俺、明日から異世界で女騎士になるらしい。

せーい

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プロローグ

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俺、水沢晃は、一日中自分の部屋でネトゲをしている30歳の引きこもりニートだ。

こんなはずではなかった。
いつから道を外れたのかというと、たぶん高校でいじめられて不登校になったところからだろう。
それで引きこもりになり、あれよあれよと年を重ね真っ当な人生を歩むのは難しくなってしまった。
今になって感じるのは、人は一度道を外れてしまうと戻るのは難しいということだ。
俺が教訓として学んでも遅すぎるが。

今まで朝昼晩食事を欠かさず部屋まで持ってきてくれていた母親も、今日は朝から何も持ってきてくれない。
とうとう家族からも見放されてしまったようだ。
色々と難しいことを考えたから頭が疲れた。

「あー…、とりあえず寝るか。」

晃は考えるのが面倒くさくなり、ベットで横になり寝ることにした。


……
………

「水沢晃、君に伝えることがある。」

うん……?、俺を誰かが呼んでいる?

晃が目を開けると、目の前に女性が座っていた。

「えっ……あっっ、えっ?」

家族以外に話かけられるのは10年以上ぶりなので、盛大にキョドってしまう。
我ながら気持ちが悪い。

目の前の女性は、気にせず続きを話し始める。

「水沢晃、キミには異世界へ行ってもらう。この世界で誰からもキミは必要とされていない、存在価値がないということだ。丁度良いことに、異世界でキミと魂を入れ替える必要のある人間を見つけた。」

目の前の女性が言っていることを、晃は半分も理解できなかった。

とりあえず自分にはこの世界での存在価値がないということだけわかったし、わかっていたことだ。
だが、異世界に行ってもらうってどういうことだ?
俺よ落ち着け。
落ち着いて質問をするんだ。

「異世界ってどこのことだよ?いきなりなんなんだよ、しかもお前はだれなんだ?」

「異世界とはこの世界とは別の世界のことだ。いきなりではなく、キミの今までの行いの結果だよ。この世界すべての人間から見放された。私はこの世界の女神で、アメーデという。」

この女神はなんでこんなに事務的なんだ。
ひどくないか。
なんどもなんども見放されただの存在価値がないだの、そんなの俺が一番よく知ってるよ。

晃は泣きたい気持ちを必死に抑えつつ、質問を続ける。

「俺は別の世界で生まれ変わるということか?」

アメーデは首を横に振る。

「違う。生まれ変わりではなく、身体に宿る魂が入れ替わるだけだ。君には異世界のある人物の体に宿ってもらうことになる。」

入れ替わるということは、その異世界のある人物も俺同様に存在価値がないということか、そんなん入れ替わっても意味ない気がするが?
いや、異なる環境になれば、違う状況にもなりうるかもしれないし…な。

「俺の魂が宿るその人物って、いったいどんな状況に置かれている人間なんだ?」

「帝国アレクで将軍の立場にある。名前はアメリア・ブルーブラッドだ。非常に優秀な魂の持ち主だったが、おかれている状況が悪く魂が壊れてしまう可能性があった。だからイージーモードである君の体に宿すことにした。」

将軍…だと、めちゃめちゃ優秀なんじゃないか。
そんなのに俺が入れ替わっていいのか?
俺と同じように存在価値がない人物だと思ってごめん、そんなこと全くなかったわ。
あと俺の人生ってイージーモードだったのか?
それを乗り越えられない俺ってどんだけクズなんだよ。

「いや、そんな優秀な魂の持ち主でも壊れてしまう状況じゃあ俺が入っても同じなんじゃ…。」

目の前のアメーデが薄笑いを浮かべる。

「君が壊れるのは構わない。ただ、壊れないとも思っているよ。おそらく君なら耐えられる、君の魂は穢れているからね。」

おい、あんまりじゃないか。
もうこの人いやだ。
もうなんでもいいから早く終わりにしたい。
でも、その前に必ず聞かなければならない重要なことが。

「アメーデさん、これはとても重要なことなのだが、俺の魂が入る体は……その、、女なのだろうか?」

アメーデは小首をかしげながら答える。

「そうだが。」

よっっっしゃああ!!
晃は心の中で何度もガッツポーズをした。
これは夢にまでも見た男女入れ替わりじゃないか。
素晴らしい鉄板ネタだ!
何やらアメーデがジト目で見てくるがどうでもよい。
今までの憂鬱な気持ちがすべて吹き飛んだ。

「もう質問はないのか?なければ終わるが。」

「もうないよ、重要なことは聞けたから。」

「そうか……、何かよからぬことを考えていたように見えたけど…、まあいいよ。君の魂は穢れているからね。じゃあ目が覚めたら、新しい人生を歩むことになるから。あと、君の体を使わせてもらうことになるわけだからこちらも少しは悪いと思っている。本来は記憶そのままで入れ替えることはないんだけど、君はそのままにしておいてあげる。」

アメーデが目の前で、なんでこんなやつをだとか小声でつぶやいているがもう気にしない。

記憶もそのままとか素晴らしすぎる。

それでは新しい人生を満喫しよう!
異世界での女騎士生活とやらを!!

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