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第三章 第七部 逃走
7 甘えていい
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「いやいや、笑いこっちゃないですよ。本当にびっくりしたんですから」
「そうだろうな」
そう言いながらも笑うのをやめない。
「まあ、そのおかげでその後はルギの力も借りられたからな」
トーヤも笑いながらそう言う。
「けど、今回はあいつ、まだ敵か味方か分からん」
「そうだな」
アランも同意する。
「それでもそれなりに、ギリギリのとこで教えてくれたことなのかも知んねえな」
トーヤは少し考え、
「色々決めとくぞ」
そう言ってアラン、ダル、ディレンと色々と打ち合わせをし、
「シャンタルとベルにも伝えといてくれ」
とアランに頼んだ。
「分かった。ミーヤさんはどうする」
アランの言葉にトーヤは一瞬黙ってから、
「ミーヤとリルには教えねえ方がいいだろう」
とだけ言った。
アランはエリス様の部屋へ行き、シャンタルとベルだけの奥様の寝室でそのことを話した。
「なんだよ、そんなヤバいことになってんのか?」
「いや、念の為だ」
「といっても、トーヤがそう言うってことは、そういう可能性もあるってこったよな?」
「まあな」
「それで、どこに逃げるの?」
シャンタルが普通にそう聞く。
「その場所はまだ教えられねえってさ」
「え、そうやってどうやって逃げんのさ?」
「途中、落ち合う場所とかを決めてる。そんでな」
アランがぐっと身を乗り出した。
「その逃げ場所だが、ダルさんと船長には嘘教えてある」
「え、なんでさ!」
ベルが驚いて声を高くした。
「迷惑かけたくねえからだろ」
「え、え、でもさ、それ」
「ってかな、トーヤ、俺にもどこに行くかは教えてくれてねえからな」
「え?」
「落ち合う場所だけは知らせとく。それと逃げ道な」
「わかった」
「うん、分かったよ」
ベルもシャンタルも、そしてもちろんアランもトーヤが「こうする」と決めた作戦には、よっぽど異議がない限り従う。そうして今までやってきたのだ。
アランが二人に手はずを説明し、もしもの時の準備を整えておいた。
「なあなあ」
「なんだ」
「そんで、ここ逃げ出して、その後どうする気なんだろうな、トーヤは」
「言ってはなかったが、おそらくそこから手助けするつもりなんだろ」
「できんのか?」
「さあな」
「たよんねえなあ~」
ベルがはあっと息を吐く。
「けど、ほっとくことはしねえ、トーヤはそう決めてそう言ってたし、俺らも一緒にやる、そう決めたよな」
「うん」
この間、シャンタルがいないところで3人で、3代のシャンタルのことを話し合った時のことだ。
「だからなシャンタル」
「うん、何?」
「もしもここから出たとしても、おまえの家族を見捨てた、おまえの家を捨てた、そういうことじゃねえからな?」
「分かってるよ」
シャンタルは何もないように軽く笑う。
「前にもそう言ってたじゃない。ベルにすごく怒られてさ」
シャンタルがにっこりと笑ってベルを見る。
『おまえなあ! 大体こっち来る時だって黙って来ようとしただろうが、え? 巻き込みたくない? ざけんなよ! おれらのことなんだと思ってんだ、え? どんだけなめてんだよ!』
シャンタルが仕事が終わったらもう3人はそれで自分のことを捨てて行ってくれたらそれでいい、そんなことを言った時、ベルが怒りを露わにし、シャンタルの胸ぐらを掴んで爆発するようにそう言ったのだ。
「怖かったな~」
シャンタルが思い出すように、肩をすくめるようにしてそう言って、それでも笑う。
『おれ、もっと、シャンタルに、信用されてると、思ってた……』
ベルが、そう言ってしゃくりあげながら泣いた。
『けど、けど、こいつは……おれらのこと、全然、信用してなかったんだよ……どうでもいいんだよ……』
静かに泣き続けた。
『許せねえよ……情けないよ……』
静かに燃え上がるような怒りを涙で流して続ける。
「うれしかったよ」
またにっこりと笑ってシャンタルが続ける。
「トーヤがベルをなだめてくれても、それでもまだ怒ってたよね。そして言ってくれた」
シャンタルが目を閉じて、ゆっくりと上を向いて思い出す。
『こいつの家族だったらな、おれらの家族も同然じゃん! だったらほっとけるわけねえだろ! それも含めて情けねえんだよおれは! そう言われてそうですかってあっち戻ると思われてる、そこが情けねえんだよ!』
「そうして、トーヤに『おっさんこそ分かれよな!』って」
そう言ってシャンタルがクスクスと笑った。
「だったな」
アランもククククッと、小さく笑う。
「うん、その後私も『おっさん』に少し怒られたけどね」
「だったな」
シャンタルとアランが顔を見合わせてまた笑った。
「なんだろうね、すごく楽になったんだ、あの時」
シャンタルが美しく微笑みながら続ける。
その姿はここで、シャンタル宮で神として君臨していた時と少しも変わらず、今も神々しく光り輝いている。
「私を家族だと言ってくれて、そしてマユリアやラーラ様も大事だって言ってくれた。うれしかったなあ。甘えていいんだと思った」
「え!」
ベルが驚いて声を上げた。
「いっつも甘えてああやってんじゃねえのかよ!」
「失礼だなあ」
「いや、本当、俺もおまえは甘えてると思ってた」
「アランまで、ひどいなあ」
笑いの中でゆっくりと時間が流れていった。
「そうだろうな」
そう言いながらも笑うのをやめない。
「まあ、そのおかげでその後はルギの力も借りられたからな」
トーヤも笑いながらそう言う。
「けど、今回はあいつ、まだ敵か味方か分からん」
「そうだな」
アランも同意する。
「それでもそれなりに、ギリギリのとこで教えてくれたことなのかも知んねえな」
トーヤは少し考え、
「色々決めとくぞ」
そう言ってアラン、ダル、ディレンと色々と打ち合わせをし、
「シャンタルとベルにも伝えといてくれ」
とアランに頼んだ。
「分かった。ミーヤさんはどうする」
アランの言葉にトーヤは一瞬黙ってから、
「ミーヤとリルには教えねえ方がいいだろう」
とだけ言った。
アランはエリス様の部屋へ行き、シャンタルとベルだけの奥様の寝室でそのことを話した。
「なんだよ、そんなヤバいことになってんのか?」
「いや、念の為だ」
「といっても、トーヤがそう言うってことは、そういう可能性もあるってこったよな?」
「まあな」
「それで、どこに逃げるの?」
シャンタルが普通にそう聞く。
「その場所はまだ教えられねえってさ」
「え、そうやってどうやって逃げんのさ?」
「途中、落ち合う場所とかを決めてる。そんでな」
アランがぐっと身を乗り出した。
「その逃げ場所だが、ダルさんと船長には嘘教えてある」
「え、なんでさ!」
ベルが驚いて声を高くした。
「迷惑かけたくねえからだろ」
「え、え、でもさ、それ」
「ってかな、トーヤ、俺にもどこに行くかは教えてくれてねえからな」
「え?」
「落ち合う場所だけは知らせとく。それと逃げ道な」
「わかった」
「うん、分かったよ」
ベルもシャンタルも、そしてもちろんアランもトーヤが「こうする」と決めた作戦には、よっぽど異議がない限り従う。そうして今までやってきたのだ。
アランが二人に手はずを説明し、もしもの時の準備を整えておいた。
「なあなあ」
「なんだ」
「そんで、ここ逃げ出して、その後どうする気なんだろうな、トーヤは」
「言ってはなかったが、おそらくそこから手助けするつもりなんだろ」
「できんのか?」
「さあな」
「たよんねえなあ~」
ベルがはあっと息を吐く。
「けど、ほっとくことはしねえ、トーヤはそう決めてそう言ってたし、俺らも一緒にやる、そう決めたよな」
「うん」
この間、シャンタルがいないところで3人で、3代のシャンタルのことを話し合った時のことだ。
「だからなシャンタル」
「うん、何?」
「もしもここから出たとしても、おまえの家族を見捨てた、おまえの家を捨てた、そういうことじゃねえからな?」
「分かってるよ」
シャンタルは何もないように軽く笑う。
「前にもそう言ってたじゃない。ベルにすごく怒られてさ」
シャンタルがにっこりと笑ってベルを見る。
『おまえなあ! 大体こっち来る時だって黙って来ようとしただろうが、え? 巻き込みたくない? ざけんなよ! おれらのことなんだと思ってんだ、え? どんだけなめてんだよ!』
シャンタルが仕事が終わったらもう3人はそれで自分のことを捨てて行ってくれたらそれでいい、そんなことを言った時、ベルが怒りを露わにし、シャンタルの胸ぐらを掴んで爆発するようにそう言ったのだ。
「怖かったな~」
シャンタルが思い出すように、肩をすくめるようにしてそう言って、それでも笑う。
『おれ、もっと、シャンタルに、信用されてると、思ってた……』
ベルが、そう言ってしゃくりあげながら泣いた。
『けど、けど、こいつは……おれらのこと、全然、信用してなかったんだよ……どうでもいいんだよ……』
静かに泣き続けた。
『許せねえよ……情けないよ……』
静かに燃え上がるような怒りを涙で流して続ける。
「うれしかったよ」
またにっこりと笑ってシャンタルが続ける。
「トーヤがベルをなだめてくれても、それでもまだ怒ってたよね。そして言ってくれた」
シャンタルが目を閉じて、ゆっくりと上を向いて思い出す。
『こいつの家族だったらな、おれらの家族も同然じゃん! だったらほっとけるわけねえだろ! それも含めて情けねえんだよおれは! そう言われてそうですかってあっち戻ると思われてる、そこが情けねえんだよ!』
「そうして、トーヤに『おっさんこそ分かれよな!』って」
そう言ってシャンタルがクスクスと笑った。
「だったな」
アランもククククッと、小さく笑う。
「うん、その後私も『おっさん』に少し怒られたけどね」
「だったな」
シャンタルとアランが顔を見合わせてまた笑った。
「なんだろうね、すごく楽になったんだ、あの時」
シャンタルが美しく微笑みながら続ける。
その姿はここで、シャンタル宮で神として君臨していた時と少しも変わらず、今も神々しく光り輝いている。
「私を家族だと言ってくれて、そしてマユリアやラーラ様も大事だって言ってくれた。うれしかったなあ。甘えていいんだと思った」
「え!」
ベルが驚いて声を上げた。
「いっつも甘えてああやってんじゃねえのかよ!」
「失礼だなあ」
「いや、本当、俺もおまえは甘えてると思ってた」
「アランまで、ひどいなあ」
笑いの中でゆっくりと時間が流れていった。
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