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第三章 第七部 逃走
6 警告
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「俺たちの? 聞き捨てなんねえな、どういうことだ」
「エリス様だ」
ルギがじろりとトーヤを睨む。
「青い香炉はセルマと神官長が関わりがあると分かった。だがその後のことだ。キリエ様のご不調はセルマが食事に何かを混ぜたからではないかとの疑いが出てきた」
「疑いじゃなく本当だな」
「やはりそれも調べていたか」
「たまたまな」
リルが知り合いの侍女から聞いたことは言わない。必要があれば伝えるが、おそらくルギも同じような道筋でそこにたどり着いたのだろうし。
「もしも食事に何か入れられていたとしても、そんなに長く継続して不調になられるようなものがあるか? だとすれば、その後で香炉のように何かを仕掛けられていたのだろう。その時にエリス様が色々持ち込まれているからな、疑惑の目も向けられるだろうが」
「なるほどな。けど、調べたら分かるはずだぜ? 体にいい物はあっても悪い物はない。エリス様は元お医者様だからな、患者のために使っていたものを調子が悪いキリエさんに届けただけだ」
「そうだな」
ルギはトーヤに対して部下たちが疑いの目を向けていることはまだ言わなかった。
もしもトーヤがそのことを知って自分の思わぬ方向に動くことがあったら、それはいい結果につながるかどうかが分からない。
八年前と違い、トーヤと完全に情報を共有しているわけではない。
「だが注目はされる。あのピンクの花もエリス様が持ってきたものではないか、そう思われても仕方がないだろう」
「へえ、そんで、なんか証拠あるのか?」
「ない」
トーヤたちは巧妙にあのピンクの花を買った者が分からないようにしてあった。
白い花や食べ物などはアランがディレンと一緒に買いに行き、珍しい二人組は人々の記憶に残っていた。
「おそらく、この国に混じっても目立たぬ者があれだけは買いに行ったのだろう。他の者はそこの若いのと船長がわざわざ買いに行ったらしいがな」
ルギがアランに視線を向けて言う。
「ああ、船長に店を教えてもらいながら行きましたよ。あっちこっちの店を見たから、覚えてる人もいるでしょうね」
アランが淡々とそう言う。
「らしいな。おかげで白い花や食べ物を買った店はすぐに調べがついた」
「それはそれは」
トーヤがからかうようにそう言うと、またルギがギロリとにらみつける。
「聞いた話だが、あのピンクの花は大層よく香っていたそうだ。俺もお見舞いに伺った時に良い香りがしていると思った」
「あんたがキリエさんの見舞いに行ったのか!」
「悪いか」
「いやいや、ただびっくりしただけだ」
トーヤは本心から驚き、
「それ、マユリアの命令でか?」
半分からかい、半分興味からそう聞いてまたルギににらまれた。
「白い花を見てみたが、香りはほとんどしなかった。ピンクの花の香りと混ざって不快にならぬよう、あえて香りが少ない花を選んだのだろう」
「さすが隊長」
トーヤがいつもアランに対して言う口調でそう言う。
「ということは、香りがない本来のピンクの花を持って行った時、何か香りを足したのだろう。火桶にくべて香らせたとかな。その香料はどこで手に入れた? それを調べたら何か分かるかもな」
「どうだかなあ」
トーヤがニヤリと笑う。
「出どころを話す気はなさそうだな」
「なんのこったか~」
肩をすくめ、両手を広げてそう言う仮面の男を、ルギは冷たい目で見下ろした。
「まあいい」
「お、珍しいな」
トーヤが驚いたようにそう言う。
「この先、部下たちが何か聞きに来るかも知れん。それは覚えておいてくれ」
なんとなく含みがあるようにそう言ってルギは戻っていった。
「なんか気になるな」
トーヤがそう言うとアランも黙って頷いた。
「え、なにが?」
ダルはきょとんとしてそう言い、ディレンはいつものように黙ってやり取りを聞いているだけだ。
「わざわざ言い残したよな、部下たちが来るかも知れんから覚えておけって」
「だな」
「つまりそれって」
トーヤがふうむと考え、その後の言葉を飲み込んだ。
「な、なんだよトーヤ」
ダルがドキドキした顔で聞く。
「いや、部下たちが来た時はちょいと気をつけとけってことかな。なんか準備しとく必要があるかもな」
「準備ってなんのだよ?」
「そうだな、例えば逃げる準備とかな」
「え!」
ダルが目を丸くして驚く。
「ルギの部下がトーヤを捕まえに来るってことか?」
「場合によっちゃな」
「八年前を思い出すなあ……」
ダルがため息をついてそう言った。
「あったなあ」
「いきなりトーヤが縛られて突き出されてさ、どうなってんのかと思ったよ」
「だったなあ」
「そんで、ルギのこと殺すの失敗した、とか言うしな」
「なんだそれは」
ディレンがダルに聞いてきた。
当時のことを色々聞いてはいても、細かい部分まで言っていないこともある。ルギとやりあったことは言ったが、それをそんな風にダルに言ってることは言ってない。
「ディレンさんは洞窟のこと知ってますよね」
「ああ」
「あそこで捕まってルギに連れ戻されたんですが、その時に罪人みたいに縛られて連れてこられて、そんで何があったって聞いたらそう言ったんですよ」
「なるほど、言いそうなこったな」
聞いてディレンが愉快そうに笑った。
「エリス様だ」
ルギがじろりとトーヤを睨む。
「青い香炉はセルマと神官長が関わりがあると分かった。だがその後のことだ。キリエ様のご不調はセルマが食事に何かを混ぜたからではないかとの疑いが出てきた」
「疑いじゃなく本当だな」
「やはりそれも調べていたか」
「たまたまな」
リルが知り合いの侍女から聞いたことは言わない。必要があれば伝えるが、おそらくルギも同じような道筋でそこにたどり着いたのだろうし。
「もしも食事に何か入れられていたとしても、そんなに長く継続して不調になられるようなものがあるか? だとすれば、その後で香炉のように何かを仕掛けられていたのだろう。その時にエリス様が色々持ち込まれているからな、疑惑の目も向けられるだろうが」
「なるほどな。けど、調べたら分かるはずだぜ? 体にいい物はあっても悪い物はない。エリス様は元お医者様だからな、患者のために使っていたものを調子が悪いキリエさんに届けただけだ」
「そうだな」
ルギはトーヤに対して部下たちが疑いの目を向けていることはまだ言わなかった。
もしもトーヤがそのことを知って自分の思わぬ方向に動くことがあったら、それはいい結果につながるかどうかが分からない。
八年前と違い、トーヤと完全に情報を共有しているわけではない。
「だが注目はされる。あのピンクの花もエリス様が持ってきたものではないか、そう思われても仕方がないだろう」
「へえ、そんで、なんか証拠あるのか?」
「ない」
トーヤたちは巧妙にあのピンクの花を買った者が分からないようにしてあった。
白い花や食べ物などはアランがディレンと一緒に買いに行き、珍しい二人組は人々の記憶に残っていた。
「おそらく、この国に混じっても目立たぬ者があれだけは買いに行ったのだろう。他の者はそこの若いのと船長がわざわざ買いに行ったらしいがな」
ルギがアランに視線を向けて言う。
「ああ、船長に店を教えてもらいながら行きましたよ。あっちこっちの店を見たから、覚えてる人もいるでしょうね」
アランが淡々とそう言う。
「らしいな。おかげで白い花や食べ物を買った店はすぐに調べがついた」
「それはそれは」
トーヤがからかうようにそう言うと、またルギがギロリとにらみつける。
「聞いた話だが、あのピンクの花は大層よく香っていたそうだ。俺もお見舞いに伺った時に良い香りがしていると思った」
「あんたがキリエさんの見舞いに行ったのか!」
「悪いか」
「いやいや、ただびっくりしただけだ」
トーヤは本心から驚き、
「それ、マユリアの命令でか?」
半分からかい、半分興味からそう聞いてまたルギににらまれた。
「白い花を見てみたが、香りはほとんどしなかった。ピンクの花の香りと混ざって不快にならぬよう、あえて香りが少ない花を選んだのだろう」
「さすが隊長」
トーヤがいつもアランに対して言う口調でそう言う。
「ということは、香りがない本来のピンクの花を持って行った時、何か香りを足したのだろう。火桶にくべて香らせたとかな。その香料はどこで手に入れた? それを調べたら何か分かるかもな」
「どうだかなあ」
トーヤがニヤリと笑う。
「出どころを話す気はなさそうだな」
「なんのこったか~」
肩をすくめ、両手を広げてそう言う仮面の男を、ルギは冷たい目で見下ろした。
「まあいい」
「お、珍しいな」
トーヤが驚いたようにそう言う。
「この先、部下たちが何か聞きに来るかも知れん。それは覚えておいてくれ」
なんとなく含みがあるようにそう言ってルギは戻っていった。
「なんか気になるな」
トーヤがそう言うとアランも黙って頷いた。
「え、なにが?」
ダルはきょとんとしてそう言い、ディレンはいつものように黙ってやり取りを聞いているだけだ。
「わざわざ言い残したよな、部下たちが来るかも知れんから覚えておけって」
「だな」
「つまりそれって」
トーヤがふうむと考え、その後の言葉を飲み込んだ。
「な、なんだよトーヤ」
ダルがドキドキした顔で聞く。
「いや、部下たちが来た時はちょいと気をつけとけってことかな。なんか準備しとく必要があるかもな」
「準備ってなんのだよ?」
「そうだな、例えば逃げる準備とかな」
「え!」
ダルが目を丸くして驚く。
「ルギの部下がトーヤを捕まえに来るってことか?」
「場合によっちゃな」
「八年前を思い出すなあ……」
ダルがため息をついてそう言った。
「あったなあ」
「いきなりトーヤが縛られて突き出されてさ、どうなってんのかと思ったよ」
「だったなあ」
「そんで、ルギのこと殺すの失敗した、とか言うしな」
「なんだそれは」
ディレンがダルに聞いてきた。
当時のことを色々聞いてはいても、細かい部分まで言っていないこともある。ルギとやりあったことは言ったが、それをそんな風にダルに言ってることは言ってない。
「ディレンさんは洞窟のこと知ってますよね」
「ああ」
「あそこで捕まってルギに連れ戻されたんですが、その時に罪人みたいに縛られて連れてこられて、そんで何があったって聞いたらそう言ったんですよ」
「なるほど、言いそうなこったな」
聞いてディレンが愉快そうに笑った。
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