろうと納得をする。
「なんにしても、じみ~だから気がつかなかったが、それなりに神殿の影響ってのは大きいんだな」
「みたいだな」
「宮があまりにデカすぎて分からなかったな。単なるおまけぐらいに思ってた」
あまりに正直過ぎるトーヤの感想だが、全員がそう思っていたので否の言葉はない。
「けど、今回聞いたところによると、結構仕事してるみたいだぜ、神殿もさ」
「ふうむ」
トーヤが聞いて腕組みをして考える。
「ってことは、そこからかな」
「何が?」
「いや、神官長が宮で力を持ちたいと思って、そんで子飼いのセルマってのに力を持たせたのが」
「なんで?」
「神殿が宮の下に置かれて、トーヤが言ってたようにおまけ、ぐらいに思われてたのが不満だったってことか?」
ベルの続きにアランが聞く。
「そういうことも考えられる、ってことだけどな」
「ありそうだな」
「そんで先代の死をきっかけに宮に入り込むようになって、どんどん食い込んできたのかもな」
「まあ、聞いてみりゃ神殿の神官ってのも気の毒ではあるな、一生懸命に仕事しても、そうやっておまけみたいに思われるんなら」
トーヤたちシャンタリオの者ではない3人の話を聞き、ミーヤが困ったような顔になる。
「村とかではそんなこともないのですが」
だが、ここリュセルスのシャンタル宮の中に置いては、確かにそのような位置に神殿はある。それはここで暮らすミーヤとて認めないわけにはいかなかった。
「そりゃ、そこにシャンタルがいねえからじゃないのか?」
「かもな」
「ありそうだな」
確かにそうかも知れないとベルとアランも頷く。
もしも、その村々、町々に、その場所だけのシャンタルがいたとしたら、そのシャンタルの方が神殿よりもありがたがられた可能性はある。
だが、女神は王都のシャンタル宮に一人いるだけだ。自然、神につながりのある神殿は大事に思われるようになっていく。
「ってことは、軽く見られてる神殿はここの、本部みたいな神殿だけってことになるな。皮肉なこった」
本来なら神殿の中心として、一番尊ばれなければならないシャンタル宮の神殿だけが、影が薄いということになる。
「シャンタルはさ、神殿のこととかどう思ってんの?」
ベルが一応聞いてみるが、
「うーん、覚えてないからねえ」
思っていたような返事があり、さもありなんと皆が納得する。
「そりゃそうだよなあ、ずっと寝てたようなもんだしな」
「うん、そうなんだよねえ」
「そんじゃさ、神殿がシャンタルのことどう思ってたか、ってのも分かんねえよなあ」
「え?」
ベルの言葉にトーヤが反応した。
「ん、なに?」
「いや、今おまえが言ったそれだよ」
「へ?」
「神殿がシャンタルをどう思ってたかってやつ」
「え? って、そりゃ大事に思ってたんじゃねえの?」
「この国の人間でシャンタルを大事に思わない人なんておりませんよ」
ベルとミーヤが声を合わせたようにそう言う。
「うん、まあ普通ならそうだよな。けどな、ずっと日陰に置かれてる人間ってのはまた違うことがあるしな」
「それにしても、とてもそんなこと考えもできません」
ミーヤが信じられないと首を振りながら強くそう言う。
「じゃあまあ、シャンタルに対してはそうだとする。じゃあ宮には?」
「まさかそんなこと」
「うん、そう思うよな。だがな、そうじゃなかったから、今、こんなことになってんじゃねえのか?」
「そんな……」
ミーヤはどう返事をしていいのか分からなかった。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話
yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。
知らない生物、知らない植物、知らない言語。
何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。
臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。
いや、変わらなければならない。
ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。
彼女は後にこう呼ばれることになる。
「ドラゴンの魔女」と。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
廃城の泣き虫アデリー
今野綾
ファンタジー
領主の娘だったアデリーはある日家族を殺され育った領地から命からがら逃げ出した。辿り着いた先は廃城。ひとり、ふたりと住人が増える中、問題が次々とおこって…
表紙はフリー素材です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる