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第三章 第一節 神から人へ
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「トーヤは本当に見えぬ聞こえぬ話せぬ人を見たことがあるのだそうです。そのような方は話したくとも聞きたくともそうできない。ですが、シャンタルはトーヤが動けなくなるほどの視線を送ってきたことがあり、夢も送ってきた。その気になればできるはずだ、と」
「その気がない……」
マユリアが三度繰り返す。
「では、どうすればその気になると思いますか」
「それは……」
尋ねられてミーヤが困る。
その方法までは分からない。
だが……
「あの、失礼なことをお聞きしても構わないでしょうか?」
「なんですか」
「あの、マユリアとラーラ様はシャンタルとお話しできると伺ったことがございます」
「ええ、わたくしとラーラ様にはお話しくださいます」
「それは、どのようにお話しなさっているのでしょうか? シャンタルは普通にお話しを?」
「いいえ」
マユリアが否定する。
「ではどのように?」
「そうですね……」
少し考えるようにする。
「代々のシャンタルとマユリアは意識がつながっていると言えばいいのでしょうか……ですから、直接お話をするというよりも、同じことを感じ、同じことを見て同じことを考えている、そう言って分かってもらえるでしょうか」
「同じことを……」
「分かりにくいですよね、説明はむずかしいです」
そう言ってふっと笑う。
「ですから、あの時、トーヤがダルの訓練をしていた時も、シャンタルがトーヤのことを見たいとお考えになったのが分かったので、侍女を呼んでバルコニーにお連れしたのです」
「シャンタルがご自分で行きたいとおっしゃったわけではないのですか」
「ええ、そうです」
「あの、お話しになることは一言も?」
「簡単には……例えば、ラーラ様のお名前などはお呼びになりますね。わたくしにもたまに。ですが、言葉をお話しになるのはほとんどが託宣の時だけです」
「そうなのですか……」
なんとも不思議な話だ。ミーヤがどう考えたものかと頭をひねる。
「では、シャンタルのお考えが他の者に伝わるのは、マユリアやラーラ様の口をお借りになってなのですね」
「ええ、そうなります……えっ……」
マユリアが何かに気づいたように顔を上げた。
「わたくしとラーラ様の口を借りて…………」
口にした後で少し考えこんでいたが、
「もしや……」
マユリアがバッと立ち上がると、
「タリア!」
マユリアらしからぬ大きな声で急いでタリアを呼ぶ。
「はい!」
タリアも常ならぬマユリアの様子に慌てて駆けつける。
「ルギとダルを急いで謁見の間に呼んでください。それとネイ!」
「はい!」
こちらも跳ねるように飛んできた。
「シャンタルとラーラ様の様子を見てきてください、急いで! タリアも!」
2人が急いでそれぞれの場所へと駆けていく。
「ミーヤ、もしかするとシャンタルがその気になれない原因は、わたくしとラーラ様かも知れません」
「え?」
ミーヤは意味が分からない。
「自分がそうだったもので分かっておりませんでした。わたくしはラーラ様と意識の共有はしておりましたが、ラーラ様の目や耳や口をお借りしていたわけではありません。あくまでシャンタルとマユリアとしての意識を、ずっと続くそれを共有していただけです。感じること見ること、それは全部自分でしていたこと、もちろん話すことも託宣以外は自分の言葉で話していました。ですが当代は違ったのです。それに気づけずにおりました」
説明されてもまだ分からない。
「当代はあまりのお力の強さに、今までご自分で見て感じて話されたことがないのです。全部わたくしとラーラ様の体を借りてなさっていたのです。だからご自分で話す必要もなかった……それでお話しになれないのかも知れません」
「ええっ!」
そんなことがあるのだろうか……
ミーヤは困惑していた。
「そうかも知れないというだけです。ですが、試してみる価値はあります。急いでラーラ様とわたくしをシャンタルから切り離さないと」
「切り離す、ど、どのように……」
マユリアが決意を秘めたように頷く。
「シャンタルが一番つながっていらっしゃるのは多分ラーラ様です。ラーラ様には宮の外へ行っていただきます」
「えええっ!」
ラーラ様はシャンタルとして生まれ、その後マユリアを経てシャンタル付きの侍女となられ、一度も宮の外へ出られたことがないと聞いている。そんな方を宮から出してどこへ連れて行こうというのだろうか。
「念の為にネイとタリアもです。あの2人はラーラ様にとても近い、ラーラ様が見えなくなったら、シャンタルはあの2人を通じてラーラ様を探そうとなさるかも知れません。ですからあの2人もラーラ様から離さなくてはなりません」
「あ、あの、マユリアは、マユリアはどうなさるのですか?」
「わたくしは……」
マユリアがふっと目を閉じる。
「わたくしは今、この時期には宮から出ることができません。ですからどこか、できるだけ何も見えず聞こえない部屋に入り、そこでシャンタルを拒絶いたします」
「拒絶……」
「ラーラ様には無理です……」
悲しそうに首を振る。
「ラーラ様は、それほどシャンタルを慈しんでおられます……シャンタルの母にはできぬことです……ですから宮から出ていただきます」
「その気がない……」
マユリアが三度繰り返す。
「では、どうすればその気になると思いますか」
「それは……」
尋ねられてミーヤが困る。
その方法までは分からない。
だが……
「あの、失礼なことをお聞きしても構わないでしょうか?」
「なんですか」
「あの、マユリアとラーラ様はシャンタルとお話しできると伺ったことがございます」
「ええ、わたくしとラーラ様にはお話しくださいます」
「それは、どのようにお話しなさっているのでしょうか? シャンタルは普通にお話しを?」
「いいえ」
マユリアが否定する。
「ではどのように?」
「そうですね……」
少し考えるようにする。
「代々のシャンタルとマユリアは意識がつながっていると言えばいいのでしょうか……ですから、直接お話をするというよりも、同じことを感じ、同じことを見て同じことを考えている、そう言って分かってもらえるでしょうか」
「同じことを……」
「分かりにくいですよね、説明はむずかしいです」
そう言ってふっと笑う。
「ですから、あの時、トーヤがダルの訓練をしていた時も、シャンタルがトーヤのことを見たいとお考えになったのが分かったので、侍女を呼んでバルコニーにお連れしたのです」
「シャンタルがご自分で行きたいとおっしゃったわけではないのですか」
「ええ、そうです」
「あの、お話しになることは一言も?」
「簡単には……例えば、ラーラ様のお名前などはお呼びになりますね。わたくしにもたまに。ですが、言葉をお話しになるのはほとんどが託宣の時だけです」
「そうなのですか……」
なんとも不思議な話だ。ミーヤがどう考えたものかと頭をひねる。
「では、シャンタルのお考えが他の者に伝わるのは、マユリアやラーラ様の口をお借りになってなのですね」
「ええ、そうなります……えっ……」
マユリアが何かに気づいたように顔を上げた。
「わたくしとラーラ様の口を借りて…………」
口にした後で少し考えこんでいたが、
「もしや……」
マユリアがバッと立ち上がると、
「タリア!」
マユリアらしからぬ大きな声で急いでタリアを呼ぶ。
「はい!」
タリアも常ならぬマユリアの様子に慌てて駆けつける。
「ルギとダルを急いで謁見の間に呼んでください。それとネイ!」
「はい!」
こちらも跳ねるように飛んできた。
「シャンタルとラーラ様の様子を見てきてください、急いで! タリアも!」
2人が急いでそれぞれの場所へと駆けていく。
「ミーヤ、もしかするとシャンタルがその気になれない原因は、わたくしとラーラ様かも知れません」
「え?」
ミーヤは意味が分からない。
「自分がそうだったもので分かっておりませんでした。わたくしはラーラ様と意識の共有はしておりましたが、ラーラ様の目や耳や口をお借りしていたわけではありません。あくまでシャンタルとマユリアとしての意識を、ずっと続くそれを共有していただけです。感じること見ること、それは全部自分でしていたこと、もちろん話すことも託宣以外は自分の言葉で話していました。ですが当代は違ったのです。それに気づけずにおりました」
説明されてもまだ分からない。
「当代はあまりのお力の強さに、今までご自分で見て感じて話されたことがないのです。全部わたくしとラーラ様の体を借りてなさっていたのです。だからご自分で話す必要もなかった……それでお話しになれないのかも知れません」
「ええっ!」
そんなことがあるのだろうか……
ミーヤは困惑していた。
「そうかも知れないというだけです。ですが、試してみる価値はあります。急いでラーラ様とわたくしをシャンタルから切り離さないと」
「切り離す、ど、どのように……」
マユリアが決意を秘めたように頷く。
「シャンタルが一番つながっていらっしゃるのは多分ラーラ様です。ラーラ様には宮の外へ行っていただきます」
「えええっ!」
ラーラ様はシャンタルとして生まれ、その後マユリアを経てシャンタル付きの侍女となられ、一度も宮の外へ出られたことがないと聞いている。そんな方を宮から出してどこへ連れて行こうというのだろうか。
「念の為にネイとタリアもです。あの2人はラーラ様にとても近い、ラーラ様が見えなくなったら、シャンタルはあの2人を通じてラーラ様を探そうとなさるかも知れません。ですからあの2人もラーラ様から離さなくてはなりません」
「あ、あの、マユリアは、マユリアはどうなさるのですか?」
「わたくしは……」
マユリアがふっと目を閉じる。
「わたくしは今、この時期には宮から出ることができません。ですからどこか、できるだけ何も見えず聞こえない部屋に入り、そこでシャンタルを拒絶いたします」
「拒絶……」
「ラーラ様には無理です……」
悲しそうに首を振る。
「ラーラ様は、それほどシャンタルを慈しんでおられます……シャンタルの母にはできぬことです……ですから宮から出ていただきます」
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