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第三章 第一節 神から人へ
7 生活
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「ありがとうございます、でもしばらくは休みなくおそばに置いていただこうと思っていますので」
そう言うとキリエが優しい顔のままで言う。
「ミーヤ、それではおまえが体を壊してしまいます。何日続くか分からないのですよ?目を覚まされたら呼びますから少し横におなりなさい。多分、朝までは目を覚まされないように思います」
「でも、それではキリエ様が……」
「私も疲れたらおまえに声をかけます。交代でお付きしましょう。必要ならまた他に誰かを呼ぶこともします。ですから先にお休みなさい」
あまりに優しい言葉に断ることはできなかった。
「はい、では少し休ませていただきます」
「そこの扉」
とキリエが寝室の隣あたりと思われるところを指差す。
「侍女の控室です。そこの寝台で横になりなさい。寝室とつながっていますからすぐに声をかけられます」
「はい」
「それと」
「はい?」
「お手洗いもそこにありますから覚えておきなさい」
「は、はい」
からかうようにそう言うとまた笑った。
「それでは失礼いたします」
「ええ、おやすみなさい」
キリエがシャンタルの寝室に入るのを見届けるとミーヤは侍女の控室に入った。
そこはそれなりに広くはあったが、生活の場ではなく待機場所といった造りになっていた。
寝台が2台、それからソファとテーブル。このあたりはどこの部屋とも同じような家具が揃っている。それから部屋に入って向かって右に扉があり、開けてみるとそこは水回り関係と手洗い場であった。
部屋に戻って今度は左、シャンタルの寝室とつながっているらしい扉を気を使いながらそっと押してみた。
思っていたのとは違い、寝室との間にもう一つ小部屋があるようだ。さっきキリエが言っていた通りシャンタルが使う用であろう手洗い場もある。侍女の控室よりさらに広く、他にも色々なものがあった。とりあえず深夜などにさっと間に合うように色々な物が揃えられているようだ。
その小部屋の向こうにもう一つ扉があり、そちらをもっとそっと押して少し様子を伺うと、やはりそこがシャンタルの寝室であった。天蓋付き寝台の向こう側、さきほどまでミーヤが腰掛けていたあたりに人影が見える。交代してくれたキリエであった。
確認をして安心したら少し眠くなってきた気がする。
2台ある寝台のうち、気分的に少しでも近くにとシャンタルの寝室側にある方に体を横たえた。
さきほど見たシャンタル用の小部屋、あそこを見たことでなんとなくシャンタルを身近に感じる。
ああ、生きていて生活をされているのだなと思った。
自分たちと同じく、息をし、ものを食べ、お風呂にも入られるだろうし、そしてお手洗いにも行かれるのだ。そんな当然のことを思ってもみなかったことが不思議であった。
シャンタル宮の奥宮の最奥、神域中の神域、神秘の場所、神様の御座す場所。
今まではずっとそう思っていたこの場所が、シャンタルとマユリアの生活の場なのだ、そう思うといきなり温かい場所に思えてきた。
「生きて、いらっしゃるのだわ……」
そうなのだ。だからきっと気持ちは通じるはずだ、そう思った。
そして、その生きてる方、呼吸をしているあの肉体から命を奪うようなことをさせてはならない。
そう考えながらミーヤは眠りの中に落ちていった。
その頃、マユリアは暗闇の中にいた。
冬の夜、寒さを感じないようにと何枚も肩から温かい着物を掛け、足元には暖を取るために炭を入れた火桶が置いてある。部屋の少し離れたところにも2つ。できるだけ快適あるでようにとの心配りを感じられるが、それでもこの部屋はなおも冷え冷えとしている。いつもマユリアがいる部屋からは考えもつかないことだ。
ここは懲罰房である。
あの時、できるだけ光が入らず音も聞こえない部屋はないかとマユリアに尋ねられ、キリエに浮かんだのはここと神殿にある神官が修行のために入るお籠りの部屋であった。
さすがに神官とはいえ男性ばかりのところにマユリアを1人預けるわけにはいかない。それでここが選ばれたのだ。
ほとんど使われることはないが、長い年月のうちにはさすがに懲罰が必要な侍女も出てくるのだ。そんな時には宮の地下にあり、ほとんど人が来ることのないこの場所に反省のために入れられる。
いつもマユリアが生活しているのとは違う場所、全てから隔絶された場所はここぐらいしかなかった。
さすがに扉に鍵はかけられてはいないが、ここにまさかマユリアがいるなどと、誰にも想像のできない場所であった。
キリエがマユリアの世話を頼んだのはリルであった。
「ミーヤが故あってこちらに来られない今、客人2人の世話の上にマユリアのお世話、お前には本当に大変な思いをさせると思いますが、誰にでもというわけにはいきません。お願いできるのはお茶会と呼ばれているあの集まりに参加していたおまえだけです、頼みましたよ」
キリエにそう頭を下げられた。
「なるべく温かくして差し上げてください。最低限しか近寄よらぬようにとのことです。お声もかけてはいけません。辛いでしょうがよろしくお願いします」
頭を下げたまま、侍女頭が侍女にそう頼んだ。
そう言うとキリエが優しい顔のままで言う。
「ミーヤ、それではおまえが体を壊してしまいます。何日続くか分からないのですよ?目を覚まされたら呼びますから少し横におなりなさい。多分、朝までは目を覚まされないように思います」
「でも、それではキリエ様が……」
「私も疲れたらおまえに声をかけます。交代でお付きしましょう。必要ならまた他に誰かを呼ぶこともします。ですから先にお休みなさい」
あまりに優しい言葉に断ることはできなかった。
「はい、では少し休ませていただきます」
「そこの扉」
とキリエが寝室の隣あたりと思われるところを指差す。
「侍女の控室です。そこの寝台で横になりなさい。寝室とつながっていますからすぐに声をかけられます」
「はい」
「それと」
「はい?」
「お手洗いもそこにありますから覚えておきなさい」
「は、はい」
からかうようにそう言うとまた笑った。
「それでは失礼いたします」
「ええ、おやすみなさい」
キリエがシャンタルの寝室に入るのを見届けるとミーヤは侍女の控室に入った。
そこはそれなりに広くはあったが、生活の場ではなく待機場所といった造りになっていた。
寝台が2台、それからソファとテーブル。このあたりはどこの部屋とも同じような家具が揃っている。それから部屋に入って向かって右に扉があり、開けてみるとそこは水回り関係と手洗い場であった。
部屋に戻って今度は左、シャンタルの寝室とつながっているらしい扉を気を使いながらそっと押してみた。
思っていたのとは違い、寝室との間にもう一つ小部屋があるようだ。さっきキリエが言っていた通りシャンタルが使う用であろう手洗い場もある。侍女の控室よりさらに広く、他にも色々なものがあった。とりあえず深夜などにさっと間に合うように色々な物が揃えられているようだ。
その小部屋の向こうにもう一つ扉があり、そちらをもっとそっと押して少し様子を伺うと、やはりそこがシャンタルの寝室であった。天蓋付き寝台の向こう側、さきほどまでミーヤが腰掛けていたあたりに人影が見える。交代してくれたキリエであった。
確認をして安心したら少し眠くなってきた気がする。
2台ある寝台のうち、気分的に少しでも近くにとシャンタルの寝室側にある方に体を横たえた。
さきほど見たシャンタル用の小部屋、あそこを見たことでなんとなくシャンタルを身近に感じる。
ああ、生きていて生活をされているのだなと思った。
自分たちと同じく、息をし、ものを食べ、お風呂にも入られるだろうし、そしてお手洗いにも行かれるのだ。そんな当然のことを思ってもみなかったことが不思議であった。
シャンタル宮の奥宮の最奥、神域中の神域、神秘の場所、神様の御座す場所。
今まではずっとそう思っていたこの場所が、シャンタルとマユリアの生活の場なのだ、そう思うといきなり温かい場所に思えてきた。
「生きて、いらっしゃるのだわ……」
そうなのだ。だからきっと気持ちは通じるはずだ、そう思った。
そして、その生きてる方、呼吸をしているあの肉体から命を奪うようなことをさせてはならない。
そう考えながらミーヤは眠りの中に落ちていった。
その頃、マユリアは暗闇の中にいた。
冬の夜、寒さを感じないようにと何枚も肩から温かい着物を掛け、足元には暖を取るために炭を入れた火桶が置いてある。部屋の少し離れたところにも2つ。できるだけ快適あるでようにとの心配りを感じられるが、それでもこの部屋はなおも冷え冷えとしている。いつもマユリアがいる部屋からは考えもつかないことだ。
ここは懲罰房である。
あの時、できるだけ光が入らず音も聞こえない部屋はないかとマユリアに尋ねられ、キリエに浮かんだのはここと神殿にある神官が修行のために入るお籠りの部屋であった。
さすがに神官とはいえ男性ばかりのところにマユリアを1人預けるわけにはいかない。それでここが選ばれたのだ。
ほとんど使われることはないが、長い年月のうちにはさすがに懲罰が必要な侍女も出てくるのだ。そんな時には宮の地下にあり、ほとんど人が来ることのないこの場所に反省のために入れられる。
いつもマユリアが生活しているのとは違う場所、全てから隔絶された場所はここぐらいしかなかった。
さすがに扉に鍵はかけられてはいないが、ここにまさかマユリアがいるなどと、誰にも想像のできない場所であった。
キリエがマユリアの世話を頼んだのはリルであった。
「ミーヤが故あってこちらに来られない今、客人2人の世話の上にマユリアのお世話、お前には本当に大変な思いをさせると思いますが、誰にでもというわけにはいきません。お願いできるのはお茶会と呼ばれているあの集まりに参加していたおまえだけです、頼みましたよ」
キリエにそう頭を下げられた。
「なるべく温かくして差し上げてください。最低限しか近寄よらぬようにとのことです。お声もかけてはいけません。辛いでしょうがよろしくお願いします」
頭を下げたまま、侍女頭が侍女にそう頼んだ。
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