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月が綺麗ですね
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明治初期。女学校からの帰り道。
日が落ち、当たりは暗く包まれております。普段は輝きを放つあの欠片たちも、今日ばかりは大人しく慎ましやかに光っておりました。
可愛らしいほどの真ん丸な、満月の夜です。
そんななか、冷たい風が頬を撫で、二人分の足音だけが辺りに響き、私の頬は明瞭な熱を持ちはじめます。
漆黒のお帽子に、木のように渋い背広を着た、逞しいお方。
そんなお方が私の歩幅に合わせて歩きながらも、そのお手が、私の手を握りしめようと辺りをさ迷わせていることに、どうしようもなく心が締め付けられてしまうのです。
ふと、私が噛み締めて笑みをこぼしたその時。困ったような、照れたようなお顔で、彼は立ち止まり振り返りました。
よく見れば、いつの間にやら私のおうちに行き着いています。
そっと彼の顔をうかがっていれば、今日も彼はおんなじ顔。
息を詰め、口のなかに飴でも転がしているかのように舌を動かし、しかし視線だけは私を見据え、しばしの無言のあと、毎回言うのです。
「月が、綺麗ですね」と。
日が落ち、当たりは暗く包まれております。普段は輝きを放つあの欠片たちも、今日ばかりは大人しく慎ましやかに光っておりました。
可愛らしいほどの真ん丸な、満月の夜です。
そんななか、冷たい風が頬を撫で、二人分の足音だけが辺りに響き、私の頬は明瞭な熱を持ちはじめます。
漆黒のお帽子に、木のように渋い背広を着た、逞しいお方。
そんなお方が私の歩幅に合わせて歩きながらも、そのお手が、私の手を握りしめようと辺りをさ迷わせていることに、どうしようもなく心が締め付けられてしまうのです。
ふと、私が噛み締めて笑みをこぼしたその時。困ったような、照れたようなお顔で、彼は立ち止まり振り返りました。
よく見れば、いつの間にやら私のおうちに行き着いています。
そっと彼の顔をうかがっていれば、今日も彼はおんなじ顔。
息を詰め、口のなかに飴でも転がしているかのように舌を動かし、しかし視線だけは私を見据え、しばしの無言のあと、毎回言うのです。
「月が、綺麗ですね」と。
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